- 3 :名無しさん@ピンキー:2009/02/14(土) 03:05:12 ID:zahoh1lk
今日は、2月14日。
とはいえ日本のようなお祭り騒ぎもないロアナプラ。
特に何の予定もない俺とレヴィは、いつものようにだらだらと「イエローフラッグ」へ繰り出し、
だらだらと酒を飲んでいた。
いつもと違うのは、イエローフラッグの階上にある娼館のコたちが、
営業を兼ねてあれやこれやとバレンタインの贈り物をくれること。
大抵はちょっとしたお菓子なんかで、日本と同じようにチョコレートをくれるコもいれば
キャンディーやマシュマロをくれるコもいて、なかなかに楽しい感じだ。
マダムからも特大のハート形チョコをもらった。
しかしバオ曰く、
「毎年マダムは『これ』と狙った客にハート型の特大チョコを渡すんだけどなぁ。
なんとそン中にゃ睡眠薬が入っていて、うっかり食べようものならそのまま階上に『連行』されちまうんだよ〜。
だからくれぐれもマダムからチョコレートなんざもらうんじゃねぇぞ。ん?ロック?何だその包みは?」
だそうで、それを聞いたレヴィがすぐさまそのチョコをカトラスで打ち抜いたのは言うまでもない…。
「それでレヴィは、何かくれないの?」
カウンターに新しい穴を開けられたバオの説教を聞き流しながら、冗談のつもりで聞いてみる。
「…別に。なんであたしがあんたに営業かけなきゃなんねぇんだよ」
「いや、営業とかそんなんじゃないんだけどね…」
あまりにもレヴィらしい物言いに、思わず苦笑する。
- 4 :(3続き):2009/02/14(土) 03:11:19 ID:zahoh1lk
- すると背後から、ガサリと差し出された紙袋がひとつ。
「ヘイヘイ色男〜、あたしからの愛の贈り物だ。受け取り拒否はナシだぜ」
何事かと思って振り返れば、いつも以上に露出度の高い服装のエダが、悪い笑顔を浮かべて立っていた。
「…これも、睡眠薬入り?」
「なーに言ってんだい。『睡眠薬プレイ』がお望みならまぁ考えないこともないけど、
あたしはイマイチ趣味じゃないねぇ」
「…エダ、そこ動くな。ブチ抜いてやるッ!」
これでもウマが合うんだから女の友情というのは不思議なものだと思うが、とりあえずカトラスに手をかけているレヴィをなだめ、
エダから紙袋を受け取る。
「サンキュ、エダ。開けてみていいかな」
「もちろんさロメオ。きっと気に入ると思うよ。バオ、あたしにも一杯」
自称・「愛の贈り物」と言う割りにはざっくりと口が折られただけの茶色い紙袋の中を覗き込むと、
目に飛び込んで来たのは刺激的な紫色。
間違いかと思ってよーく見ると、それは男性用のビキニパンツだった。
「ちょちょちょ、ちょっと、エダ!何なのこれ、こんなのもらえないよっ!」
ちらりと見ただけでも布の量はかなり少なめで、サテン風の生地がテラテラと光っていて…。
「何ってさぁ、セクシーだろ。ステイツでは、バレンタインにこういうランジェリーを贈るのがフツーだぜ?
だからさぁ、こんな色気のカケラもない山猿なんか放っといて、アタシとイイコトしない?」
エダはカラン、と手の中のグラスを揺らしてウィンクを寄越した。
- 5 :(3続き):2009/02/14(土) 03:17:49 ID:zahoh1lk
- 「てめぇ何サカってやがるっ!男漁りならヨソでやんなっ!」
レヴィがとうとう椅子の上に立ち上がってカウンターに片足をかけ、カトラスを引き抜いた。
「あー、うるさい。自分のエモノも満足に囲えないようなやつがエラそうに」
つぶやいて、エダは素早く俺の耳元に口を寄せた。
「おい男前、そいつの下をよーく見てみな。バレンタインの夜にこんなところで飲んだくれてるお前さんたちに、
老婆心ながらおせっかいだ。謹んで進呈する」
何事かと思って袋の奥をガサガサ漁ると、「紫ビキニ」の下から出て来たのは、
美しいヨーロピアンレースに縁取られた純白のショーツとブラジャー、そしてガータベルトのセットだった。
「…こいつをレヴィに?」
「…あんたが着るのか?ま、そういう趣味でも一向に構わないけど」
エダは残りの酒を一気に煽るとグラスをトン、とカウンターに置き、俺の目を覗き込んだ。
サングラスの奥の、ペールブルーの瞳に射抜かれる。
「てめーら見てると、もどっかしくてしょーがねぇんだよ。どうせ今日も、だらだら飲んでるだけなんだろ?
