657 :641:2007/11/09(金) 23:37:47 ID:lC9lFOwA
―――好きだよ。



「ロック、ちょっと話があるん・・・」

レヴィがドアを開けようとした瞬間にその言葉が聞こえてきた。

部屋の中でロックは誰かと電話中らしい。
何時にもなく優しい声で話しているのがわかる。
レヴィが呆然と立ち尽くしている間も話は続いているらしい。



―――ああ、嘘じゃないよ。



その言葉が自分に向けられるべきはずなのに、とレヴィは思う。
どこの馬の骨ともわからないやつにその言葉を言ってほしくなかった。

ロックはよっぽど鈍感なのかレヴィが扉の向こうにいることに気がついていないようだ。

―――今度、会いにいくから。その時に話そう。・・・じゃあ、また。



受話器を置く音がする。
今聞いた内容がレヴィには信じられなかった。
ロックの声が頭の中にこだまする。
上手く立っていることができない。
平行感覚が狂うのを感じる。

「嘘だ・・・ろ・・・」


「誰だ?レヴィか?」

バタバタバタッ

レヴィの声に気づいたのか、ロックがドアの方に近づいてくる。
その場所から逃げ出すことしか出来なかった。

658 :641:2007/11/09(金) 23:39:31 ID:lC9lFOwA

「・・・ははっ。なんだあいつ、恋人がいるんじゃねぇか・・・馬鹿なことするところだったぜ・・・はは」

ロックに恋人がいたということがレヴィを打ちのめしていた。

ロックと話して、キャラじゃないけどその時に・・・告白を・・・しようと思っていたのだ。


「言う前にわかってよかったぜ」




なぜか顔から水が出やがる。アメリカにいた頃に枯れたもんだと思ってたのに。

ロックという存在がレヴィの人間らしい感情を表に出させる。

ロックに会ってからのこと、そしてロックに会ってから変わってきた自分を思い出していた。

最初はいけ好かないホワイトカラーだと思ってた。

あたしのことにえらい干渉してきてうっとうしくて嫌だった。


・・・でも。
それだけのやつじゃないって知ったから。

段々と認めて、一緒に日本にも行ったりもした。最初じゃ考えられねぇことだ。

前ならすぐキレて手がつけられなくなるって、ダッチにも言われてたけど、あいつのおかげで少しは我慢ができるようになった。



あたしがロックを好きで、ロックがあたしを好き。

好きだけじゃ片付けられはしないが、そんな関係が当たり前だと思ってた。

そう思ってたのがあたしだけだと今やっとわかった。

何を期待してたんだあたしは。世の中は不公平。そういうことだろう?


空回りしていた自分がすごく惨めな存在のように感じる。

馬鹿みたいだ・・。


「くそっ・・・止まれ・・・止まれよっ」



レヴィの目から大粒の涙が零れ落ちていった。


661 :641(続きエロまだなし):2007/11/09(金) 23:58:53 ID:lC9lFOwA

「ロック、最近レヴィの様子おかしかねぇか?」


雇用主であるダッチがロックにそう切り出したのはわけがある。

レヴィとロックの間で何かあったのかと思ったためだ。ダッチにしてみれば2人の雰囲気がおかしいと仕事もやりづらくなるから当然の行動である。




「ああ、最近オレの顔を見ないかな。」



ロックがレヴィの気持ちに気づいていないからとはいえ、それで済まされてしまうのはダッチにはレヴィが少し不憫に思えた。


「なんか衝突があったわけじゃないんだな?」


「衝突した覚えはない。」

ロックはダッチの質問にすぐに答えた。



「オーライ。それだったら早い所、レヴィの機嫌を取っといてくれ。仕事に支障が出たらたまらねぇ」

「わかったよダッチ。何とかしてみる」

「クールに頼むぜロック」

ダッチはそういって仕事に戻っていった。


662 :641(続きエロまだなし):2007/11/10(土) 00:01:02 ID:lC9lFOwA
確かに、最近のレヴィは少し変だ。
この前まではいつも一緒にイエローフラッグに酒を呑みに行ったもんだが、誘っても断られる。
かといって家にいるかというとそうでもない。どこにいるのやら、帰ってくるのはいつも朝方。
ダッチにはああ言ったけど、少し不安だ。いや、すごく不安。

「あいつすぐ暴走するからなぁ]

被害にあうこっちの身にもなってほしい。
最初に会ったときから変わってないあの性格。
いや、少しキレにくくなったかな。

「仕方ない、話を聞きに行くか。」

とにかく、レヴィが行きそうなところを回ってみることにするか。
歩いてると町のやつらがレヴィの行動をオレに報告してくるわけだから歩いているだけでいいのは助かる。歩いていると町のやつがレヴィの行動でオレに文句を言ってくる。
いつもより多い文句の数に、頭がどうにかなってしまいそうだ。

「これは、結構ご機嫌斜めかな・・」

何もしてないのに蹴り倒されたとか、いつもより短気だったとか物騒な内容ばかり聞かされる。
今日は、いや当分関わり合いたくないという気持ちが頭を掠める。

ロックは頼まれたら断れない性格だ。
今日もダッチに頼まれたからという理由がストッパーになって、結局レヴィを探してしまっている。

「オレも、損な性格だよな」

おそらくレヴィはいつもの場所、イエローフラッグにいる。そこで、ラムを大量にあおってるだろう。
そろそろ迎えに行かないと誰かに喧嘩を吹っかけているだろう。

ロックは大きくため息をつくと、口にくわえていたタバコを地面に捨て、その場所に歩いていった。




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