- 659 :654(´・ω・`):04/05/03 22:56 ID:jOkcYEoS
- 夜十一時。街に渦巻く欲望が、もっとも色濃くなり始める時間。
ロックは、一人自室で酒を飲んでいた。古びたTVから、止めどなく映像と音
が流れ出ている。
ビールを片手に、チャンネルを変える。しかし、どこを回しても、興味を引
かれる番組はやっていない。
「……やっぱりTVは日本の方が面白いよなぁ」
ため息をつきながら、リモコンをテーブルの上に放り投げる。ビールの空き
缶が、小さく音を立てた。
面白くもないジョークを垂れ流しているTVを眺めながら、缶ビールをあおる。
空になった。
次を開けようとして、彼はもうストックがないことに気付いた。
あー、と呻いて見るものの、それでビールがいきなり出てくるわけもない。
神様がそんなに気前が良いなら、世界から貧困と戦争と糞ムカツクかつての
上司は消滅しているはずだ。
買いに行こうか、とロックは考える。棚の奥にはまだ酒が残ってはいるが、
あれは特別だ。かなり良い酒だ。簡単に飲んでしまうのは惜しい。
やはり買いに行くかとロックが立ち上がりかけたその時、乱暴にドアを叩く
音がした。
続いて響く女の声。
- 660 :(´・ω・`):04/05/03 22:58 ID:jOkcYEoS
-
「居るかロックー!? あたしだあたしぃ!! とっとと鍵開けろコラ、五
秒以内に開けないとぶっ壊して入るぞ!!」
レヴィだ。だんだんと大きくなる音に慌てながら、ロックはドアへと急ぐ。
「今開けるから壊さないでくれよ……」
ドアを開けると、そこには顔を赤くしたレヴィが立っていた。酒臭い。
「どうしたんだよレヴィ。こんな時間に」
その問いに、彼女はにかっと笑いながら抱えたいくつもの酒瓶を見せた。
「さっきまでダッチと飲んでたんだけどよ。あいつ急用が入ったとかで途中
でどっかいっちまたのさ。で、一人で飲んでもつまらねえから酒抱えて来たっ
てわけだ」
言いつつレヴィはずかずかと部屋に上がり込んでいく。
何か言おうとしたロックだったが、まあ良いかと考え直す。酒がいきなり出
てきたのだ。今日の神様は気っぷが良い。
「何だよ、結構綺麗にしてんな。さすが日本人」
言いながら、レヴィはソファに寝っ転がってリモコンをいじりだした。
「ちっ、しけたのしかやってねえな」
言いながらリモコンを放り投げ、ロックが用意したグラスに酒を注いであお
る。反対側のソファに座ったロックも、自分で注いだグラスに口を付けた。
安酒だが、味は悪くない。
そのあと二人は、たわいのない話をしながら杯を進めていった。
- 668 :(´・ω・`):04/05/05 20:42 ID:Mnl48lPE
-
テーブルの上には、いくつもの空き瓶が転がっている。
あらかた飲み尽くしたレヴィは部屋の棚をあさり、動物並みの嗅覚を持って
ロック秘蔵の酒を探し当てた。むろん飲む。彼女に見つかった時点でロックは諦めた。
当のレヴィは、ロックの前でグラスを片手に、最近の仕事についてひたすら
文句を並べていた。
彼女曰く、最近割に合わない仕事ばかりしている。その最近とはロックが仲
間になってからであり、したがって良い仕事が来ないのはおまえの所為だ責
任とれ――はっきり言って無茶苦茶である。責任をとれといわれても困ると
言うものだ。
ロックは何とか抗議を試みたものの、酔っぱらったレヴィはこっちの話など
欠片も聞いていない。
「オイ聞いてんのかロック!?」
そのくせ、こっちが彼女の話を聞いてないとすぐに勘付くから厄介である。
「聞いてるって……」
ロックはTVから視線を彼女へと移した。彼女は酒で赤くなった顔でこちらを睨んでいる。
