80 :名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 00:08:19 ID:8VC5C60y

ラグーン商会のガンマン、レヴェッカ嬢はその日、空腹で目が覚めた。
眠い。
だがそれ以上に腹が減った。
このところ立て続けに4件仕事が入り、補給と荷積みで数時間戻った以外は10日間ほぼ海の上。
だから昨夜は、今も欝陶しく絡みついたまま寝息を立てる男――ロックと二人、食事も摂らずに溜まりに溜まった
欲求不満を解消したのだ。
眠い目をこじ開けながら男の腕と足を払いのける。
(つーかコイツ突っ込んだまま寝てやがる…くたばれ!)
シャワーを浴びにベッドから抜けだした男が、戻って来るなり抱きついて来たのは覚えている。
無視を決め込んで、寝に入っていたのだが…まさかそのまま突っ込んで来ていたとは。
呆れてモノも言えない。
彼女が自身の乾きかけた身体に納まったままの男のソレをずるりと引き抜くと、密着しているためか内臓を引き
抜かれるような…いつもとは違う感覚。
「ん…ぁあ…っ…ぁ…」
やっべ、クセになりそう…そんな不本意な快感に眉を潜めつつ起き上がって時計を見る。
7時だ。
ウトウトしながらダラダラとヤり続け、男が抱きついて来た折には外が白み始めていた。
正味3時間位は寝ていたのか。
欠伸をしながらガシガシと頭を掻いていると腰に何かが絡まる感覚。
「……レヴィ〜?」
間抜け面で眠りこけていた男が目を醒まし、寝ぼけて腰に抱き着き頬を摺り寄せている。
中途半端に伸びたヒゲが腰にジョリジョリと当たって、痛い。
「…うぜぇよ…死ね」
悪態を一つ、そして空腹を伝える。
「んー?何も無いよ?10日間居なかったし。インスタントヌードルならあるかなぁ」
「それでいい……作れ」
当たり前のように命令を下すと、これまた当たり前のように惰眠を貪るべくシーツに潜り込む女。
男は、やれやれと内心呆れつつ、クローゼットからスウェットパンツを引っ張り出してキッチンへ向かった。

鍋に湯を沸かし、中身を適当にブチ混んで煮込むだけのシュリンプ味のソレ。
カピとニンニクを炒めてから煮込み、少し風味を付けたのだが、どうにも物足りない。
野菜は…無い。
ああ、確か冷蔵庫に卵があった。
2週間前に買ったものだからまだ大丈夫。
二人分の材料が煮立った鍋に卵を割って落として………。

「レヴィ、大変残念なお知らせだ」
「…んぁ?」
「卵が腐ってた、そして本当にもう何も無い」
「…………Why?」
「多分腐ったのを売り付けられたんだろ、迂闊だったよ、いつもならボウルに取って確認してから使うんだけどね」
部屋に漂うは、香ばしいカピとニンニクと香辛料の効いたスープの香り。
レヴィの胃袋は臨戦態勢に入っていた。
「あー…クソ、昨日何か買って来とくんだった…。」
「仕方ないだろ、現に何も無いんだから。食いに行こう」


81 :名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 00:09:21 ID:8VC5C60y
本日、彼女の予定の中に外出の二文字は無い。
朝から晩まで、彼の部屋着を着て、寝て、食って、ヤって、ダラダラして、飲んで、食って、ヤって、ヤって、ヤって、
寝て…の、自堕落まっしぐらコース、のつもりだった。
「メンドくせぇ、適当に買ってきてここで食おうぜ、今日はとことんダラダラすんだよ」

一方、彼の予定はこうだった。
昼くらいまでは彼女と二人仲良く惰眠を貪り、あわよくば1回位はお相手頂き、午後からは食料及び切れ掛かって
る雑貨の補充。彼女に起こされた時点で既に歯車は狂い始めているが。
「そうしたいのは山々だけど、買わなきゃならないものが沢山ある。メシ食ってから市場に行くつもりだけど…」
「そんなのあたしの予定にない」
「俺の予定も既に狂ってる。予定なんてそんなモンだよ。メシ食って、買い物して、早めの晩飯作って、あとはゆっく
 りしよう」

レヴィは考える。
ここでウダウダ言ったところで、メシが出てくるわけでもない。
どうせ出かけるなら午前中の方がまだましだ。
それにコイツと買い物に行くのも久しぶり、行けば行ったできっとそれなりに楽しい。
「……………………………………シャワー浴びて来る。あたしの下着どこだ」
「2番目の引き出し」
「…オーライ」
彼女がフラフラとシャワールームへ消えたのを確認し、ベッドに目を遣る。
よれてしわくちゃのシーツには昨夜の交感を思い出させる無数のシミ。
どうせ帰って来たならば飽きずにまた身体を交えるのに、シーツの換えはあと1枚こっきり。
ロックは剥がれかけたシーツを引っ張り腕に抱えると、床に散らばる自分のシャツと下着、そして彼女の服と下着
を次々拾い上げ………………無表情にそれらを洗濯機にブチ込んだ。





