256 ::2006/10/30(月) 23:11:22 ID:8hd32Nrk
その写真の中で、レヴィはいつもと同じ笑顔で暴れていた。
 
獲物を振り回して相手を散々に叩きのめす時の、あの邪悪で凍り付くような笑顔。
違うのは、ソードカトラスの代わりに何重にも編み込まれた皮鞭を握っているのと、
黒く艶光りするボンテージに身を包んでいる事だった。
被害者もブロンドの下着姿の女で、ボールギャグと手錠姿で繋がれているのに表情は恍惚としていた。
 
「よう兄ちゃんか、わざわざ持ってきて貰って悪ィな。ウチの車がいきなりイカれちまってよ…」
「あの、ローワンさん、これは…」
 
アフロとサングラスに覆われて正体不明な顔が、露骨に青ざめ歪んでいく。
怯えた様子で倉庫の出入り口に戻って周囲を確認し、即座に扉を閉めて鍵までかけた。
 
「よう、レヴィは…今日は」
「いえ、俺一人で来ましたけど」
「そうか!いや危なかったァ、今更そんな物が残っているってバレたら洒落んなんねェからな」
「ヤバい物なんですか」
「いやそいつはよ、お前さんがこの街に来る前に、奴がここで銃の改造代稼ぐ為にバイトしてた時の写真さ。
 結構筋良くて人気もイケてたからよ、まんまメイン張っても良かったくらいだったんだがなァ」
「稼ぐだけ稼いでおさらば、ですか」
「その通りさァこの俺様がせっかく楽して稼げる花道作ってやったのによ。
 その上、奴ァ撮っておいた写真のネガポジ全部焼いて捨てちまったのさ」
 
きっと、出来たてのカトラスを突きつけて、洗いざらい持ち出させたに違いない。もし隠していたらブッ殺すとか言って。
 
「だからよォ、俺としてはそんな写真が今更残っていたなんて夢にも思ってなかった訳さ。確かに内緒で撮っていたビデオまで全部出したんだがなァ」
「そこの段ボールの下敷きになっていたんですよ。今まで隠れていたんでしょう」
「いやァ見つけたのが兄ちゃんで助かったわァ。頼むからこの事は黙っててくんねェかな?
 野郎、俺を店ごとローストした上に鮫の餌にするなんて言ってやがった。マジ顔で」
「ええ、良いですよ。コレは俺が捨てておきますから」
 
さすが話が分かるとか、今度店に来たらロハで何とかとか、そんな無意味な言葉を聞き流して、俺はさっさと仕事を済ませて事務所に帰る事に専念した。
混ぜ物密造酒の箱を運ぶ最中も、一瞬だけ見たレヴィの肢体が網膜に焼き付いて離れなかった。

257 ::2006/10/30(月) 23:12:37 ID:8hd32Nrk
予定では、ダッチとベニーは船の整備、レヴィは脚の治療の仕上げで闇医者に行っている筈だった。
今、事務所には俺しかいない。それは計算済みだった。
それでも万一の場合に対策をし易くする為にトイレに入り、それからやっと胸ポケから写真を取り出して、見返す。
いつも着ているホットパンツとは全く対照的な、金属質に近い黒い光沢の衣装。
SMショウ用の衣装だって事くらいは俺にも分かる。叩かれている女がいわゆるそういう性癖である事も。
ナンセンスなまでに頑丈に固められた腕と脚。それとは正反対に露出を強調している太股。
多分俺よりも筋肉の多く詰まった、それでいて男みたいに隆起の激しくない、綺麗な太股。
更に右足でM役の女を踏みつけているせいで、ミニドレスのスカートがめくれ上がっていて、太股の付け根が…股間が見える。
最初に見た時はそこまで気が付かなかったけど、今良く見ると、このドレス自体が簡単にデルタを覗かせるデザインになっていた。
そして、その股間だけが、ボンテージにあるまじき白く虚弱な薄い布で覆われている。
なんていうか、まるで漫画みたいにあざとい仕掛け。
嫌でも視線はその一点に集中する。下着と言うには申し訳程度の面積しかないショーツの部分に。
 
「これ、陰毛、なのか…?」
 
さすがに性器の部分は巧妙に隠されているけど、そのすぐ上、大胆にV字の切れ込みが入っている部分。
ちょうどドレスの陰に隠れて判別できないけど、確かに黒い「何かが」見える。
その黒く茂った塊が、写真という平面的で無機質な世界に、生々しい匂いと質感を持ち込んでいた。
息を潜めて、本当に誰もこの場にいない事を確認してから、写真を床に置いて腰のベルトを緩める。
ズボンを脱ぐ事自体は本来トイレで行う当然の行為で、しかし目的は微妙に異なっていた。
排泄するのは便意ではなく、性欲の方だ。想像がレヴィの全身を覆い尽くしてしまうと、とても我慢できなかった。
この街は、欲を満たす物なら何でもありそうに見えるが、いざ安全を求めるとそうでもなくなる。
東京みたいに清潔な風俗なんてある訳が無いし、じゃあ路上の女を買おうとすると、どれもこれもが危険牌にしか見えない。
安全な相手となると高級娼婦になるけど、しがない海賊の手下その1にそんな財力もない。
ローワンの店なんて、さっき自分で運んだ物の正体知っているからには、選択肢にもならなかった。
すると残る手段は、多くの場合自己処理のみだ。つまりその為の材料を仕入れなければならない。
で、油断してその手の本屋なんかに頻繁に通えば、誰に見つかってヘタレなんて噂を流されかねない。
まるで田舎の中学生みたいな感覚だったけど、ただでさえ微妙な俺の立場で、これ以上変な評価をされた場合、
場合によってはダッチ達全員に迷惑が及ぶ可能性もあるだろう。
つまり、俺にとってこういう素材自体が貴重な物だった。

258 ::2006/10/30(月) 23:13:40 ID:8hd32Nrk
罪悪感はあったけど、とにかく取り敢えず一度吐き出さないと冷静に思考できない。
心の中でレヴィに詫びながらペニスを握り、全力で擦る。一刻も早く終わるように。
途端に、今までなるべく想像しないように努めていた妄想が、堰を切った様に脳内に溢れ出てきた。
 
幼少時に父親にレイプされるレヴィ。
スラムで暴漢に襲われるレヴィ。
金の為に誰とも知らない男に身を売るレヴィ。
 
妄想が段階を経る度に異様な快感が身体を貫いた。
俺を守って死線を何度も駆け抜けた彼女に対する劣情の稚拙さに、俺は泣きそうだった。
頭の中で泣きそうになりながら、下半身は一方通行で絶頂まで駆け抜けていく。
その勢いは天変地異でも止まる物じゃない。
この瞬間に核が落ちてきても、消滅するより先に必ずゴールに辿り着けるだろう。
写真のレヴィの股間を凝視し、想像の照準を定めて脳細胞にムチを打つ。
汗と革の混ざった匂いと、針金みたいに硬い陰毛。そのイメージが視覚と聴覚に強烈に焼き付く。
そして瞬間、鼻の頭に確かに感じた。
陰毛が触れる微かな感触と、ツンと鼻腔を突き抜ける陰部の匂い。
 
「レヴィ…」
 
自分でもタイミングが全く掴めなかった。今まで体験した事のない猛烈な射精感だった。
紙で受け止める間も無く、精液がだらしなく床に散った。
狙った訳でもないのに、半分近くが写真の上に落ちて、光沢面に白い粘液の円が幾つもへばりついた。
結果として俺はかなりダメなオナニーを実行した事になる。
終わった時独特の自己嫌悪が、今の状況を客観的に見返したせいで、何倍も嵩上げされる。
思わず死にたくなったが、当然死ねる筈もないので、ただ呆然と天井を見上げるしかない。
何やってんだ俺…
この街に来てから一年、なんだかんだで仕事にも慣れ、死の寸前まで行った事も何度かあった。
数日前には、日本でかつての生活と決別し得るだけの経験をして、本当の意味でこの世界に踏み込む覚悟を決めた。
で、その矢先にやっているのがコレじゃあ、日本にいた時と何が違うって言うんだ?
最低だ…本当に。
とにかく急いで片づけなければならない。まず床をどうにかしないと。
 
