484 :名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 00:59:35 ID:/y+vHTod
「レヴィ?」
「…んー?」
「…行って来るよ?」
「へいへい…」
あの声からすると布団から出た気配は無いな…

俺は一人暮らしの頃と変わらない勢いで朝食をかき込んで、家を出るところだった。スーツと鞄の在処を聞く必要が無いのは自分で家事をこなしてるから。
…慣れてるから特に悪い気はしないんだけど。
時計の針の進み具合に危機感を感じで、歩みを早めていく。いつもと大差ない朝だ。



少しずつ冷めていく隣の抜け殻が切ない。ロックの寝ていた場所。
本当なら力づくでも引き止めて目覚めのキスでも構してやりたかったが、元々の生活リズムがあっちの方が圧倒的に早くて大抵実行出来ない。
…アタシだって疲れてるんだよ。
二度寝しようと思う前に、寝ぼけた頭が妙な感じに働く。
寝返りを一回して、その抜け殻に入ってみた。
微かに体温とシャンプーの匂いが残っていた。帰りが遅かったからだろうか。
そのシーツにくるまって、もう一度意識をまどろませていく。
「…もう少しくらい居ろよ…」


遅刻寸前でデスクに着けて、午前の仕事を終えた所だった。今は食事前に屋上で煙草をふかしている。
横に人がやってきた。部長(勿論人事)のバラライカさんだ。長身の美人でやり手で、何故か常に昇進の噂が耐えない人。唯一の不思議と言えば男の気配が無い事だろう。
仕事の鬼として有名だけどその一方で言葉が深い。悪戯心があるのか、からかってくる事もある。
「食事前に吸うのは良くないぞ?」
「…人の事言えるんですか?」
「私はいつでも取れるからな」
懐から取り出した煙草を見て、俺はすぐそれに火を点けた。

485 :名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 01:02:14 ID:/y+vHTod
けだるそうに手すりに寄りかかる姿からは、鬼になった時の想像はつかない。

「…新しい生活はどうだ?」
「おかげさまで…」
「家事は?お前がか?」
「ははは…仕様が無いです…」
「…あの娘(レヴィ)には勿体無い」
バラライカさんはレヴィと面識があった。聞いた所じゃ、とある世界の先輩後輩の仲だったとか。誰に対しても邪険にするレヴィの、唯一の例外だ。
俺達の生活に関して助言が出来るのもこの人だけだろう。
「たまには代わって貰え。子供が出来たら目も当てられん」
「子供…ですか?」
「どうせ盛んなのだろう?…あの娘は乳がよく出そうだ」
「…セクハラだ…」
「パワハラだ。私は好きな様に口を出す」
確かに抵抗する気は起こせない。口答えすると家まで追ってきそうだ。
「まあ子供は…相手が嫌がるだろう」
「え?」
「お前は悪くない。だがあっちが若すぎるからな…欲しければ粘れ」
手すりから体を離し、灰皿に灰を落とす。今の言葉が妙に印象に残った。


時計は昼過ぎを回っていた。どうやら二度寝にしては相当深かったらしい。 しぶしぶ抜け出して最初にやる事は。
シャワーと洗濯だ。
浴び終わると裸のままで冷蔵庫を漁る。中にはロックが作り置きしたフライがあって、アタシはそれを摘む。昼飯代わりだ。
その後はメールを覗いた。ロックから頼まれた食材を買いに行かなきゃならなかった。一応洗濯物を干した後で出る。
どうも隣にアイツが居ないと無気力になりがちだ。
食材を買えばアタシの仕事は終わり。風呂はアタシの気が向いたらでいいらしく、掃除は常にロックがやるからやらなくよかった。
「嫁としては甘やかされてる部類だろうけどよ…」