82 :名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 00:10:21 ID:8VC5C60y
「アホかてめぇは!お前の部屋にゃ下着しか置いてねぇんだよ、洗濯したら着るモンねぇだろが」
レヴィは大層ご立腹だった。
大股開きで椅子に腰掛け、テーブルに肘をついて激しく貧乏揺すりを繰り返す。
この街の者であれば絶対に近寄らない。
何せ彼女の不機嫌のとばっちりで身体に風穴など作りたくはない。
だが彼女の目の前で彼女の怒りを一身に受ける男は、そんなことを歯牙にもかけずシレッと言い放つ。
「着てるだろ」
彼女が来ているのはアンチ・クライストで有名などこぞのロックスターの全身がプリントされた黒のTシャツに、黒と
赤の三段フリルのミニスカート。
「コレしか無ぇから仕方なくだろ」
「似合ってるよ〜」
「うるせぇ。大体何だってこんなモンを着せようと思ったんだ…罰ゲームじゃあるまいし…って、お、来たな。ああ、
 ソレはコイツんだよ、あたしは鶏のセンミーだ」
…そう、ここは彼のヤサから徒歩2分。路地裏で営まれる現地料理の屋台。
基本セルフサービスの屋台において、常連の気安さからか、レヴィはいつも席まで料理を運ばせる。
屋台は、朝食時ということもあるが、ほぼ満席。
つまり、そこそこ旨い。
そして…。
二人の会話は周囲に筒抜け。
周囲に腰掛ける店の客、そして店の者、とにかく声の届く者は皆聞き耳を立て、届かぬ者も横目でチラチラと、二
人を伺う。
背徳の街の、うらびれた屋台に似合わぬ二人。
二挺拳銃は勿論のことながら、男の方も……いつもと趣が違う。
いや、男はいつもだってこの街からは浮いているのだが…今日は無精ひげも剃らずに白地に線画の蓮がプリント
されたTシャツに細身のジーンズという、随分とラフないでたちだ。
バンコクあたりまで行けば、ただの年若いカップルで済むものも、この街では場違いなことこの上無い。
その上、先程から二人の間で交わされる会話は、あの二挺拳銃の「浮いた話」というヤツだ。
興味が沸かないわけがない。

ロックは彼女の分も含めて代金を支払うと、届いたばかりの皿の上でメインの青菜炒めと米を合わせながら、先
程の問いに対して理由を述べる。
曰く。
「レヴィに似合うかな〜と思って」
至ってシンプル。
「はぁっ!?意味わかんねぇ、このヒラヒラしたのがか?……っと、よぉ、シンハーくれ」
「あ、俺も」
届いた器に調味料を投入しながらビールの追加を注文するレヴィに追従し、彼も2本目を頼む。
「日本に行った時にスカート着てたろ?可愛かったから……あ、ナンプラ取ってプリックの方」
「…馬っ鹿じゃねぇ??」
悪態はつくがナンプラのボウルは手渡す。
耳まで赤い、随分と照れているようだ。
あの猪女がこんな可愛い顔をするなんて…!周りの野郎共はある種の戦慄と感動を覚える。
「そもそも、どこで買ったんだよ、こんなの」
「ん?掃除屋に貰った。通販で買ったけどサイズが大きかったんだって」
ロックは付け合せの魚のから揚げにナンプラを掛けながら、事も無げに言い放つ。
「…………へ………へぇぇぇぇえええぇぇ…知らなかったぜ、あの鬱ゴスと仲良いんだなー」
二挺拳銃の機嫌が急降下している…店内に緊張が走った。
そろそろ帰ろうか…でも二人の会話は気になる…あの日本人がいればイキナリ無差別に銃乱射、ということもあ
るまい。
結局席を立つものはおらず、座席の回転率はどんどん下がる。
「仲いいってことは無いけど………近所だしね、よく道で会うよ。この間ブカブカの服を着て道で塞ぎこんで………
 あ、ありがとう……はい、レヴィの」
運ばれて来たビールを彼女に手渡す。
「へぇ〜〜〜〜〜。」
彼の手からビールの瓶を受け取り、ジト目で睨みつけながらゴクゴクと飲み下す。
「なに?」
「別にナンもねぇよ…!!」
「何か言いたそうだけど…大体さぁ…その……臭かった…よ?10日間、何回着替えた?」
一瞬、周囲の食事をする手が止まる。
皆、素知らぬ顔で彼女の返事を注視する。

83 :名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 00:11:02 ID:8VC5C60y
「くっ…!?…………………下着は換えてた。身体も拭いてた。大体てめぇだってあちこちに鼻押し付けて匂い嗅
 いでハァハァおっ立ててんじゃねぇか!!」
これまた…ずいぶんとマニアックなご趣味だ。
これが噂に聞くHENTAIってヤツだろうか?
「否定はしないけど、何ごとにも限度って、あるよね。女の子なんだからさぁ。それとも俺のためにわざわざ臭い服
 着てくれてたワケ?」
「んなワケあるかよ、頭沸いてんのか?」
舌打ちと共に顔を歪ませ、そっぽを向く。
「俺としては感謝して欲しいくらいだけどねー。シャワーの後に清潔な服でメシ食って、お前は家に帰って洗濯の
 必要も無い」
「服ったって、掃除屋のお下がりだけどな…それ寄越せ」
彼の皿の上で良い具合にナンプラと馴染んだ白身魚を掻っ攫う。
「あー、最後に取っておいたのに…」
「うるせぇ……っ!!!ぁあ…ぅっ…はぁ……か…ら…ぁ…ぁあ…」
突然汗を垂れ流して喘ぎ始めるレヴィ。
半分ほど残るシンハーを一気に飲み干すと、炭酸に噎せて咳込み、大口開けて上を向いたり下を向いたりと忙し
い。
そして……実にエロティックな表情だ。
だが、そんな女を目の前に、男は呆れた表情を浮かべる。
「唐辛子噛んだ?たっぷりかけたからねー。水いる?」
人のものを盗み食いするからだと言わんばかりの男にムカつきながら頭を激しく縦に振るレヴィ。
「はぁ…ぁ…ぁぁあああ…」
ロックが買った冷たい水で口を十分冷やしてから文句を一つ。
「…お前コレ、辛過ぎ…」
涙目で睨み付ける彼女をニコニコ眺める日本人。
彼が次に吐いた言葉に、ギャラリーは唖然とする。
「もの欲しそうに見てたからね、絶対盗ると思ってた」
確信犯(誤用)だ、この日本人…。
この街の誰もが怖れて通る二挺拳銃をこうも正面からおちょくって生きていられるのは、この男と金髪のクソ尼くら
いだろう。
誰とも無くそう思っていると…
「ファック!!!てめぇ!そんなに額にケツ穴こさえたいか?ぁあ!?」
二挺拳銃がブチギレた。
前言撤回。
いくらこの男でも、度が過ぎると報復を受けるらしい。
だが、立ち上がって掴みかからんばかりの彼女の全身を眺める彼が吐いた言葉は…。
「レヴィ、ソーヤーのお下がりが嫌なら、今日はレヴィの服も買おう、白っぽいのとかピンクとか…、赤も似合うかも」
二挺拳銃も含め、再び一同唖然。
だがしかし。
我に返った彼女は、目を泳がせながらこう言った。
「……ピンクなんか誰が着るかよ」
皆、一様に悟らされる。
…こいつら本物のバカップルだ、と。