電話が鳴った。

259 ::2006/10/30(月) 23:14:42 ID:8hd32Nrk
何かを考えるとか、そういうのは全然無くて、ただひたすら床と写真を拭いた。
一切の痕跡を残さないのも重要だけど、今は早さが一番大事だった。
電話のコールはもう三回目に達している。
日本の商社ならこの時点で叱責物だ。幸いここはロアナプラで、コール回数をカウントする暇な上司はいない。
でも、あのコールが途絶えて、相手がもし重要な取引先だった場合、ヤバいのは同じだ。
出なかった事実よりも、その時ここにいる筈の俺が何をしていたのか、という事が問題になる。
「トイレで大きいヤツを出してた」で切り抜けられるか?これなら確かに嘘は半分だ。
だが尚更ここの痕跡を一掃しておかないとヤバい、匂いなんてバレたら速攻だ。
コール五回目。自分の精液で軽く指が濡れた。気にしている余裕はない。
それとも、取り敢えずこの場を放棄して電話に出るべきか?
…いや、もし万々一電話中に誰かが帰ってきたらどうする。あり得ない話じゃない。
電話に出れなかった場合のリスクと、この場を放棄するリスク、どっちが高い?
いやいや、考えるより先に動け。手を動かせ。急げば間に合う筈だ。
よし、これでモノは消えた。匂いさえ換気扇で吸い切れれば…それはもう俺にはどうしようもない。
 
光の速さで扉を開けるのと同時に、予想外の結果が三つ同時に襲いかかってきた。
一つ目は、電話のコールが十回にも達しないで途絶えた事。
二つ目は、それは俺ではない人間が取ったからだという事。
最後は、それが他でもないレヴィだった事。
 
「なんだ、姉御か…何、次の定期便の中身変える?どうせ運ぶのは同じなんだからどうだって良いじゃねーか。
 …ああ、分かってるよんな事ぁ。だがウチのビッグボスは生憎留守だ。帳簿屋ならいるぜ?」
 
やっと日本でやられた足が治ったらしいレヴィは、松葉杖の代わりにビール片手に電話を受けていた。
 
「ほらよ、ロック。きっちり給料分の仕事しな」
「あ、ああ…」
 
目の前に受話器を突き出されても、すぐには現実を受け入れられなかった。
何故気付かなかった?
いつからここにいた?
俺がトイレにいた事を知っていたのか?
俺がそこで何をやっていたのかを…

260 ::2006/10/30(月) 23:15:42 ID:8hd32Nrk
「ったく、ろくに仕事もしないでビールばかり飲んでっとジジイみたいにトイレが近いぜ」
 
しかも、よりによって一番ヤバい場所に直行していく。
冗談じゃない。確かに写真は回収したし痕跡も消したけど、こんな早いんじゃ匂いはまだ消えてないってのに。
レヴィが「あの」匂いに気づかない筈がない…
 
「どうも。お電話代わりました。次の定期便の品目変更ですね?日時が変わらなければいつでも入れ替えは…はい、では三日後の15時に」
 
レヴィは、出てこない。何の異常も無い。
 
「ルート指定と目的地の変更も…はい。一応重量変化による燃費計算もありますので、費用変更に関してはまた後日という事で」
 
泣く子も黙るホテルモスクワの武闘派最筆頭と話しながら、内心ではずっとトイレの中の女ばかり気にしている。
考えてみれば、俺は両方の女に殺される直前まで行った経験がある訳で。
それが今となっては、銃を突きつけられるよりもオナニーがバレる方がずっと怖い有様だ。随分酷い話じゃないか。
 
「はい、それではまた三日後に」
 
受話器を戻す。トイレには何の変わりも無い。大体三分間は話していたから、何とも無いってのは…
ひとまず助かった、のか?
 

261 ::2006/10/30(月) 23:16:14 ID:8hd32Nrk
安堵して胸ポケの写真を確かめる。いつの間にか消えている、なんて事もなくしっかり収容できている。大丈夫だ。
しばらくしてレヴィがトイレから出てきて、ダッチとベニーも戻ってきた。それからはいつもと同じ事務所だった。
仕事が無ければ適当にダベる場所でしかない。飛び込み営業しなきゃならない程飢えてもいない。
こんな物騒な町にいるのに、むしろ日本より落ち着いた、ゆっくりとした日々。
仕事は命懸けだけど、その分オンとオフがはっきりとした生活が、今はもう身に染み付いて離れない。
そして問題の性欲処理は…しばらくは胸ポケの物で持つだろう。
それにしても写真の中の本人と会話して何の動揺も無かったのは、それなりに死線を潜って来たからなんだろうか。
 
「何だロック?アタシの顔に何か付いてんのか?」
「ん、いや別に…」
 
その後は、何事もなく時間が過ぎていった。
明確に決まっている訳でもない営業時間が何となく終わり、当直代わりに一人残るのを除いて、他はお疲れさん。残業も無し。
今日の係になったダッチを残して、いつも通りに黄旗に寄って一杯引っかける。
本当は速攻で家に帰ってしまいたいなんて本音は欠片も出さない。
やれあいつが死んだとかあそこが儲けたとか、そんな話を聞き流してる間も、脳裏に焼き付いた写真の映像が消えなかった。
そのせいなのか、いつの間にかレヴィが途中で帰った事に気が付かなかった。
ベニーと別れて、やっと家に帰り着いた時には、もう頭の中は写真の事で一杯で、扉や部屋の異常には全く気付かなかった。
 
灯りを点けようとした瞬間に、側頭部に堅い感触が突きつけられた。

262 ::2006/10/30(月) 23:16:47 ID:8hd32Nrk
「遅いお帰りだな。色男。どっかで商売女でも引っ掛けて来たのか?」
「い、いや…俺は」
「うるせぇ。さっさと扉を閉めろ」
 
相手が誰なのか、その目的が何なのか、考えるまでもなかった。自分の浅はかさも。
やはり誤魔化せる筈がなかったんだ。
 
「出しな」
「何を」
「ふざけるな。ポケットに後生大事に取ってあるブツに決まってんだろ」
 
いつかの潜水艦の時と雰囲気が似ていた。つまり冗談は通じないし、下手したら本当に殺される。
その上、今の俺には大層な理屈も立場もない。全面的にこっちが悪い。
だからと言って、浮気した夫みたいにすぐ土下座して謝れば済むなんて状況でもない。
選択肢はただ一つ『言われた通りにする』だけ。
暗闇の中で静かに胸ポケから写真を摘み出し、大体の見当で彼女の眼前に献上した。
 
「ふん、大方ローワンの野郎からせしめたんだろうが」
「俺が倉庫で偶然拾ったんだ。ローワンは知らなかったんだよ」
「黙れ。今の手前はカカシだ。勝手に喋る権利も歩く権利も無ぇ。良いと言うまでそのまま動くな」
 
写真をむしり取られても、相変わらず銃口は突きつけられたままだった。
言われた通りに直立不動を崩さず、それでもなんとか彼女の動きを音と空気の流れで感じようと努める。
でも、写真を奪ってからなんの気配も感じない。
逆にそれが今にも引き金を引こうとする前触れの様に思えて、さすがに恐怖を無視できなくなってきた。
今回はヤバい。ていうか一回実際に撃たれたからには次だってそれほど難しくない…
 
「汚らしくてクセェ臭いだ。これがお前のナニの臭いか」

263 ::2006/10/30(月) 23:19:56 ID:8hd32Nrk
「本当に済まない。悪いと…」
「誰が喋って良いと言った?」
 
こめかみに当てられた銃口には、間違いなく明かな殺意が籠もっていた。
そのくせ、写真を鼻に近づけて臭いを嗅いでいたってのは何なんだろう?
思わず笑いそうになるけど、何とか堪えて次のアクションを待った。
 
「この写真を見ながら、あたしを犯したいと思ったのか?ナニをぶち込みたいと思ったのか?」
「…」
「今は喋れと言っているんだ。さっさと答えろよノロマ野郎」
 
答えたくないんじゃない。
 
「分からない」
「あぁ?」
「分からないんだ」
 
確かに彼女がそうされる姿を想像していた。でも、俺自身がそうしたいのか?
自分の心に聞いても分からない。これは嘘じゃなかった。
 
「とぼけんじゃねえ。こちとらしっかり見てんだよ。お前が救いがたいアホ面で惨めなシゴキっぷりを披露しているのをよ」
 
一瞬、意識が遠くなった。ある意味ヘリに魚雷食らわせた時よりキツい衝撃だった。
 
「じゃあ、じゃあ、まさかトイレの中にいた時から」
「ヘロインでネジがゆるんだジャンキーみたいな喘ぎ声出すからバカでも気付いたさ。神も見捨てる間抜けぶりだったぜ?」
 
嘘だろ、ずっと黙って「して」いたつもりだったのに…名前で呼んだ時よりずっと前から声を出していたってのか。
つまり、ほとんど全部見られていたのか?あの醜態を?
 