いい若いモンはカラダ動かして来い、カラダをよぉ?」
エダの目の奥に一瞬、真剣な光が走ったような気がしたが、それはすぐにかき消され、
いつもの「テキトーでインランで小金にうるさいクソ尼」が戻って来る。
「ま、そういうこった。あとは自力でヨロシクやんな」
飲み代をカウンターに放り投げると、レヴィに向かってひらりと手をあげる。
「気が変わった。河岸変えて相手探すわ。こんなに凶暴なオヒメサマの城からは、
とてもじゃないが王子を強奪できないかンな」
あっけに取られるレヴィを置いて、エダはスタスタと出口に向かった。
俺にだけ見える角度で、投げキッスを残して…。
「…なんだあいつは?」
レヴィがカトラスを構えたまま、呆然としている。
ロアナプラ一「損得勘定」に敏感なシスター・エダが何を企んでるのかは知らないけれど、
とにかく俺の手のなかにはランジェリーが残された。
「紫ビキニ」の方はともかく、純白のランジェリーはさぞかしレヴィの小麦色の肌に映えるだろう。
「なぁ、レヴィ…」
ようやくカトラスをホルダーに収めたレヴィに向かって話しかける。
「お前んちで飲み直さないか?アツアツのピザ買って、ビールもたっぷり仕入れていこう」
レヴィは驚いたように目を見開き、それからほとんど空になっている手元のグラスに視線を落とした。
「ん…悪くない提案だ」
レヴィのグラスにもう一杯注ごうとしていたバオが、おや、という風に手を止める。
そして背後の棚からグラスを取り上げるとおもむろに磨きだし、
後ろ向きのまま「行っちまえ」というふうに肩のところで手のひらを振った。
- 6 :(3続き):2009/02/14(土) 03:25:04 ID:zahoh1lk
- 「シスター・ヨランダ、お言い付け通りに実行して来ましたが…」
夜の街から「暴力教会」へと戻ったエダは、居間で就寝前のティータイムを楽しむシスター・ヨランダに報告した。
「ご苦労。坊ちゃんには、こないだ入手困難な茶葉を手に入れてもらった借りがあるからねぇ。
人間、いつまでも若くはないんだ。楽しめるときに楽しんでおかなきゃ」
気品あるダージリンの香りが、部屋いっぱいに広がっている。
「結局、坊ちゃんにはアレを渡してくれたんだね?」
「えぇ、しっかりと。ついでに『おまけ』もつけておきました」
「そりゃぁいい仕事をした、シスター・エダ。とにかく男は白い清楚なランジェリー、いろんな趣味があったって
こいつがキライというやつはほとんどいないものさ」
「…それはシスターの経験則ですか」
「ま、そんなものかねぇ。それにしてもバレンタインとは懐かしい。
現役の頃は連れ込みたい男がいれば、ちょいと眠たくなる薬を混ぜたチョコなんか渡したものさ」
「…勇猛果敢ですね」
「ところでエダ、『おまけ』って何をつけたんだい?」
「それは…」
他に誰もいないにも関わらず、エダはヨランダの耳元に口を寄せた。
「…シスター・エダ、そのジョークのセンスもラングレー仕込みかい?」
あきれたようにヨランダが問いかける。
「この件については上司には報告なさらぬよう、お願いできますか」
あさっての方を向いて応じながら、エダは心に誓っていた。
クビをかけてまで仕掛けたイタズラだ。
今夜の首尾と「紫ビキニ」の行方を絶対、レヴィから聞きだしてやる…と。
- 113 :名無しさん@ピンキー:2009/04/04(土) 01:53:13 ID:ghXsA6e6
「おいおいレヴィ、バレンタインはさぞかしお楽しみだったんだろーなぁ」
しばらく海の上の仕事が続いたらしく、久しぶりにイエローフラッグに顔を出した
レヴィをつかまえて開口一番、私は「あの日」の成果を聞きにかかった。
なんせこちらは色んな意味で「人目をはばかる」ミッションを遂行したのだ。
たとえノロケだろうがノロケだろうがノロケだろうが…手間賃がわりに口を割らせないことには、
ワリが合わないってもんだろう。
「…それはこっちのセリフだエダ。やたらと楽しいってツラしてるぜ、何があった?」
なのに「相棒」は、まったく覚えがないといった風にキョトンとしている。
私は少しいやな予感を覚えながらも、たたみかけるように問いを重ねる。
「こないだの14日のことよ。あのあとは、ロックといちゃこら朝までノン・ストップだったんじゃねぇのかよ」
「何の話だ?ヨッパライのタワゴトならダチのよしみで聞いてやっからよぉ、もっとキチンと酒入れてから来な」
単にトボけているわけでもなさそうな対応に、いやな「予感」が「確信」に変わるのを感じながらバーボンをあおっていると、バオから2杯目のグラスを受け取ったレヴィが何かを思い出したかのようにつぶやいた。
「…エダ、てめぇあの日、ロックに何か渡してたよな?」
…やっぱり。
「あいつそのまま渡してねぇのかよ…!ってか、そのまぁ、何だ。あの色男、やっぱり根性ねぇなぁ、と思ってな、うん」
「最近はそうでもないぜぇ?こないだトーキョーに行ったときも、イザって時はなかなか肝の据わった物言いしてたしな」
「あー、そんならいいんだ。ラグーン商会に栄光あれ!ってことで」
どうやら海賊としても株を上げたらしいロックを心のなかで祝いつつ、私はそそくさとカウンターを立つと、
