32 :へたれパシリ:2007/01/01(月) 01:01:18 ID:CenK63v0
「ふぅ・・・」

「ロック、どうした?まだ帰らないのか?」

夕闇がこの事務所を飲み込んでいく時間になってもロックはソファに留まっている。
レヴィは仕事が無いならと昼過ぎに自分の酒の買出しに行くと言い残し帰っていった。
ダニーもつい先程まで事務所に居たのだが、マシンのメンテが終わったからとチャルクワンの市場に。

「働き者の日本人にはこういう時間は苦痛か?それともまたレヴィともめた・・・」
と、ダッチがレヴィの名を口にした途端ロックは、言葉を遮る様に問い掛けた。
「なぁダッチ。最近レヴィの様子がおかしいとおもわないか?」
「おかしいって?お前が怪我をした日の事を言ってるのか」
ダッチがロックの半袖の右腕から覗く包帯を見ながら言う。

「それもそうなんだけど、その前、あれは・・・・・そう、日本から帰って来た時ぐらいからだと思うんだ」
両膝の上に両肘をつき、手を眉間の前で組みながら、教会で懺悔するような格好で思い出していた。
「仕事で車に二人の時や、イエローフラッグで飲んだりしてると時々俺の顔をじっと見つめて黙り込むことがあるんだ。
その顔があの時の・・日本の屋台で見たときの目と同じなんだ」
「・・・・・・・・」
ダッチはここ最近のレヴィの異変に気付いてはいた。それが今ロックが言った時期からだという事もとうに知っていた。
一緒に日本に行っていたロックでさえも、今思い返して気付いた様な小さな変化だ。
そしてそれが誰の目からもはっきり『変化』とわかる事が起こった。

33 :へたれパシリ:2007/01/01(月) 01:02:50 ID:CenK63v0
それはついこの間、暴力教会が新規に回す武器を陸路で輸送中の時だった。
目的地到着寸前、その客の敵対勢力が数にまかせてラグーン商会の面子に襲い掛かった。
いくらレヴィやダッチ、エダの腕がたつといっても、荷を守りながら、しかも得意の水上でない以上、多勢に無勢の感は否めない。
車を降りて応戦していたが、しびれを切らしたレヴィが突撃しようとしたとき背後に伏せていた敵が彼女を狙った。
ダッチやエダは気付いたが彼等の方にも新手が現れ、手を貸せる状況ではない。
「レヴィ!!」
叫んで飛び出したロックが走りこみレヴィを抱え地面に転がる。
「ロック!お前は車ン中隠れてろって言っただろ!!」
彼女が自分を抱え込んだロックに向けて怒鳴りながら彼の手をどけようとした時、ヌルっとした液体に触れた。
ロックの右肩あたりから白いシャツがみるみる赤く染まっていく。
「オーライだ。かすりキズさ、問題ないよレヴィ。お前は大丈夫か?」
そう笑顔で言うロックの額には冷や汗が浮いていた。
「ロッ・・・ク」
ワイシャツに拡がっていく血を見つめ彼の名を口走ると、目の奥に一瞬にして怒りの炎が灯った。

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!テメェ等皆殺しだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「待て!レヴィ!」
ロックの声と体を振りほどきカトラスを両手に憤怒と憎悪の女神、いや鬼神は辺りを血の海に変えていく。
ルアク達を葬った時もレヴィの闘いに驚嘆したものだったが、今回のそれは戦慄。
恐怖こそないものの身震いを止められなかった。

34 :へたれパシリ:2007/01/01(月) 01:04:23 ID:CenK63v0
最後に残った敵のボスの前でレヴィは仁王立ちしている。相手は腰が抜け銃を捨てた両手であとずさる。
ロックが肩を押さえながら近づいて、レヴィに声をかけ様とした時、スゥーっと両手が上がりカトラスを構えた。
一発。 二発、三発、 四発五発六発七・・・・・交互に左右の銃から同じ箇所目掛けて撃ち込まれる。右肩一箇所に。
何発目で相手が死んだのか、もうそれが肩なのか体なのか腕なのか形がわからなくなるほど撃ち込んだ。
「お、おいっ、レヴィ!もういい。もう終わったんだよ」
ロックが羽交い絞めにして止めようとするが、振りほどかれカトラスを向けられた。
「うるせぇ!、黙ってろ!」
そう言うとまた向き直り同じ所を撃ちはじめた。ダッチとエダが諭したり、からかう事もなく皆その光景をじっとみつめていた。

幸いロックのキズは浅く、弾丸は貫通しているものの簡単な応急処置で出血は治まった。
レヴィはロックの手当てをしながらいつもの調子に戻って、
「柄でも無ぇ事すっから、余計なケツの穴こさえる事になるんだぞバカロック」
とウンザリ顔で呟く。
「しょうが無いだろ。体が勝手にうごいちゃったんだから」
「またお前の趣味か?」
「そうなのかもな」
「・・・ロック。前日本で言ったよな『私はあんたの銃だ』って。一応まだ有効だから私がどうなろうと一々気にするな。
銃が壊れたら新しい銃に換えればいいんだ。・・・それだけさ、OK?」
「そうはいかないよ。レヴィは大事な相棒だ。そうだろ?」
刹那、そうほんの一瞬レヴィの表情が緩む。そんな気がした。
「相棒?笑わせるなホワイトカラー。そんな大口叩くンならまず拉致られ癖直せってんだ」
そういって最後にパンと平手で傷口をはたかれた。
「そら、終わったぜベイビー」
「いっ、痛っ〜〜!やさしくしてくれよ」
ケタケタ小気味良く笑いながらレヴィは、
「わかった、わかった。お前の初めての時はやさしくしてやるよ。レディ」
「そういう意味じゃないよ〜。何考えてるんだよ。ったく・・」