「…分かった。もう良いよ。殺してくれ」
「そうはいかねえな。死にたくなる気持ちは分かるけどよ」
  
アヒャヒャヒャと高笑いする。当たり前だ。俺だって殺された方がマシだ。
明日、このネタで笑いまくるダッチやベニーを想像するだけで首を括りたくなる。
 
「大体、本気でお前を殺せると思っているのか?」

264 ::2006/10/30(月) 23:21:04 ID:8hd32Nrk
突然、目の前に小さな光が現れた。銃の発射光でも灯りでもない、ライターの炎。
その直上に、例の写真が降りてくる。
炎の尖端に触れた途端に、写真はいとも簡単に燃え上がり、より一層大きな光を放つ。
灰皿の中で燃えるオレンジ色の炎に照らされて、ようやくレヴィの姿が見えた。
 
写真と全く同じ、黒革に包まれた姿。
 
頭に被っている装置は、多分暗視スコープだろう。あの格好でずっと待ち伏せていたのか。
俺より早くこの部屋に忍び込んで、着心地悪いだろうボンテージスーツとスコープを着けて、カトラスを握って。
 
「レヴィ、お前…」
 
物騒な装置を外して晒した素顔は、さっきまでの言動とは裏腹に能面みたいに静かで神妙だった。
 
「あたしとしたいなら、そう言えよ」
 
炎が消える。その寸前にベッドサイドの読書灯が点る。
 
「あんな惨めな事するくらいなら、なんで面と向かって言わないんだ」
 
読書灯の電球に照らされて、ベッドが純白に輝いて暗闇の中に浮かぶステージになる。
その上にレヴィが自分で横たわり、ゆっくりと両脚を広げる。
あの写真の中の、ほんの僅かな陰でしかなかった部分が、今、すぐ目の前にあった。
シルクの布地に包まれた、黒い陰毛と匂い立つ股間…
 
「よう、お前が欲しい物はコレだろ?さっさとしゃぶりつきなボーイ」
 

323 :2-1:2006/11/07(火) 18:21:22 ID:id+TCABV
普段あれだけ煙草や酒にまみれているのに、肌は滑らかで柔らかくて、暖かった。
日本で上司に無理矢理連れて行かれた風俗だって、もっと酷かったのに。
そう、ちょうど今と同じ格好。太股に挟まれて、股間に鼻先を押し付けている形。
風俗の時は清潔に洗われていて全部剥き出しだったけど、やたら臭くて嫌で仕方なかった。
下着を着けたままのレヴィからは、汗とカビとラム酒の匂いがする。
本当はこっちの方が臭いはずなのに、堪らなく心地良い。
鼻を段々と強く押し付けて、柔らかい素肌に深く埋めていく。
唇に触れたシルクの下着が、薄く湿っている。
太股と黒革のドレスに囲まれた狭い空間に、レヴィの匂いが充満していた。
 
「嬉しいか?ロック」
 
ああそうだよ嬉しいよ。本物のレヴィの匂いだ…想像していたのと同じ、いやもっと良い。
深呼吸を繰り返しながら、執拗にショーツの股間を舐める。
写真の中で微かに見えていた物に、今実際に触れ、舌で味わっている。
シルクの滑るような布地越しに、硬い陰毛とヴァギナの形が舌に触れる。
どうでも良い風俗の女じゃなく、俺にとって一番大事な女の物。
 
「レヴィ、レヴィ…」
 
自分の下半身を疎かにしていたせいで、ペニスがきつくて仕方がない。
でも今は脱ぐ手間も煩わしい。
ひたすらに求めていた。体温と匂いと鼓動の伴う肉体を。
ズボンの生地を突き破ろうとする陰茎と同調して、舌先を何度も割れ目の中心に突き立てる。
冷静に考えればさっさと素っ裸になってしまえばいいのに、そういう方向に頭が働かない。
とにかくこの場で全てを味わいたかった。感じたかった。

324 :2-2:2006/11/07(火) 18:22:28 ID:id+TCABV
「ふん。まるでバカ犬だな。噛み付いたら離れねえ」
「…ああそうだよ。だってずっと欲しかったんだ」
「頭ん中でピンクのレースをせっせと編んでいた癖に、今まで何もしなかったってのか」
「悪いか」
「悪かねえさ。とんだヘタレ野郎だがな」
 
髪の毛が掴まれる感触。
目の前の白い恥丘が遠ざかり、あっと思った瞬間に自分の頭も引っ張られる。
股間に顔を押しつけた形のままでベッドの上を引きずられていると分かるのに、しばらく時間がかかった。
その間に、俺自身がすっかり純白のステージの中心に引きずり込まれ、レヴィはそれを捕まえた立場で枕の辺りに居座る格好になった。
つまり、俺はショーツの罠に引っ掛かった獲物って事だ。
しかし、それでもシルクの餌から離れられない。
それどころかキスや舐めるだけでは足りずに、遂に直に口を付けて吸い始める。
実際の味がどうかなんてどうでもよかった。どうせ脳内で変換されているから。
物凄く、甘くて美味しい。
 
「そうだよなぁロック。男ってのはみんなそうだ」
 
そんな言葉を吐きながら、掴んだ髪を捻り上げて俺の顔を引き剥がす。
強引に裏返すようにねじ曲げられ、声も上げられない。
首がどうにかならないようにするには身体全体を動かすしかなく、結局そのまま仰向けに寝転がってしまう。
 
「どうせなら、もっと豪勢に食わせてやるぜベイビー」
 
何が起こるのかは分かっていたから、抵抗はしなかった。

325 :2-3:2006/11/07(火) 18:23:48 ID:id+TCABV
「どうだ、具合の方は?」
 
レヴィの匂いがする、と言おうとしても言葉にならない。
鼻と口を完全にレヴィの股間に塞がれ、呼吸する度に体温と体液で湿った空気が入ってくる。
顔に押し付けられた柔らかい体重が心地良い。
革のスカートが電球の光で妖しく輝き、彼女の身体と共に俺の顔の上で揺れる。明らかに不自然な、作為的なリズムで。
顔面騎乗なんてマニアックな体位が、こんなにツボにハマるなんて思いもしなかった。
 
「今のお前はさしずめクッションだな。ケツに潰されて臭い匂いを嗅ぐのが存在意義だ。奴隷以下、人間ですらねえぜ」
 
ああそうだよ、今の俺、レヴィの物になっている…
 
そう思った瞬間、股間に鋭い打撃が降ってきた。
見えなくても、それがレヴィの振り下ろした脚、あの頑丈で艶めかしいブーツの踵だと感じる。
全身に電撃が走り、下半身が勝手にブリッジみたいに反り返る。
訳の分からない叫びをレヴィの股間にぶつけながら、宙に向かって射精した。
服はそのままだから、精液は全てパンツとズボンに染みこんでしまった。
だけど、そんなのはどうでも良い。
脱力した腰がベッドに落ちて、脳味噌が快楽の水に浸される。
理屈じゃない。レヴィの手で無条件に脳内物質の栓を開けられているみたいだった。
 
「あーなんつーか…正直想像を超えていてフォローできねえなこりゃ」
 
返事の代わりに音を立ててヴァギナを吸った。
何を馬鹿にされてもコケにされても構わない。
レヴィの手で施される快楽が全てだった。
 
「OK、OK。次は女王様の御慈悲って奴だぜ」
 
レヴィの腰が浮き、俺のズボンのベルトが外される感触が伝わってくる。
光が少ないせいか思いの外に手こずるらしく、馬乗りの姿勢が四つん這いになっていた。
その隙に、俺はワイシャツとネクタイを自分の手で脱ぎ、レヴィの腰に手を伸ばして、左右の結び目を同時に解いた。
 
紐で固定されていたショーツが、色んな液で濡れた重さでだらしなく俺の腹の上に落ちてきた。


455 :ボンテージ3-1:2006/11/20(月) 03:04:42 ID:dnsaXoZ1
俺が勝手に股間を剥き出しにしたのを、レヴィは全然咎めなかった。
あるいはわざとベルト剥がしに時間をかけて、そうなるように誘っていたのかもしれない。
束縛から解放された俺のペニスは、パンツの中で暴発した精液にまみれたまま、鉄棒みたいに硬く起立した。
今日はもう二回出しているのに、露わになったレヴィの濡れるヴァギナが、萎えるのを許さなかった。
ここに到達するまでは、萎えてなんていられない。
 
「レヴィ、俺…」
「今更、何ビビってんだ。先に行くぜ」

綺麗に69の形に収まり、互いに義務と権利を分け合う構図になった。
いつも罵詈雑言と煙草の煙を吐き出している唇が、俺のペニスを優しく包んでくれる。
さっき踏み潰された時の痛みと一緒に、陰茎の中に残っていた精液が吸い取られていく。
脊髄を引き抜かれるような虚脱感と、腰が抜けそうな程の快感。
思わず声が出る。
俺の方と言えば、蜜の滴る果実が目の前にあるのに、快楽の底なし沼に引きずり込まれる感覚に負けそうになる。
でも、あそこまでたどり着けば、もっと、もっと、気持ち良くなれる。
ただその一念で上半身を起こし、呼吸と同じリズムで蠢く花弁に舌を這わせる。
これで、ようやく俺は彼女と同じステージに立てた。
 
