- 695 :1/4:2007/05/27(日) 10:04:28 ID:ovf3L9nc
- 何がきっかけかと言えば、ダッチの眼から離れた事も原因の一つだと思う。
ロアナプラじゃ暗黙の了解があった。いつ別れるか分からない相手に感情移入し過ぎるのは…何の得にもならない。
そう分かりながら俺は逆らおうとした。レヴィを、自分を変えてくれた人を愛してしまっていたから。
それでも、何も起きなければ自制できると思っていた。そしてそれは…間違いだった。
怒りと優しさの両方を見せてくれたレヴィ。守ってくれたのも励ましてくれたのもレヴィだ。
自分を情けないと感じながら俺は、レヴィへの思いを深めてしまった。
そんな物が心の奥底にあったから、俺は行動したのかも知れない。
日本での一連の事態の終末。鷲峰の壊滅、バラライカさんとの死合い、そしてレヴィが下した彼らへの最期。
俺はどうしても踏ん切りが着けられず、レヴィの部屋を訪れていた。
「…何だ?」
「いや、話しがしたくて…」
「ふん…」
ベッドに腰掛けていたレヴィは、延々と床に眼落としていた。時折煙草を灰皿にこすりつけながら。
俺は隣に座った。
溜め息で出来た間が長い。
「お前はやっぱり…ダメだ」
「え?」
「あたしとは住む世界が違うんだよ」
表情が冷たかった。何故今そんな言葉が出るのか。
俺が疑問に思っている内に、レヴィは言葉を繋ぐ。
「悪くねぇが…ダメだ」
「どういうことなんだ?」
「姉御に言われたんだよ。お前は違う世界の人間だと」
「バラライカさんが?」
「ああ」
ベッドから腰を離し、部屋の真ん中の小さなテーブルに向かっていった。
「ロック。お前とあたしじゃ考え方が違い過ぎるんだ。甘ちゃんって言ってるが実際は…テメェが不幸と思う人間の為に泣いちまう、全うな奴さ」
テーブルの上に放り出されていたカトラスを取り、グリップを握った。
「でもな…テメェの優しさは出来損ないなんだ…鬱陶しくてたまらねぇ」
- 696 :2/4:2007/05/27(日) 10:06:14 ID:ovf3L9nc
- いつかの様に銃口が向けられた。俺は動じるつもりもなく目を見返す。
レヴィの瞳は冷たかった。言葉以上の物が込められていた気がしたからだ。
「中途半端に正義振りかざしてもダメだ。お前には力が無いんだよ」
カトラスの向きは変わらなかった。レヴィに撃つつもりは無いだろう。俺にはそう思える。
「甘すぎて腹が立つ」
「レヴィ。俺は俺だ。そんなもん向けても変わらないって言ったはずだろ?」
「そうだ。だからテメェは別の世界の人間なんだ」
「何が言いたいんだ」
「都合良いんだよ。今は後悔してるみてぇな面して、情けかけて。あたしはどうなる?最後までカトラスぶっ放して奴らの命を奪ったんだぜ?」
その引き金と銃口を俺に向けて。
「あたしはテメェより力があるから役割を果たす。テメェは力が無いくせに相手に情けをかける。違うか?」
「…」
正直言い返せなかった。でもわからない。何故レヴィが今こんな事を言ってるのか。俺に何を見て、何を求めてるのか。
カトラスの銃口は言葉の矛先代わりに使われていた。…これがレヴィの不器用さだ。
「引き金も引けない奴が死者への言葉なんか言えるかよ」
「今まで…」
「あ?」
「今まで、沢山の人を撃ってきたんだろ?レヴィ」
「ああ」
「なんで今日はそんなに突っかかるんだ?」
「お前に失望したからさ。何回も言ってるだろ?」
「違う。何かあったんだ」
一年間付き合って来た仲間だ。なのに今日のレヴィは、明らかに違う。
「俺に出会う前、ダッチやベニーと仕事してる時、こんな事を話した事があったのか?」
「ねぇよ。お前が一番馬鹿だからわざわざあたしが…」