35 :へたれパシリ:2007/01/01(月) 01:06:17 ID:CenK63v0
さっきの修羅場とは別人の様なレヴィの様子見てダッチは考えていた。
レヴィが戦いの中荒れる事は今までもあった。そんな時レヴィは光を宿さない目で、感情をもっていないかの様なその目で、
無表情に無差別に獲物を平らげていった。快楽殺人者の様に。
だがこれほどあからさまに憎しみの感情を剥き出しに表現したのはこれが初めてと言ってもいい。
ダッチやベニー、ラグーンの仲間に危険が迫った時、その状況を愉しむかのように敵を蹴散らすレヴィ。
殺人機械のメイドに一発喰らった時でさえ、やられたからやりかえさないと気がすまないといった類のものだ。
今回のはまぎれもない怒りと憎しみ、そしてその瞳に『感情』を映していた。



「ロック、お前レヴィの事どう思ってんだ?」
あまりにストレートなダッチの質問にロックはソファから転げ落ちそうになった。エダでさえこんな聞き方しないだろうに。
「えっ?えっ!いやっ、あの、その・・」
「別にハリウッドのキザったらしいロマンスみたいな意味じゃ無え。あいつの側に立っていられる覚悟はあるかって事さ」
「俺は・・・レヴィのキズを増やすような事しか出来ていない。この前のようにあいつのキズを代わりに受ける事も、あいつは望んでない。
むしろそれはレヴィにとって違う形で傷になる。それでも・・・いや、だからこそあいつの側をはなれたくない。はなれるわけにはいかないんだ」
「オーライ、わかった。だがそのセリフ、充分ハリウッドで通用するぜ」
「ダッチまで俺の事からかうのかい?」
そう言って二人は笑った。

36 :へたれパシリ:2007/01/01(月) 01:07:49 ID:CenK63v0
真顔に戻りダッチが切り出した。
「いいか、ロック。確かにレヴィはこっち側の、血と硝煙とドブの中にいる。腰までドップリと浸かってな。でもそれは仕方ないのさ」
「そこでしか生きていけなかったから、だろ?」
「正確に言えば、生きる選択肢がその世界にしか無かったからだ。生きる事を選んだ時点で道は一つしか無かった」
「相手を殺し盗まなければ道は無いと?」
「ああ、そうだ。お前達日本人からはおよそ想像も出来ないぐらい歪んじまってる所が世界にはゴロゴロあるんだ。
たとえ親兄弟だって今日殺らなきゃ明日自分が殺られる。そんな所だって少なくないんだぜ」
「レヴィもそうだった・・」
潜水艦の中でのレヴィの言葉がロックの頭の中を覆っていく。そしてあの時よりもリアルな輪郭を持ち一言、一言が心臓を錐の様に突き刺していく。
「俺やバラライカ、張。他のヤツも確かにこっち側にいる。だが自分で選んだり逃げ込んだり理由は様々だが、
あっち側の世界を少しは知っている奴がほとんどだ。」
「・・・・・・・・」
「さらに言うなら同じ様な環境だったにも関わらずレヴィはあの双子の様にイかれちゃいないってこった。」
ダッチは続ける。
「なぁロック。レヴィは昔お前をあっち側の人間だからと拒もうとした。だが今もお前の横にいる。何故だと思うね?」
「・・・・・」
「レヴィの中で何かが変わりつつあるのさ。別に愛や希望なんてガラクタを本気で信じるバカ共と一緒になる必要はないが、
心の中のわだかまりや埋まらない穴を塞ぐ手立てを誰かが一緒に探してくれるかも知れないと言う淡い期待が生まれている」
ダッチはアメリカンスピリットに手を伸ばし、一本取り出しロックにも勧めた後、火を点け深く吸い込み一息ついた。
「レヴィ自身その変化に戸惑ってるはずだ。それを支えてやれるのは雇用主の俺じゃない。『相棒』であるお前なんだよロック」
「・・・ああ、わかってる。そのつもりさ」
ロックはダッチを真っ直ぐな目で見ながら、静に力強く答えた。


51 :へたれパシリ:2007/01/02(火) 20:58:29 ID:NFU2s3Uc
「OK。この話、今日はここまでだ」
「じゃ帰るよ。イエローフラッグにでも寄っていくかな」
事務所ビルの階段を降りた出口で壁にもたれていた人影がロックに声をかける。
「残業は終わったのかよ?ホワイトカラー」
「買出しはもう終わったのかい?」
「へっ、暇だから拉致られ癖のある奴と飲めば、撃ち合いの一つや二つに出くわすかと思ってよ」
「直せっていったくせに」
「うるせぇ、いかねえのか?」
「あー、なんかダッチと話してたら飲みに行きたくなったから行こうと思ってたんだ」
並んでイエローフラッグへの道を歩き出す二人。
「なぁ、ダッチと何の話してたんだ?」
「詮索屋は・・」
「バカっ、違うよ。ただ・・なんかすっきりした顔で酒飲みに行きたくなるような景気のいい話だったのかと思ってな」
「んー。俺の居たい場所の話、かな」
「前に言ってた、お前の立っている所に居るとかっていう話か?」
「ああ、俺が『今立って歩いている所』が居たい所だってはっきりしたんだ」
「ふ〜ん、こんな糞溜めみたいな街のどこがいいのかね」
「だから、レ・・・いいよ、後でわからせるから」
「小難しい説教なら教会でも行って、ヨランダばあさんの御茶の相手しながらにしてくれ」
「レヴィ、お前って」
「おっ、着いた。さぁて飲むぞー!」
店の看板が見えるとオモチャを買って貰える子供のように走って先にいってしまうレヴィ。
「はぁ〜、わかってはいたけど勝手な奴だなぁ。」
そんな事を言いつつもロックの顔は穏やかに微笑んでいる。店に入るとカウンターの席からレヴィが呼びかける
「おせぇぞ、ロック。早く飲もうぜ」
「焦らなくても今日はとことんつきあうよ」
「言うじゃねえか。おーっし今日こそ絶ッテー潰してやる!」
「・・・普通に飲まないか?」