「ん…そうだ、ロック。その調子だ」
「レヴィ、俺、俺は…」
「おっと、野暮は言いっこなしだぜロック。今は目の前のモノに集中するんだ」

456 :ボンテージ3-2:2006/11/20(月) 03:05:22 ID:dnsaXoZ1
ドッグスタイルだったレヴィの身体が降りてきて、完全に俺の上に覆い被さる形になった。
冷たく硬いボンテージスーツが、体重に押されて素肌に突き刺さってくる。
そこに体温の暖かさは存在しなかった。ただ、股間と太股だけが熱く俺の顔を包んだ。
レヴィは精液を吸い尽くした後も巧妙にフェラチオを続けている。
彼女を冷静なままで置き去りにしたくなかった。例え経験値の差が大きいとしても。
  
「段々板に付いてきたじゃねぇか。良い塩梅だぜ」
 
舌も唇も鼻も滅茶苦茶になすりつける。
さっき下着越しに舐めた時に見付けた肉芽を、今度は直接吸い立てる。
筋肉の詰まった尻を掴み、弾力を実感する余裕も出てきた。
でも結局は、下半身を良いようにレヴィに支配され続けている。
 
「レヴィ、ダメだ。我慢できないこのまま…」
「ごちゃごちゃ言わないで出せ。一々聞くな。男だろ」
 
肛門に指が入る感触と共に、猛烈な痛みと射精感が「与えられる」。
震える腰から、再びレヴィの口に精液が吸い取られていく。
自分の感覚と言うよりも、快感が彼女の手で物理的に注入されるような感覚。
でもそれは、レヴィの意志と俺の快楽が両立された状態であって。
そう思うと、この状況に不満とか屈辱なんてストレスは感じなかった。
そうだ、レヴィが望むなら、俺は…

457 :ボンテージ3-3:2006/11/20(月) 03:06:08 ID:dnsaXoZ1
「さて、ロック。お前のエンジンも良い感じに回り始めたみたいだな」
 
唐突に、それまで満ちていた攻めの空気がレヴィから消え去った。
あっさりと密着していた身体を離し、俺の身体も半ば無理矢理引き起こされる。
彼女の言う通り、ようやく焦りも緊張もなく抱き合えると思っていたのに…
不平を言おうと見たレヴィの顔は、最初の時より更に神妙で、殺気すら浮かんでいた。
何か、今までと異質な事をしようとしている。それはすぐに分かった。
 
「ここからは、お前がこの街の男になる儀式だ」
「何だって?どういう意味だ?」
「今更、お前に銃を撃てとは言わねぇ。だがな、女コマしたいくせにマスかくしか出来ないヘタレを相棒にするなんざ納得できねぇんだよ」
「そ、そんなの俺の勝手だろ」
「今まではそうだった。だが今は今だ。このあたしと並んでクソ溜めを歩こうってんなら、泥水すすっても欲しい物を掴んで見せろ」
「…セックスなら今しているじゃないか」
 
自分で言うのは恥ずかしかったけど、どうにかして急激に切実になっていく空気をどうにか止めたかった。
しかしそれが、却ってレヴィの心を谷底に落とす結果になった。
泣き出しそうな哀しい笑顔になったレヴィは、静かにベッドに横になって言った。
 
「ロック、あたしを犯せよ」
 

672 :ボンテージ4-1:2006/12/06(水) 19:54:34 ID:ibZhWV/e
一瞬、レヴィが何を言っているのか理解できなかった。
バラバラになって耳に飛び込んできた英単語を脳内で再構成して文章に組み立て、
それでも意味が分からず英文解読試験よろしく前後の状況から類推し、
やっと「you must jack me」なるセンテンスの意味を飲み込めた頃には、
腹の奥から湧き出てきた怒りで身が震えていた。
そう、驚きでも欲情でもなく、怒りだ。
 
「お前…自分が何言っているのか分かっているかよ?」
「フカしてんじゃねぇよジャパニーズ。学はなくても英語は私の方が上だろが」
「そんな事言ってんじゃない!」
「どうでもいいさ。股広げた女目の前にしてそんな御託こねるのが、まず野暮って言うんだ」
 
野暮でも何でも構わない。こんな茶番を見せられるくらいならどう言われても良かった。
お前は何の為に戦ってきたんだ?
売春婦として見られたくなかったんじゃないのか?
潜水艦の中で俺に言っていたのは嘘だったのか?
 
「もういい、レヴィ。止めよう」
「…」
「お前の気持ちは嬉しい。でもこんなやり方で良い筈が無いんだ」
「言っただろう。これは儀式なんだよ。お前と俺のな」
「こんな事しなけりゃ俺はお前の相棒として認められないってのか?」
「そいつは見当違いだな。あたしがなれないのさ。お前の相棒に」
「何だって?」
 
俺と話している間、レヴィはずっと天井を見上げていた。
それが既に身体と意識を切り離した証のように見えて、内心の怒りと不安は更に加速していく。

673 :ボンテージ4-2:2006/12/06(水) 19:55:40 ID:ibZhWV/e
「…あたしには、お前しか、いないんだ。こんな事を許せる男は」
「レヴィ…」
「日本でお前の銃になるって決めた時、『しっくり来た』んだよ。どうせいつか野垂れ死ぬなら、
 この脳味噌お花畑で口だけが取り柄の阿呆の為に殺り合うってのも悪くないってな」
「それは…もう分かっているよ。お前が姉御に銃を向けた時に、分かった」
「だがな、頭は納得しても、身体は納得しないのさ。このままじゃな」
「だからって、俺が力ずくでレイプしなきゃならないってのかよ」
「察しが良いのがお前の取り柄だ。所詮、雌の身体なんてそんなもんなのさ…」
 
この話には大きな矛盾がある、と頭の中で赤ランプが激しく点滅している。
文章の全てを鵜呑みにしてはいけないと、予備校で鍛えた脳味噌が本能的に警告を発していた。
 
「だから、お前は黙ってマグロな女を滅茶苦茶にすりゃ良い。心配しなくても、明日にはいつも通りの二人さ」
「こんなやり方じゃないとダメだって言うのか?」
「ダメさ…お前が気に病む必要はない。これはあたし自身の問題なんだ」
 
話を続ける内に、少しずつ冷静に彼女の心を見渡す余裕が戻ってきた。
レヴィが欲しい物、本当に求めている物。それを嗅ぎ付けなければならない。
人の顔色を見て生き続けた日本人の俺にとって、これがロアナプラで通じる唯一に近い特技だった。
レヴィも、バラライカの姉御も、張の旦那も、暴力教会のヨランダも、皆行動原理は理不尽で自分勝手だけど、
適切な回答のスイッチと行動を示せば決して裏切らなかった。
俺は圧倒的な武力を持つ怪物達の間を飛び回るピエロで、彼らのご機嫌を取りつつ生きる道を切り開いてきた。
滑稽に見えても、それはそれで力には違いないんだ。

674 :ボンテージ4-3:2006/12/06(水) 19:56:41 ID:ibZhWV/e
今、この女は俺に何を求めているのか?
俺に身体を与えると言っていながら、その実は何を示しているのか?
 
選択を間違えば、二度と今までの関係は戻らなくなる。下手すると俺を撃ち殺す事だってあり得る。
でも、こいつが言っている事をそのまんま実行するのは、それこそ俺が納得できない。
俺もこいつも『納得』できるやり方…そんな物があるのか?
 
「やっぱり…イヤか?こんな女は」
 
そうだ。ここで俺がやるべきなのは、多分、小細工抜きで俺のやり方を貫く事だ。
それでダメなら…その時は仕方ない。
ただ、ここで彼女の言う通りにして流されるよりも、自分の好きにして死んだ方がまだマシに思えた。
いや、生き残ってみせる。そしてレヴィも俺自身も納得させる。
自分の力ってのは、そういう時に使う物だ、そうだろう、レヴィ?
 
