939 :sage:2012/07/09(月) 22:33:06.92 ID:VY3yW5PL
「レヴィ、開けてごらん。」

「おっ?ロックからプレゼントなんて珍しいじゃねぇか。
今日はあたしのバースデーでも、キリスト様のバースデーでもねぇ、
ただのクソ暑い日に何の用だ?」 ガサゴソ

「……なんだこの布っきれ?これはあれか?ジャパニーズキモノってやつか?」

「浴衣っていうんだよ、レヴィ。着物よりもっとライトなやつだ。」

「ユカタ?? こんなモンどこで手に入ったんだよ。」

「今日の荷受けでさ、ベトナムからの荷物にこいつが大量にあって…
とは言っても荷物はこの浴衣の詰まった箱の奥深くに、
日に当たっちゃマズイブツが入ってたらしいんだけど。」

「おいおい、荷物から抜いたのかよ」

「いや、引き渡し相手が俺の顔見て、
『兄ちゃん、日本人か?良かったら持ってかねぇか?
どうせ用が終わったらこの布切れは焚き付けだからよ。
ブツの匂いが着いてる以上、ニッポンには届かねえ荷物だしな』
…というわけでもらって来たんだ。」


「はーん。まぁ納得行った。んで?あたしはこれをどうすりゃいいんだ?」
「着てみるんだよ、レヴィ。」
「おいおい冗談だろ、こんなモン来たら飛び回れねぇ。」
「明日は俺たちオフだろ?」
「そもそもこんなモン着て街歩くのかよ!?」
「それは無理にとは言わないさ。俺がレヴィの浴衣姿を眺めたいだけだ。」

…っ(カァア)
「大体着方なんか分からねぇし」
「大丈夫、俺が着付けてやるよ」
「は?ロックが?」
「まぁ任せて。んじゃ明日の晩、また来るから。」

941 :名無しさん@ピンキー:2012/07/10(火) 07:34:43.90 ID:4oXFRXn4
翌日

「…ロックの野郎なんかに着せ替え人形にされてたまるかよ!
こんなもん簡単に着てやるよ!巻いて縛るだけだろう!?」

ガサゴソ

「………っだぁぁあ うぜぇ布切れだなっ!
こんなもん着るなんて、イエロー・モンキーどもはどうかしてやがる!!
もういい、決めた!焚き付けにしてやんよ!」

コンコン

「レヴィ?居るんだろ?入るよ」

(やっべ、ロックにこんなとこ見られたら…!)

「ヘイロック、ちょっと待て!」
(なんとかして脱がねえと!)

「レヴィ?昨日のユカタなんだけど…」
「馬鹿ロック!入ってくんな!!」
(って、鍵を掛け忘れてるアタシのが馬鹿か!締めに行かなきゃ…)

「…っと、と、うわぁっ!」
(やべ、裾踏んだ!)

ドターン

942 :名無しさん@ピンキー:2012/07/10(火) 07:36:40.63 ID:4oXFRXn4
「!!レヴィ!?」 ガチャリ
………レヴィ?どうしたのその格好…」

「っせ、うるせぇ、うるせぇうるせぇぇ!!こっちみんな馬鹿!つーか入ってくんなアホ!」

「ユカタ、着ようとしてくれてたんだ?着せてやるって言ったのに…
あー、合わせ方が逆だ。これじゃ死人だよレヴィ。
手を通すところも間違ってるし。帯紐を堅結びとは…」

「……うるせぇ…」
「レヴィ、顔伏せてるけど耳まで赤いよ?」
「うっせぇクソボケ!とっととなんとかしやがれ!」
「ハイハイ、なんとかしますよっと… グイグイ  …うん、紐はこれで解けるな」

「サンキュ、オーライ。後ろむいてろ。」
「ハイハイ。」 くるっ
「そのまま帰れ。」
「え!勿体ないよ! 」 くるっ
「オイこら、こっち向くなバカ!!」
「何を今さら…俺の前でも平気でパンツ一丁で歩いてたくせに。」
「黙れこのムッツリ野郎。」

ふぁさっ
「おい!何する…」
「いーから、着ろよ。ハイ腕上げて。」
「お、おぅ…」
(慣れた手付きだな…?)

943 :名無しさん@ピンキー:2012/07/10(火) 07:38:05.78 ID:4oXFRXn4
「ここ持ってて、紐縛るから。タオルある?」
「そこに干してる奴なら。」
「オーライ、借りるよ。これを巻いて…っと。締めるよ。」 グッ
「…っぐ、っ!締めすぎじゃねぇの?」
「このくらいやらないと、後から解けるんだよ。ハイまた腕上げてー」
「妙に手慣れてるな」
「ん、あぁ、おふくろが日舞…
キモノ着て踊る、ジャパニーズダンス?みたいなもんをやっててさ、
俺も中学までは習ってたんだ。だから着付けもできるんだ。」

「こんなもん着て踊れるのかよ?」
「そんなに激しくないやつだからね。まぁ、好きで習ってたわけじゃないんだけど」
「お坊っちゃんは色々大変でごぜーますね〜?」
「うーん、でもお陰でこうして、レヴィの浴衣姿が拝める。」

「アホか。とっとと着せやがれ!」
(見る見る間にそれっぽく着せられてる…)

「ハイハイお姫様。もうすぐ出来るから。」
「…よし、出来たよ。鏡見てごらんよレヴィ。」
「…ぉー…」
「レヴィ、似合うなぁ。(満足)ちょっと髪上げてみてよ」
「こうか? 」 ヒョイ
「いい!すっごくイイよレヴィ!」

……はっ!
「黙れこの変態!!」
(やべ、自分でも似合うとか思っちまった、つか、褒められて嬉しいとか思った!
あたし今ニヤケてなかったか!??ガラでもねぇ!)

「いや、思った以上に似合ってるからさぁ… …失敗したな」
「何がだよ?」
「下駄とか小物とか、あと俺の浴衣も用意しとくんだったなぁ…」
「アホか!そんな事したらま、まるで…」
「まるで?」 ニヤリ
「なんでもね…」
「レヴィ、顔真っ赤。」
「うっせぇ。つぅか苦しいんだよ、浴衣って奴は。」
「そろそろおしまいにする?」
「あぁ、おしまいだ。」
「じゃあ、俺の手でおしまいにしてもいい?」


そう言われたが最後、レヴィはもう、抵抗などしなかった。
ただ、馬鹿ロック…アホ野郎めと、悪態をつきながらも、
目の前の男が浴衣をほどくことを止めなかった。


おしまい。




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