酒場の一角に備え付けられた電話に向かった。
- 114 :(113続き):2009/04/04(土) 01:56:46 ID:ghXsA6e6
- ショートパンツのポケットから、小銭をつまみ出して放り込む。
この時間にレヴィが1人でここにいるってことは、「やつ」はまだ仕事中の可能性が高い
――そう踏んで、ラグーン商会の事務所をダイアルする。
その読みは見事に当たり、受話器からは見事なイントネーションの英語で
「はい、ラグーン商会」
という声が流れて来た。
「あー、ロックか。暴力教会のエダだ」
「やぁ、シスター・エダ。ご機嫌いかが?」
「まぁ、あんまりよろしくはねぇなあ。単刀直入に聞くがな、色男。バレンタインの日に渡したあの包み、
ありゃどうした」
「…すっかり忘れてたよ、シスター・エダ」
「…忘れてた、だと?私とシスター・ヨランダの心づくしを、か?」
そんな気がしていたが、面と向かって言われるとヘコむ。
まぁ、なんてことはない、言うなれば無視してくれてもいいようなイタズラというかお節介ではあったが、
それなりに好意を感じている二人に対して、バレンタインを盛り上げてやろうというサプライズではあったのだ。
「…本当にすまない。実はあのあと、ピザとビールですっかり出来上がってしまって…。
気がつきゃ朝で、そのあと飛び込みの仕事が続いて今日に至る、という訳なんだ。『アレ』は改めてレヴィに渡して、その…」
「ま、皆まで語るな。とりあえず『アレ』はシスター・ヨランダのお見立てで、
こっちの職務としても経歴に加えられないミッションなんだ」
「…?よくわかんないけど、とにかくシスター・ヨランダにも失礼したってお詫びしといてよ。ほんと、エダにもごめん」
「いや、いいってことよ。ちょっとしたイタズラだったんだから。そんじゃま、楽しくハげめよ」
予想通りとはいえ、肩すかしを食った寂しさに受話器を放り投げてカウンターに戻ったら、
レヴィの座っていた場所には誰もおらず、まだ大きな氷の残ったグラスだけが放置されていた。
私は一転、にんまりと頬がゆるむのを感じた。
…面白くなってきやがった、かな?
確かにあの二人がどうなろうが、関係ないといえば関係ない。
とはいえこの吹きだまりのような街で、ヤツらは仕事ヌキにしてもちょっかいを出したいと思わせる、愉快な連中なのだ。
私は主のいなくなったグラスのふちに自分のグラスを軽く当て、ヤツらの「首尾」がうまくいくよう、
こちらでの「上司」に祈りながら杯を空けた。
- 115 :(113続き):2009/04/04(土) 02:00:38 ID:ghXsA6e6
-
エダの様子がおかしい。
その理由は、どうやらロックが14日にエダから押し付けられていた包みにあるらしい。
あの包みといえばロックを締め上げて追求しようと思ってそのままになっていたが、
どうせヤツの考えることなんざロクなことじゃぁない。
そう察知したあたしは、エダが電話をかけに行ってるスキにイエローフラッグからさっさとトンズラを決め込んだ。
果たしてあたしが部屋に帰り着き、食べかけのピザやら読みかけの雑誌やらが散乱した部屋の片隅から拾い上げたその紙袋には、
真っ白なショーツとブラジャー、そしてガータベルトのセットが入っていた。
どうやらエダの野郎はバレンタインの日にこいつをロックに押し付けて、余計なお節介を楽しんでいたらしい。
そして恐らくロックはこの包みをあたしに渡せないまま酔いつぶれ、翌朝から仕事に駆り出されて今に至る、というところだろう。
これで今日のエダの態度にも納得がいった。
あたしとロックのことについて、無理矢理聞き出して酒のサカナにしようって魂胆だったに違いない。
「小さな親切大きなお世話」というのはどこの国の「格言」だったか、詳しくは忘れてしまったが、
そんな言葉がピッタリのエダの仕業に、あたしはかなりあきれながらもその世話焼きにまんざらでもない気がしていた。
もしハイスクールやカレッジに通っていて、気の合うダチがいたらこんな感じなんだろうか。
そう思うときが、たまにある。
…けどまぁ学校のダチなら、殺し屋相手に弾幕張って共同戦線、ってのはまずないな。
思わず苦笑して、改めて手の中の下着一式をまじまじと眺める。
上質のヨーロピアンレースに縁取られ、上品でありながら男を十二分に誘惑するデザインのランジェリー。
しかも、色は純白。
こいつを選んだ人間は、プロフェッショナルとして「オトコ」が分かってる人間だ。
…かつて身を投じた、男の欲望を相手にする商売を思い出す。
あの頃の「目」で見れば、このランジェリーのチョイスは満点のうえに奨学金までつくレベルかもしれない。
「シスター・ヨランダ、か…」
- 116 :(113続き):2009/04/04(土) 02:04:53 ID:ghXsA6e6
- 「シスター・ヨランダ、か…」
首謀者にアタリをつけて、さらに苦笑してしまう。
暴力教会のクソ尼どもときたらお節介にもホドがある。
あまりのバカバカしさにその一式をダストボックスに放り込もうとして、ふと手が止まる。
…どうせ捨てるなら、一度くらいは試してみてもいいんじゃねぇか?