「分かったよ。但し、やり方は俺に任せて貰うぞ」
「だから最初からそうしろって言ってんだろ唐変木」
 
俺はレヴィの身体をうつぶせに転がすと、読書灯の側に置いてあったカッターナイフを取り出した。
 
「お、おい」
「身体に傷つけたりしないよ。心配するな」
 
レヴィの身体に刃が触れないように気を付けながら、ボンテージスーツの背中の編み上げ部分を切り裂いた。


16 :ボンテージ5-1:2006/12/30(土) 00:46:54 ID:wNwd7TiN
「ちょっと待て、お前それじゃ着てきた意味が…」
「俺の好きなようにやるって言っただろ」
 
蜘蛛の脚みたいな黒革の紐を、丁寧に時間をかけて両断していく。
一本ずつ解かれていく内に露わになっていく、レヴィの背中。
ここに来てから一年の間、俺は敵に向かって先陣を切って駆けていくこの背中をいつも見てきた。
およそ女らしくないゴツい筋肉の付き方をしているくせに、骨と肉の描く曲線は紛れもない女のそれだった。
ずっと触れたくて、でも届かなくて。
最後の一本を切って革の拘束が解かれた瞬間、レヴィの身体が少し緩んだ気がした。
 
「入らないのに無理して着たのか?」
「うるせえ大きなお世話だ」
 
背中にキスしてやると、小さく身を震わせた。
身体のどこからか匂ってくる、甘い香り。
香水なんか使ってなかった筈だけど…
更に背中へのキスを繰り返した上に舌を這わせると、堪らずレヴィが身をよじらせた。
 
「よせよ、汚いんだ…」
「うるさいな、俺の勝手だろ」
「違う、この服がヤバいんだ」
「どんな風に?」
「…その…ローワンの所から出ていく時に、売り飛ばすつもりで持って来たまま、ずっと使ってなかったんだよ」
「それで?」
「だから…一年以上放っておいてカビやら埃やら偉い事になってるんだ」
「そうか。じゃあ、尚更綺麗にしてやらなきゃな」
「あ、おい…」

17 :ボンテージ5-2:2006/12/30(土) 00:47:50 ID:wNwd7TiN
有無を言わさず、幼児の着替えみたいに無理矢理両腕を上げさせて一気に剥ぎ取る。
革の塊はドレスというより鎧みたいに重くて、堅さも匂いも剣道の防具を思い起こさせた。
レヴィはインナーも何も無しにそんな物を素肌の上に着て、何時間もここにいた事になる。
ああそうか、この香りと味はレヴィの汗なんだ。
 
「おいロック、腹壊しても知らねぇぞ」
「大丈夫だよ。レヴィの汗、こんなに甘いし良い匂いだ…」
「馬鹿野郎、そりゃカビが何か変なモン出してんだ。離れろよ」
 
自分で犯せと言った筈なのに、今度は躍起になって俺の身体を引き剥がそうと藻掻き始める。
しかし何故だか、鎧を外したレヴィの腕力はさっきと比べて随分と軽く感じられた。
後ろ手に掴みかかってくる腕を余裕でかわしながら、背筋に一際強くキスをして、肩を掴んで仰向けにひっくり返した。
 
ベッドの上に、初めて素裸のレヴィが露わになる。
 
普段から露出度の高い服装をしているお陰で、身体の大部分は既に見慣れている筈だった。
刺青の入った肩と首、引き締まった腹筋、走っても自堕落に揺れたりしない太股、俺より太いかもしれない腕。
色気よりも力強さとしなやかさを含んだ、逞しい四肢。
けれど、一糸纏わず全てが晒け出された姿は、紛れもない一人の女でしかなかった。
さっきまで散々ヴァギナを舐めて射精していたくせに、やっと見られた乳房に触れると、また痛いほど勃起した。
局部だけが見える革鎧姿も興奮したけど、これは全然違う。
何よりレヴィの表情が、見た事もないような真っ赤な仏頂面になっている。
同じ無表情でも、俺に向かって犯せといった時みたいな死んだ顔じゃない。レヴィの中の心は死んでない。
それが何より、嬉しかった。

18 :ボンテージ5-3:2006/12/30(土) 00:48:22 ID:wNwd7TiN
「クソ、せっかくお前の為に着て来たのによ…台無しじゃねぇか」
「本当に俺の為だけ、か?」
 
右手の薬指と中指で乳首を挟みながら優しく揉む。
視線は斜め上を向いているままだけど、少しだけ呼吸が変わった。
左側の乳首を軽く吸い上げ、舌で転がす。
AVか何かで見た微かな記憶と自分の欲望をミックスし、自制心の首輪を締めて、大胆かつ慎重に事を進めていく。
レヴィはまだこれといった反応は示さないけど、嫌がっている訳でもない。
それを確認した俺は、また一歩、地雷原の奥に足を踏み入れる。
 
「レヴィ、キスしよう」
「召使いじゃあるまいし、んなもん一々お伺いを立てるんじゃねぇ。勝手にしろ」
「じゃあこっちを向けよ」
「口が上向いていればできんだろ」
「怖いのか?」
「…なっ、何が」
 
適当に見当を付けて、レヴィが頭を乗せている枕の下に手を突っ込む。
あった。いつか映画で見たのと全く同じパターンだ。
俺は枕の下から引っ張り出したカトラスを、無理矢理レヴィの手に握らせて、言った。
 
「怖いならこれを持っていろよ」
「…良いのかよ、お前が危ないだけだぞ。そんな色物プレイ」
「良いさ。撃ちたくなったら撃て。だから、こっちを見てくれ」
 
観念してまともにこっちを見たレヴィが一言、
 
「なあ、今のお前の目の方がよっぽど怖いぞ…」
「ごめん」
「謝るな」
 
唇を重ねて、ゼロ距離で見つめ合う目。
屋台で撃たれた時以来だな、この距離は。
あの時の鋭く勇ましい死んだ犬の目と、恐怖と怒りの混ざった今の目。
どっちも本当のお前の眼差しだとして、その両方見るのを俺に許してくれるのか?
あの時、躊躇わずに引いたトリガーを、また引くのか?
 
「あ…」
 
唇を離した隙に、既に十分濡れている彼女の股間に入っていく。
反射的に両脚が閉じて、何があっても逃げられないように俺の身体を縛り付けてしまう。
それが映画でよく見る快感の証なのか、単に怖くてしがみついたのかは、分からない。

19 :ボンテージ5-4:2006/12/30(土) 00:49:06 ID:wNwd7TiN
「レヴィ、動くよ」
 
撃鉄が、起きる音。
無意識に指がそう動いたのか、レヴィがこれは違うんだと言うように首をわなわなと振る。
分かってる。別に良いさ。それとも何かイヤな物を思い出しているのか?
しかし今の俺には、想定より早く登り詰めてしまう可能性の方が重大な懸念事項だ。
そっちの方向で失敗して撃ち殺されるって事は無…あるかもしれないし。
 
爆弾解体みたいに、慎重に、緩い加速度で腰を押し込む。
 
レヴィの息が煙草臭い。肺の奥底から出てきたような吐息。
カチカチと鳴っているのは歯じゃなくて、カトラスの十字架だろう。
震えて鳴っているという点では、どっちでも同じだけど。
明確な拒絶の意思表示が無いのを確認して、入れたのと同じ速度でペニスを抜いていく。
 
「痛くないか、レヴィ?」
「うるせえ…生娘みたいな事言ってんじゃねえクソバカ…」
 
焦る心を抑えて、緩慢なピストン運動を継続させていく。
気持ち良い。
自分の手でするのとも、風俗の嘘臭く機械的なサービスとも全然違う、
俺自身の快楽優先で気を抜いていたら、即、全てを出してしまいそうになる。
快楽を求めながら、ひたすら自制心と頭をフル回転させて、欲望の爆発を寸前で抑え続ける。
セックスって、こんな修行みたいな物だったっけ?本当にみんな、こんな事しているのか?
 
「よせよ…正常位なんて…感じないって言っただろ」
「本当か?」
 
両方の乳首をわざと強めにつまんでやると、もう隠しようのないくらい派手に声を上げた。
一気に畳みかける様に、全力でレヴィの上半身にキスの雨を降らせる。
最初は軽いキスの速射から、段々吸う力と続ける時間を大きくする。
そうして肌に幾つもの印を付けてから、舌を使って面で制圧する。
唾液とキスマークを塗りつける事で、レヴィの領地を少しずつ奪い取っていく。
俺の領地が広がっていくにつれて、レヴィの息づかいと反応が強くなっていった。
そんな彼女を抱いているのが、嬉しくもあり、辛くもある。
多分、愛しいって感情は、こんな感じなんだろう。
それを言葉にして伝えたい。今、すぐに。

20 :ボンテージ5-5:2006/12/30(土) 00:49:41 ID:wNwd7TiN
「レヴィ、俺は…」
 
額に冷たい銃口が突き付けられた。
 
レヴィは何も言わない。言えないのかもしれない。
変な気分だ。危険なのは俺の方なのに、明らかに追いつめられているのは彼女だと分かる。
銃じゃ解決しない事もある。分かっていても、もう彼女が頼れる物はそれしかないんだ。
だから、俺は最後の地雷を踏む。
 
「俺は、お前を愛している。レヴィ」
 
もう一度唇に深いキス。腰を存分に振りながら。
上も下も、隅々まで互いの身体が張り付いて離れない。
むしろレヴィがトリガーを引いて、このまま死んだら最高だと思う。
さあ撃てよ。もう銃口を逸らしたりしないから。
だけどレヴィは必死に唇を引き剥がし、足りなくなった酸素を一気に吸い込んで、叫んだ。
 