52 :へたれパシリ:2007/01/02(火) 21:00:21 ID:NFU2s3Uc



「悪かったよ」
「ン?何か言った?ほら早く行こう」
「分かったから、そんなに引っ張ンなよ。別に逃げやしないよ」
そう逃げたって仕方ないのだ。今向かっているのはレヴィの部屋なのだから。
「だからさぁ、からかって悪かったって。」
「勝負は勝負だろ。さっきは俺の負けだ」
「酒の勝負になるとホント、ムキになるよなお前」
「へっ?何か言った?」
「しかも完全に酔ってるし・・・」
先ほど店で早飲みして負けた時レヴィに、
「こいつを飲みほしたらもう一回勝負受けてやるよ」
と出されたのはスピリタス。いくら酒の強い人間でもジョッキになみなみと注がれたこれを飲み干せる者はそうはいない。
それでもロックは、黙ってジョッキを手に取り飲み始めた。半分まで飲んだ時むせてしまいジョッキをカウンターに下ろした。
むせて咳き込むロックにレヴィは、
「わかったよベイビー、今日は引き分けだ。家で飲み直そうぜ」
「ゲホッ、じゃ、もう一回・・ゴホ、ゴホ勝・負だ・・ゲホ」

レヴィの部屋に着くと酒瓶がズラリと並んでいた。昼間買出しに行った時買い込んだらしい。
「今日はとことん付き合ってくれるって言っただろ。だからゆっくり飲もうぜ。って聞いてんのかよ、おい」
ロックは酒瓶の前でブツブツ言いながら一本、一本ラベルを見ている。その時レヴィの家では見慣れない瓶を見つけて動きが止まる。
『キャプテン・モルガン』と書かれている。レヴィはロックの背中越しにそれを見て、
「なんか店の奴にラムを一通りもってこいっつったら、それも持ってきたんだ。飲んでみるか?」
振り向き黙ってコクコクと頷くロック。なんかこいつガキみてぇだなと思わずレヴィの顔が緩む。
グラスを二つ持ってきて一つをロックに手渡す。注がれた酒を飲んでみるとバニラの様な香りといつも飲むバカルディとは違う甘さが口の中に広がった。
この状態でこの酒はマズイかもしれない。今まで飲んだ強いアルコールがこの甘い香りとともに酔いとして回ってきそうだ。
そして口一杯の甘い匂いに誘われ、惑った思いが揺り起こされ望むべきでない事を言葉にしてしまう様な気がした。
「クソ甘ったるい臭いだ。こんなの飲めるか」
レヴィがそういって他の酒を取りに行こうとすると、ロックに腕をつかまれ引き寄せられた。
「あっ」
こんな女性らしい声が出るのかと、レヴィは自分の喉が発した音を聞いた。
「俺を置いていくなよ、レヴェッカ」
自分と変わらないぐらいの体格だと思っていたロックの腕の中にすっぽり収められ、いつもとは違う呼び方で名を呼ばれ、
体の重心預けていると、不思議な程心が静まっていくのを感じた。
このまま抱きしめかえしたいという衝動を押さえ込んだ時、フッと我に返りロックの腕から離れ言った。
「酔い過ぎだぜ、ロック。どこかの女と間違えてねえか?まぁ名前があってたのは褒めてやるけどよ」
いつもの悪戯っ子のような笑顔でロックを見るレヴィを再び引き寄せ抱きしめながらキスをした。

「レヴィの唇も甘い香りがする」
顔を離したロックが呟く。
「ロッ・・いや、私も酔ってんのかなぁ。こんなホワイトカラーに二度も隙みせるなんて・・・」
精一杯の強がり。軽口も上手く叩けない。子供の頃腐った街でたった一欠片でもいいから欲しいと願ったモノが、
そこにあるかもしれない。でも触れたことがない自分はどうすればいいのかわからない。

53 :へたれパシリ:2007/01/02(火) 21:02:26 ID:NFU2s3Uc
あわてて掴んだら砂糖菓子みたいにポロポロと崩れて掌からサラサラこぼれ落ち、跡形もなくなってしまうんじゃないだろうか。
「レヴィ、俺が酔ってるって言ったらずっとこのままでいてくれるか?」
「お、おうっ。いっ、いいぜ、ママが恋しくなったんだろ、ベイビー」
「ふ〜・・・そうか、そうくるんだったなお前の場合。・・・じゃあ本当の事言うとこれっぽっちも酔ってない」
「へっ?!」
思わず素っ頓狂な声をだすレヴィ。
「いくら飲んでも酔えないんだよ。頭の中がスッキリしちまったからかな。だから抱き寄せたのも、『レヴェッカ』と呼んだのも、
・・・キスしたのも、したくてしたんだ。酔った勢いでも、雰囲気に流されてでもない!」
「お前、自分が何言ってるのか分かってるか?私と一緒に居たいって風に聞こえるぞ。撃ち合いでも役に立たない出来損ないの水夫のクセに」
「ああ、分かってる。そうだ俺はいつだって考える事しかできない。お前は撃ち合うことしか能がないバカだよ。でもそのおかげで俺は銃を持たずに、
この街で生きてる。俺はひたすら考える事しか能の無いバカだ。だったら俺がレヴィの進む道に立ち塞がるモノを突破するための方法を考えて何が悪い」
「それ以上言うと本気にするぞ」
「店に行く前に言っただろ。俺の居たい場所が分かったって。だから『ここ』なんだよレヴィ」
そう言い終わった途端に、お預けをくっていた子犬がOKをもらったかのようにレヴィの唇がロックの唇に重なり、それを上下に割って舌をねじりこむ。
「チュッ・・・ニチュ・・・ハァハァ・・・ン・・・フッ・・」
呼吸する間も惜しい程唇を重ね合わせ舌を絡ませる。お互いがお互いを受け入れても良いのだという安心。
今まで触れられなかった分を取り戻すかの様に相手の唇や舌をむさぼり舐め合う。
ふいにレヴィの体がずり落ちそうになる。快感と安息、興奮と酸欠で腰砕けの様になってしまった。
ギュっと抱き止め呼吸を整えさせながらレヴィを立たせるロック。そのとき覗き込んだ彼女の瞳は潤み、不安と恍惚の狭間で揺れている。
月明かりを浴びて蒼白く光るその表情と肌が、今まで見たどんな女性よりも神秘的で美しかった。
自分をこの女から引き離すものがあるならば、たとえそれが神であろうが自分と共に残されたカトラスでFuckして奪い返してやる。
ロックはレヴィにニコッと微笑む。レヴィはキョトンしている。その時ロックが彼女の体を両手でポンっと軽く押すとあっけに取られたレヴィはベッドの上に倒れた。