かつて働いていたフェティッシュ・クラブでは毎日、どんな風にすれば自分のカラダがより魅力的に見え、
男の烈情をかき立てられるかを研究した。
もちろんそれは金のためではあったけど、目の前の男たちの欲望にギラついた視線…それを煽り立てるのは
この上ない快感だった。
それが最近じゃあどうだ。
相方のオトコはあたしが酔っぱらったままだらしなく寝ていようとも、
小学生並みに色気のない下着しかつけていなくても「ご立派」にサカりやがる。
おかげでこっちもすっかり手抜きに慣れてしまったのだが、
それでは押しも押されぬかつての売れっ子・レヴィ姐さんの名が泣こうというものだ。
そこであたしは久しぶりに「そのテ」のランジェリーを身にまとうべく、シャワーに飛び込んで一日の汗をざっと流した。
暴力教会の冗談とは言え、ヤバい商売をしていた昔を連想させるシロモノだ。
さすがのロックも嫌がるだろう…そう思うと間違ってもロックには見られたくないが、
今夜は立て続けに入った飛び込みの仕事の処理で遅くなるはず。
部屋の中にも外にも誰もいないのを確認してからベッドに腰掛け、
絶妙なデザインのブラジャーに腕を通して繊細なホックを後ろで止める。
トップもアンダーもピッタリ。
あの変態アマ共、いつのまに人のサイズを…と暴力教会の見立ての正確さに毒づきながら、
ガータベルトの留め金をはずしていった。
- 117 :(113続き):2009/04/04(土) 02:10:23 ID:ghXsA6e6
- パチン、パチンという音に、妙に胸の鼓動が高まる。
揃いのデザインのショーツにそっと足を通し、やはりフリルの施された薄手のストッキングを太ももまで引き上げ、
ガータベルトの留め金につなぐ。
視線を上げると、ベッド脇に立てかけた鏡の中には、風呂上がりでほんのりと色づいた肌に白いランジェリーがそそる、
「オンナ」が立っていた。
髪を頭上でまとめあげ、より扇情的に、艶かしく…かつて、ステージの上で取ったようなポーズを試してみる。
しかし久しぶりのポージングはなかなかうまく決まらず、前を向いたり後ろを向いたり、
夢中で鏡のなかの自分とにらめっこをしていたその時。
背後でガチャリ、と扉の開く音がした。
「…何してんの?」
見つめる鏡のなかには、買い物の紙袋を腕に抱えたまま呆然と立ち尽くす男――ロックの姿が映り込んでいた。
ポージングに熱中しすぎて、階段を上がって来る足音に気づかなかったらしい。
あたしは一気に頭に血が昇った。
「こ、こ、これはだなぁ、ロック。いや、そのちょっとした出来心というかなんというか」
ロックは、何も言わない。
あまりにもショックなのか、あるいは怒り心頭なのか…。
どちらにしても状況はサイアクのような気がして、無駄とは思いながらさらに言い訳を重ねるべく口を開こうとしたら、
買い物袋を放り出したロックに全力で抱きしめられた。
「…最ッ高!」
- 118 :(113続き):2009/04/04(土) 02:17:25 ID:ghXsA6e6
- 荒々しいキスの雨が降り注ぐ。
ロックの両手に、ぐちゃぐちゃにかき抱かれる。
乱れた呼吸が、あたしの耳を甘くくすぐる。
「レヴィ、レヴィ、レヴィ…」
うわごとのように繰り返されるあたしの名前。
全身であたしのことを欲してるのがわかる。
腰のあたりに熱くなったロック自身を感じて、挑発するようにそのカタマリをなで上げる。
「ちっとも待てないってカンジだな。カラダが啼いてるぜ」
瞬間、ベッドに押し倒された。
もはやただの「オス」と化したロックはむやみやたらにランジェリーをはぎ取ろうとするが、
あたしはその手をやんわりと押しとどめた。
「ヘイヘイ、ロック。折角のお楽しみなんだ。フルコースは順番に、ひとつづつ、がお約束だろ?」
言われて少し冷静さを取り戻したロックは、あたしからわずかに自分の身体を引き離し、
ようやくまっとうな視線を寄越した。
「…あぁ、ごめん。部屋に帰って来たらいつもと違うレヴィがいるものだから…」
「まぁ、無理もねぇなぁ。あんたとはここんとこ、イロケもなにもないファックばっかだもんなぁ」
思わず、しみじみ答えてしまう。