「…ロック、ロック、ロックっ!あああっ!!」
 
叫びと一緒にカトラスがどこかに飛んでいき、レヴィの両腕が初めて俺の身体を強く抱いた。
今度はレヴィの方から俺の口を塞いでくる。
求める物の全てはここにあり、他の物は目にも入らなかった。
レヴィが俺を受け入れ、求めてくれる。
他はいらない。何もいらない。

21 :ボンテージ5-6:2006/12/30(土) 00:50:21 ID:wNwd7TiN
数え切れないくらい舌が絡み、全身の皮膚が擦れ合う中で、レヴィの膣が鋭く、激しく震えた。
それが限界だった。
俺の中に残った全てを、確実にレヴィの一番奥に届くように叩き付け、注ぎ込んだ。
繋がったままの口の中で、二人で声にならない叫びを上げた。
機械のように動き続けた身体がやっと止まり、だらしなくレヴィの上に覆い被さってしまう。
こういう時、男は女に気を使って体重を乗せないようにするとか聞いてたけど、そんな余裕は無かった。
腰や腕が止まった後も、互いの舌だけがしつこく絡み合って離れない。
どっちが先に離れる気配もなく、今まで触れ合えなかった鬱憤を晴らすように、延々と唾液を混ぜ続けた。
離れるには、俺が一方的に全ての唾液を飲みきってしまわなければならなかった。
唇が糸を引いて遠ざかり、密着していた皮膚も全て剥がれ、最後に深く刺さっていたペニスが引き抜かれた。
お約束のように、ヴァギナから白濁液がだらしなく流れ出る。
その光景の主が赤の他人であるAV女優や男優ではなく、レヴィと俺自身である事実が、堪らなく心地よかった。
 
しかし、二人がかりで暴れてすっかり寝乱れたベッドの上で、彼女は静かに泣いていた。
 
自分から犯せと言った女を、なるべくレイプにならないように抱いたつもりだし、実際そうなった筈だった。
それが、この状況で両手で目をふさいで少女の様に泣かれてしまうと、紛う事なきレイプ現場そのものに見えてしまう。
一度は高まった満足感も、そんな彼女を見ている内に消え去っていった。
後に残ったのは戸惑いと、ただひたすらに涙を止めたいという想いだけだった。
 
「レヴィ、一緒にシャワーを浴びよう」
 

352 :ボンテージ6-1:2007/01/31(水) 23:21:13 ID:CJgLWGZ1
狭い風呂場に二人で座ると、想像以上に窮屈に感じる。
風呂場と言っても独居用の単なるシャワールームで、座って身体を洗う広さなんて最初から確保されてなかった。
それを風呂場と称しているのは単なる気分の問題でしかなく、
今レヴィが座っているプラスチックの腰掛けも、泥棒市で見つけたガラクタを自分で磨いた物だ。
タイの暗黒街で犯罪者なんてやっている今でも、生活様式だけは変えられなかった。
将来、それなりに一財産貯まった暁には、まず広い日本製の風呂場を作るのも良いかもしれない。
 
そんな事をダラダラと話しながら、レヴィの長い黒髪をせっせと洗っていた。
 
こっちが幾ら話しても、レヴィはひたすら無言のままで、鏡に映る顔も俯いて表情は見えない。
おまけに時々大きくしゃくり上げて肩を震わせる。
シャワーの湯を頭の上からかけてやると、黒髪がぺたりと延びて日本人形みたいになった。
 
「…馬鹿野郎が」
 
低く、押し殺したレヴィの呻きが風呂場に響いた。
 
「誰が馬鹿だって?」
「お前以外に誰がいるんだ。耳と目を両方落としたのかヘレン・ケラー」
 
良かった。態度はともかく、中身は普段のレベルにまでは戻っている。
あのまま落ち込みっぱなしになったら、本当に手の打ちようが無かった。
多少は予想していたけど、泣くなんて反応は正直想像以上だった。
一体どこまで、レヴィの奥底をひっくり返してしまったのだろう。
 
「確か、ヘレンは口も聞けなかった筈だけど」
「だったらあたしがその減らず口を止めてやっても良いんだぞ。生憎サリバンはここにゃいねぇから余所で探しな」
「それに、馬鹿でもなかった」
「そうさ、今のお前に比べりゃよっぽどクールだった。あのアマは自分の役割と居場所を知っていたからな」

353 :ボンテージ6-2:2007/01/31(水) 23:22:23 ID:CJgLWGZ1
レヴィは時々鼻をすすり上げながら、気丈にいつもの口調を取り戻そうと言葉を重ねる。
多分、どん底から復帰するなんて経験は一度や二度じゃないだろう。凄い勢いで心の再構築が進んでいるに違いない。
もし、このまま適当にやり過ごせば、今日の事は何となく通り過ぎて、その内忘れ去られるのだろう。
そして、いつもと同じ日々を過ごしていく。いつか来る、野垂れ死にするその時まで。
もしかすると、その方がレヴィにとっては楽なのかもしれないし、いわゆるそれが「クール」って奴なのだろう。
でも、俺は嫌だ。
必死の思いであそこまで言ったのに、これで終わりなんて御免だ。
だから…取り敢えず、ヤニだらけでろくに泡も出なかった長い髪に、二回目のシャンプーを塗った。
他にできる事が思い付かなかったから。
 
「俺には、この街の何も見えて無いし、何も聞こえていない。そう言いたいのか。レヴィ」
「それだけならまだ只の間抜けで済む。お前は自分でわざわざ自分で自分の命を捨てようとするから、尚更始末が悪い」
「命知らずなのは、お前も同じだろう」
「うるせえ。あたしの事はどうだって良いんだよ。死ぬも生きるも自分で決めるさ」
「そう言われても、俺はどうでも良くないんだけどな」
 
シャワーで泡を完全に洗い落とすと、レヴィの頭に天使の輪が現れた。
 
「だったら、余計な事考えずに、お前があたしの言う通りにしてりゃ、それでみんなノープレブレムさ」
「で、俺にお前をレイプしろってのか?お断りだな」
「あれは…他にどうすれば良いのか、思いつかなかったんだ…」
「分かっているさ。気にするな」
 
ポン、と軽く頭を叩く。そんな感じで流さないと、どこまでも重くなりそうになる。
ついでにボディソープを背中に塗りたくって、思い切りスポンジで擦ってやる。
そう言えば、ずっと昔、従姉妹を風呂に入れた時を思い出す。あの子は今、中学生だっけか。

354 :ボンテージ6-3:2007/01/31(水) 23:22:55 ID:CJgLWGZ1
「…ロック」
「ん?」
「あの二人は…小娘とサムライ野郎は、何を目指してあそこまで来たんだろう」
「まさか本気でホテルモスクワに勝てるとは、思ってなかっただろうな」
「あたしには、日本人の考えもヤクザが振り回すジンギとやらも分かんねぇ。
 だがな、そんな物に取り憑かれて、その上生き延びようなんて考えた途端に、
 地獄へ真っ逆さまだ。その事だけは分かるんだ」
「それで大体合っているさ。間違ってない」

背中から肩へ、泡の面積を徐々に広げていく。
さっき散々舐め回しておいて何だけど、頑丈な骨格の隙間に筋肉がきっちり詰まっていて、
本当に男みたいな背中だった。
 
「あたしが我慢ならないのはな、お前がそれを理解しているくせに、奴らと同じ道を平気で歩いている事さ」
「俺が?」
「まるでカンボジアで物見遊山するWASPみたいに、訳知り顔で地雷の上を歩いておっ死にやがる」
「幾ら何でもそこまで馬鹿じゃないさ」
「お前が姉御に食ってかかったのと、あいつらのバンザイアタックは、飛び込む崖の高さとしてなら似たような物だろうが」
「でも、俺はきっちり生きている」
 
脇の下、二の腕、肘、と丁寧に擦っていく。お姫様みたいになすがまま、力が全然入ってない。
 
「大体レヴィ、お前だって立派な『歩く死人』だろ?何が違う」
「違うな。あたしや姉御とは、命の捨て方が違うんだ。根本からズレている」
「どう、違うんだ」
「例えば、あのサムライ野郎も、本来はあたし達と同じ生き物だった。
 命を捨てるべき場所と、そうでない場所を嗅ぎ分ける嗅覚を持っていた筈だ」

355 :ボンテージ6-4:2007/01/31(水) 23:23:26 ID:CJgLWGZ1
腕をレヴィの前に廻して、腹を擦る。
円の軌道でスポンジを動かす途中、中指でヘソを軽くなぞった。
ほんの一時間くらい前に、思う存分キスした所。
 