俺はやっとレヴィを睨み返す事が出来た。
見えてきたから。
「今回の事は、自分を認めきれなかった。違うかい」
「っ!」
これが俺の答えだ。レヴィに向けた銃口。たじろいだのが目に見えた。
- 697 :3/4:2007/05/27(日) 10:07:26 ID:ovf3L9nc
- 「俺を見ると、いつもクソ程にもなってない欠片ほどの感情が動いちまう」
「っ!」
「闇の時代を生きてきて、それでも神や人を信じようとした小さい頃の自分がお前の中で消えてない」
「黙ってろ!」
「鷲峰の一件が、日本に帰って来ていつも以上に甘かった俺を見たことが、お前が一番否定してる自分を起こしたんだろ」
「黙れ!」
銃声が、響いた。
俺は日本に来てからいつも以上に甘くなってた。レヴィを苛立たせる位に、だ。
それが引き金だったとしても不思議じゃない。最初に会った時と比べてレヴィは絶対に変わってる。
その変化の反動が、日本での俺や鷲峰の二人を見て、来た。
「なぁ…黙れよ。頭がおかしくなりそうだぜ…」
あれだけ至近距離だったにも関わらず、弾はかすりもしなかった。レヴィは力無く下がって、頭を抱えていた。
「テメェだけ卑怯なんだ…あたしはどうなるんだよ。あたしが居たのは本当に地獄だった。だから撃てるんだ…」
「レヴィ…」
小さな子供みたいに壁際に座って膝を抱えて、独り言のように呟き始める。
始めてレヴィが、弱い存在に見えた。
「ガキの頃もこうする事しか出来なかったのに、今のこのザマは何だよ…少し言われた位で…」
「レヴィ、ごめん。でも、今日のお前はおかしい」
「あたしは間違っちゃいない。お前もだロック…でも、姉御が言った事が耳に残ってるんだよ。アレ聞いて、気分悪い…」
「違う世界…」
「お前が遠くに居る…」
壁際で小さくなってる、レヴィに近づく。
「レヴィ。俺はここにいるだろ」
俺の顔を向くことは無い。ただ、肩を震わせてるだけだった。
- 698 :4/4:2007/05/27(日) 10:10:40 ID:ovf3L9nc
- 「どうしようも無い壁があるんだ。お前とあたしは根っこから違う。お前がどんなに近くに居ても、お前自体が遠いんだ」
「…」
「会えない。あたしが望んだとしても近付けない」
思いがあったとしても、叶わない。違う種の物は交われない。それがレヴィが出した結論。
レヴィは俺の事を…
本人は絶対に認めないだろう。応えてすら貰えないかも知れない。俺はそれでも、今のレヴィに言いたかった。
「レヴィ」
「…」
「俺は…」
「…無理だ。あたしには資格が無い」
先の言葉はお互いに分かっていた。遮りたくて、レヴィは言った。
肩を抱いてやりたくて、手を伸ばす。
- 699 :5/4+1:2007/05/27(日) 10:13:21 ID:ovf3L9nc
- 「触るな!」
触れようとする俺の手をはねのけた。始めて見た。
レヴィの哀願する様な瞳を。俺に、救いを求める目を。
怒りで自分を隠す、不器用過ぎる姿を。
「馬鹿な事言うんじゃねぇ!汚い事を山ほどやってきた!体も売ったんだぜ!?金が無かった為にな!」
「レヴィ。良いんだ」
「汚れてるんだよ!血と汗と泥水と、どこかの野郎のきたねぇ汁で!犯されて!玩具にされて!」
「レヴィ」
「それでもあたしを抱くのか?愛せるのか?無理だ。あたしも本当はテメェなんか愛しちゃいない」
「…」
「体目当てだろ?構わねぇさ。少し位良い思いさせてやる。だから馬鹿な事は…」
我慢が出来なかった。なんとかしないと、壊れそうだった。俺自身も、レヴィも
俺は力づくでレヴィを抱き寄せて。
「…」
「信じてくれ…!」
「…!」
この一瞬を捉えて。
唇を奪った。
「好きだ。レヴィ」
「…」
「汚れてなんかいないさ。すごく綺麗だ」