くやしいが、このランジェリーの効果は絶大だ。
「それにしても…」
ロックが改めて、あたしのカラダを見下ろす。
いくらロックといえども、そうじっくりと観察されると妙に恥ずかしい。
「そのランジェリー、とても良く似合ってるよ。セクシーだ。無茶苦茶にしてやりたくなる」
手のひらで、身体のラインをゆっくりなぜられる。
それだけで呼吸が乱れそうになってしまって、危うい。
「ロック…」
ヤツの首に腕を回そうとして差し上げた両の手首が、ひとつに束ねられる。
何かを思案していたかと思えば、ロックの顔にニヤリ、と悪い笑みが浮かぶ。
「レヴィ、お遊びをしようか?」
ロックはネクタイを片手で引き抜くと、束ねたあたしの両手を頭上に差し上げ、
それを使ってベッドのアタマのパイプの部分に縛り付けた。
「ロックっ…てめぇこんな趣味…!」
「たまにはいいだろ?レヴィの色っぽいとこ、もっと見たいんだ」
- 206 :名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 01:46:16 ID:YC7zvhQv
服を着たままのロックが馬乗りになり、顔の両側に手をつきながらあたしを見下ろす。
こちらがほぼハダカの格好で束縛されていることを考えると、そのアンバランスさに胸の鼓動が早くなる。
「レヴィ…そんな格好で縛られて…。気分はどう?」
「…最低だな」
ヤツの視線から逃れたくてわずかに身をよじるが、許された動きはとても少なくて、切ない。
「すごく、綺麗だ」
ロックの手が、ブラジャーにかかる。
片方のカップだけが、下にずらされた。
「あ…」
イタズラでもするかのように、指先で乳首の側面をより上げられる。
両手が頭上に固定されているだけで、いつもより鋭い感覚が背筋を這い上がる。
「はぁっ…あ!」
思わず吐き出された快楽のため息を、今日はやたらに意地悪な相方が聞き逃すはずはない。
「随分雰囲気だしてるね」
嬉しそうに微笑むと、もう片方のカップも下にずらした。
一方の乳房の尖端を指で強く刺激しながら、もう一方の尖端には歯を立てる。
「…んっ、っく…!」
調子づいてやがるロックのために声を上げるのは意地でもごめんだ。
歯をくいしばる。
「あぁ、レヴィ。そんなに我慢しなくてもいいのに」
いかにも楽しそうなロックは、さんざん強い刺激を与えたあとの頂きに、
あるかなしかの柔らかな愛撫を加える。
いつもならそんな程度では反応しないはずなのに…敏感になったあたしのカラダは
あさましいほどに音を上げる。
「ふぁッ…!あ…あ…」
「声、我慢してんだろ?もっと啼けよ」
突然、ロックの動きが止まったかと思えばブラジャーに手がかかり、一気に上にずらされた。
完全に空気にさらされた胸を両手でつかんで、下から大きくもみ上げられる。
急な展開についていけず、あたしは快楽に突き動かされた声を上げずにはいられなかった。
- 207 :(206続き):2009/05/04(月) 01:48:00 ID:YC7zvhQv
- 「ああぁっ…あハァッ…!ロックっ…!」
「…いい声だ、レヴィ」
ご褒美のように、上から降ってくるキス。
けれどもあたしの両腕は、目の前の男を抱き止めることはできない。
「ロック…ロック…」
思いを抑え切れず、男の名前を呼びながら腕を動かそうとしてみるが、それは手首への戒めを固くするだけ。
より強くなっていく緊縛感と比例するように、もっと男を欲しいと思う欲望がどんどん高まっていく。
唇を貪りながら、乾きは癒されるどころかますます深くなる。
「レヴィ…なんて目だ」
あたしの反応が激しすぎることを不審に思ったロックが唇を離し、あたしの顔を覗き込んで言った。
「メチャメチャ『欲しい』って目、してる」
「…誰の…せいだと…思ってやがる…。好き放題しやがって…ッ!」
あたしはヤツを精一杯にらみつけた。
でもいつもみたいに力が入らず、焦点が定まらない。
そんなあたしを見下ろして、ヤツはさらに嬉しそうに笑った。
「うん、でもそんなレヴィもたまには、可愛いよ。今日は殴られる心配もないしね」
「この野郎…。覚えてやがれッ…!」
この腕がほどけたら、絶対絶対絶対はり倒してやるっ!