「嘘付け、思いっきりTV見てたじゃねぇか」
「だからちゃんと聞いてたって……しつこいな全く」
それを聞いたレヴィは無言で立ち上がり、ずかずかとこちらまで歩いてくる
と乱暴にロックの横に腰を下ろした。同時に、ロックの頭を片腕でがっちり
とホールド。
いわゆるヘッドロックをかけられたロックは慌てた。顔に何か柔らかいもの
が当たっている。
「ちょっ……レヴィ!?」
- 669 :(´・ω・`):04/05/05 20:45 ID:Mnl48lPE
-
「反省の色が見えないなロックちゃんよぉ? わざわざこのレヴィさまが懺
悔の時間を与えてやってんだぜ?」
「反省することなんか無いっての! ……っておい、む、胸が当たってるっ
て!」
レヴィは素知らぬ顔でグラスをあおった。ついでにロックの頭に回した腕に
力を入れる。ロックの顔に触れる感触が、より一層強くなった。
「これくらいで一々騒ぐなよ、ガキじゃあるまいし。それとも何か? おま
え、もしかして……」
レヴィの顔がにやりと歪む。おもちゃを見つけた猫のようだ。
ロックが何か言うより早く、レヴィは腰を浮かせると彼の膝の上に座り直し
た。
「こ、こら!?」
うろたえるロック。
「何だよ、どうかしたのか? 顔真っ赤だぜ?」
愉快そうな顔で目を細めるレヴィ。
「これは酒のせい……じゃなくて! いきなり何を……」
んふ、とレヴィは笑った。そのまま何も言わず、酒を口に含む。
ロックの目の前で、白い喉が酒を嚥下していく。それは恐ろしく扇情的だっ
た。
「まあ落ち着けよ、童貞君」
- 670 :(´・ω・`):04/05/05 20:47 ID:Mnl48lPE
- 「誰が童貞だ!」
「違うのか?」
さも面白そうにこちらを眺めてくるレヴィ。
「違う! つーか何でこんな事おまえに……」
「なんだ違うのか。てことはあれか? 筆おろしはママにでもして貰ったの
かい?」
「んな訳あるか!」
「どーだか。ま、あんたみたいなのじゃ女にイカさせられるのがオチだな」
「……なんだと?」
「おや、気に障った? じゃ、あたしをイカせたら謝ってやるよ」
無理だろうけどな、といってレヴィはからからと笑った。笑いながら、再び
グラスに口を付ける。
目の前でごくりと動く白い喉を見つめていると、ロックは自分の中にもう一
人別の自分が居るのではないかと思えるほど、精神が高ぶっていくのが分かっ
た。
――どうやら、自分も相当酔っているらしい。
気がつけば、ロックは自分の膝の上に座っていたレヴィを押し倒していた。
- 671 :(´・ω・`):04/05/05 20:50 ID:Mnl48lPE
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「うわっ!」
いきなり押し倒されたレヴィは、自分の上に覆い被さるようにしているロッ
クを驚いた顔で見つめていた。
「お、おい……マジか?」
「イカせたら謝ってくれるんだろ? それとも怖じ気づいたか?」
その言葉に、レヴィのこめかみがぴくりと動いた。
「はっ! 何でオメーなんか相手に怖じ気づかなきゃいけねーんだよ。イカ
せられるもんならイカせて見なってんだ」
「ああ」
言うや否や、ロックはレヴィの唇に自身のそれを押しつけた。
「――っん!?」
レヴィの身体が硬直していくのが分かる。彼女の唇はまだ固く閉ざされたま
まだ。軽くその上を舐めたあと、ロックは顔を上げた。
レヴィは赤く上気した顔でこちらを見上げている。その頬に差す朱は、酒に
よるものとは別種だ。
「おま……」
彼女が言葉を発しようと口を開けた瞬間、すかさずロックは自分の口を押し
つけた。そのまま相手の口内に自身の舌を押し込む。