「…っく」
「疑ってるならずっとこうしてるだけで良い。だから、信じてくれ」
「お…おお馬鹿…やろ…」
「ああ。お前の言った通りだ」
「ば…馬鹿!」
「…丁度良いだろ。お前の相手に」
俺のシャツに、手応えがあった。滴が落ちる手応え。
ポンポンと背中を叩きながら、片手で抱き込む。レヴィは細かく首を上下させて、時々泣き声を聞かせていた。
「あ、あたしのガラじゃねぇんだよ。告白されんのも、男の胸借りるのも…」
「…じゃあ、レヴィから言ってくれるのか?」
「…言ってやるさ。お前が好きで狂いそうだったんだよ。ロック」
「どうも」
顔を上げた時には、あの生意気な笑みが健在だった。その目には水分を溜めて。
「ロック…やっぱり抱いてくれ。お前とそうしてみたい」
「チェリーボーイ相手で満足できるのか?」
「あれ、マジか?ならあたしがバージン貰えるな」
「痛くしないでくれよ?」
「どうやっても痛いぞ。アレ」
- 713 :日本編ロック×レヴィ 1/3:2007/05/29(火) 00:45:08 ID:uyRHvb/0
レヴィには先に待っていて貰った。ベッドの周りの床には女物と男物の下着が散乱している。
俺は、レヴィの隣に潜り込んだ。
触れた肌が、柔らかかった。
「狭い…かな」
「落ちそうになったら抱いてやるって。少し位関係ねぇよ」
さらりととんでもない事を言われてしまった。レヴィは小悪魔みたいな笑いを浮かべて、俺をからからう。
「…」
いきなりその笑みを消して、俺に顔を近付けてきた。瞳で返事をした。
「なぁ…昔があるんだ。お前が相手って分からねぇとダメになりそうで…」
「どうしたら良い?」
「…キスだ」
俺は言われた通りにレヴィの唇と自分の唇を触れあわせた。レヴィの方から、舌が侵入してくる。
レヴィの舌は俺の口の中を犯すように、暴れまわった。
絡め合った唾液は、お互いで飲み干した。
「やっぱりロックだ…ロックなんだ…」
鋭かった目が、ゆっくりと融けてきた。
男としての俺も目覚めていた。自然と、レヴィの胸の膨らみに手が伸びる。
弾力に触れた時、レヴィが呟く。
「嫌だった…こんなでけぇモン、野郎のネタにしか…」
「嫌か?」
「お前だけは別にしてぇよ。だから…好きにしな」
レヴィの腕が緩く、俺の首に巻かれた。軽く握ってみると、簡単に指が沈み込んだ。手の窪みにちょうど小さな突起があたる。
「実はさ…」
「ん?」
「いつもレヴィって、際どい服着てただろ?胸元とか見えてたし結構気になってて、その…」
「ネタにしてたのか?」
図星を突かれて、手の動きが止まった。
けど、レヴィの表情に幻滅は無かった。
「構わねえよ。あたしだって…」
「え?」
「あたしだって女だ。つっても丁度良いモン無かったし、お前は何も気づかねえから…」
「えっと…」
「シャツ、ほったらかしにしてたら無くなってただろ?」
「…」
「おあいこだ。テメェも許してやるからよ…恥ずかしくて死んじまう」
俯いて、真っ赤になってしまった。
「ほら、いいぜ…」
「うん…」
手に力を入れると、俺の首に回された腕にも力が入った。
俺の手が膨らみの形を崩す所を、妙な気分になりながら二人で見ていた。
- 714 :日本編ロック×レヴィ:2007/05/29(火) 00:46:11 ID:uyRHvb/0
- レヴィは可愛い反応を見せ続けていた。処女と変わらない。多分、まともにした事なんか一度も無かったと思う。
「…本当は見せたく無い…んだ」
布団を払いのけた後、俺はレヴィの脚の間に陣取った。髪の色と同じ色の毛が股間に見える。
俺はそこに顔を近付けた。
目に入るのはレヴィが言っている事とは全く違う、桃色に近い優しい色の粘膜。レヴィの興奮があったのか、しっとりと濡れていた。