- 208 :(206続き):2009/05/04(月) 01:50:22 ID:YC7zvhQv
- そう心に誓ったあたしを見下ろしながら、ロックは上から一つずつゆっくりとボタンをはずし、
シャツから腕を抜いた。
事務労働しかしていない割には、そこそこ引き締まった上半身があらわれる。
そういや今日は、まだ裸のロックに直接抱かれてないんだな…ふとそんなことを思いつき、胸がざわめく。
慣れ親しんだ肌の温もり、匂い…それを早く感じたいのに、あたしの両腕はやっぱりヤツを抱き寄せることができなくて、
飢餓感ばかりがつのっていく。
「ロック…早く…っ!」
胸が、苦しい。
気がつけば、喉の奥から絞り出すようにして、懇願の言葉が放たれていた。
驚いたようにロックが目を丸くし、そして細める。
「素直なレヴィも、悪くないね」
空気を求めてだらしなく開いた唇を、ロックの唇と舌で割り開かれ、
自分のものではないタバコの味が口の中に流れ込んできた。
そのほのかな苦みを感じながらロックの動きに応え、あたしもロックの口腔内をさぐる。
やがてロックの唇は、あたしの身体を舌でなぞりながら下に移動していく。
「ああっ、んん…ッ」
喉元から鎖骨、胸元、腹筋…やっぱりいつもより敏感に感じてしまう。
そんなあたしを時々、上目で確認しながら、ロックはひたすら愛撫を施していく。
自分の中心が、どうしようもなく潤みだしてきているのがわかった。
けれども身体の向きを変えることすら許されないあたしは、
ただロックから与えられるやわやわとした刺激に服従するより方法はない。
身体中を動き回るクセに、肝心のポイントには決して触れようとしないロックの唇。
焦れて、身体をねじると、おやおやと嬉しそうに口の端を釣り上げながら、
もっとあさっての方向に唇をずらしやがる――。
寄せては返す官能の波と苦悶に苛まれながら、両腕の戒めの痛みだけが正気をつなぎ留めていた。
- 209 :(206続き):2009/05/04(月) 01:58:52 ID:YC7zvhQv
- 「レヴィ…随分、カラダが火照ってきたみたいだね?」
そんな声が聞こえたのは、もう随分、いいように啼かされ続けて声もかすれはじめた頃。
「…ンだと?さんざん人のカラダ弄びやがって…ッ!」
大きな快楽の一歩手前まで無理矢理押し上げられたあたしのカラダは、
自分でももてあますほどの熱をはらんでいた。
「ココとか、どうなってんの?」
ロックの手が、はしたなく潤んでいるに違いないあたしの足の付け根に届く。
「…ん、はぁっ…」
ベッドにつなぎ止められているあたしには逃れるすべはなかった。
自身の欲情の証を、真っ向からさらす羞恥に思わず声が出た。
「レヴィ…ちょっと、感じすぎなんじゃない?」
ショーツを横にずらした隙間から、ロックの指が差し込まれる。
最初は外縁部をなぞり、そのうち自分でももうどうなっているか、
考えたくないくらい潤っている中心部に指を差し入れる。
ぴしゃぴしゃと露骨な音を立てながら、ヤツの指が円を描くようにあたしの入り口で遊ぶ。
「くっ…」
「…ものすごく、濡れてるね…」
耳元で囁かれたかすれ声に、あたしはさらに新しい蜜をこぼした。
「…この、ドスケベ男っ…!」
「んー、それは褒められてるのかな」
持てる限りの虚勢をかき集めて反撃してみるが、そんな言葉は上から降って来たロックの唇に吸い込まれる。
突然、自分のなかに何かが深く差し込まれた感触が背筋を這い上がる。
ずっと穏やかに生活してきたことがよく分かる、白くてスラリと細いヤツの指。
人の命を奪う事はおろか、自分の命も守り切れない。
けれどもあたしを啼かせることができるのなら…あたしがヤツの銃になればいい。
それだけのことだ。
- 210 :(206続き):2009/05/04(月) 02:02:03 ID:YC7zvhQv
- 唇を合わせたまま、指で入り口のすぐ上のあたりを刺激される。
「んっ…」
ダイレクトな感覚に思わず声を上げそうになるが、唇が塞がれている状態ではそれもままならない。
どんどん大きくなってゆく快楽のはけ口を得ることができず、
あたしはイヤイヤと首を振って抗議を試みる。
けれどもヤツはそれを認めたうえで無視し、どこにそんな力があるのか、
全体重をかけてさらに押さえ込みにかかる。
密着した男の肌の匂いと圧迫感が、さらなる陶酔へと導く。
そのまま一気に駆け上がりたくて、あたしは身をよじりながらそのことを男に伝える。
けれどもロックの指は一定のリズムを保ったまま、一直線に駆け上がることを許さない。
埋み火のような快楽を、じわりじわりとあおり立てられ続けた。
退くことも、進むこともできないよどんだ衝動の狭間で、あたしのカラダは汗をふきこぼしながら、
見えない出口を求めて身悶えする。
頬に貼り付いた髪がうっとおしい。
自分がきちんと、呼吸できているのかどうかも分からなくなってきた。
ただ、すべての感情をぶつけるように与えられる唇を貪り尽くし、