75 :へたれパシリ:2007/01/06(土) 20:26:21 ID:ahDdDHaI
レヴィの体の上にゆっくりと覆いかぶさるロック。両腕で自分の体重を支えようとした時、右肩に鈍痛が走る。
「ロック?」
「いや、なんでもないよ」
「痛むンだろ?オーライ、こっちへきなよ、ベイビー」
そう言うとレヴィは半身を起こしロックの顔を胸に抱え、自分の横に寝かせた。
「日本の時みたいにこうやって寝るだけでもいいぜ」
ロックの左腕を枕に右肩をさすってやりながら、ニヤリと笑いレヴィが言う。
「・・・それじゃあ、生殺しだよ」
「思い知れよ。アタシだってあの時そうだったンだから」
「あの時は、その、いろいろあったし、それにほら、最後の方はレヴィがケガしてたし・・」
「今日はロックがケガしてるぜ」
「ん、ん〜〜・・・・・あっ、うっ」
「冗談だよロック。それにこんなになってるこっちの方が苦しそうだもんな」
ロックの右肩をさすっていた手がいつの間にかはちきれんばかりに盛り上がった股間をまさぐる。
「私と『初めての時はやさしくしてやる』って言っただろ。任せときなよ」
レヴィは馬乗りになり、ワイシャツのボタンをはずして脱がせようとした時、ちらりと包帯に目をやる。
「とうとうお前にケガさせちまったな・・・」
「レヴィ程じゃないさ。それにこんなの舐めてりゃ治るよ」
「・・・・・・」
レヴィはおもむろにロックの包帯をほどき、ベッドの横にあったラムを一口含んで右肩の傷口をそっと舐め始めた。
「い、いや、ちょっと、えっ、本当にするのか?あっ、いっ、痛っ・・・レヴィ、ちょ、ちょっと沁みるかな」
口の中の酒を飲み込みレヴィが答える。
「ングッ、だって最初は消毒しなきゃダメだろ」
「う、うん、そうなんだろうけどさ。まさか今されると思ってなかったから」
「どのみち、今日は消毒して無ェンだろ?治療だよ、治療」
そう言うとまた酒を口に含み、今度はロックに口づけて流し込んだ。
今日は相当飲んだはずなのに、アルコールが血管を駆け巡り体中を熱くする。まるで上質な麻薬でもキメたかの様に。
レヴィは酒を流し込み終わると唇と舌を首から鎖骨へ向けてはわす。くちづけ、ついばみ、舌で撫でる。
今度はロックの乳首に唇をつけ軽く吸いながら、舌で小さく円を描いたり甘噛みをする。ロックは思わず声が出た。
「うっ!、くっ!」
レヴィは口の両端を吊り上げ、先程とは違う淫靡な笑みを浮かべて言う。
「男も感じると声がでるだろ?我慢せず喘いでもいいぜ」
「そういうのどうやって覚えたんだよ?」
「フッ、生娘でもあるまいし、いろいろ知ってるさ」
当たり前。そう当たり前の事だ。自分だって日本にいた時に付き合っていた相手、会社の接待で付き合わされた風俗。
荒れた時は、酒場で意気投合し一夜限りの相手と寝た事だってあった。
ましてやレヴィは魅力的な女だ。いろんな『経験』があって当然、それこそ生娘だなんて思ってはいなかった。
が、その事を『今』レヴィの口から告げられるのには抵抗がある。何か言い知れない感情に包まれてしまうから。
嫉妬や独占欲の一言では片付けられないドス黒い感情が渦巻いている。
「さぁ、脱ぎなベイビー。もっと天国に連れてってやるぜ」
レヴィはベルトを解きながら言う。
それを押し止めながらユラリとロックが立ち上がり自分で服を脱ぎ、捨てた。
レヴィは膝立ちで見上げ、いぶかしげな顔をしている。