84 :名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 00:12:45 ID:8VC5C60y
さて、そのバカップルお二人様は食事を終えると、次の目的を果たすべくマーケットに向かった。
洗剤、靴下、シェイブクリームEtc…。
道すがら、彼女のためにとシャツと膝丈のショートパンツ、脱がすのが実に楽しみな部屋着のワンピースも買った。
「これで俺の部屋に泊まっても着るものがある」
そう満足気に呟く男に「しつけぇな…ちゃんといつもはテメェの服着てんだろが」
と舌打ちすると、気まずそうに目をそらし、「そんなにクサかったか?」と少し俯く。
「うん、確かに臭った。けど別にそれが嫌で洗濯したわけじゃないからさ、そんなに気にしなくたっていいよ。」
自分がしつこいくせに、気にする素振りをすれば、こうして理解あるかのような態度を取る。
本当に卑怯な男だ。
「それに、レヴィの服があることに意味がある」
そう、それなのだ。
彼の部屋に自分の食器や着替えが増えていく。
嬉しくないわけではない。
だが。
「そうやって何でもなし崩しになるのがイヤなんだよ」
これも事実。
「俺はさ、一緒に住んでもいいんだけど」
「大概しつこいな、お前。返事はNOだ。イヤなこった。毎晩あんな風に抱き着かれてたら寝返りも打てねぇ」
「仕方ないだろ、シングルベッドなんだ。なら広いベッド買おうよ」
「一人になりてぇってこともあんだろ」
「なら2部屋あるトコに引っ越そう」
「何でそうなる、そんな面倒なコトはしたくねぇ。イヤなモンはイヤなんだ…」
「…そう、なら仕方ないね……」
二人の間に沈黙が落ちる。

それにしても……先程から雑踏を歩いていると、場違いな二人に皆がギョッとした顔で振り返る。
会話が無くなると、余計にそれを自覚させられる。
それはそうだろう、それは彼女にも理解出来る…が、気分は良くない。
大体何だって掃除屋のお下がりを着ているのかと、根本的な疑問に立ち戻り、普通は近所というだけで服のやり
とりなどしない…この街では尚のコトだと不信感が募る。
「あとは…洗剤か…レヴィは何も買わないのか?」
そう言って振り返る男に、「お前、よくアイツと会話出来るよな…」と、先程とは全く別の話を振る。
「え?アイツって?」
「ソーヤーだよ、メンドくせぇ臭いがプンプンするだろ、ああいうヤツって」
「そうか?普段は話せばちゃんと返事返って来るよ?たまにメシ持って来てくれるし」
「………………………はぁぁぁああぁぁ?」
今、目の前の男が何を言ったのか、彼女は瞬時には理解出来ない。
「何て言ったっけ、あの、台湾人の…」
「ですだよ?」
「そう!ですだ…じゃなくてさ」
「いいじゃんよ、誰んコトだか解りゃ」
「…とにかく、彼女に料理を習っているらしくててね、練習したのを2回くらい持って来てくれた」
「…ぁのアマ、まさか人のモン狙ってるワケじゃねぇだろうな…??」
「何か言った?」
「…別に。…で、何持って来るんだ?」
「酢豚とか肉まんとか角煮とか腸詰めの煮たヤツとか…」
笑顔で少し嬉しそうに答えるロック。
そんなに女の手料理が嬉しいかよと、少し腹が立つ。
だが、何だろう、ソレ以上に何とも言い難い、膝の裏が痒くなるような、鳥肌が立つような感覚が沸き起こる。
今まで感じたことの無い、えもいわれぬ不快感。
「……お前、ソレ食ったのか?」
味の濃い肉料理ばかりじゃねぇか…そう思いながら敢えて口には出さない。
「え?まぁ…せっかく分けて貰ったし」
「…旨かったか?」
気まずげに目を反らしながら問う彼女に、ロックは嫉妬をしくれているのだろうか、可愛いところもあるものだと思
わず頬が緩む。
「少し味が濃かったかな…」
そう答えながら次は何と声を掛けようかとあれこれ逡巡していると、彼女が先に口を開いた。
「あのよ…それ……ホントに豚肉だったか?」
「…………………っ!?」