口腔内を蹂躙する――それだけに神経を集中した。
「レヴィ…」
つぶやくように、唇の端で名前を呼ばれたような気がした。
中に指を残したまま、ロックの別の指があたしの充血しきった芽をこすり上げる。
ギリギリまで高められていたあたしは、はね飛ばされるように快楽の、最後の一線を越えた。
- 212 :(206続き):2009/05/04(月) 02:06:31 ID:YC7zvhQv
- 肩で大きく息をつきながら、やはり荒い呼吸の相方を睨み上げる。
達した余韻がまだカラダのあちこちに渦巻いている。
「こンのくそロック…メチャクチャしやがって…!」
「言いながら、すごく気持ち良さそうだったのは…どこの誰だよ」
ロックが、乱れたあたしの前髪をかきあげ、額にキスを落とす。
「な…」
はずかしげもないその振る舞いに、思わず赤面する。
「でもね…そんなレヴィ見せられたら俺ももう限界」
言いながらベルトに手をかけ、素早く足を抜いたパンツと下着をベッドの下に放り投げた。
寄せたままになっていたショーツのクロッチの横から差し入れられたロックの指が、
達したばかりのあたしの中心をはね上げる。
感覚が研ぎすまされたソコは、ほんの少しの刺激にも敏感に反応してしまう。
「はぁっ…!」
はしたなく跳ねる腰から、新しいうずきがせり上がってくる。
あたしは、目を閉じてロックが入ってくるのを待った。
…ところが、いつまでたってもあたしは放置されたままで、
そのかわり聞こえてきたのは何やらガサガサという音。
「えーと、スキンはどこだっけ」
突然、そこらを探りはじめた相方に、あたしは訳もなくむっとした。
さんざんいじめ抜かれた挙げ句、ようやく素直に抱かれてやろうと人がその気になっているというのに、
その流れを無視したマヌケさは何だ?!
あたしは片足で、激しい動きにもずり落ちず何とかベッドの上に留まっていた薄い毛布を蹴り上げた。
「ヘイ、ロック。ここまで人をなぶりものにしておきながら、最後は紳士的ってか?
どーせなら最後まで犯し尽くさねぇか、このチキン野郎ッ!」
ベッドから手を伸ばしてあちこちひっくり返していたロックが、むっとしたように振り返った。
「ンだよ、こういうのは大切なことだろ。女の子なんだから、自分のカラダを粗末にしちゃいけない」
その通り。いつも、トラブルで泣くのは女の方だ。
そんなことは、物心ついた頃から汚れ切った世界で育ったあたしには十分すぎるほど身にしみている。
普段なら、こういうロックの心配りはとても嬉しい。
けれど今日は高ぶったカラダを、ほんの少しでも放り出されていたくない。
そしてなによりも、この腕にヤツを抱きとめられない分、少しでも早くヤツと一緒になりたい。
- 213 :(206続き):2009/05/04(月) 02:15:13 ID:YC7zvhQv
- だからどうしても、勢いのまま強引に抱かれたかった。
焦れた欲情をもてあましながらヤツをながめていて、ふと悪戯を思いついた。
あたしの足元にあるヤツの足の間の膨らみを、真っ白なストッキングに包まれた右足の甲でなで上げてみる。
「な…レヴィ?」
「手は使えなくても、足は使えるんだぜぇ?」
ニヤリ、と笑いながら固く張ったそのカタマリを、足の甲で弄ぶ。
「ボウヤ?ココは今すぐに、って言ってるみたいだけどよ」
「くっ…」
ロックが唇をかみしめた。
その拳は、わずかにふるえている。
「…ロック?」
ヤバイ。少し煽りすぎたか、と反省しかけたそのとき。
「…だから、限界だって言ってるだろッ…!」
突然、両足を大きく割り開かれ、自分の真ん中に熱いものが叩き込まれた。
あたしは待ち望んだその衝撃に、声を抑えることができなかった。
「ん…はァっ!…ロック!?」
あたしの真ン中が、隙間なく満たされていく感覚。
少し冷めかけた官能が、いともたやすく再燃する。
「おま…いきなりッ…!」
「ん…いつもより、アツいみたいだよ…?」
ゆっくりとした出し入れを繰り返し、荒い息の間からロックが言葉を紡いだ。
「ったりめぇよ…今日は膜も何も、ねぇんだからな」
余裕の笑みを返したつもりだが、きちんと出来ていたかどうかは自信がない。
「そんな言葉…女の子が使うもんじゃないっ…!」
言いながら、ロックは徐々にそのピッチを上げていく。
「あ…あ…!」
あたしの両腕は、相変わらずロックに触れることができない。
そのもどかしさから、ロックとつながっている部分に全神経が集中する。
今まで体験したことのないスピードで、快楽の階段を駆け上がっていく。
自分でもセーブできない。あたしは恐怖さえ感じはじめていた。
「んっ…ロック…。ヤメ、ろ…はぁ…っ!」
「それは…無理な注文、だね」
ちらりと一瞥をくれたロックは、あたしの両足を肩にかつぎ直すと、より深い部分に岐立を押し込んだ。
「ん、ハァっ…!」
乳首が、触れられたわけでもないのに痛いほどキリキリと立ち上がる。
ヤツの肉をくわえ込んだ部分が、この上なく熱をはらんで収縮を繰り返す。
もっと、もっとだ…!