76 :へたれパシリ:2007/01/06(土) 20:27:30 ID:ahDdDHaI
「お前も、脱げよ」
ロックが言う。そう言われて、なんだそういう事かと合点がいった顔でレヴィが服を脱ぐ。
脱ぎ終わり裸に月明かりを浴びたレヴィは、より一層煽情的だった。ロックは自分の中で何かが崩れていくのを感じた。
両手でレヴィの髪を掴み痛いほどいきり立った肉棒を彼女の口の中に押し込んだ。
「ンン?!ンググ!!」
声にならない驚き。レヴィは大きく目を見開きロックを見上げる。彼も瞬きもせずこちらを見ている。
でもその目には何か得体の知れない感情を宿していてレヴィは少し怖くなる。
ロックはレヴィの頭を押さえつけて肉棒の根元まで彼女の口内におさめる。レヴィがウッと吐きそうな声を出すと、
ゆっくり抜き亀頭の先端までくるとまた押し込む。しばらくの間それを繰り返した。
そしてレヴィが苦しさのあまり咳き込んだ。
「苦しいかい、レヴィ?」
「ゲホッ、ゲホッ、・・・何で?」
「ん?」
「どうして、こんな風に?ゲホッ、ゲホッ」
「・・・わからない。わからないけど・・・」
「けど?」
「・・・お前を俺のモノに・・・違う・・・クソッ、何やってんだ俺!」
込み上げる焦燥感。
「・・・・私を・・・支配したい?」
「・・・・・・・」
「そんな顔すンなよ、あんたはとっくに私のマスターじゃないか。」
「レヴィ、俺はおまえを・」
「言葉より、体で確かめようぜ」
レヴィはロックの肉棒を根元まで飲み込んだ。今までのイマラチオがディープスロートに変わった。
「ひっかふぃ、おあえのガンはかけぃいよあ」
「咥えながらながら言われると何いってるのか分からないよ」
レヴィ答えず熱心にロックのモノをねぶりまわす。彼女の頭が前後に揺れるとピチャ、ピチャと淫らな水音が部屋に響く。
「あっ!そんな!クッ・・うっ、ううっ」
奥まで深く咥え込み喉を締め付け根元をレロレロと舐めたかと思えば、戻り亀頭を唇でしごきながら鈴口を舌で撫でる。そうかと思うとまた深く。
ロックはもう我慢の限界だった。
「ダメだ。もう我慢できないよレヴィ」
レヴィは何も言わず咥え舐めながら、ロックの目を見つめコクリと頷き両腕を彼の腰に回し、前後に揺れるスピードを上げた。
「くっ!いくよ、レヴィ、うっ、出る、イクっ!」
今まで味わった絶頂感と放出感を味わいながらロックはレヴィの口内に欲望をぶちまけた。
「!!!!!!ンッ、ゴクッ、ングッ、ンン、濃・・い・・ハァ・・ン」
大量の精液を一滴もこぼすまいとレヴィは一心に飲み下す。
口一杯あったであろう放出されたロックの精液を全て飲み干し、尚も尿道に残ったモノを丁寧に吸い出そうとしている。
その姿をみてロックの肉棒は萎えるどころかさらに硬さを増した。
「・・・・なぁ、さっきより硬くなってねェか?」
レヴィが不思議そうに問い掛ける。ロックは、ばつが悪そうながらも、
「お、お前が、魅力的だから、一回じゃ終われないんだ」
と、顔を赤らめて言う。レヴィは先程より更に淫蕩な表情を浮かべ、
「ふ〜ん、もっとも、これで終わりだったらカトラスで蜂の巣にしてやる所だけどな」
「はっ!、蜂の巣?・・」
「そりゃあそうだろ。自分だけ満足しといて、私に何のご褒美も無しは無ェだろ、『マスター』」
欲情にかられた女らしい、いや女の本能に近い発言なのだが、今まで聞いたどの脅しよりも効く言葉だった。
「は、ははっ、あ、当たり前だろ。ははは、あははは」
「・・・なんか縮んできてるぞ」
「ばっ、バカだな、お前があんまり笑わせるからだよ」
「オーライ、悪かったよロック。あんたに従う、次は何をすればいい?」
レヴィから発せられた殊勝な言葉は、萎えかけたイチモツを奮い立たせた。
「俺に体を預けてくれれば、それでいい。」

77 :へたれパシリ:2007/01/06(土) 20:31:34 ID:ahDdDHaI
「レヴィ?俺まだ何もしてないのに・・」
「〜〜」
顔を赤らめ頬を膨らましプイっと横を向くレヴィ。内腿を伝わっている愛液を見られ気恥ずかしくなった様だ。
二挺拳銃と異名を取り、悪名高きこの街で、誰もが一目置くガンマンは、今は完全に只の女だった。
「準備は出来てるみたいだけど、その前にちょっと味見しとかないとね」
そう言うとロックは両手でレヴィの両足首を掴み大きく広げた。
「!!!・・・あっ!ひんっ!」
そして完全に無防備になった蜜壺にロックが口をつけ、ズズーッと盛大な音を立て吸い付く。
吸い付きながらロックは舌でワレメをかき分け探り入れていき、肉芽をみつける。
それを舌でレロっと弾いてやると、レヴィの体が大きくうねり跳ねた。
「イッ!ヒィッ!アッンッ」
「声、我慢しなくても良かったのに。どっちみち出ちゃうんだったらさ」
「ハァー、ハァー、な、なんれ?」
「ん?どうしたの?」
「こ、こんな風に、こんなに感じた事、無かったのに・・って、ヒャ!アッ!ダメ!!」
レヴィの言葉を遮るかの如くロックはワレメを押し広げ、露になりその存在を主張している肉芽に直に吸い付いた。
「ンンンンッ!アアア!イイッ、イイようっ」
ロックは先程の要領で吸い付きながら、舌で肉芽を上下左右に小刻みに弾く。
「ウウッ!らめ!それ以上しちゃぁ、いやぁぁ、ら、らめぇぇぇ!!!」
レヴィの体がまた跳ねるが、ロックは彼女の両腿をガッチリ抱え離さずに続ける。
「クる!クるっ!!らめぇぇえぇぇ、キちゃうううぅぅぅ!!!」
ギリギリと絞りあげた弓の弦のみたいに背中を反らせる。そして不意に弦が切れたかの様にガクッっと力が抜けベッドに落ちた。
レヴィはハァハァと肩で息をし、小刻みに震え目が潤んでいる。
「何処か痛い?」
ロックが聞くと、レヴィはまだ呼吸で精一杯なのかしゃべらずに首を横に何度も振った。
「じゃあ、苦しいの?」
また首を横にブンブンと振るレヴィ。
「んー・・・じゃあ、もっと?」
照れくさそうに下唇を噛み微笑みながら首を縦にふるレヴィ。