「お前が一番嫌ってる連中に奪われてるから…さ。だからわざわざ見てないで、さっさとヤった方が…」
唇にしたのと変わらない位優しく、そこに口づけた。体温が伝わる。
「ひゃ…」
「女の子には優しくしないと」
「…う」
「俺とは始めてだろ?レヴィ」
レヴィの息に色がこもるまで、俺は口付けと味見を繰り返す。
「はあ…あっ」
脚をバタつかせて、俺の舌を受け入れていた。
「ロック…」
「ん?」
「先に…イっちまう」
理性と快感の狭間で、レヴィが求めて来た。
「あたしはもう良い…だから」
俺はようやく、唇を離した。
「しようぜ…ロック」
細い腕が伸びてくる。
「あたしの嫌な所も、お前が好きになってる部分も全部テメェにやる…から」
俺の首が絡めとられて、レヴィに引き寄せられた。目を瞑ったのは、俺に任せる意思表示だ。
「…っ」
性器が触れて、レヴィは上半身を震わせて反応する。深く入れる度に、少しずつ回されている腕の締め付けが強くなった。
レヴィの潤いは十分で、俺のモノはすんなり進んでいく。
「はあ…ぁ」
「辛くないか?レヴィ」
「ロック…ロック…」
病的に俺の名前を繰り返して、瞳が虚ろになって行く。心配して唇をもう一度あてた。
「入ったよ」
「ほ、本当に繋がってるんだよな…」
「ああ」
「待ってた…お前を待ってたんだ…」
あの強かった瞳がもう一度弱さを見せて、涙を零した。
- 715 :日本編ロック×レヴィ 3/3:2007/05/29(火) 00:47:07 ID:uyRHvb/0
- 「こんなのあたしじゃないんだ。本当はお前に甘えるなんておかしいんだよ。こんなにドキドキするなんて怖えよ…」
葛藤して、こういうセックスに慣れてなかったのか、レヴィは混乱していた。
「これが終わったらいつものレヴィに戻るんだろ?」
「ああ…ああ」
「じゃあ今だけ、俺の為に甘えてくれ」
「ロックの為…」
腕に力を込められて、胸に縋りつかれた。俺はレヴィを抱え上げて、頭を胸に置いてやる。
「…甘えたい…甘えてみたい」
「そうだ…俺が勝手にするから」
腰を動かして、レヴィを突いてみる。
レヴィは目を閉じて、頭を縋りつかせた。
「んっ…あんっ」
「気持ち良いよ」
レヴィの腕の締め付けと同時に、俺の背中に痛みがあった。衝動のやり場が無くなって、爪に力が籠もってたみたいだった。
「ロック…」
かろうじて自分のしている事を理解したのか、心配そうにこっちを見つめてきた。俺はその頭を無理やり抱き込む。
「構わない」
腰の動きを少しずつ激しくしながら、レヴィの頭を撫で続けていた。
性感の絶頂が近づく頃、逆にレヴィの正気は戻って来た。もう、お互いの理性は飛びそうになっていた。
「な、中で…」
レヴィの脚が俺の腰に絡められた。
「い、良いのか?」
「は、始めて…」
「…?」
「始めて…中に出されても良いって思ったんだ」
俺の顔を見つめ、疲労と汗を浮かばせながら、問う。
「が、ガキが出来る事が構わねえ訳じゃねぇ。でもお前なら…」
脚のクラッチを緩める様子は無かった。俺はレヴィの唇を塞ぐ事で答えた。
「あたしの中で…」
「…わかった」
- 729 :700 日本編ロック×レヴィ1/4 :2007/05/30(水) 00:37:59 ID:pMN8pm5G
これ以上の言葉は要らないと、レヴィのキスが激しくなる。最後まで相手を感じていたいからだと思う。けど。
もう一言伝えたい事があって、キスを止めさせて、頭を離す。
「…?」
ぼうっとした顔で、それでも俺の目を捉えてくれた時に、言った。
「愛してる」
「…」
また泣きそうになったのか、何も言わずに俺の胸に頭を置いた。引き剥がすなと言わんばかりに、腕に力が込められた。