85 :名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 00:16:33 ID:8VC5C60y
彼女の言わんとしていることを理解し、ロックは一瞬にして顔面蒼白となる。
…掃除屋の目的と実際の中身が何であれ、これであの女の「手料理」を口にすることは二度とないだろう。
彼も暫くは思い悩むに違いない。
ざまあみやがれと少しだけ溜飲を下げる。
だが、まだ彼を赦したわけではない。
彼女は薄くほくそ笑むと、次に神妙な顔を作り込み、ロックに辛辣な言葉を投げかける。
「ま、てめぇが悪いよな、そんなに女の手料理が食いたけりゃ、ですだよンとこで馳走になりゃいいじゃねぇか。
 悪いなぁ、おまえにメシもまともに作ってやれねぇ女でよ」
そう拗ねたような顔をすると唐突に踵を返す。
「え!?レヴィ??」
振り返りレヴィを追おうとするも、彼女にとって雑踏でロック如き撒くなど造作もない。
「せいぜい慌てろ、バーカ。」

彼女には行き先があった。
買いたいものがあった。
先程、彼と歩いていて見つけた。
彼に内緒で買わなければ意味が無い。
さっさと買って、さっさと彼の元に戻ろう。
そして、買い物の続きの後、部屋に戻ったら一服して、一発ヤって、アイツがメシ作るのを眺めてその後は…。
彼女の新しいスケジュールは既に予定で一杯だった。
彼と二人で過ごす時間が楽しくて仕方ない。


104 :さんろくぜろ:2008/07/20(日) 01:27:43 ID:Rj62ZUC3

突如姿をくらましてしまったレヴィを探し、はじめは右往左往していたロックだったが、闇雲に探しても仕方ないと
まずは用事を終わらせることにする。
彼女が本気で隠れるつもりならば彼には探しようが無いのはわかっていた。
それに、もしかしたら着替えに戻っているのかもしれない。
用事が住んでも戻らなければ彼女の行動範囲を探しに行こう。
そう決めて彼が食料を調達するべく方向を定めると、たった今想いを巡らせていた女が目の前にいた。

「お帰り。よく解ったね」
まるで戻ってくることを知っていたかのような言葉に、彼女は腹が立つような嬉しいような複雑な想いで男を睨む。
「そこらで『うちの水夫知らねぇか』って聞きゃすぐ見つかる」
どうやら、彼女と常に行動することで、彼もまた有名人となっているようだ。
「そう。…ごめんな、別に誰かの手料理が食べたかったわけじゃないんだよ」
まずは謝ると彼女の手を取り、歩き始める。
「その割には嬉しそうだったな」
彼女も逆らわずに、彼と手を繋いで彼の隣を同じペースで歩く。
「ああいう、一見何考えてるか解らないコが料理練習してるっていう意外性が面白かったのと、一般論としてそりゃ
 やっぱり嬉しい」
悪戯な笑みを浮かべて彼女を見る。
「けっ…やっぱ喜んでんじゃねぇか」
レヴィは鼻息荒く、批難めいて彼を見る。
「まぁね、でもかと言ってそれを望んでるってわけでもない。オーライ?」
嘘は言っていないのだろう、多分。
「そういうことにしといてやる、けどよ、あんまこの街で他人を信用すんな、ロクなコトが無ぇ」
「うん、そうだね。肝に銘じることにする。……さて、暑くなってきたし、買うもの買って帰ろうか」
そう言って彼は話題を打ち切ると、夕食は何を食べるかと聞いて来た。
「食えるモンなら何でもいい」
ロックと一緒に食卓を囲むことに意味がある。
一緒には住みたくないと言いながら、矛盾していると自分でも思うが。
「生地からこねてピザでも作る?フライパンで」
そして、今はラフな姿のロックと二人、手を繋いでマーケットを眺めている。
自分もフザけた格好であることを差し引いても…悪く無いと思ってしまうあたり、随分とヤキが回ったものだと彼女
は苦々しく思う。
「…ピザはいつも食ってる」
悔しいから、先刻言ったことを棚に上げて意見してみた。
「そう。じゃあレヴィは野菜足りてないから野菜にしよう、温野菜のサラダと、豆カレーにする?あとは酒のつまみに
 なるようなものを適当に……」
「…お前、自分が肉食いたくねぇだけだろ…」
「…そんなコト……ない…よ…?」
「嘘吐け」
ああ、こんなやり取りすらも無性に楽しい。



105 :名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 01:28:28 ID:Rj62ZUC3
「はぁ…はっ…レ…ヴィ…」
童顔のこの男が前髪を下ろすと、余計に幼く見える。
なのに、今日はそれに似合わぬ不精髭。
たまらなくアンバランスだ。
そのクセ、たまらなくセクシーに見えるのは、暑くて自分の頭が煮えているからだろうか。
手を繋いで歩いているだけでやたらと気分が高揚しているのに気付き、「暑い」「かったりぃ」などと不平を垂らして
帰宅を急かした。
この男のことだ、不平不満などただのポーズであったことなど気付いているのかもしれない。
そんなコトを考えながら、自分の上でゆっくりと身体を揺らす男の首に抱き着き頭を引き寄せると、顎に舌を這わす。
ジャリジャリとした硬い髭と湿った肌の感触…そして、汗の味。
そんなモノにすらカンジている自分がやけに滑稽だ。

両手一杯の荷物を抱えて帰宅したのは、昼を少し過ぎた頃だった。
炎天下から戻った室内は、外以上の熱気を孕んでいて、正直うんざりする。
冷房を入れて、今そこで買って来たばかりのビールを喉に流し込むと、ベッドに乗り上げてすっかり乾いた洗濯物
を取り込んでいる男をそのままそこに引き倒した。
「暑いんじゃなかったの?」
「いいんだよ。忘れさせろ」
そう言って始めた行為だったのだが…。