78 :へたれパシリ:2007/01/06(土) 20:33:00 ID:ahDdDHaI
ロックはレヴィの背後から彼女の片足を抱え肉棒をワレメに擦り付ける。
段々と速度を速めていくとレヴィはそれだけで、また息が荒くなる。
急に動きを止めたので、レヴィがロックの方に振り向こうとした瞬間、
ズブリッと肉棒が蜜壺へ差し込まれた。
「アァン!!イッ!ンッッ!!」
「すごくキツいな、置くまでは、んっ、一気に、うっ、いけない、な」
小刻みに腰を振りながら徐々に挿入の深さを増していく。生娘じゃあるまいしと言ったレヴィ、
確かに出血や痛みは無いようだが、この締め付け具合を体感すると、ロックは自分が初めてなんじゃないかと錯覚に陥りそうだった。
このままの体勢で、腰の動きを調節しながら振り続けるのは、少々キツくなってきたロックは肉棒を抜き膝立ちになる。
そしてレヴィの腰を抱え四つん這いにさせた。レヴィも彼の意図がわかって脚を広げ尻を突き出す。
大きいが決して無駄にたるみの無い弾力をもったレヴィの尻を、ロックは両手でむんずと割ってその中心に肉棒を突き入れた。
ヒィとレヴィがまたわななく。先程の抽挿で大分ほぐれた蜜壺の奥までロックが肉棒をねじり込んでいくと、レヴィはシーツを握り締めよがる。
「アッ、ふ、深いっ!とどく、とどくよぉ」
「奥がいいんだねレヴィは。んっ、じゃっ、これ、なら、ど、う?」
パンッ、パンッとレヴィの尻に音がするほど腰を深く打ちつけるロック。徐々にそのスピードを上げていく。
レヴィは快感のあまりシーツに顔をうずめ答えない。その時ロックがバチィンとレヴィの尻を打った。のけぞるレヴィ。
「聞いてる事には、答えようねレヴィ?っと」
バチィィン。さっきよりも強く尻を打つロック。
「アヒッ!!イイ!気持ちイイようっ!」
「それはこっち?それとも、ンッ、こっち」
レヴィの尻を打ちながら、子宮にとどくほどの勢いで腰を打ち付けるロック。
「ウン、ウン、イイ、イイ!」
「だ・か・ら。それじゃ、わからないよ」
ロックは手をレヴィのワレメにはわせ快感と興奮でパンパンに膨らんだ肉芽を指でつまみ垂れてくる淫汁でこする。
「ああああ!ぜっ!ぜんぶっ!!ロッ・・うっ・・ク・・が、ハァ、する、事、気持ちい・・いっ!」
「そう、良かった。じゃあ全部いっぺんにしよう」
「!!!!!!」
そう言うとロックは汗だくになりながら肉芽を擦りながら、腰を打ちつけ、タイミングを見ては半身を起こし尻を力一杯乱打する。
実際ロックの方も、ほぐしたはずのレヴィの蜜壺が彼女の快感が増していくごとに、締め付けを増し肉ヒダが纏わりつかせ肉棒を扱いていく。
少しでも気を抜くとすべてをぶちまけたくなるほどの射精感に、達してしまうのを必死にこらえていた。
レヴィは涎を垂らし泣き叫ばんばかりによがり狂う。そして絶頂が近づいたらしく、
「アアッ!!クッ、クるぅ!もうらめええぇぇ!またキちゃうう、らめぇぇ!」
と叫ぶ。その言葉を聞いたロックはピタリと動くのを止める。
「えっ、えっ?なに?なんれ?」
ロックは肉棒を蜜壺から抜き、レヴィをベッドに寝かせる。人指し指と中指を蜜壺に挿れ、親指で肉芽を擦る。
レヴィの快感のレベルが落ちない様に、でも決してイかせない程度に指を動かし続ける。ロックはレヴィの目を見て言う。
「レヴィ、正常位で一緒にイこう」
「えっ・・・い、いや、お前、あれは話の・・・アンッ!」
ロックはかまわず肉棒を突き入れ腰を振り始める。
レヴィの顔が曇っていき、その目からは感情が消えていく。
「い、いやだ・・」
小さく抑揚の無い声がロックに向けて発せられた。
彼女の頭の中を暗い影が覆いつくしていく。部屋中に溢れかえるロックと自分の汗や淫らな汁、酒の匂いが消え、
血と硝煙とドブの腐敗した臭いが、レヴィの粘膜から染み出しているように思えた。

