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2B:737-739 03/02/13 12:57

ガララッ
「はぁーい、おまたせー」
 その底抜けに軽い声を聞いた瞬間、俺は床の畳ごとひっくり返り、反対側の障子に頭からつっこんだ。
「ダイナミックな人ね〜」
 誰のせいだ、誰の……

 これが友人とか、ただの恋人とかの待ち合わせだったらこんなリアクションをとる必要はなかったんだろうが……
 少なくともここがどこかを考えれば凄まじく場違いである。
 ――ここは娼館なのだから。
 『葉鍵楼』
 それがこの娼館の名前だったか?
 「2」で始まって「る」で終わる、某巨大インターネット掲示板で、一時、噂に持ち上がったのを俺は見ている。……ニュー速板だったか?(違います)
 いくつかの条件を満たすものの前にだけあらわれるという、かげろうのような娼館。
 しかし、俺は特に、葉鍵、というジャンルに造詣が深いわけでもなかった。ああ、あるなぁ、と言う程度は知っていたが、ゲームそのものを入手したことさえなかった。
 だから、俺を迎えた柏木とか言う支配人も、俺がキャラの名前さえ知らないと言うことを知ると、
「それは妙だな……」
 と、真剣な表情で、首をかしげていた。
「まぁ、こちらの手違いで巻き込んでしまったんでしょう、申し訳ありません。その気がお有りでしたら、指名じゃなくてもいいですよ、いろんな娘、揃っておりますから……」
 支配人は気まずそうに苦笑しながら、そう言った。
「じゃあ、こんな娘はいますか……?」
 俺は、冗談のつもりで、そのリクエストを言ってみる。案の定、支配人は驚いて目を円くした。
「ええ……お客さま、本当にそれをお望みですか?」
 狼狽したような声と表情で、言う。
「ああ」
 俺は短く応えた。
「かしこまりました、少々お待ち下さい」
 そう言って玄関先に俺を立たせたまま、支配人は奥へと入っていった。
 3分程して、戻ってくる。
「お待たせしました」
 そう言って軽く頭を下げてから、俺に一枚の、大きめのカードを見せた。
「彼女がやらせていただくそうです」
 後で考えてみれば、妙な言い回しだった。
 写真に移っていたのは、栗毛がかったストレートロングのかわいらしい女の子。
「柚木、詩子さんね……」
「よろしければ、お部屋に御案内いたしますが……」
「はい、お願いします」
 俺がOKすると、俺は奥の部屋へと通された。
「今来ますので、しばらくここでお待ち下さい……」

「……ひょっとして、アレのせいで君が来たのか?」
 俺は彼女、詩子を抱き締めながら聞いた。
 詩子から抱きついてきたのであるが、悪い気はしないので、抱き返して、頭を撫でてやる。
「そりゃーあ、あんなリクエストそうそうこないからね〜。指名があったらそのコがやらなきゃいけないんだけど、指名無しだったし、面白そうだから私が来たの♪」
 むぅ……どうやら想像は正しいようだ。
『すべての願いを叶えます』
 その看板に偽りはないってことだ。もし、俺が彼女達の誰かを知っていて、指名をしていたなら、その娘の、アノ姿が見られるのだろう。
「さっきから呆れたような声ばっかり出してるけど……私じゃ嫌だった?」
 急に心配そうな表情になって、詩子は俺の顔を覗いてくる。
「いや、少しあっけにとられたのは確かだけど……嫌ってほどじゃないぞ?」
 詩子の脇の下を抱え、少し離すように持ち上げて言う。詩子を安心させるつもりだったが、嘘をついたつもりはない。
「よかった、じゃあ……サービスするねっ?」
「頼むよ」
「うん」
 返事をすると、詩子は自分で立ち上がって、するする……と帯を解きはじめた。それもまた男の醍醐味かとも思ったのだが、苦笑しながら黙って、その姿を見ている。
 女性が自分の手で裸になっていくシーンも、意外に艶かしいな……
「なるほど、和服が似合うわけだ。純日本的体型だな」
「それって、酷いこと言ってる?」
 すこしむっとしたように、でも口元では笑って、詩子は手で自分の慎ましやかな胸を覆った。
 そして、彼女のすべてがあらわになる。
「や、やっぱりちょっと恥ずかしいな……」
 流石に、顔を紅くしてうつむきがちになる彼女の、股間の……女性器の上の端から、俺が望んだそれが存在していた。
 大きさは俺の中指よりひとまわり大きい程度の、男性の外性器。すなわち、ペニス。

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