「ぁ…ぁっ…んっ…あつぃ…っ…」
ぴったりと密着して来る男のカラダから逃れるように身を捩る。
「仕方な…いだろ、うちの…冷…房は、効き始め…るまで…に、時間が…かかる、んだっ…」
彼も少し身体を離し、熱の逃げ場を作ってやる。
「だからっ…クーラー点けて出掛けろっ…つったんだ…」
彼の体温と重みが離れたことで一心地つくと、とりあえず文句を言ってみることにする。
「ヤだよ、そんな無駄な…こと」
だが、彼の返事はコレ。しかも即答だ。
「……ロック、たった今…理解した…ぜ、お前、とは、何があってもっ…ぁ…一緒に、住めな…い…ぁ…はぁっ…」
「何で、だよっ……」
「女にっ…暑さを…忘れさせる、甲斐性も…無い、そのクセっ…快適にぃ…過ご…すためのっ…出費も惜しむ……
 小せぇ男だよなぁ、ハートも、ナニも………ぁっ……ヤっ…!」
その言い草に流石にロックもムカッとする。
ムキになって熱い内壁を抉るように擦り上げると、レヴィは悩ましげに眉を寄せて小さく喘ぐ。
「全…否定っかよ…いつも、その…『小さいナニ』…を、『もっと』って、ねだる…くせにっ…」
「…はぁ…ぁ…っん…悔しけりゃ…もっと男を見せてみろよ、…なぁ?ダーリ…ン」
レヴィが挑発するように笑むと、ロックは少し困ったような顔をして動きを止めると言い訳を一つ。
「寝不足…なんだよ、ヤリ過ぎてこんな時間から…寝るワケにもいかないだろ?」
「いいじゃん、寝ようぜ、起きた頃にはちったぁ涼しくなってるさ」
どうせ今日も夜は長いのだから…そう心で呟いて、レヴィは先を促すように腕と脚を目の前の熱い身体へ一層強
く巻き付けた。



106 :名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 01:29:11 ID:Rj62ZUC3
二人並んで一寝入りし、彼女がシャワーを浴び終えると、先に浴び終えさっぱりとヒゲを剃ったロックがキッチン
で野菜をちぎっていた。
先刻の掃除屋の話もあり、何となく気に入らず、野菜をちぎる位やってやると彼女にしてはめずらしい手伝いの申
し出。
彼が振り返ると前ボタンで膝丈の黒いキャミソールのワンピースを着たレヴィ。
柔らかな生地が身体のラインに馴染んで色気があるのに、肩紐と腰周りのリボンの赤が甘すぎずに可愛い。
律義に彼と買った部屋着を着て、照れ臭そうに手を伸ばして来る彼女を可愛く思いながら、これはもう終わるから
卵をボイルしてくれと頼む。
「腐ってねぇだろうな」
「今日買って来たから大丈夫。レヴィもいたしね、お前に腐ったもの売り付ける猛者はこの街にはいないだろ?」

一口しかないコンロに鍋を掛けて以降、自らに与えられた仕事を完璧に遂行すべく目の前のそれを真剣に睨み据
える女を子供のようだとほほえましく見つめる。
つい構いたくなり、「レヴィ。ゆで卵作ったコト無いの?」と尋ねると、彼女は憮然とした表情を浮かべ、意外な言葉
を吐いた。
「お前……馬鹿にしてるだろ…片付けが面倒なだけで料理しないワケじゃねぇよ…」
浅からぬ付き合いの中で、彼女がまともに料理している様など見たことがない。
せいぜい冷凍のピザや、レトルトかインスタントフードくらいだ。
だが、そう言われれば『お願い』をしないわけにはいくまい。
甘えるように腰を抱くと、耳元でねだる。
「じゃあさ、今日の片付けは俺がするから、メシ作ってよ」
レヴィは少し考える素振りをした後、思わせぶりに「…高いぞ?」と返す。
「怖いなぁ……幾らの請求書が来るか…」
そうおどける彼の鼻に、花の香りが広がった。
「レヴィ…いいニオイがする…シャンプー?」
「お前がクセぇってうるせぇから………」
不機嫌な口調でそう言う彼女の髪の香りを、「別に気にしてないってば」などと言いつつ、まるで犬のようにくんくん
と嗅ぎ続ける男。
「…どうだ?ちっとはムラムラしたか?」と悪戯っ子のように尋ねると、ロックは満足気に「それはもう…最高」と胸の
辺りに手を這わせ始める。
狙い通り欲情する男に満足して好きにさせていると、調子に乗った彼は柔らかなそこを揉み始め、逆の手でスカート
を捲くり上げ太ももを撫で回す。
その手に陥落しかける自身を制し、不埒な掌をギリギリと抓り上げて笑う。
                                                                   
「行儀が悪いぜ、可愛い坊や。ママの手料理食い終わるまでは寝んねもおっぱいもお預けだ。オーライ?」
                              
                                                                    
レヴィの作った料理は、美味くもなければ食えないほど不味くもなく、作った人間の性格のように大雑把な味だった。
だが、豆のカレーが、カレー風味のトマトケチャップスープに化けようとも、温野菜サラダが味の無いベチャベチャの
野菜炒めになろうとも、それが彼女が作ったものだという事実の前では瑣末な問題にしかなり得ない。
『ママの手料理』を残さず平らげた『息子』は、お約束のお片づけもそこそこに、ベッドに腰掛け一服つけている女に
甘えるべく、膝を着いて腰に抱きつく。
「坊や、お片付けが済んでないぜ?」
「後でするよ」
駄々を捏ねるように、彼女の膝に顔を埋める。
「ママとのお約束だろ?」 
レヴィはそんな男の髪に愛しげに指を絡めて微笑む。
「さっきからずっとガマンしてたんだ、いいだろ?」
「聞き分けの悪いクソガキはお仕置きされるんだぜ?」
「…ベッドの上でなら…悪く無いね」
言いながら、既に脚を撫でながらそこに口付けし始めている男
「呆れたクソガキだ」
そう悪態を吐きつつ、彼に促されるままにゆっくりとマットへ身体を沈める。


