- 146 :大神竜一朗:2009/12/03(木) 15:39:02 ID:p6fXJOSY
- BLACK LAGOON
〜11mg程度の二酸化炭素〜 大神竜一朗
ロアナプラ。俺はこの街に帰ってきた。
日本に戻ることを選ばず。
陽も沈みかけたぐらいに、ベニーに頼まれた仕事の為事務所に向かった。
ガチャ
「あん?…ロックか。遅いじゃねぇか、今頃お目覚めかい。」
事務所のドアを開けると、ソファーにレヴィが寝転がり雑誌を読んでいた。
銀次との決闘での傷がまだ治っていなく、松葉杖が背もたれに立てかけてある。
癒えてないなら自分の部屋にいればいいのに。
別にここに来てデスクワークを手伝ってくれるわけじゃないんだ。
「レヴィ来てたの…。あれ、ダッチは?」
「姐御んとこだ。」
「そうか。」
着てきたジャケットをデスクトップのある椅子に掛け、コーヒーを入れに
流し台に向かった。
「あたしのもな。」
寝転んだままのレヴィが俺に言う。
「砂糖もミルクも入れんなよ。」
「………ああ。」
出来上がったコーヒーが準備されているわけなく、ヤカンを火にかけ
デスクトップのある机に向かった。
「あれ?コーヒーはどうした。」
「まだ、湯が沸いてない。」
「チッ、さっさとしろよな。」
先にいたお前が湯ぐらい沸かしてろよ。イヤなら自分で缶コーヒーでも買いに行きな。
ろくに歩けねぇその足でな。
「レヴィは、いつからここに?」
「昼前だ。てめぇが迎えに来ねぇから足引きずってなあ。」
「行くとか、約束してたっけ。」
「いや……。」
こういうヤツだ。いつも自分中心でモノを考えやがる。
きっとこの調子じゃ今日起きてから何も食ってないんだろうな。
ま、俺が知ったことじゃないけどな。
椅子に座りPCの電源を入れた。
「ロック、この雑誌読んだか?笑えるぜ。」
「いや、まだ……。」
PCが立ち上がりファイルを開く。
ん?ほとんどベニーがやってくれてる。これなら早い。
早速作業にとりかかり、キーボードをたたいた。
「ロック、この前の張の旦那のジョーク覚えてるか。ケンタッキーを間違えた話し。」
「悪いがレヴィ、俺は今日中にこの仕事を終わらせなきゃいけないんだ。」
「ベニーはどうした。」
「バンコクまで買い物に行ってる。それで俺が頼まれたんだ。
だから今は話せない。」
「そうかい………。」
レヴィは再び雑誌に目を移す。
お前は気楽なもんだ。そうやって一日中寝転がって雑誌見てりゃいいんだからな。
喉が渇けば俺にコーヒーを入れさせ、退屈になりゃ俺に話しかけ、まったく迷惑だ。
確かに日本では守ってもらった。駐車場でミス・バラライカに殺されそうになった時も
お前は俺の為に、銃を抜いてくれた。それは感謝してる。
でもなレヴィ、それはお前の仕事だ。お前自身、自分が俺の銃だと言ったんだ。
だからロアナプラに帰ってきてからも、礼の言葉は言っていない。言う必要もない。
- 147 :大神竜一朗:2009/12/03(木) 15:40:57 ID:p6fXJOSY
-
「暇だな……ロックこっち来て話でもしようぜ。」
「ここからでも十分聞こえるよ。」
自分勝手なヤツだ。俺は今仕事をしてる、そう言わなかったか?