- 214 :(206続き):2009/05/04(月) 02:24:00 ID:YC7zvhQv
- 促すように足に力を入れると、ロックの動きがさらに激しくなる。
胸の谷間にロックの汗が、一筋したたり落ちた。
「あ…ッ」
火照ったカラダにもたらされた突然のしずくに、思わず声を上げる。
何事かと思って一瞬、動きを止めたロックの顎から、今度は頬に。
あたしはそのしずくを、ロックの目を見つめながら舌ですくいあげた。
「…レヴィ…っ!」
上半身がしなるほど抱きしめられ、最奥に突き込まれる。
カラダのなかでひときわ大きくなる岐立。
でも、まだだ…そう、まだだろ?
やがてあたしのなかで達しそうになったロックが、自身を引き抜こうとする。
けれどもあたしは両足をロックの腰に回して押さえつけ、はずむ息を整えながらヤツを見上げた。
獲物を仕留めるときのように、全身全霊をかけて。
「よぅ、優等生。最後の最後で逃げる気か?」
「…な…!」
「逃がしゃしねぇよ、そのままイっちまいな…ベイビー…!」
腰を浮かし、下半身の密着度をより高くする。
眉根を寄せたロックがなんとか逃れようともがくが、あたしは渾身の力をこめてそれを許さない。
「ダメだって、レヴィ!」
自分の腰の動きを速め、悲鳴のような叫び声をあげる男を下から追い込む。
無理な姿勢のせいでキリキリとガーターベルトが食い込むが、その痛みすら今は気持ちがいい。
やがて男は、苦しげにうめきながらあたしのなかに自分を放った。
倒錯した充実感と絶頂感に、あたしは笑い出しそうになりながら意識を手放した。
- 215 :(206続き):2009/05/04(月) 02:40:40 ID:YC7zvhQv
- 気がついたら戒めは解かれ、
ロックが熱い湯にひたしたタオルで手首のあたりを拭いてくれていた。
「…どれくらいオチてた…?」
ずっと同じ姿勢を取らされていたせいで、肩や腕の関節がひどく痛い。
何とか右腕を上げて、目をおおった。
「ほんの5、6分かなぁ。一瞬だよ」
そういえば戒めが解かれただけで、乱れたシーツやランジェリーはまだそのままだ。
「しっかし意識トバすほど激しくヤっといて、
下着が全部そのままってどんだけヘンタイなんだよ」
かなりシワになったりずれていたりはするものの、
一応無事に身体にまとわりついているランジェリーを見下ろして思わずつぶやいた。
「…ごめん、あまりにも似合ってたから脱がせたくなくて…」
ロックがすまなさそうに謝った。
しかし次の瞬間、その口調と表情は、まるで口うるさい教師のソレになる。
「じゃなくてレヴィ!最後のアレはだめだろ?!どーすんだよ、その、子どもとか出来たら…」
あたしはまだ少ししびれている右手をまぶたから引きはがし、ひらひらと振ってみせた。
「心配すんな。今日はいちお、大丈夫な日だから。
さすがにその辺のコトは考えてるさ。それにアレだ、万が一のときは責任取ってくれンだろ?」
「な…」
あっけに取られた男の表情に満足して、重いカラダを持ち上げベッドを降りる。
「…どこいくの?」
「どこって、ヘンタイ日本人にさんざんジューリンされたんだから、
一切合切を洗い流すためにとりあえずはシャワーだろ」
「…そのランジェリー、自分で脱ぐの?」
あまりといえばあまりの問いかけに、全身の力が抜けそうになる。
こいつ、どこまで自分勝手で業が深い「ヘンタイ」なんだ?!
「…まさか『脱がせたい』とか言うんじゃないだろうな?」
いやな予感がして、問い返す。
するとロックが、慌てたように言葉を加えた。
「ごめん、今度にするよ」
「…今度って、あんのかよ…」
あたしは呆然とつぶやきながら、
こんな厄介なブツを押し付けやがったクソ尼を心底呪ったのだった…。