107 :名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 01:30:28 ID:Rj62ZUC3
ロックは、横たわる彼女を嬉しそうに見つめ「綺麗だね」と称賛を贈ると、シーツに広がる髪を掬って、香りを鼻腔いっぱ
いに吸い込む。
タバコの匂いが混ざってしまってはいるが、それも香水のように下品ではない瑞々しい甘い香り。
先程は花かと思ったが、スパイシーな香りもする気がする…って、これはカレーか。
「何の香り?」
くんくんと香りを嗅ぎながら無邪気に尋ねる彼に、彼女は「解らないのかい?坊や」と少しばかりがっかりしたように呟く。
改めて嗅ぎまわり、それでもわからないと謝り、答えを尋ねる彼への彼女の解答は、意外なものだった。
「ジャパニーズ・グリーンティー……」
「………へぇ……グリーン…ティー……?」
グリーンティーとはアレだろうか、いわゆる緑茶…日本茶…というヤツか?
彼のためにと選んだのだろう彼女には悪いが、さっぱり緑茶の香りなどしない。
「日本の茶だろ?わかんねぇのか…?」
「ぁー…うん、まぁ…でも何かそんなような気がしてきた。好きな香りだ」
何にせよ、心地の良い香りではあるのだ。
「ジャンク屋の裏?」
色町に通じる道に石鹸や香油、香が豊富な店があった筈、そう思いそこで買ったのかと彼女にたずねる。
「ああ。」
照れくさそうに応える彼女。
いつになく可愛気に溢れるレヴィに、今日はゆっくりと愉しもうと決める。
「…たまにはいいね、こういうのも……」
ほんの少しだけ嬉しそうに目を輝かせた彼女の唇にキスを落とした。

ゆっくりと、時間をかけて、舌と呼吸を絡ませる。
じっくりトロ火で熱を伝えるような、そんな交感。
キスの合間に、ふと目が合う。
潤み始めたその目を見つめながら、いい女だとしみじみ思う。
じっと目を合わせていると、負けじと睨み返して来るこの女が可愛くて仕方ない。
胸に触れると、頂が服の上からでもはっきりと解る程に立ち上がっていた。
「感じてる?」
やわやわと乳房に触れながら尋ねる男の鼻先に噛み付く女。
「坊や、そういうコトを言うウゼぇ男は女の子にモテないぜ?」
あくまでその設定を貫くつもりらしいレヴィ。
たまにならそういうプレイも悪くはない…筈が無いのだが、せっかく彼女が楽しそうにしているのに水を注すのは本意
ではない。
そう、時間はたっぷりある。
ならば、ほんの少しだけ彼女の悪ふざけにお付き合い申し上げようと、柔らかな胸に顔を埋めた。
「んー…モテなくたっていいよ、『ママ』さえいれば…」
そう言って身体へしがみつき、胸に埋めた顔を更に押し付けて甘えてみる。
だが。  
「…だはは!…ぉ…お前、馬鹿だろっ!?目茶苦茶寒いぞっ…ククっハハハハハ…」
肩を震わせ、大爆笑された。
「…………振ったのはお前だろ…?レヴィ」
真っ赤な顔を胸から上げ、抗議するロック。
「別にお前まで乗ってくるこたぁ無ぇだろ…それともヤリてぇか?赤ちゃんプレイ。ヤリたいならママがちゅきあって
 あげまちゅよ〜」
よしよしと言いながら頭を撫で回してくる彼女。    
「…遠慮しとくよ、残念ながら…そっちの趣味は、無い」
いまだ顔を赤くしたまま、丁重に辞退申し上げる。
「安心したぜ?お前のオムツ交換とかヤラされるかと思ったわ、日本人のHENTAIってのは好きなんだろ?そういうの」
どういう日本人像だと突っ込みたくてたまらないが、聞かない方が身のためだ、ロックは一瞬でそう判断する。
先程までの艶めいた甘い空気と熱はすっかり霧散し、硬くなりかけたナニも…萎えた。

108 :名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 01:32:07 ID:Rj62ZUC3
「台所、片付けて来る…」
ずり落ちかけたスウェットを引き上げながらヨロヨロとベッドから下りる。
「…赤ちゃんプレイの次は放置プレイか、お前…」
「誰のせいだと思ってんだ…」
恨めしげに振り向くと、ニヤニヤと身を乗り出してくる女。
そして。  
「あたしのせいってか?ひっでぇな、この甲斐性無し!脱げよ!立たせてやっから!」
そう言って舌なめずりしながら彼の下着を引きずり下ろそうとつかみ掛かるレヴィ。
「ちょっ…やめろって、いいよ、別に心配してもらわなくたってちゃんと人並みに機能してるからさぁ」
そう言うと、レヴィから逃れて衣服を整える。
暫しの間抜けな睨み合いの後、レヴィはニヤリと笑うと「お前が脱がねぇならあたしが脱ぎゃイイじゃねぇか」と、
ワンピースの裾を上へと引き上げる。
露わになる彼女の胸。
「脱ぐなよ!しかも色気も無く!!脱がせたくて買ったんだからさぁ、勝手に脱がれちゃ楽しみが半減だ」
「お前、さっき違うコト言ってたよなぁ、本音はこっちか…。ほら、早く脱がせてみろよ、でねぇと勝手に脱いじゃうぜ?
 色気なんざ期待すんなよー?」
ベッドの上に仁王立ちし、軽く身体を左右に揺らしながらいつでも脱げるようヘソのあたりで裾をスタンバイするレヴィ。
色気の無い無地のショーツに何とも言えない悲しさが沸き上がる。
着古し、激しく毛羽立った綿の下着を凝視、次に脱いだら即ゴミ箱行きだと勝手に決定。
この女には下着まで用意してやらなければならないのかと情けなくなる。
だが、まぁ、これ以上自分が意地を張る理由が無いのも事実。
実際のところ、仕切り直せばすぐにスイッチは入るのだ。
やれやれといった風を装い、ベッドに腰掛けると、隣をポンポンと叩いてそこに座るよう促した。