退屈はアタシにとって憂鬱だ。それでも家に帰った時、おかえりをどうしても言って欲しい奴が居るらしく、アタシは待ち続けている。

「…今夜はどうするか…」
夜の妄想が止まらなくなった。食事も何もかも全部吹っ飛ばして、すぐに押し倒される。そういうのもアリだ。
もう「ちゃんとした」分遠慮する必要も無い。
問題は誘惑の手段だった。いつもベッドに飛び込む頃には全部脱ぎ捨ててしまう程ヒートアップする。
あっと言う間に加熱するアイテム。ロックの理性を無くさせる程のアイテムが必要だった。どうせなら意外な物が良い。アタシに縁の無い物、場所。


486 :名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 01:04:28 ID:/y+vHTod
家事全般をこなすロック専用で、アタシと無縁の場所と言えば。思い当たる所があって、その場所を探った。

「こういうのアイツ好きか…?」
帰ってくるまでに試してみる。




492 :名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:33:09 ID:KCchUynF

今日は残業も無かったから、早めに家路につけた。あまり遅く帰ると話し相手のいないレヴィを待たせてしまう。それはできるだけ避けたい。
「案外寂しがり屋なんだよな…」
本人の前で言うときっと怒られると思って、一人で苦笑いした。
秋口で寒くなっているのも関係無しに、俺は体が暑くなるくらい急いで帰る。冷たい空気が逆に、同居人のいる部屋の暖かさを改めて感じさせてくれるのが楽しみだ。

「はぁっ…」
気がつくと息切れしていた。一応しっかり呼吸を整えて、平静を戻して玄関のノブに手を掛けた。
「ただいまー」
…出てくる気配が無い。いつも事だけど。
「レヴィー?」
「…お、おかえり…」
「…ただいま」
返事が遅れるのは慣れてないからだ。元々他人を出迎えるのが大嫌いだった。
早くその姿を拝みたくて、靴を脱ぎ捨ててリビングに駆け込む。

「今日は早くかえれ…た?」
「ご、ご苦労さん…」
ピシッと右手を挙げたのはいつもの仕草として。どういう事だろう?
珍しい服装だ。その服自体に見慣れてない訳じゃない。着ている…というか着けているのは俺の…

「…え、えと…サービスって受け取って良いのかな」
レヴィが無言で首を縦に振る。
「…こういうの…ダメか?」
「いや…嫌いじゃないと思う…」
「な、何かする事はねぇのか?まだアレもしてないだろ?」
「あ、ああ」

帰宅時の決まり事と言うべきキスを交わす。いつもは軽いキス。でも今のキスは、何かの危険を孕んでいた。

493 :名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:34:20 ID:KCchUynF
俺は赤面しながら、もう一度その姿を見直した。

ブルーの生地は男物である事を表している。いつもは俺が食事前に着けてる物。
エプロンだ。
かなり後ろを強く締めたのか、レヴィの凹凸の豊かなボディラインが布に沿って表れていた。
胸の膨らみは頂点が布越しでも解る。男物のせいで胸元は開けていて、身長の関係から谷間を覗けた。レヴィの胸の弾力が強すぎて、乳房が圧迫されてこぼれそうなのが見て取れる。

「ど…うだ?似合うか」
「あ…え?」
「本当なら絶対にあり得ねえからな…サービスだ」
「に、似合ってるよ…」
このままじゃ理性の崩壊は免れそうにない。今日は体力に余裕の有る分、そっちの方まで頭が動いてしまう。
割り込むように先に食事だと、言い聞かせた。
「先…に晩御飯…」
「脱がさないと作れないだろ?」
「え?」
「ひでぇなあ。裸の嫁さんほったらかして晩飯作りか?」
「どうすれば…」
「…脱がすのを許されるのはベッドの上くらいだぜ?」
妖しくて悪戯な表情。一発の押しが、今日は妙に強い。応えてやるべきか悩む。それ程経験の無かった強い誘いだ。
正直嬉しいのも間違いない。
でもどこかで慣れの少ない自分が「まだ待て」と言っている。
「腹減ってるんじゃない…のか?」
「…一度やってみたかったんだよ。ほら、メシ作れねぇし…」
「やってみたかった事って?」
「…」

