「デネブさんの恋愛情事」

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映画を観に行こうとデネブから誘われたとき、正直、ミサキは驚いた。
まさか、向こうから、デネブの方から誘ってくれるとは思わなかったのだ。
「デンライナー署、忙しいんじゃないの」
「明日は日曜日だし、最近は悪いイマジン達も派手な動きはないから」
そんな言葉に無理してないのだろうかと思いつつも、楽しみにしていた。
二人で、どこかに出掛けるなんて久しぶりのことなのだ。

ところが、当日の朝になって予定は狂った。
はぐれイマジンが現れて街中で大暴れをするという事件が起こったのだ。
やはりデートは、お預けだ。
しかし、怒ったところでどうしようもない。
もし、自分がまだ若ければ我が儘を存分にぶつけることができるのだが。
大人の自分に、そんなことはできない。
「まあ、デネブも大変なんだし、仕方ないわよね」
そう言って、自分に言い聞かせると仕方なく、一人で映画を観て、帰りに夕飯
の材料を買い、家へ帰ったのだが。

 
今度はいつ会えるだろうかと思いつつ、ふと電話をかけようと思ったが、番号
を押している途中で思わず手をふと止めた。
この時間なら夕飯の片付けしてるかもしてるかもしれない。
もう少ししてからかける方がいいかもしれない。
八時という時間帯は微妙だ。
デネブは一人ではないのだ、ゼロライナーに侑斗と一緒に暮らしている。
彼の世話までしているのだ、風呂を沸かしたり、部屋の掃除をしたり、そして
刑事もやっている。
自分の、恋人の世話もしてほしいけど、それは我が儘というものだ。
そんなことを思っていたら、数日後、それは現実になってしまった。


「だ、大丈夫か、何か食べたいものはあるか」
慌てながら、心配そうに顔を覗き込むデネブにミサキは、はははと乾いた笑顔
を向けるだけだった。
お腹は減ってないかと言って、湯気の立つ土鍋を目の絵にでんと置かれた。
風邪は万病の元、消化の良いものを食べて、ゆっくりと休むんだ。
まるで、母親のような台詞だった。
「眠るまで、ここにいるから」
子供じゃあるまいしと思いつつも、嬉しくて、つい顔が緩んでしまうのを我慢
しつつ、ありがとうと声をかける。
こんな時にこそ、存分に甘えてしまおう。
布団から手を出して、手招きしたミサキは小さく囁いた。
「だ、駄目だ」
慌てて、デネブは首を振った。
顔は真っ黒なので、表情こそ分からない。
だが、明らかに動揺しているのがはっきりとわかった。
「イマジンといえど、お、俺だって男なんだ、だ、だから」
どもりながら首を振るが、ミサキはそれでも来てと誘いをかけた。
「寒いんだもの」
デネブの気持ちが、ぐらりと揺れた。
タダ、寒いから一緒に寝るだけだ。
(何もやましいことなんてないぞ)
り、理性をしっかりと保つんだ。
胸の中で繰り返し呟き、いい聞かせるようにしてデネブは、ゆっくりと布団の
中に体を滑り込ませた。
 
「なんだか、眠れない」
ぼそりと呟いた彼女の言葉に、デネブはやはり、添い寝はやめたほうがよかっ
たと後悔した。
だが、次の彼女の台詞に、思わずどきりとした。
「久しぶりよね、こんな風に一緒にいるなんて」
ああ、そうだ、ここ最近は二人でいる時間も少なかったからと思い出した。
「一眠りしたら、何か作ろうか、何が食べたい」
「だったら、プリン、少し甘めで、カラメルをたっぷりとかけるの、苺ミルク
も食べたい、潰した苺と牛乳を混ぜて、砂糖も・・・」
声が小さくなっていくのは、眠くなってきた証拠だろう。
しばらくして、寝息が聞こえてくるとデネブは布団から静かに抜け出した。