79 :へたれパシリ:2007/01/06(土) 20:34:04 ID:ahDdDHaI
ロックは考えていた。レヴィの言うとおり『正常位〜』なんて言葉のアヤかもしれないが、
どうしてもこだわりたかった。別に男女の営みの形を型にはめて考えるほど彼は融通が利かないわけではない。
レヴィの思考の障壁をぶち壊したくて、その象徴のような言葉を打ち砕きたかったのだ。
血の鎖につながれ闇に縫い止められているこの女に、血を宿す肉でその肌に触れ暖め、光があるからこそ闇がある事を知らせてやりたかった。
レヴィの腰を抱え腰を振り続けるロックに、
「やめろよ」
レヴィの声に殺気が混じる。ロックは答えず、さらに激しく抽挿を深くしていく。
「ヤメローーーー!!!!!!」
ベッドにかけてあったホルスターからカトラスを抜きロックに向けるレヴィ。
それにも動じず、今度はロックがレヴィにのしかかり顔を近づける。
レヴィは思い出すのもおぞましい記憶の中の影と、そのロックの姿をだぶらせ目を閉じ震える。カトラスは先程構えた位置から動かない。
ロックは天井を向いているカトラスの銃身を持ち、銃口を自分のこめかみに当てて言う。
「レヴィ。ガンマンだろ、『敵』はしっかりと狙うんだ」
ロックが口にした『敵』と言う言葉にビクっとして、レヴィは慌ててカトラスを引っ込めようとしたが、ロックは銃身を放さない。
「レヴィ、目を開けて」
ロックがカトラスからやっと手を離し、そっと髪を撫でながら呼ぶ。ロックが呼んでいる。でも怖くて目を開けることは出来ない。
そおっと触れるだけの、優しい優しいキスをするロック。
「レヴェッカ、目を開けて」
ゆっくり恐る恐る目を開けるレヴィ。そこには少し頼りなくもあり、でもいざという時には強い意思の男の顔がある。
「ロッ・・ク」
「お前の側にいるのは俺だよ」
レヴィはカトラスをベッドに置き、ロックにしがみついた。
「ロック、私はあんたを・・」
ロックはレヴィの唇を塞ぎその先を言わせない。ロックがしたい事は彼女の今までを否定する事じゃない。彼女の見える景色を広げたいだけだ。
「『言葉より体で確かめよう』レヴィ」
レヴィは目に一杯の涙を浮かべ頷く。
しっかりと抱き合い交わる二人。
二人共、快感のクライマックスが近い。ロックはレヴィの瞳に写る自分をみながら、
「正常位『でも』、イけるさ」
と言う。レヴィ微笑みながら頷き、言葉を返す。
「ああ、『相棒』。一緒にイこうぜ」
ロックは全ての思いと快感を注ぎ込み、レヴィはそれを絶頂の波のうねりの中、余すことなく体の芯で受け入れた。
それはとても熱くて、レヴィの中にある冷え切った何かを少しづつ溶かしていくようだった。


154 :へたれパシリ:2007/01/15(月) 21:33:22 ID:cZ+dODrI
――数日後の夜――

イエローフラッグのカウンターでロックが一人飲んでいると、彼の背中に声が掛かる。
「よぉ、色男、キズはもう良いのかーい」
「ん?あぁ、エダ。うん、もう大丈夫だよ」
「あれ?今日はレヴィと一緒じゃ無いんだ?」
「レヴィなら夕方、張さんの所に行ったよ」
「一人で?」
「うん、付いて行こうかって言ったら、野暮用だから付いて来るなって断られたんだ・・・はは」
「何だよ、何だよ、寂しそうな顔しちゃって〜。アタシが慰めてやろうか?」
ロックの肩にしなだれかかるエダ。
「べ、別に、そういう訳じゃ・・・」
「いいじゃ〜ん、あっちは同じチャイニーズ同士ヨロシクやってンなら、アタシ等も楽しもうぜロック。
なんだったらこれからはアタシがアンタの事守ってあげるからさァ。安全保障を結んでみるってのはどうだい?」
「いや、だから、何でそうなるかなぁ」
苦笑し、頭をかくロック。エダはバオに酒を注文しながら、タップリとした凶悪な魅力の胸をロックの腕に擦り付ける。二人に忍び寄る殺気。
「おい、相変わらずだなテメェは。ウチの相棒に粉かけてンじゃねェゾ、この売女!」
二人が振り向くとレヴィが、今にもカトラスを抜かんばかりの形相で睨んでいる。
「ハッ、お前がいつまでたっても意気地が無ェから、アタシが慰めてやろうとしてンだよ。なぁ、ロック」
エダはロックの首に後ろから手を回し、サングラスを下げ深く澄んだ碧眼でレヴィを見ながら言う。
「うるせェ、誰が意気地が無いってェ!!」
カトラスに手をかけるレヴィ
「や、止めなよ、レヴィ」
「ナンだと!お前も抵抗もせず、その牛みたいにでかいモン押し付けられてデレデレしやがって、このクソッタレ!!」
「今日はまた一段と頭に血ィ上らせやがって・・・ン?・・とうとう・・ヤッたか?」
「バッカ!クソ尼には言わ・・・」
レヴィが言い返している途中で、ふとロックの顔を見てしまう。
その顔見た途端に、二人初めての夜の出来事が彼女の頭の中を駆け巡る。レヴィは黙り込んで顔が赤くなってしまった。
エダはそれを見てニヤリと笑みを浮かべて茶化す。
「エテ公が色気づいちゃって、尻みてェに赤くなってるぜ」
レヴィは怒りでさらに顔を上気させ、エダに詰め寄る。
「ンだと〜!このクソ尼!!てンめぇ・・・」
「イキんじゃねえよ、エテ公のクセに。いいからちょっと耳かせよ」
レヴィは文句を言いながらも、エダに耳を寄せる。
手で口元を隠しエダが耳打すると、レヴィは耳まで真っ赤になって声をあげた。
「バッ、バッカヤロ!私がそんなのする訳無ェだろ!」
「だーかーら、そうしたくなったらって言ってンだろうがよ」
「あ、有り得・・な・・・い。だって・・」
レヴィの声が段々と小さくなり、最後は独り言のようにブツブツ言っている。
「ま、イイさ。そういう事があったらの話だ。ハァーァ、なんか酒飲む気分じゃ無くなっちまった。バオ、帰るわ」
金をカウンターに置き、片手を上げ出口へ向かうエダにバオが聞く。
「おい、エダ、酒はどうすんだ?」
「捨てといて」
「捨てる?捨てろって言ったって、一瓶まるごとか?」
「そうだって言ってんのよ。ナンだったら、そこの色気づいたエテ公達にでも飲ませてやりな。じゃあネ」
レヴィが何か言おうとしたが、その間も与えず金髪をなびかせ、エダは店を出ていった。