レヴィはマットにペタンと尻をついて座り、彼の顔を覗き込む。
頬に触れると、その手に自らの手を重ね、嬉しそうに目を細めるのを見て最近は随分甘え上手になったものだと思う。
とてもじゃないが以前の彼女からは想像もつかない。
だから、一緒にいて飽きることが無いのだ。
やはり、とてつもなくいい女だ。
「ロック、お前脱がすのは好きなクセに脱がされるのは嫌いなのか?」
からかうように問う顔は、少し幼く見える。
「…場合による」
頬に当てた掌を返して彼女のそれと絡ませると、彼女は改めてキスに誘うように首を傾げる。
彼女の唇に自分の唇をゆっくりと押し当て、じっくりと舐めるように貪りながら胸元のボタンを一つ、二つと外す。
肌蹴た隙間から掌を挿し入れ、重みを確かめるように乳房を下から持ち上ると、ずっしりと重く柔らかなそれ。
その感触に大層満足し、そのまま彼女にのしかかると、抗うことなく身を任せてくれた。
些か強引に乳房を揉む手に、合わせた唇から「痛っ」という苦痛の声が漏れる。
だが、一切意に介さずに乳首を摘んだり、優しく撫でたり…安心した直後に些かの苦痛を与えたりと、好きなよう振る舞う。
レヴィはレヴィで、ロックの下半身に手を延ばすと衣類の上から彼のコックを刺激し、「彼が欲しい」と訴えた。
互いの唾液を存分に混ぜ合わせながら、衣服越しに互いの官能を高め合う。
乱れた衣服から覗くうっすら汗ばむ素肌が、かえって全裸よりも興奮を誘った。
荒くなり始めた呼吸を隠すこともなく、服の隙間から彼女の素肌を撫で回す。
彼の手に馴染んで久しい彼女の素肌のどこに銃創があって、どこがケロイドになっているか、細かい疵も含めてつぶさに
覚えている。
それを一つ一つ確認するようにゆっくりと掌を這わせ、指先で傷痕をなぞるとピクリと震えるレヴィの身体。
身体をまさぐりながら、先程ゴミ箱逝きを決断された下着の上から湿めりの中心部をこね回す。
腰をもぞもぞと動かし、ため息を吐く彼女の下着を引き摺り下ろして直に中心に触れると、トロトロとした粘性の体液ですっ
かりふやけていた。


109 :名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 01:32:58 ID:Rj62ZUC3
指をつぷりと挿し入れて中をかき回すと、身体をよじって喉を鳴らす。
レヴィはウエストから彼の下着の中へと手を潜り込ませ、直接彼の性器に指を絡ませる。
指先で裏を刺激したり、やわやわと揉んだりと、確実に彼の興奮を高めていく彼女。
「…っ…ちょっと…そこに寝ろよ」
言われるままに隣に寝そべると、起き上がった彼女が彼の下着を引き下ろそうと服に手を掛けている。
手伝うように腰を浮かせてやると、先刻彼が彼女にしたのと同じように、膝のあたりまで一気に引き下ろされる。
レヴィは露わになった臨戦態勢のソレを口に咥え込み…舌で舐め回し、甘噛みし、吸い上げ、しごき上げる。
彼女の温かな口腔の粘膜と唾液がねっとりと纏わりつき、何とも…たまらない。
「…ん…んはぁ………んく………ふ…ん…」
「はぁっ………レ……ヴィ…っ…」
苦しげにくぐもった彼女の喉の音、彼の荒い息、淫らな水音、彼女が内股を擦り合わせる音…………………………。

限界を感じ始めて頭を擡げると、上目遣いで彼の反応を伺いながら夢中になって彼のモノにしゃぶり付いているレヴィと目が
合う。
「ん……限っ界……挿れて…も、イイ…?」
目線だけで挑発的に笑んだ彼女が、咥えていた口を離す。
彼女の唾液に塗れた自らのそそり立つ性器と、艶めかしく濡れる赤い唇との間が、唾液と先走りの混じった細い糸で繋がる
のを静かな興奮を以って眺めた。
切れそうで切れないそれであったが、レヴィが軽く横へと動いた瞬間に呆気なく消失する。
何故だかそれを少し残念に思いながら、目の前の女の腕を掴んで引っ張り寄せると、そのまま自らの下へと組み敷く。
彼女に圧し掛かり、引き締まった腿を撫でながらスカートの裾を引き上げると、ゆっくり膝を立てて脚を広げてくれた。
「このまま挿れてもいい?」
ロックはレヴィの顔を両手で挟んで額を合わせると、甘えるようにねだる。
「………中に出すんじゃねぇぞ」
鼻で嗤いながら、それでも挿れやすいように少しだけ腰を浮かせてくれる彼女のトロトロの入り口に、張り詰めた自らを宛て
がう。
「レヴィ…凄いね…そんなに欲しかった?」
あまりにふやけ切ったソコに、からかいを含んで尋ねると、少しイラついた様子で「さっさと突っ込めよ、甲斐性無し」と罵ら
れる。
「照れなくてもいい…の、にっ…」
そんな態度すら愛しく思いながら彼女の腹の最奥へと自らを沈めると、眉を寄せて半開きの口から浅いため息を吐くレヴィ。
上気した頬に浮かぶ汗にそそられて舌を這わせてやると、鼻にかかった喘ぎと共に首をすくませてブルっと軽く身体を震わ
せる。
「…随分っ…感度イイね…」
「んッ…………ハぁ……はぁ……」
大きく息を吐き、呼吸を整える彼女。
そんな彼女を一切省みず、彼は宣言する。
「…動くよ…?」