「それがあんな下手を打ったのは、あの小娘が原因さ。あれが舵を握って方向を変えちまった。
 お前はな、あれと同じ真似を繰り返して、たまたま上手く行っているだけだ」
 
敢えて胸を無視して、脚を先に洗い始める。
腕を伸ばしたせいで、俺の身体が少しずつレヴィの背中に触れ始めた。
 
「だけど、お前はそんな俺に付いて行くって言った」
「…ああ、言ったさ」
「それでも、おれのこういうやり方は、嫌なのか?」
「ロック、お前のその何というか…優しさは、邪魔なんだ。ましてそれをあたしにぶつけるなんて、最悪中の最悪だ。
 他の誰かにってんなら好きにすりゃ良い。だけど、あたしには余計さ」
 
背中の冷や汗と共に、胸の辺りがごっそり抜け落ちるような喪失感に襲われた。
無論、覚悟はしていた。けど、実際に言われると後悔と自責の念で狂いそうになる。
 
「そうか…ごめん、やっぱり嫌だったのか」
「い、いや、そうじゃねぇ!そうじゃねぇんだ!ただ…不安なんだ」

356 :ボンテージ6-5:2007/01/31(水) 23:24:00 ID:CJgLWGZ1
俺は言葉を待ち、レヴィは言葉に迷い、長い沈黙が続く。
頭の中で色々考えを巡らしているらしく、小さくブツブツ呟いては小首を傾げてを繰り返し、数分してやっと口を開いた。
 
「つまり…だな、お前とお綺麗なファックして、それでハッピーな脳内ドラッグキメた途端に…
 そう、どこからともなく銃弾が飛んでくる、そんな気がしたんだ」
「あの二人みたいに、地獄へ真っ逆さまになるのが、怖いのか?」
「あんだけ強かったサムライ野郎は、それで死んだんだ。あいつらはな、綱渡りの綱から足を踏み外した、あたし達そのものなんだよ。
 だから…だから、とにかくお前は悪くない。お前の優しさを受け止める自信がないあたしが悪いんだ」
「…」
「要するにロック、お前がそんなにヘコむ必要は無いんだ。分かるな?OK?」
 
不安。レヴィの心の中で生まれた不安。
その不安を振り払う為に、あんな革鎧着て、俺にレイプしろなんて言い出すのか。
こいつは今までの人生でずっと、そうやって暗黒の中に飛び込んで藻掻き這い上がって、恐怖を克服してきたのか。
俺の方こそ、涙が出そうになる。
でも、今はダメだ。今俺が泣いたら、全てが台無しになる。
  
「レヴィ、お前の銃は何の為にある?」
「決まってんだろ、生き延びる為だ」
「ただ生きるだけなら、他にも方法はあるだろう。どんなに惨めでも、もっと確実な方法が」
「冗談じゃねぇ、誰がそんな…」
 
いつものギラついた力が、レヴィの身体に戻って来るのが分かった。
スポンジを手放して、強く握り締められた彼女の右拳を俺の手で包んでやる。
微かな震えが走って、また力が抜けていった。
大丈夫、今のお前は惨めなんかじゃない。天下無敵のレヴィ様だ。

357 :ボンテージ6-6:2007/01/31(水) 23:24:31 ID:CJgLWGZ1
「そうだな、レヴィ。そんな生き方から逃れる為の、銃だ」
「何が言いたいんだ。即席カウンセラーにでもなったつもりか」
「そんなんじゃない。こいつは手軽な哲学さ。生きるべきか死ぬべきか」
「アホか。尚更タチ悪いじゃねぇか」
「言葉は、邪魔か?」
「…さあな」
 
握り締められたレヴィの右拳に指を挿し入れて、ゆっくり開いていく。
すると案外あっさり手が開いて、自然に俺の指と絡み合った。
 
堰が、開いている。
 
勢いにつけ込んで、洗い残していた胸に左手を伸ばす。
泡まみれの手で、乳房を念入りに洗っていく。
乳房を揉むのと同じリズムで、俺とレヴィの右手が強く握り合う。
鏡に映るレヴィの目は閉じられていて、表情は伺えない。
それでも、汚れが落ちていくのと比例して息が荒くなっていき、新しい快感が彼女の身体に浸透していくのは分かった。
 
「俺がここにいるのも、お前が銃を握るのも、それは自分の為だ。そうだろ」
「今更…何言ってやがる…あたしの銃は…もうあたしだけの銃じゃ、ないんだ…」
「それも含めて、自分の人生さ」
「ロック、お前…」
 
振り向いたレヴィにキスしながら、重なったままの右手を、そのまま彼女の股間に伸ばす。
 
もう何の躊躇いもなく、お互いに舌を絡ませる。
レヴィの膣に指をゆっくり埋め込んで大きく回し、残っている精液を掻き出す。
そのまま陰唇と膣壁と小さな突起を丁寧に揉んで、乳房と一緒に思う存分可愛がる。
次第に振動が速まっていく俺の右手を、レヴィの右手が強く握り続ける。
既に起立し切っていたペニスがレヴィの背中に何度も当たり、その度に漏らす彼女の小さな吐息を、俺が飲み込んでいく。
 
頃合いを見て、親指と人差し指の腹でクリトリスを強く挟んだ瞬間、レヴィの叫びが口の中で爆発した。

358 :ボンテージ6-7:2007/01/31(水) 23:25:18 ID:CJgLWGZ1
しばらく余韻を味わってから口を引き剥がすと、レヴィは笑っているようで泣きそうな、でも何かを請願する目をしていた。
これが切ない目っていう奴なのか。
 
「お前が銃でやったように、俺も自分の力でやりたい事するよ。お前を抱くのも『お綺麗なファック』でしか、しない」
「バカが…お前みたいな頭でっかちに…できるもんか…死ぬぞ」
 
しゃぶり付きたくなる目をしているくせに、口からはいつもと変わらない罵詈雑言が流れ出す。
そんなこいつが、心から愛しくて仕方ない。
 
「死んでも良いさ。俺は自分のやり方を曲げないって決めたんだ」
「…冗談じゃねえぞ」
 
突然、鞭のようにレヴィの身体が鋭く跳ねて、俺を突き飛ばした。
狭い浴室の壁に思い切り背中を叩き付けられ、肺から空気が溢れる。
一瞬目眩がした直後に、鼻が触れ合う距離までレヴィの顔が近づいていた。
顔は真っ赤で、目は切ない色のままだった。
 
「散々偉そうに言うだけ言っておいて、あいつらみたいに死んでも良いだと?ふざけやがって!」
 
レヴィの両腕が俺の肩を万力の様に固めて、微動だに出来ない。
ああ、そうだ、何をどう言っても、基本的には俺はこいつに敵わない。
しかしそれでも俺は、自分を曲げたくない。
 
「さっき、レヴィだって死んでも良いって言ったじゃないか。同じ事だよ」
「そんなのはな、タフなな奴だけが吐ける言葉だ」
「そうだな。多分、お前が側にいないと、そう遠くない内に死んじまうだろうな」
「…クソッタレが。テメェはあの小娘以上の腐れ脳味噌だ!」
 
地位やら世間体やら、そんなのを振り捨てれば、男の願いなんてたかが知れている。
好きな事して、好きな物食べて飲んで、好きな女といられれば、それで良い。
途中で死んだらしょうがない。そんな人生。結構じゃないか。
出来れば、死ぬ時はレヴィを巻き込みたくないけど、そう都合良くは行かないんだろうな。

359 :ボンテージ6-8:2007/01/31(水) 23:25:52 ID:CJgLWGZ1
「まあどうせ、死ぬ時は一緒さ。お前がそこまで付いてくるならな」
 
でも多分それは、ろくでもない死に方になるだろうけど。あ、それが嫌なのか?
 
