- 941 :名無しさん@ピンキー:2011/07/11(月) 03:56:23.14 ID:sfdNXM6X
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ああ。空綺麗だな。
薄れ逝く意識の中で、そう、思う。
視界が、霞む。
腹を庇ったのは何でだろう、咄嗟のことでよくわからない。
けれど、あの瞬間。確かにあたしは腹を守らねぇとと判断し、結局それで下手を踏んだ。
ああ、ロックの声が聞こえる。
生きてる。ロックは生きてる。
よかった。
ちゃんと、あたしの放った弾丸は、私が殺すべき相手を殺すことが出来たのだ。
よかった。
けど、まだこいつに言ってない。
ああ。
ああ。
けれど言わない方がきっといい。
だってあたしはここで終わり、背中で地獄の扉が音を立てているのが聴こえる。
ひんやりとした死神の窯が喉首をすらりすらりと往復しているのがよくわかる。
肺に空いた穴から空気が漏れる。血の泡で息が出来ねぇ。
知っていて欲しい。
けれど、言うべきじゃねぇ。言えば、あいつは二つ失うんだ。
泣くなよ、苦しいんだから抱き締めんじゃねぇよ、くそったれ。
顔にべたべた涎つけてんじゃねぇよ、犬っころかよ、てめぇはよ。
ああ、言ったら喜んでくれたかな。
こんな汚物みてぇなあたしの身体にでも。
「あんたのガキがいる」って、そう告げていたならば喜んでくれたかな。
頭ン中にロックの顔が次々に浮かぶ。網膜にはもう何も映しちゃいないってのに。
最期まで残るのは聴覚と触覚。
そんなことをどっかで読んだ気がする。いや、何かの映画だったかな。
どっちでもいいけどよ。
ロックの腕が肩を抱きしめてる。
掌が何度も頬を撫でまわす。
呼吸を助けようとしてるのかな。
血泡ごと吸い取らんばかりに吸い付いてくる唇。
馬鹿、かえって苦しいっての。
最期に視たのは真っ青な空。
どんなに酷い顔でも、アイツの顔を見たかったのに、何も見えない。
変なの。瞼を必死にこじ開けてるってのに。
なぁ。腹にアンタのガキがいるんだ。
まだ全然腹は膨れてねぇけど、いるんだ。本当だからな。嘘じゃねぇからな。
何か言わないと。言えるのはきっと一言。何だろう。
まだ惚れてるって言ってねぇな、孕んだことも言ってねぇ。
隣に居て幸せだった。
呆れんなよ、少しだけあんたのガキを産んでみたい気がしてた。ちょっとだけだけどな。
必死に呼吸を整える。
たった一言伝えるためだけに、最期の息を肺に押し込む。
「しに…たく、ない」