暇なのはお前だけだ。
「なら、カードだ。金賭けてな。」
だんだんイライラしてきた。こっちの仕事が片付かない。
「何か話してよ、ここからでもトークできる。」
PCでの仕事を進ませながら、ソファーで寝転ぶレヴィに言った。
俺の視線はデスクトップのディスプレィ、耳はソファーに。
「…………………。」
話の相手が黙っているのか、背中の方からは何も聞こえてこない。
黙り込む話し相手の方を見ると、雑誌を開いたまま顔に落としソファーに寝そべっている。
こいつから話そうぜって言ってきたんだろ。
まあいい、黙ってくれてりゃ話さずにすむ。
「なあロック……。」
「ん?」
「いつか言ったコト、覚えてるか?」
雑誌で顔の隠れたレヴィが、篭もった声で暇つぶしのトークを始めてきた。
きっと中身のないくだらないトークだろう。明日になったら忘れるような、くだらない。
「いつの話し?」
「日本に行く前、あたしの部屋で話した……。」
「さあ、ちょっと分からないけど……。」
正直分からない。俺とお前との会話なんて全部覚えてるわけないだろ。
「…………。」
黙りこむレヴィ。被さった雑誌で顔が見えないせいで表情が分からない。
何も言わない。続きはないのか?まあいい、仕事にかかれる。
再びキーボードをたたき始めると、その手を止めさせるように、
「あたしとお前がやってないことが一つある……。覚えてるか?」
「……?」
確かそんなコトを言われた気がする。9回目のセックスをした翌朝に。
とっさに浮かんで言ったのはアナル舐めだ。レヴィはまだ俺のケツの穴は舐めてくれていない。
ペニスは生で舐めるくせに、アナルはできねぇっておかしな話だ。
レヴィが言うにはベットでも外でも出来るコトらしいが。
「ごめん、ずっと考えてたけど分からなかったよ。」
嘘だ。全く考えてなんかいない。忘れてたぐらいだ。
「………。」
また黙り込むレヴィ。やめろ、その沈黙。
顔が見えないんで怒ってる度合いが分からないから、話の返しようがない。
「えー…と。」
白々しくも考えてる演技をする。ディスプレイを横目にレヴィの寝そべる
ソファーの方を見た。
- 148 :大神竜一朗:2009/12/03(木) 15:42:19 ID:p6fXJOSY
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「確か……まだ、してねぇよな。」
雑誌で顔が隠れたままの彼女、
「何を?」
「…キス。」
それがクイズの答えか。くだらない。引っ張るだけの答えか?
したか、してないかで言うとしてないよ。でもそれはなお前と初めてセックスした日、
キスしていいかって俺が聞くと、照れ臭ぇからイヤだって言ったんだろ。
それからお前とセックスしてもキスはしなかった。
俺としてはフェラしてくれるから全然気にならなかった話だ。
そんなコトをいまさら。
くだらないクイズだ。レヴィ、笑えねぇよ。
今、部屋の時計は16時半。ダッチも、ベニーも今日は帰りが遅い。
下手したら時刻の針が明日を指す頃になるかもな。それまでレヴィと二人っきり。
考えようによっちゃあ、いい。プレイ時間がたっぷりある。それに事務所はまだ未プレイだ。
さて、どうやってもちこむか。
俺はレヴィが出したダイスを使うことにした。
「レヴィ、………キス………しよ?」
「え…?」
今の声は雑誌で顔が見えなくとも分かる。怒ってはいない。
俺はレヴィの寝転がってるソファーの肘掛に腰掛けると、その気配でとっさに身を起こした。
バサッと雑誌が床に落ちる。
「レヴィと、……キス、してみたくてさ。」
「は!?あたしはそんなつもりで言ったんじゃねぇよっ。」
起き上がってくれたお陰で、ソファーにスペースが空きそこに座った。
レヴィとは拳一つ分ほどの距離。
「キス、…ダメ?」
「おいっ、あたしとなんかキスして楽しいのか?」
そりゃあ出来ることならエダとキスがしたいさ。でも彼女とはそんな関係じゃない。
それにこの場合でのキスは鍵だ。セックスまでのな。
「お願い、レヴィと……キスしたい。」
こいつの鍵の開け方はこうだ、決して強引に開けたりしない。とことんした手に出る。
「お願い………させて。」
「……………。」
「おね……っ!!?」
レヴィが俺の唇に自分の唇を重ねた。
「!!?」
一瞬のことだった。
レヴィが顔を離し互いの唇が離れた。別に顔を赤くするわけでもなく、
「うるせぇから、してやったぞ。これで満足か?」
早すぎるキス。言葉だけじゃなく本当に唇を重ねただけのもの。
これじゃ次に進ませようがない。別にマジでキスがしたかったわけじゃない。
キスってのはあくまでセックスする為の鍵なんだよ。
レヴィ、お前だってそのつもりでしたんじゃないのか?
