485 :とある日常:2008/11/16(日) 01:01:58 ID:KwuQ297F
……さら、さら
優しく前髪を撫でる掌から、暖かい温もりが伝わる
「……ん、んん」
二日酔いで貼り付いた瞼をムリヤリ引き剥がし、やけ酒後の働かない頭で、去った筈の男を見上げた
タバコを燻らしながら、前のように優しい目で見つめている
昨日の怒りに満ちた視線とは、エライ違いだ
つまらない口喧嘩から、殺すの殺されるのというマジ喧嘩に発展し、アイツが部屋から出ていったのは、夢じゃ無い筈だ
アタシが劣等感から絡んだ喧嘩だから、アイツから折れることはない
それなのに今、アイツは穏やかに髪を撫でてくれている
「……何でだよ」
聞かなくてもいいことを口にした
夢ですらいいはずだ
この、温もりを得られるのなら
それなのに、ひねくれた心は尋ねてしまう
「しょうがないさ
そんな姿をみたんじゃ」
そんな姿?
なにいってやがん……、アッ
「素肌に俺の背広一枚か
そんなに俺が恋しかったのか?」
「ちっ、違っ……!
これはそのっ、寒かったから……」
そう、寒かった
常夏のロアナプラで、エアコンがぶっ壊れた部屋にいても……
寒かったから、アイツが残した温もりにしがみついた
アイツを素肌で感じたかったから……
「とにかく、コレは返してもらうよ
財布もこっちに入れてるんだ
このままじゃ帰れない」
「アッ」
無情にも、服を引き剥がされた
こんなに寒いのに


ギュッ!


恥も外聞もなく、哀願しそうになったアタシを、アイツの熱い胸が捕えた
「俺も寒いんだ」

凍えかけたつがいは、温もりを与えあった







とあるバカップルの日常





667 :とある日常 ロックサイド:2009/01/18(日) 22:06:36 ID:HOX/X2f3
「レヴィのバカヤロォ……」
ボロい屋台で安酒を煽りながら、酔っ払いは呟いた
理由も思い出せないほど些細な口論から、殺す殺されるのマジ喧嘩に発展
朝まで一緒にいる筈だった、レヴィの部屋を飛び出てきたロックは、怒りが治まらないまま、道端でグズグズと飲み続けていた
「だいたい、アンな癇癪玉に付き合ってられるか!
もっとましな女は掃いて捨てるほどいるさ」
一人虚しく罵りながらボトルを傾けるが……
「チッ、空いちまったか」
グラスの底に僅かに残っていた酒を、一気にノドに流し込む
「お代わりだ」
「大丈夫?お客さん」
「心配すんな、金なら……」
胸元の財布を叩きかけて、ハタと気づいた
『上着着てない!?』
財布もそこに入れていた
ベルトに仕込んでいたなけなしの隠し金をはたいて、酒代を支払う
これで無一文
「……取りに行くしかないよなぁ」
背広はともかく、財布も鍵も全部一緒だ
取り返さざるを得ない
『……戻れる』
呟いたロックは、頬が少し弛むのを感じた
「イカン!
なに喜んでんだ!?オレ」
バシッ
頬を叩いて、気合いを入れ直す
「背広と財布を取り返しに行くだけ
奪いとったら、そのままオサラバだ」
ブツブツ呟きながら、レヴィのヤサに向かう
風が当たり、この蒸し暑いなか、なんだか背中が寒く感じる
レヴィの部屋を出るとき、追い討ちで飛んできたグラスの酒がかかったからだろう
濡れた背中が、スースーし続けていた
慣れた道のり行くロックの足は、その背の冷たさに追われるように、だんだん速くなっていた




668 :とある日常 ロックサイド:2009/01/18(日) 22:10:00 ID:HOX/X2f3

静まりかえったレヴィの部屋
こっそり入ろうかとも考えたが、バレたら容赦ない鉛玉が飛んでくるだろう
ロックはしぶしぶ、ノックと声かけを実施した

トントン
「……レヴィ」
………………
…………
……

返事はない
ノブを回し、ゆっくりドアを開き中を伺う
……スースー
耳をすますと、かすかな寝息が聞こえた
『寝てるのか……』
ホッとしたような、ガッカリしたような……
起こさないよう、奥に入っていくロック
明かりは着いたまま
怒りのままに当たったのだろう
テーブルや椅子はひっくり返り、アチコチに銃痕まで残ってる
荒れ果てた部屋の隅
その主が、ベッドで丸くなっていた
雑然と散らかった部屋の中から、ロックが背広を探すことは無い
もう、見つけていたから
「……レヴィ」
こんこんと眠り続ける彼女は、その素肌に一枚、ロックの背広だけを羽織っていた
身体を小さく丸め、合わせをシッカリ握り締めて、すがりつくかのように……