155 :へたれパシリ:2007/01/15(月) 21:34:45 ID:cZ+dODrI
ロックとレヴィの前に酒瓶を置きながら、バオが怪訝そうな顔でレヴィに釘をさす。
「エダがオゴるなんて、お前等この街ひっくりかえす算段でもしてたのか?
何でもいいが、もうウチの店を巻き込むんじゃ無えぞ、レヴィ」
「ンな事したって、一銭にもならねえし、やらねェよ。心配すンなって」
そう返すレヴィの顔をロックがジッとみつめていた。
「ん?どうしたロック?私の顔になんかついてるか?」
「エダと・・・いや、なんでもないよ」
「ああ、そういう事か。んー、ま、まぁ、そのうちな。」
「そのうち話してくれるって事か?」
「あ、ああ、そのうち・・・・・・・・きっと」
レヴィに気を使わせない様にロックは話題を変えようと思い、
頭に浮かんだ事を口にしようとして、それを飲み込んだ。張の所へ行ったのは仕事では無い。
「ロック?怒ってるのか?」
ロックがそんな事を考えているとは知らずに、レヴィはエダとの話を答えなかった事を気にしている。
「そんな事ないよ。さあ、飲もうか」
自分の顔は引きつってないだろうか?そんな事を思いながらロックはグラスに酒を注いだ。

いつにも増して飲むペースが早い二人。エダの『捨てた』酒瓶はアッと言う間に空になり、いつものバカルディの封を切る。
最近の仕事の事や、この街の他愛も無い噂話をしているだけなのだが、レヴィはご機嫌ではしゃいでいる。
まるでサンタクロースを信じ、来てくれる事を楽しみにベッドの中で眠れずにいる子供の様だ。
ロックもほろ酔い加減になってきてレヴィに言う。
「何か、待ちどうしいって感じだな」
「へへ、さすが私の相棒だ。よくわかってンな」
「よっぽど儲かる話かい?」
「う〜ん、そういう類じゃねえンだな。つまり・・・あー、チクショウ!」
「どうしたレヴィ?」
「言いたいンだよ!言いたいンだけどまだ言えねェンだよ!!クッソー!」
もどかしさをを酒と一緒に飲み干すレヴィ。三分の一程残っていたボトルをアッという間に空けた。
「レヴィ、いくら何でもペースが早すぎるよ」
レヴィはバオにもう一本ボトルを持ってこさせ、心配そうに言うロックの顔を見ながら考える。
自分が人の喜ぶ所を見たいと思ったのは初めてかも知れないと。

156 :へたれパシリ:2007/01/15(月) 21:35:51 ID:cZ+dODrI
レヴィはロックに新しいスーツを贈ろうと思っていた。
出会った頃はこの荒事の多い街で、いかにも堅気というビジネススーツを着て浮いているロックを、少しバカにもしていた。
だが今はこのスーツ姿こそ、ロックにはふさわしいとレヴィは思っている。
自分の生きてきた道の証を、この悪党だらけの街で着続けているロック。
それが力ではない、この男の強さの証明。そんな気がしていたから。
彼女が張の所に行ったのは、彼にスーツの仕立て屋を紹介してもらう為だ。
この街の仕立て屋をあたってみたが、ロックが着る様なビジネススーツを作った者が居ない。
おまけにレヴィの服の趣味は、どうもロックと合わないらしい。
前に買ってやったアロハなんかイかしてるのに、何でわからないのかとレヴィは思っている。
そこでセンス良くスーツを着こなす張に意見を求め、仕立て屋を紹介してもらったのだ。
張はロックならこれが良いと生地とデザインを決め、レヴィはサイズを仕立て屋に説明する。
さすがに細かい所の寸法はレヴィも分からない事があるため、調べてくるのでまた後日となった。
ロックを連れて仕立て屋に行けばいいのだが、驚かしてやりたい気持ち半分、照れくささ半分で内緒に事を進めようとしている。
こいつはどう反応するのか、本当に喜んでくれるのだろうか、そうぼんやり考えていると、ロックに肩をゆすられた。
「レヴィ、聞いてるのか?」
「お、お、おう。で、なんだ?」
「・・・やっぱり、酔ったんじゃないか?もう飲むなとは言わないけど、ペース落とそうよ」
「そ、そうだな。ところで・・・」
そこまで言うとレヴィはロックの顔を引き寄せ耳元で囁いた
「今日は私がロックを縛るからな」
ロックがエッと驚き何故?と聞く。
「ローワンが言ってたろ?どっちもイけるって。ロックにしてもらったら、久しぶりにしてみたくなってよ」
前日の事を思い出し、渋々といった感じで了承するロックにレヴィは内心安堵した。
これで目隠しをして彼を縛ってしまえば、自由に採寸が出来ると思ったのだ。

店を出て本当にするの?という顔でレヴィを見るロックに、
「今日は体の隅々まで探ってやるぜ、ベイビー」
と、大袈裟に舌なめずりをして言うレヴィ。
観念したような顔つきでロックが返す。
「お手柔らかに・・・楽しみにしてます・・・」
「セリフが棒読みだぜロック。でも・・・本当に楽しみにしててくれ」
「お前、一体何する気だよ」
「バーカ、その事じゃねェよ。こっちの話だ・・・」
「何だよ、それ?」
「いいンだよ!ほら、帰るぞ!」
レヴィが先を行く。ロックが追いかける。
その二人の顔はこの街には不釣合いな程、無邪気な笑顔で満たされていた。




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