「あ、ありがと……。」
礼になる言葉を言っておく。他に言いようが無い。
- 149 :大神竜一朗:2009/12/03(木) 15:43:38 ID:p6fXJOSY
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「あたしとキスしたとか、ダッチやベニーに言うなよ。
仕事がしにくくなる。」
「言わないよ。」
言ってどうなる。何の自慢にもなりゃあしない。
こいつはこいつで照れるでもなく、どちらかというと呆れた風に。
何かすかされた気分だぜ。このダイスは投げ損てわけか。
押し倒すってキーもあるが、そいつは利口じゃねぇ。レヴィには使えない。
ソファーで向き合い座ってる俺とレヴィ。
「…………。」
何だよ、何か話せよレヴィ。
クイズも終わり、お前の暇つぶしにも付き合い、もういいだろ。
セックスさせないんなら、仕事の続きさせてもらう。
俺はデスクワークに戻るためソファーから立ち上がると、
「待てよ…。」
レヴィが俺の手を掴んだ。
「ん?」
「………。」
何だよ、お前の暇つぶしトークならデスクとソファーからでも出来るだろ。
俺はレヴィに引き戻され、またこのソファーに座った。
すぐ隣にいるレヴィ。笑顔、何故?
「クッ、…。」
「?」
「クッ、ハッハッハッハッハッ!」
何がおかしい。
「ハッハッハッハッ、すまねぇ。いやまさかお前とキスするなんてな。」
お前がフったからだろ。
「初めて会った時はよぅ、すげぇ弱そうで気に入らなかったんだけどな。
いつのころからかヤる仲になって。……フッ、笑えるぜ。」
ピュー
火にかけていたヤカンが沸騰したようだ。
火を消そうと立ち上がる俺をさっきより強い力で引き戻す。
「ロック、もっ一回。」
すぐにキスの事だとわかった。レヴィの方からダイスを投げてきた。
俺はソファーに座り、隣にいるレヴィとの距離をつめ、空間をつめた。
これならセックスに繋げれそうだ。キスはエダを思い浮かべてしてみたい。
俺とレヴィの唇が重なっている。
まぶたを閉じ俺は暴力教会のシスター、エダを思い浮かべながらキスをした。
エダの唇は想像してたより柔らかい。透き通るように白い肌、美しすぎる外見に似合わず
ブラックなジョークをよく言う。この柔らかい唇が言うのか。
吸い付くわけじゃなく重ね合う、まるで恋人同士のようなエダとのキス。
一度でいいからエダとキスをしてみたかった。
その先だってエダとしてみたい。
「ロック…。」
唇と唇の間で声がした。エダではなく、レヴィの声。
その声に目を開けるとレヴィの顔が目の前にあった。
現実に引き戻された俺は、さり気なくレヴィの身体を離す。
気が付かなかったが、俺はレヴィの肩に手を掛けてキスしてたようだ。抱え込むように。
情けない……。
- 150 :大神竜一朗:2009/12/03(木) 15:45:12 ID:p6fXJOSY
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レヴィがネクタイを引っ張り、俺の身体を自分に引き付けると、
何も言わず、目を閉じ俺の唇にキスをした。
「ん……。」
「……。」
別に舌を絡ませるようなディープなものじゃない。
レヴィも目を閉じている。こいつは一体、誰を思い浮かべ俺とキスしてるんだ。
俺は誰の代わりなんだ?
