309 :「いつも通り」1/3:2007/09/03(月) 21:38:26 ID:p0bG8IzL
「いつも通りそこで良いか? それとも今夜は混じるますですか?」
もう顔を上気させているシェンホアに訊かれて、私はいつも通り首を振る。
「わかたよソーヤー、でも気が変わったらすぐ言うね」
シェンホアはいつも通りベッドに上がる。私はいつも通りソファに腰を下ろす。
ベッドにはいつも通りの石鹸の匂いをさせたロットンがシェンホアを待っていて、
シェンホアがいつも通りガウンを肩からすべり落としながらロットンに絡みつくのを
私はいつも通り、ソファに座って見つめていた。

シェンホアとロットンが、私の性癖を割と短時間で理解してくれたのには助かった。
人工声帯を通したあの耳障りな声で、長々と理由を説明しないで済むのは嬉しい。
簡単に言えば、私は人に触れられるのがあまり好きじゃない。
人の体温というものがあまり好きじゃないのだ。

その点、死体はいい。
死体の肌はひんやりしていて気持ちがいい。
ぬるかった血が、少しずつ冷めていくのも素敵な感触。
そういうものしか私は好きになれないらしい。

――それはさておいて。
とにかく私は、大好きな2人が相手でも、ベッドの上で組んず解れつは嫌だった。

それは2人が楽しめばいい。私はそれを見ていられればそれでいい。
2人が愛し合うのを見るのは楽しい。でもそこに私が混じる必要はない。

だから私はソファの上で、2人が舌を絡めて口付けするのを見ている。
ロットンの手がシェンホアの乳房を揉みしだくのを、
その先端の突起を舌先で転がすのを、
シェンホアがその度に、跳ねるように反応するのを、
熱い吐息を漏らして身をくねらせるのを見ている。

310 :「いつも通り」2/3:2007/09/03(月) 21:40:47 ID:p0bG8IzL
シェンホアの体は、いつ見ても綺麗だ。
仙女みたいに綺麗な女の体に、股間からそそり立つ陽根。
それは見方によってはとんでもなくグロテスクだけど、
私にとっては両性具有の神様みたいに綺麗。
それが快感に溺れて悶える姿はもっと綺麗だと思う。

さっき始めたばかりだというのに、
ロットンのそこも、シェンホアの女の部分も男の部分も、
もう完全に相手と繋がる準備が出来てしまっている。
この2人はいつもそうだ。よっぽど相性がいいんだろう。
すぐに出来上がってしまって、それからは性質の悪い酔っ払いみたいに
気を失うまでひたすらお互いを求め合う。それこそ一晩中。
私もそれをずっと見ている。飽きることもなく、呆れることもなく。
ほら、どっちのものかもわからない先走りと、
シェンホアの蜜で2人の腿までてらてらと濡れ始めた。
そうなるともう、2人とも我慢できない。
シェンホアがロットンを自分の女の部分に導きながら腰を下ろすのと、
待ちきれなくなったロットンが腰を突き上げたのと、今夜はどっちが先だった?
スタイルはいつもシェンホアが上で、ロットンが下。
これはシェンホアのささやかなサービス。
そうするとソファに座った私に、2人の繋がったところや
シェンホアの顔、それからシェンホアの男の部分が良く見えるから。
見ていたい、と私が言うから、だから私に見せてくれている。嬉しい。

ロットンを受け入れて、シェンホアの男の部分がびくびくと震える。
シェンホアがもっと、もっとと言うように腰を揺する。ああ、気持ちいいんだ。
それを見ているだけで、私も気持ちいい。
体のどこにも触れなくたって、人間は脳だけで気持ちよくなれる。
ただそこに意識を傾けるだけで、私の子宮はとくとくと脈打ち、時には絶頂さえ迎える。
私はそれで充分だ。

311 :「いつも通り」3/3:2007/09/03(月) 21:42:50 ID:p0bG8IzL
でもそれは、シェンホアにはきっと分からない感覚。
シェンホアには、気持ちいいトコロが人よりありすぎるからね。
ロットンが腰を突き上げる。シェンホアが体を仰け反らせて応える。
そろそろ2人とも、1度目の絶頂が近そうだ。
私もキてる。下腹部が熱い。腰がぞくぞくする。
声帯のない喉の奥から熱い息が溢れてくる。
ああ、良かった。自分に声帯がなくて。
今は自分の喘ぎ声なんか聞きたくない。
どんどん上擦って余裕を無くしていく2人の声は、まるで共鳴する音楽。
その中に混じる私の声は雑音にしかならない。
声を出せない私の喉に、私はこの時だけ感謝する。

やがてシェンホアの声が悲鳴に限りなく近い高さになって、
それとは逆にロットンが低く呻いて、
シェンホアが白い樹液をシーツの上に撒き散らす。
その時たぶんロットンも、同じように自分をシェンホアの中にぶちまけて、
シェンホアの花芯の奥は、それを一滴も逃さないようひくひくと痙攣し、
ロットンを締め付けていたんだろう。
うん、わかるよ。手に取るように分かる。
だって私もその時、一緒に気持ち良くなっていたんだから。
そう、いつも通りみんな一緒。

「――ソーヤー、次から混じるますですか?
 おちんぽ2本もあるますですから、きっとソーヤーも気持ち良くなれるます」
まだ荒い息を吐いているシェンホアが、ベッドの上から訊く。
「ロットンが私に入れて、私がソーヤーに入れる。
 それ、とても気持ち良いと思う、違うますですか?」
違わないと思う。
でもね、シェンホア。私はそれでも見ているだけがいい。
やっぱり生身の人間の体温が、私には好きになれない。

私がいつも通り首を振ると、シェンホアは苦笑いしながら、
再びロットンの体に没頭し始めた。

いつも通りの夜が更けて、私たちはいつも通り幸せ。




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