ロックの胸に、愛しさが溢れかえる
枕元に腰掛け、大事な宝物を見守った

無心に眠る表情は、何時もより幼く見える
その頬が、一筋濡れていた
たまに、つらそうに眉をしかめ、自らを抱きしめるように、体を丸める
「……ロック」
夢の中、絞り出すかの如く、小さな声で男を求めた
堪らなかった
つい、手を伸ばし、汗で張り付いた前髪に触れる
レヴィの表情が、穏やかなものに変わった
ロックの手にすがるように、自らの頭をすりよせる
『どうして、こんなにも愛しいものを、手放そうとしたんだろう』
悔恨の思いに悩みながら、ロックは煙草に火を点けた
自分の物ではない
傍らに転がっていたレヴィの煙草だ
片手で拾い、片手でくわえた
強すぎてあまり好みではないはずの紫煙が、今はレヴィの香を思わせて心地よい
大きく吸い込み、大きく吐きだす
『煙草の利点は、好きなときにため息をつけること』なんて言葉を思いだした



669 :とある日常 ロックサイド:2009/01/18(日) 22:15:34 ID:HOX/X2f3
「……ん、んん」

むずかる子供のような声
身動ぎを繰り返しながら、レヴィが目を覚ます
眩しげに目を眇め、ロックをみつけた
状況が掴めないのか、コロコロと表情が変わる
安堵、喜び、疑問、怒り、困惑、哀しみ、また安堵……
「……何でだよ」
様々な葛藤の末、絞り出した言葉
レヴィは突っぱねたつもりだったが、後悔と不安がにじみ出ていた
「しょうがないさ
そんな姿をみたんじゃ」
一瞬、怪訝な表情になるが、すぐに自分の格好に気付いたレヴィは、激しい動揺をみせる
「素肌に俺の背広一枚か
そんなに俺が恋しかったのか?」
ロックは、そんなレヴィを楽しげにからかった
「ちっ、違っ……!
これはそのっ、寒かったから……」
狼狽して妙な言い訳をする
八つ当たりの弾丸をくらい、エアコンは昇天していた
裸に近い格好でも、ジットリと汗がふき出している
でも……
「とにかく、コレは返してもらうよ
財布もこっちに入れてるんだ
このままじゃ帰れない」
「アッ」
ロックは、レヴィから背広を引き剥がした
絶望に顔を歪めるレヴィ
幼な子のようにすがる瞳

ギュッ!
「俺も寒いんだ」
我慢できなくなったロックは、レヴィを懐に捉える
「アッ、アアッ」
歓喜に声も出せないレヴィ
ロックの背に手を回し、キツく抱き寄せる
お互い、失いかけた半身を離さないように……



670 :とある日常 ロックサイド:2009/01/18(日) 22:22:34 ID:HOX/X2f3

チュ、クチュッ
言葉を紡ぐことの出来なくなった口は、別の手段で意思を伝える
舌はもつれ合い、混ざりあった唾液を啜りあう
ロックの手が蠢き、レヴィの豊満な胸に触れた
尖りきった乳首からしっとり汗ばんだ乳房を、まるで肌に溶け込ませるように、執拗に揉みしだく
呼応するかのように、レヴィの手がロックのYシャツを引きちぎり、素肌をさらす
ガブッ
思わず噛み付くレヴィ
ギリギリと立てた歯が、皮膚を突き破った
滲む血を啜り、飲み下す
激しい刺激が転換され、ロックには痛みすら最高の快感となっていた
『もっと繋がりたい』
もはや、それしか考えられない
ズボンを千切らんばかりの勢いで、引き摺り出した剛直を、レヴィに叩き込んだ
「ヒギィッ!!」
ロックの肌にムシャブリついていたレヴィが、首を反り返して悲鳴をあげる
白目をむくほど感じ、ヒューヒューとノドを鳴らして喘ぐレヴィ
鮮血が、普段はささない口紅のように唇を染めていた
余りの色気に堪えきれず、間髪与えずもう一度唇を奪う
呼吸を阻害されながらも、レヴィは口を離そうとはしなかった
それどころか、がむしゃらに、ロックにしがみつく
上半身を密着させながら、下半身は激しく蠢かすロック
合わせてロックを締め上げるレヴィ
噴き出した潮でしどしどに濡れた胯間から、フェロモン臭が立ち込めた
ロックは、忙しく手を動かす
髪を撫で、耳を擦り、首筋に指を這わせる
滑らかな背中を撫で下ろし、締まった尻をわしづかむ
アナルまで犯し、深く指を突き入れた
レヴィは全て受け入れ、流されんとロックの背に爪をたてる
官能の波を受け続ける二人に、最後の大波が訪れた
「「アアッ〜〜〜〜!!」」
ロックはレヴィの腟中に吹き出し、同時にレヴィも高みに達する
長い射精
ビクビクと激しい痙攣を繰り返しながらも、お互いを抱きしめあった手は離さない
固く結び付いたまま、穏やかに溶け合うように落ちていった







「イテテテテ……」
激し過ぎたむつみ合いの後、ロックはあちこち痛む体に起こされた
胸は血が滲む歯形がついてるし、背中は引っ掻き傷だらけ
腰も痛むし、そこらじゅう筋肉痛になっている
最悪の体調だが、心は満ち足りていた
胸の中には最愛の女が納まっていたし、自分も彼女の中に納まったままである
痺れるような幸福の中、どうしても一つだけ心に引っ掛かることがあった







「何でケンカしたんだっけ?」






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