「『死ぬ時は一緒』だと?それじゃ納得できねぇな」
 
そりゃそうだな…と言いかけた時、髪をふん掴まれた上に、頭を壁に押し付けられた。
何だか、色々な事が一遍に起きたこの数時間の、振り出しに戻ってしまったような錯覚に襲われる。
部屋に入ってすぐのホールドアップから、レヴィに暴力的に責められ、次は俺が彼女を力づくで優しく抱いて、そしたらレヴィが泣いて俺が洗ってやって。
更にその前は、トイレでレヴィのボンテージ写真で抜いてしまって…
しかし不思議な事に、昨日までの俺達と今の俺達は、何かが大きく変わったようで、実は何も変わってない気がした。
 
「あたしに誓え。死ぬ時は絶対に、あたしより後に死ぬと」
 
俺達の感情はずっと前から同じで、それを確認し合うのに、途方もない手間と偶然が必要だっただけなのかもしれない。
 
「ああ、分かった。誓うよ。どんな汚い真似をしても、コンマ数ミリ秒でも、お前より長生きする」
「良いか、真鍮のイエス像でも金無垢のブッダ像でもない、正真正銘生きている、このあたしに誓うんだ」
「誓うよ。約束する」 
 
空から絨毯爆撃食らうとか、予想もしない爆弾が炸裂するとか、床屋で銃撃されるとか、kmクラスの長距離狙撃をされるとか、
無数の避けられない「死」のパターンが想像できる。
でもきっと、どんなパターンでも隣にはこいつがいて、全力で俺を護る。
多分、俺の人生最後の仕事は、死にゆくこいつの顔を見届ける事になるだろう。
 
「それにしてもロック、お前は酷い悪党だな」
「何だよ、いきなり」
「どうして、あたしの方から、アホみたいなお約束を、お前にお願いするハメになっちまったんだ?」
「正直、俺にも良く分からない」
「その天然っぷりが最悪なんだ。その内何かとてつもない馬鹿騒ぎを引き起こすな。賭けても良いぜ」

360 :ボンテージ6-9:2007/01/31(水) 23:26:25 ID:CJgLWGZ1
「良い悪党になれるってのは、姉御にも言われたよ」
「そりゃ結構だ。嬉しいか?」
「でも、お前に言われた方が嬉しいな、レヴィ」
 
ケッと言い捨てて、レヴィが俺の髪を放した。
死に絶えた毛根の数が気になる俺を尻目に、レヴィが御丁寧に風呂腰掛けに座り直す。
そのまま黙って動かない。
 
「何やってんだ?最後の仕上げが残ってんだろ?」
「…ああ、そうだな。悪かったよ。お姫様」
 
シャワーで身体の泡を全て流すと、汚れもヤニも落ち切った肌に、長い黒髪が光る。
何も喋らず、肩に禍々しい入れ墨の入った後ろ姿は、切手か何かで見た美人画より断然美しかった。
 
「レヴィ」
「ん?」
「綺麗だよ」
「分かり切った事わざわざ言うなボケ」
 
風呂場から出て、バスタオルで拭いてやる頃には、もうレヴィの涙は跡形もなく消えていた。
それどころか、もうどうしようもない事になっている俺の股間に、笑いながら手を伸ばしてくる。
気を抜くと派手に爆発しそうなの自分の分身を抑えて、隙だらけのレヴィの額にキスする。
それを合図にごく自然に抱き合い、肌を合わせる。
額から瞼、鼻頭、頬、最後に唇にキスした所で、レヴィは俺の首に腕を廻してくる。
そして、それはこっちの狙い通りのポジションだった。
 
「レヴィ、そのまま力抜いて」
 
返事を待たずに、素早く彼女の膝裏に腕を伸ばし、身体を落とさないように気を付けながら、一気に持ち上げる。

361 :ボンテージ6-10:2007/01/31(水) 23:27:29 ID:CJgLWGZ1
「ふえっ??」
 
見事にレヴィが宙に浮いていた。狭いスペースでぶつけないかが一番心配だったけど、どうしても、これがしたかった。
後は、この荷物を抱えて再び純白の舞台に戻るだけだ。
 
「ちょっロックお前何のつもりだ!」
「お姫様は大人しく運ばれなさい」
「自分で歩けるから下ろせよ!」
 
腕の中で暴れている間、動かないで、ただ顔を見つめていた。
こうしていると、本当にだだっ子の妹みたいだった。
やがて、どうあっても俺が下ろさないと分かると、すぐに大人しくなって元の姿勢に戻った。
 
「何だよ、どうしても、これで行きたいのかよ」
「…すまない」
「勝手にしろ。ぶつけんなよ」
 
これがハリウッド映画なら、俺が筋肉ムキムキ男で、レヴィが細身のブロンド女にでもなるんだろう。
けど現実は、俺より断然強い筋肉女を、死ぬほど踏ん張りながらお姫様抱っこしている状況だ。
バランスを崩さないように、一歩ずつゆっくりベッドに近づく内に、レヴィも風呂場で見せた切ない表情に戻ってきた。
今すぐ、セックスしたい。
ずっとすれ違っていたお互いの願いが、やっと一つに収束したみたいだった。

362 :ボンテージ6-11:2007/01/31(水) 23:27:59 ID:CJgLWGZ1
シーツの上にゆっくり下ろすと、レヴィは無防備に全身を晒したまま、俺の耳元に囁いた。
 
「ロック、最後にもう一度聞かせてくれ…絶対に、約束を守るな?」
 
俺は一回だけ大きく頷いた。重ねる言葉はもう見つからなかった。
 
「OK、OK。約束を守る良い子には、ご褒美をくれてやらなきゃな」
 
レヴィの両手が、俺の頬に優しく触れた。
 
「ロック、お前を、愛してやるよ」
 
唇を薄く開いて静かに目を閉じたレヴィを、強く抱きしめた。
 
 
 
何の恐れも気後れも無く、疑いもなく。
 
数え切れないくらいのキスと、射精と、絶頂と、お互いの名前を積み重ねて。
 
力尽きて何分か眠り、先に起きた方が相手の身体を弄んで起こす。その繰り返し。
 
機械みたいに動きっぱなしで止まらない腰。
 
背中を掻きむしる爪。闇の中で潤んで光る瞳。緩く噛んだ耳。
 
下にして下にされて、全てを見せられて、全てを奪い尽くして。
 
鳥の声と太陽の光が届いたのは分かっても、止めようという意志も言葉も無かった。
最後の射精が終わった時には、人としての言葉を亡くした動物になっていた。
意志の疎通と呼べる物は、唸り声と指と舌の触れ合いだけだった。

363 :ボンテージ6-12:2007/01/31(水) 23:28:38 ID:CJgLWGZ1
開いた窓から、潮風が吹き込んでくる。
 
街からは相変わらずの嬌声と銃声が止まず、そこにアクセントのようにパトカーのサイレンが走り去っていく。
ベッドサイドの時計を見る。何だもうすぐ昼じゃないか。仕事の予定はないけど大丈夫かな?
怠い身体を動かすと、節々が痛い上に、何だかシーツが滅茶苦茶に汚れている。
そうだ、俺、あれからずっとレヴィと…でも、隣にいない。
 
「よう、お目覚めかい、ジャパニーズ」
 
何故気が付かなかったのか、レヴィは俺の真っ正面、ベッドのすぐ側にいた。
電気を点けなければ昼間でも暗い部屋の中でも、そこはちょうど窓からの光が注ぎ込む場で、
素裸の上に俺のワイシャツ一枚だけを着て、今更何を恥じらう事も無い感じで立っていた。
太陽の光を浴びてこっちを見る彼女は、散々セックスを重ねた情婦というよりも、まるで教会の聖像のように見えた。
 
「どうせお前は、こういうのがお好みなんだろ?色男」
 
少し強い潮風が部屋に吹き込んで、カーテンとレヴィの髪が揺れる。
糞溜で悪徳の街のロアナプラの数少ない名物が、この熱帯の港町に相応しい潮風と太陽だった。
その二つを身体全体で受け止めながら、レヴィはコーヒーカップを持って微笑んでいる。
それは銃弾も血も策謀も無く、俺達だけがいる世界で、
数分と持たないけど、嘘みたいに平和で、完璧な時間だった。
 
 
「ああ、本当に最高だよ。レヴィ」
 
 
もう必要の無くなった黒い革鎧が、部屋の隅で見る影もなく残骸を晒していた。

364 :ボンテージ6-13:2007/01/31(水) 23:29:16 ID:CJgLWGZ1
俺達は、間違いなくこの街に住んでいる悪人共の一員であって、
これからもレヴィは人を殺しまくるだろうし、俺は時々偽善を蒔きつつ、あらゆる悪事に荷担していくだろう。
しかし、それがどれだけ汚れた人生であっても、一週間に一回、いや二週間に一回くらいで良い、
こんな時間を過ごせる女と一緒なら、走り抜いて行ける。
自分達だけの天国と、他人の地獄を往復する人生は、いわゆるこの世の悪の極みかもしれない。
でも俺は、悪だろうが偽善だろうが、こいつと一緒に生きられるなら、何だって構わない。
この時間を守る為なら、悪党でも何にでもなろう。
いつか来る、野垂れ死にするその時まで。
 
 
それが、俺の振った賽子の出目なのだから。
 
 

365 :ボンテージ6-14:2007/01/31(水) 23:30:18 ID:CJgLWGZ1
 
 
 
 
「よう、後で屋台にガイヤーンでも食いに行こうぜ。お前は散々出した分、肉食わないとな?」
「あ、ああ…そうだな…」
「この底なし野郎が」
 
 
 
 
*数日後*
 
「で、ロックとはヤったのか?ヤったんだろ?」
「言いたくねぇな」
 




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