- 484 :プレイボーイ・イン・ザ・ホウス ◆35uDNt/Pmw :2007/05/01(火) 00:54:57 ID:iPiqvxQq
- 「……んで?」
「……何が?」
「しらばっくれんなボケナス。そうかそうか。お前はとうとう、あたしの弾丸をケツにぶち込まれねェといけねェド変態野郎になったって訳だ」
「待て待て、違うんだ。あ、いや、違わないんだけど、その、話を聞いてくれレヴィ! これはあれだ、何か誰かの陰謀でだな」
「おーいダッチィー? 悪りィんだけどよ、タオル二、三枚貸してくれ。ボスご自慢のオフィスを汚しちゃマズイだろ?」
「おい、レヴィ? お前目が据わって」
「オーケー、ド変態ファッキンジャップ。準備はいいか? ま、あの世で百万回あたしの名前を言いながら土下座してもう百万回死んでこいボケナス!」
銃声と悲鳴が聞こえる、五秒前。
時刻は午前九時を少し回った所。今日は朝から仕事の書類チェックが山積みなので、いつもより早めに事務所に出向いたダッチとベニーだったが、事務所のドアを開いて思わず腹の底からうんざりとした溜息が漏れた。
そこにいたのは、何故か下着一丁で正座しているロックと、そのまるでゴジラに睨まれたチワワみたいに震えあがっているロックを睨みつけているレヴィ。
最早恒例行事みたいになってきた二人の喧嘩と言う名のじゃれあい(ダッチとベニーは時々本気で二人を殴り飛ばしたくなるらしい)だったが、今日はどうやら訳が違うようだ。
アンドレ・ザ・ジャイアントでさえ股下をくぐっていきそうな阿修羅の表情をしたレヴィをひとまずダッチに任せると(あの時のダッチの表情には苦笑した)ベニーはコーヒーをロックに手渡し、自分もソファに腰掛けた。
「それで? 色男、今回は一体何が原因なんだい?」
「……あれだよ」
「あれ?」
ロックが指差した先にあったのは、事務所で一番大きなサイズのソファだった。そのソファはいつも見るしどこも変わった所はない。問題なのは。
「……そりゃレヴィも怒り狂うはずだよ」
苦笑気味におどけてみせるベニーに、ロックは勘弁してくれと言わんばかりにうな垂れた。
そのキングサイズのソファに居たのは、すやすやと、まるで子供みたいに無垢な寝顔を見せているこちらは何故か全裸の、掃除屋ソーヤーだった。
- 485 :プレイボーイ・イン・ザ・ホウス 2 ◆35uDNt/Pmw :2007/05/01(火) 00:57:35 ID:iPiqvxQq
- ロックの話をまとめるとこうだ。
昨夜、ダッチにどうしても残ってして欲しい仕事があると頼まれ、特に予定の無かったロックはそれを快諾した。
仕事の内容はまぁ、データの整理やこれから先のスケジュール調整など、比較的簡単な作業だった。だが、何せ量が半端ではなく、ようやく終わりが見えてきた頃には、すでに夜中の三時を回っていた。
自分の寝床に帰るのも億劫になったロックは、缶ビールとおつまみを適当に見つけ、眠気が来るまでしばしの休息を楽しんでいた。
しかし、事件の始まりでもある彼女がやってきたのは、ロックが三本目の缶ビールを飲み干した時だった。
最初は聞き間違いかと思ってしまうほど、小さなノック音。ロックはほろ酔い気分のままドアを開けた。
次の瞬間、ロックは地面に倒れていた。
「……え、あ、え?」
訳が分からず辺りを見渡すロック。そんなロックの視線を遮ったのは、ソーヤーだった。
彼女は人口声帯越しに、まるで蚊が鳴くような声で言った。助けて、と。
話を聞くと、かれこれ二時間近く誰かに追いかけられているらしい。家にいても足音が聞こえてきて、恐怖のあまり外に飛び出してはみたものの、足音はずっと聞こえてきて、今まで逃げ回っていたらしい。
よくよく見れば彼女は裸足だった。
彼女は酷く怯えた表情で、階段を指差し、足音が聞こえる、とまるでうわ言のように言い続けていた。
その様子に、ロックはソーヤーが鬱の気があるのを思い出した。そう言う症状なのかもしれない、と思ったロックは冷蔵庫からアルコールがキツめの酒をコップに注ぎ、それをソーヤーに手渡した。
「まぁ、その、さ。取り合えずそれ飲んで落ち着きなよ。足音も聞こえないし」
何度かロックと手渡されたコップを見比べ、恐る恐るコップの中の液体を口に含む。
ゆっくりと吟味した後、名残惜しそうに飲み込んでいく。こくり、こくり、と飲み込むたびに鳴る喉に何故か邪な気持ちを抱いてしまったロックは、ごまかすように務めて明るく尋ねた。
「ど、どう? 美味しい?」
じぃ、とロックの顔を見つめていたソーヤーは、少し頬を赤くしながら、見たことも無い可愛らしい笑顔で頷いた。
そこから、二人の酒盛りは始まり―――
「―――その後の記憶は綺麗サッパリありません」
「それは『僕あの子のプッシーをガッチリ味わいました』って事?」
「そ、そんな事はしてない!」
「でも目が覚めたら自分は下着だけ。相手にいたっては全裸だったんだろ? それってポパイがほうれん草嫌いって言ってるくらいの説得力だよ」
う、と反論の余地もないロックに、ベニーはやれやれとかぶりを振る。彼のプレイボーイも何とかして欲しいものだ。
ともかく、とベニーは立ち上がると、床に散乱したソーヤーの衣類を拾う。
「まずは、彼女を起そう。もしかした、万が一……いや、億が一の可能性でヤッてないかもしれないし」
「あ、ああ。そうだな」
「それと、ロックもいい加減服着なよ。半裸の男と居ても全然楽しくないからね」
悪かったな、とうんざり顔のロックに、ベニーはしたり顔で笑ってやるだけだった。