- 826 :ロック×レヴィ1/3:2007/06/17(日) 21:55:20 ID:D8wSBIlI
- 空調はそこそこで、湿度や温度は快適だった。でも換気は悪くて、窓を開けた。
レヴィは俺以上の愛煙家だ。行為をする前、行為をした後。必ずと言って良いほど最初にライターを手に取る。
テーブルの上には二つの銘柄の煙草と、半分一杯になった灰皿。灰がまわりに散っていて、純白じゃ無い白いテーブルを汚していた。
しわくちゃになったシーツの上で、俺はレヴィの隣に座り、下半身の下着だけ着けていた。
レヴィは背中に若干の汗を滲ませたまま、俺が居るのを気にせずベッドの端に腰掛け、全裸のまま煙草を吸っていた。
俺が一応の気遣いを込めてシーツを背中に掛けてやっても、レヴィは応ずる事も無く空を眺めていた。
部屋の電灯は黄味が掛かった灯りで、割と狭くない部屋を照らす。風で揺れるカーテンの隙間からは、闇に居るラグーン商会と港が見えた。
「ふぅ…」
レヴィの一息が聞こえた。背中越しにベッドに両手をついて、胸を反る様にして天井を眺めていた。レヴィの視線と煙が同じ向きだった。
「なにやってんだろうな…わざわざダッチの目ぇ盗んで此処まで来て。お前とナニして」
視線をそのままに、まるで独り言の様に呟いていた。一応それに返事をする。
「…俺にもわからないよ」
「あんまり女って意識したくねぇから…本当はコレ自体好きじゃないと思ってた…」
大分灰に変わっていた煙草を灰皿に落とし、喰わえ直していた。相変わらず空を見たままだ。
「…」
沈黙が苦しくなって、俺もテーブルの、自分が吸っている方の煙草を取り出した。口にくわえてから火を点けると、空間を漂う煙の塊が二つに増えた。
- 827 :ロック×レヴィ 2/3:2007/06/17(日) 21:56:52 ID:D8wSBIlI
- レヴィは片手をテーブルの上のカトラスに伸ばして、手に取った。レリーフを指でなぞったり、自分の顔を銀色の銃身に写したりして、弄んでいた。
「ホント…どうしたんだろうな…」
「え?」
もう一度沈黙を破ったのもレヴィだった。カトラスに視線を向けたままで、俺に話しかけてきた。
「コイツが全てだ。何でも言うことを聞く。金も手に入る。ムカつく奴らに断末魔を教えられる。そう、一番の快感だ…だが」
「…?」
「最近は…」
今まで大切に扱っていたように見えたカトラスを、素っ気なくテーブルの上に置いた。ゴトリ、と鈍い音が聞こえた。
「…そうじゃなくなっちまった」
「…どうしてだ?」
「…わからねぇ。コイツじゃ手に入らないモンが…」
レヴィが煙草を外して、灰皿に擦り付けて消した。
「あるのかもな?」
大きく伸びをすると、せっかく掛けたシーツが落ちて全身が丸見えになった。俺を魅了する大きな膨らみが、目に入ってしまった。
俺は慌ててしまい、煙草を擦りつける。
「ロック、二回戦だ」
「え?さっきはしたくないみたいな事…」
「今は違う。むしろ…」
ベッドの上を這って、俺の背中側に回った。腕が伸びて来て、俺の首を緩く締めた。
肩の上にレヴィが顎を乗せた。
「抱いてもらいたいんだよ。お前に」
俺がレヴィの方を向くと、強く唇が押し付けられた。ついばむような細かいキスをされたかと思うと、唾液を交換しあうまで離されない深いキスもされた。
一息ついた時には、もうレヴィも、俺も出来上がって。
お互いの体を、絡めた。
- 828 :ロック×レヴィ 3/3:2007/06/17(日) 21:58:24 ID:D8wSBIlI
- 二度目の行為が終わった後、レヴィは大人しくなった。黙って俺の懐に潜り込んで、俺の胸板に指を這わせたりしていた。
「なあ、ロック…」
「…ん?」
「アタシを抱くって、どんな気分なんだ?ただ気持ちいいだけか?」
「正直それもある…けど、ちょっと光栄って言うか…」
「…」
「レヴィはなんか俺を手の届かない感じがしてたから…さ。正直、嬉しいかも知れない」
「アタシを抱けて…嬉しいのか?」
「ああ」
「…抱けて嬉しいって事は、アタシが好きなのか?」
「…そうかもね」
「…チッ」
俺に背中を向けてしまった。でも、懐から抜け出る気配は無い。照れているのかも知れない。俺は構わず話し掛けた。
「抱いたら柔らかいし、キスとかしたいと思うし、してる時は…結構可愛いとか思うし」
自分でもからかい半分と思える様な言葉でも、本気の言葉だ。レヴィは反応らしい反応をせず、灰皿の方を見つめていた。肩口の上下が穏やかだった。
「レヴィ?」
「…」
顔を覗き込むと、目が閉じられていた。疲れが出たと思い、しっかりシーツを掛けた後、俺も眠りに着く。
「このタイミングで寝るなんて卑怯だよ…お休み、レヴィ」
意識はすぐに飛んだ。
そうか…アタシもロックの事、悪いと思ってねぇんだ。
カトラスが通じねえし、アタシの心を波立たせる。けど、嫌じゃない。
…だからアイツは特別なんだ。
悪いが今はちゃんと言えねぇし、なんて言やぁ良いかわからねぇ。
いつかはっきりした時…言うさ。
愛してる。ロック。
終