「…っ!」
俺は息を荒れさせながら、敢えて声を殺して射精した。レヴィも沈黙のまま体を震えさせて、達した事を告げた。
「いつもは気分悪いのにな…」
布団を被りなおして、向き合いながら体を休めていた。レヴィは俺の首筋に指を這わせたりしながら、呟いていた。
「客とか取ってた日にゃ胸クソ悪くてすぐ眠ってたのに…今は目が冴えてるんだ」
「疲れてないのか?」
「いや…めちゃくちゃ疲れた。誰かさんが怒らされたり、泣かされたりしたからな」
上目使いに俺を見上げた。返事をしづらくて目を逸らす。
「嘘だって。疲れてるが、正直気持ち良いって言うか…心地良い」
「…そっか」
今度は俺が言ってみた。
「今の俺は届いてるのか?お前の手の届く所…」
「さあてな…」
少し残念そうな溜め息。俺の腕を枕にして、天井の方を向いていた。
「人間ってのはどんだけ足掻いても一人なんだ。それに明日ロアナプラに帰る時には…いつものあたしに戻ってる」
天井にあの綺麗な手をかざして、眺めていた。
「明日にはコイツとカトラスでまた…だ。張り合いがねぇか。お前がどんなにしてくれてもあたしは変わらないだろうぜ?」
- 730 :日本編ロック×レヴィ 2/4 :2007/05/30(水) 00:39:24 ID:pMN8pm5G
- 俺はその手を包み込んで、指を絡めて下ろした。
「そうだよ。俺にはこれ位しか出来ない。でも…さ」
俺も天井を見上げた。
「変わってないって言うのは違うと思う」
「どうしてそう思う?」
「俺たちが此処まで来たのが、こういうことになったのが、その証じゃないか?」
「…」
「ロック」
「なに?」
「言いたいことがある」
布団を深く被って、俺の胸元に潜り込んできた。耳元にレヴィの唇が、触れそうな程接近してくる。
そして、俺だけに聞こえる様に、誰もいないのに俺だけに伝わる様に、言った。
「あたしは今…すっげぇ幸せだ」
何となく愛しくなって抱き締めた。
「も、もう寝ようぜ?明日、早いだろ?」
「あ、ああ」
「暑苦しいかも知れねぇけどしっかり抱いてろ!絶対だ!」
「わ、分かってるよ」
俺とレヴィの呼吸が緩やかになって、それが寝息になるまでそんなに時間は掛からなかった。
寒い…寒い。この街は寒い。眠ったら死んじまう。腹が減った。体が痛い。金が欲しい…
「お嬢ちゃん?」
「うん?」
「一回幾らだい?」
…
こんなモンか。ちょっと股が痛ぇだけだ。とりあえず金は手に入った。これで生きていける。
なのに何であたしは…泣いてんだろ。
気分悪い。道徳心なんてモンは無いと思ってたのに…本能ってヤツか。
ゴミだらけの、ボロボロの道を歩く。幾ら金が無くってもあんな事はしたくねぇ。だからあたしはここで死ぬ。人通りの少ない路肩で、カラスに突っつかれてる犬猫みてぇに。
…
- 731 :日本編ロック×レヴィ 3/4:2007/05/30(水) 00:40:44 ID:pMN8pm5G
- …
寒さで目が醒めた。エアコンが切れていて、暖房が効いていない。リモコンを押しても反応が無い。
寒さをこらえつつベッドに戻ると、レヴィの肩はシーツから出ていて、寒そうだった。決して安らかでは無い寝顔。何故か涙の痕があった。
少しでも良い夢を見られる事を信じて抱き直す。
…
なんだ?熱い?いや…温かい。こいつが天国への階段なら悪くないかもな。
目の前の景色が…ゴミの山が変わっていく。
「迎えに来たんだ」
「誰だテメェ?」
「お前とは逆の位置にいる人間だよ」
「…用はねぇ。さっさと帰りな」
「そうかな?少なくとも俺は用がある」
「は?」
「家族だしな」
ゴミの山が…ありゃロアナプラの暴力教会だ。なんだ?全うな教会見てぇに赤絨毯なんか敷いて。結婚式でもやるのか?