「ん……。」
レヴィの吐いた息が唇の隙間から俺に入ってくる。
ほんの僅かな二酸化炭素が。
「ロック…。」
再び俺の名を呼んだ。かすかに開いた隙間から。だがそれも密着し唇を重ねると、
消えてしまう程度の小さな声。
一度消えたエダの顔は戻らない。
次に進むべくレヴィの唇から離れる。
「ロック…?」
「レヴィ、また……チンチン舐めてもらえるかな。」
「…………初めてしたんだ。もう少しキスでいいだろ。」
「レヴィにはキスより、フェラチオしてもらいたいなー……って。」
「!?」
「レヴィのフェラチオ……気持ちいいからさ。」
「…………。」
俺はレヴィにペニスを舐めさせる為にズボンのチャックを下げる。
「今日は……ヤリたくねェ。」
ハァ?まあいい、ペニスを出しゃあ咥えてくれる。レヴィはそういう女だ。
俺はズボンを履いたままトランクスの隙間から、まだ勃起してないペニスを出した。
我ながらみっともない格好だ。でも勃起すればさまになる、だから早く咥えてくれ。
「もうやめだ、やめ!」
レヴィが反対側を向く。
何だよ、自分勝手なヤツだぜ。こいつの鍵は一体どこにある。
そん時に気分でころころ形変えやがって。
俺は出したペニスを引っ込ませチャックを上げた。まったくダサい絵だな。
- 151 :大神竜一朗:2009/12/03(木) 15:47:09 ID:p6fXJOSY
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セックスのあてが無くなり、デスクワークに戻ろうと立ち上がったとき
トルルルルルルル
事務所の電話が鳴った。
歩くのに不自由なレヴィ、じゃあ俺が出るか。きっとダッチかベニーだろう。
「はい、ラグーン商会…。」
電話に出ると、
『あーん、色男じゃないの〜。』
声の主はシスター・エダだった。
「あ、…エダ。」
レヴィが遅れて興味なさそうにこっちを見る。
「ああ、分かった。……ああ、…………ああ、言っとくよ、それじゃ。」
受話器を置き、電話をきった。
「エダ………何て。」
少しトーンが低い。
「久しぶりに飲もうって、レヴィに伝えてくれ…てさ。」
「あいにく今日はそんな気分じゃねぇ……。」
「そう……。」
俺は着てきたジャケットに袖を通し、ポケットの中の車のキーを確認した。
「あん?どこ行くんだよ。」
「行くって言ってしまったんだ、俺だけでも行かないとな。」
こんなチャンスめったにない。レヴィが一緒じゃなくエダと二人っきりだ。
しかも電話の声が少し、酒が入ってた。こりゃあ上手くいけばヤレるかもしれない。
エダは系統がレヴィに似ている。した手にでてウブな男を演じればいい。
そうすれば向こうから俺を持ち帰ってくれるだろう。
「行く必要なんてねぇだろー!」
何かレヴィが叫んでいる。
俺はヤカンの湯でコーヒーを作ってやり、それをレヴィに運んだ。俺の足取りは軽い。
「なぁロック、あいつは一人で飲むのが好きなんだ。ほっとけよ。」
「一人がいいならわざわざ電話なんかしてこないさ。」
コーヒーを置くと、もう一度受話器を取りダイヤルを回した。
「オイッ、何処にかけてやがる。」
「静かにっ。」
「聞いてんのか!」
レヴィの言葉を無視しつつ相手が出るのを待つ。
『ハイ。』
電話が終わると受話器を置いた。
「レヴィ、ピザをデリバリーしといたから。」
「勝手なことすんな!」
「サイズはMにしたけど、多かったら残しといて。明日俺が食うから。」
「デスクワークはどうするんだ!?」
「明日すっとぼけた顔して、ベニーに謝る。」
エダと二人っきりで飲める。上手くいけばヤレるかもしれないんだ。
土下座の一つぐらいしてやるよ。
「勝手にしろ……。」
レヴィからお許しが出た。
- 152 :大神竜一朗:2009/12/03(木) 15:48:36 ID:p6fXJOSY
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俺はさっと流し台でコーヒーのついた手を洗った。
急がないとな。エダの酒が冷めちまう。イエローフラッグに行く前に
自分の部屋に寄らなきゃ。今コンドームをもっていない。
「仕方ねぇなあ……。」
ソファーに座ってるレヴィが、呆れたような表情で
肩をすくめ、トントンと俺とキスしてた時座ってた場所を叩く。
「?」
何だ?そこに座れって意味か?
「仕方ねぇから、フェラチオしてやるよ。ここ、座んな。」
「え、でもさっきイヤだって……。」
「可愛そうだからな、……してやる。だから座れよ。
今日はお前のワガママに付き合ってやる。」
はあ!?ふざけんな!しないとか、するとか。
仕方ないか、俺達プライベートはセックスフレンドだもんな。
その時の気分に左右されても。ホント、仕方ねぇ話だ。
「ゴメン、…今はいいや。」
「!?」
レヴィに笑顔で返してやる。
「………………。」
無理させてゴメン、の意味を込めソファーのレヴィに手を振って、
事務所を出た。
今夜のことを想像しただけで……
高鳴る胸を押さえきれず、俺は車のキーを回した。
END