両手を引っ込めて、上目遣いに俺を見る。
…妙にドキッとした。

「ば、晩飯の前にアタシを食べて?…とか言ってみたりして…」


505 :名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 09:13:41 ID:hn0m2oj7

気がつくと。言われた通り食事をぶっ飛ばしてベッドに寝ころんでいる俺がいて。隣の被害者は…珍しく肩で息をしていた。

「し、死ぬかと思った…」
「ごめん…」
「メシもまだだってのに…」
「それはレヴィのせいだろ?」
「…今度はもうちょい考える」
間をおいて、余韻が抜けきる頃になると、すり寄ってくる。俺の首筋の辺りに頭を置くのはいつもの癖だ。
キスマークをくれる時は機嫌が良い証拠だ。今日は幾つか貰えた感覚があった。

「…くくくっ」
「ん?」
「また…やってみような?今度は何が良い?」
それこそ隠れた趣味をあげていけばキリが無い。
レヴィの体なら胸があるから和服…他にもなんだってあるだろう。
「…変なのはナシな」
「変なの?」
「ラジカールレヴィちゃんとか。胸元の微妙な谷間見せデザインに作者の愛を(ry」
「あれはアレでアリだと思うけど…何気に和、中は制覇してるから後は…」
「?」
「洋?」
「どんなのだ?」
「ドレスは外せない」

それから少しして、天井を眺めている内に、バラライカさんが言ってた事を思い出していた。
少なくとも俺の目からはレヴィが…嫌がる理由は見当たらない。
レヴィに「避けろ」と言われた記憶も無く、わざわざ避妊らしい避妊もしていない。と言うことは、強い拒否は無い筈だ。どっちにしても聞いてみないと解らない。


「どうした?」
「うん?」
「急に黙ったじゃねえか」
「…ちょっとね」

506 :名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 09:17:25 ID:hn0m2oj7
「あの…さ。家族が増えるのは…どう思う?」
「あん?家族が増えるってのは…」
「その内出来る気もするだろ?」
「…」
「…レヴィ?」

「別に…避けさせちゃいないだろ…」
歯切れの悪さが、はっきり伝わった。機嫌の悪そうな目の逸らし方。何か不満があるらしい。一応逃げない様に、抱き留めておく。
「…せっかくお前とアタシでそうなれたんだ。ただの「キモチイイコト」で済ます気も無い」
「…何かあるならはっきり言ってくれ」
「…」
しばらくの沈黙。丁度表情を見せない位置に頭を置かれた。柔らかい手は、俺の胸に沿わせたりしていた。

「出来たら…嬉しいさ。お前とのガキなんて嬉しいに決まってる…けどな」
「…」

「…もう少し二人が良い…」

バラライカさんの言った事は、ここに繋がっていた事に気付いた。
意外な事にレヴィが心配していたのは俺の注意がレヴィ以外の誰かに行くことで、自分の子ですら例外じゃなかったらしい。
それでも避けないのは、俺が欲しがった時に応えるつもりだったからみたいで。

「バカだろ?そこまでヤキモチ妬きそうになってんだ…」

聞けば聞くほど。
「可愛い」
「へ?」
俺も応えてやりたくなった。


「あ〜…」
「…やりすぎた」
「ロックが凄い…ロックが凄いんだよ…」
「…」
「食べられちまった…ご馳走様された…」

レヴィの焦点は微妙に合っていない。姿勢もフラフラしっぱなしで、目が覚めてるのに夢の世界に行っていた。
放心状態だ。
…理由は間違いなく俺だけど。

「…晩御飯作ってくるよ」
「ふぇ〜…」

一日は過ぎていく。一つ屋根の下に居て。…レヴィには悪いけど、近い将来妊娠は免れないだろう。あれだけ容赦なくお互い暴走してしまうのだから。

ごめん、レヴィ。控えろとか避けろって言われても無理。可愛いし、綺麗だし、そんな事言われれば…







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