ここでやるおめでたい馬鹿はどいつだ。祝砲くらいくれてやるぜ。
「おーいトゥーハンド?」
「ん?」
「じっとしてろよな。せっかくこのエダ様が調えてやってんのに…」
あたしはコイツに何を頼んだ…何だコレ。動きにくそうな服だな。引きずっても文句言うなよ。白すぎてすぐに汚れちまう…
「全く…教会人らしい仕事を一番らしくない奴にしてやるとはね…」
「あら、似合うじゃない?」
「ん?ああ、姉御」
何しに来たんだ。しかもガキなんか抱いてきて。髪の色に見覚えがあるガキだ。
「この娘、父親似じゃないかしら?髪の色は母親似だけど」
「ん?」
「親が親だからどんな娘に育つか興味深いわね。素質があったら英才教育してあげるわ」
「悪いがお断りだ。余る位出来たら一人位やるかもな」
「じゃあヤポンスキーには頑張ってもらわなくちゃ」
ん?なんであたしは返事出来たんだ?それにヤポンスキーってロックだろ?
訳がわからねーけど。あたしは…
いつの間にかあの場所からおさらばして、こんなモンも見れる様になったんだ。流石にこいつは夢のままだろうが…それもロックのせいなんだろうな。
言ってやる。
…ありがとよ。ロック。
- 732 :日本編ロック×レヴィ 4/4:2007/05/30(水) 00:42:26 ID:pMN8pm5G
- …
「ロック…」
「…ん?」
レヴィの寝言が聞こえて、目が醒めた。相変わらず俺の胸の中に、子猫の様に丸まって、すやすやと寝入っていた。
なんとなく安心して、部屋の周りを見渡す。相変わらずエアコンは動いていなかった。
次いでに、壁時計が目に入る。短針が2時と3時の間の辺りを差していた。外からの灯りは薄暗い。
「えーと…」
頭を振って眠気を醒ましながら、飛行機の時間を思い出した。
…12時の筈だ。
「ん?」
夜中の2時3時に、薄暗いと言う筈が無い事を思い出す。まさかと思い、デジタル時計を取り出した。
「えーっ!」
「ん…何だ」
「起きてレヴィ!起きて!」
「あ…?」
「コレコレ!」
見せたデジタル時計は14:25。要するに。
「…オーバーだな」
「どうしよう!」
「…明日帰りゃ良いだろ?」
レヴィに動じた気配は全く無かった。
焦る俺を、無理やりベッドの中に引き込む。
「レ、レヴィ?」
「寒いんだよ。出んな」
「…はぁ」
「後で連絡すりゃ良いだろ。それに…」
指で俺の唇に触れてきた。
「あっちじゃ…出来ねえかも知れねぇぞ」
「う…」
「もう少しゆっくりしろよ…」
瞳を閉じながら、話しかけてきた。
「とりあえず寝て、飯食ってシャワー浴びて、夜になったら一汗かこうぜ」
「…」
「…しっかり温めてくれよ。寝る」
「…ああ。お休み」
レヴィはまた眠りに入った。俺には動くなと厳命して。
ロアナプラに戻った後、この予定外の一日をダッチやベニーだけじゃなく、エダにまで突っ込まれてレヴィは災難だったらしい。もちろん、俺は口を割っていない。
帰った後も治めきれずにレヴィとしてしまって、ベッドの音や俺達の声がダッチに丸聞こえだった事に気付くのは、帰還して一週間後だった。
終