「…ぁ………ぁ………クっ………あっ……んぁ…………ぁ…はぁ……」
苦行に耐えるような険しい顔を浮かべ、呻きとも喘ぎともつかぬ声を上げ続けるレヴィを何度も何度も烈しく突き上げる。
はだけた箇所から露出する片方の乳房が波を打つように揺れる。
髪を振り乱し、伸びてしまうほどに彼のシャツを握り締めて快感に耐える姿。
汗で頬に張り付いた髪を払ってやると、彼女はキスをねだるように顎を突き上げて自らの唇を舐める。
与えてやりたいのはやまやまだが、少し意地悪をしようと、頬や耳元に音を立てて何度も口付けするが、欲しがっている箇所
には与えてやらない。
彼女の、ねだる声を聞きたかった。
たが、縋るような切ない顔で彼女に見つめられると無条件に何でも与えてやりたくなってしまう…というよりも、彼自身が彼女
へ口付けたくてたまらなくなる。
それでは彼女のおねだりが聞けない。
一度彼女の顔から視線を外して身体を起こすと、改めて全身を俯瞰する。
そして、気付いてしまった…というか、思い出してしまった。

110 :名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 01:33:47 ID:Rj62ZUC3
それ以降、彼は彼女ではない別のものが気になって仕方がなかった。
二人の交わった箇所から30センチほど右側に投げ捨てられている…彼女の下着である。
朝、洗濯して干す時は忙しくてマジマジとは見なかったが、見れば見るほど酷い。
ほつれて糸が飛び出ている。
ゴムも伸びている気がする。
とにもかくにも酷すぎる。
これに気付いてしまった以上、どうにかしないと行為に没頭できない。
よし、最中であるが…捨ててしまおう、そうしよう。
彼女に見つかってはまた面倒だ、視界を塞がなければ…そう思い、渋々ながらキスをすることにする。

眼下の愛しい女にキスを落とすと、嬉しそうに首に絡み付いて来る腕。
小さく断続的に喉を鳴らしながら、必死にしがみ付いてくるレヴィに対し罪悪感を抱かないわけではないが、目下の課題を
クリアすればあとは心置きなくこの時間と彼女の身体を愉しめばいい。
彼女の性器を自らのそれでかき混ぜ、ついでに口の中もかき混ぜる。
『もっと』とねだるように突き出される舌、揺れる腰と絡みつく脚、ひくひくと震えうごめく温かな愛液に満たされた内壁。
正直、そのままイってしまいそうだが、彼女が行為に夢中になっている今がチャンスとばかりに身体を撫で回しながら下着
を掴み、ベッドサイドのゴミ箱へと放り投げる。
カサリと音がした気がしたが、ベッドがギシギシと軋む音と、二箇所からの水音、互いの吐息の音で彼女には気付かれずに
済んだようだ。
あとは、近々まともなものを買い与えてやればいい。
そうだ、どうせなら自分好みのものがいい。

気分も新たに、彼女を夢中になって貪る彼は、彼女のとの「お約束」を忘れていた。
唇を合わせたまま、儘ならぬ発音で彼女の名前を繰り返し呼び、そして腹奥底を思い切り突き上げた瞬間にコソで果てた。
精を放ちながら、意思をもった生き物のようにうごめくレヴィの膣の感触に酔い、唇を離して満足のため息を吐くと、身体の
下からは「ロ〜ック!!」と怒気に満ちたレヴィの声。
「てめぇ…中で出さねぇって言ったよな?」
「ぇ…………………あっ!」
一瞬、彼女が何を怒っているのか解らなかった彼だが、そういえばそんな約束をしたということを思い出し、返す言葉が無い。
「言 っ た よ な ・ ・ ・ ?」
「ゴメンナサイ」
ここは謝るしかないだろう。
それはそうだ、自分が悪い。
一二発ド突かれることを覚悟した彼だが、意外なことに彼女は彼の耳元に唇を寄せると、「仕方の無い坊やだ」と笑う。
「キモチ良かったか?」
彼の頬をなぞりながら淫靡に微笑む彼女に見とれるが、行為の終盤ほぼ上の空でした…などとは言えるはずもなく、
返事の代わりに「もう一回。ハダカで。」と二回戦をリクエストした。

結局翌日も寝不足に陥るのだが、それ以上に重要なのは、何故だかその半月後に例の下着と再びご対面するハメになった
ことと…酒場で流れた彼等二人に関する様々な噂話。
二挺拳銃と日本人は毎夜変態プレイに勤しんでる、同棲しているらしい、実は彼女は妊娠している、路地裏でファックしていた、
日本人が掃除屋と寝て二挺拳銃と街中で大喧嘩した、体臭好きの日本人のため彼女は日々シャワーも浴びないらしい。
何せ酒の席での話。
あること無いこと噂される。
それをネタに、当分の間二人揃って同僚・友人達から実際のところを問い詰められることとなり、その度に時と場所と状況…
いわゆるTPOというヤツの大切さを痛感するのだった。


おわり



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