その日の夕方、夕食を一緒に食べようと食材を持って、家まで尋ねてきたデネ
ブにミサキは驚いた。

台所で自分の為に料理を作る姿は見ていて、ほほえましい、いや頼もしい。
しかし、いきなり尋ねて来るとは、どうしたんだろうと思わずにはいられなか
った。

「さあ、出来たぞ、食べてくれ、おかわりも沢山あるからな」
味噌汁と鯖の味噌煮、ポテトサラダ、デザートの柿、テーブルに並んだ料理を
大喜び食べ始めたミサキだったが、ふと尋ねた。
「デネブ、機嫌でも悪いの」
表情で把握出来るわけではないが、思わず尋ねてしまったのは女の感というや
つかもしれない。
いきなり何を言い出すのかと驚いたデネブだった。
だが、正直すぎて、隠し事ができない性格である。
「もしかして、仕事で失敗したとか」
最初のうち首を振り、話そうとしないデネブだったが、 隠し事をされること
が心配なのだと詰め寄ると仕方なくというか、しぶしぶと話し出した。
「その、君の仕事先が悪の秘密結社というのは、やはり」
ああ、そういうことかとミサキは小さく頷いた。
以前から、良太郎にも言われていたのだ。
だが、そのたびに笑って誤魔化して逃げていたのだ。
(お給料、いいのよね。ネガタロスって意外と気前がいいし)
「そうよね、刑事と付き合っている女が、敵方の悪の秘密結社で働いているな
んて、体裁が悪いし、世間から見たら後ろめたいわよね」
ふうっと溜息をつき、別れたほうがいいのかなとミサキは、独り言のように呟
いた。
勿論、それは本心ではなかった。
だが、この一言にデネブは持っていた箸をポロリと落とした。
明らかに、ショックを受けたといわんばかりである。
「ちょっと、こぼれてる。魚の煮汁ってシミになったら大変よ」
突然、デネブは、がばっと立ち上がった。
そして、無言のまま彼女をじっと見下ろした。

いきなり、フローリングの床に押し倒され、背中にひんやりとした感触が伝わ
るとミサキは体を震わせた。
自分の胸に顔を埋めるデネブに、思わず布団の上がいいと呟くとデネブが顔を
あげ、自分を覗き込んだ。
黒い顔は表情こそ読めない。
(悪いこと言ってしまったかな)
そんなことを思ったミサキだったが、デネブは黙ったまま服を脱がせ始めた。
いつもと違う、荒々しい動きだった。
こんなときは何も言わない方が良い、そう思って、全てを任せた。
イマジン相手でも、それが少しぐらい強引でも、相手がデネブなので、拒む理
由はなかった。
回された腕が背中を撫で回す、乳房を揉まれていくうちに下半身は、たやす濡
れてしまう。
下着の中に指が入って来るとミサキは、体をそらした。
逃げるように少し体をずらしながら、よじらせる。
嫌なわけではない、ましてや、相手を焦らしているわけでもない。
無論、デネブもわかっていた。
だからこそ、躊躇うことなく行動に移ることができるのだ。

割れ目の上を太い指が触れ、躊躇いも遠慮もなく入って来る。
もうすぐ、気持ちよくなる。
快楽を求めるようにミサキは両手を伸ばすと、相手の首筋に回し、デネブと名
前を呼んだ。
(愛してる)
呼吸が苦しくなり、息苦しさに声が出てこない。
すると。
「愛している」
男の声が耳元に響いた。
その声に、心が、胸が締めつけられそうな気持ちにさせられた。
なんて声、良すぎて、気持ち良くなる、
その声だけで、快楽が深まって良くなりすぎてしまう。
もっと言って、名前を呼んで。
声の代わりに、視線で、体で応えるようにミサキは両手に力をこめた。

「うーっ、だるい、疲れた」
布団の上に寝かされたミサキは、デネブを見上げて悪戯っぽく呟いた。
「すまない、本当に悪かった、お、俺は」
ほんの少し前、強引に自分を抱いていたイマジンとは別人である。
必死に頭を下げて謝る様子に、ミサキは思わず笑いをもらした。
「久しぶりだから、良かったーっ」
にっこりと笑う、彼女の笑顔にデネブは内心焦った。
そんな顔をされると、自分はなんと言えばいいのだろうか。
強引に押し倒してしまったのは自分である。
また、したくなってしまうじゃないか。
思わず、そんなことを思いながら、デネブは口ごもってしまった。
   




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