まるで夢を見ているような一時だった







それが悪夢のような現実になるか
それとも至福の現実となるのかは







この後の、三蔵の…反応次第だと







運を天に任せるギャンブラーの心境だった





















流れ流れて…9





















自分が女性と所謂、そういう事をしなくなってから。
大分時間が経っていた。

原因は誰に云われずとも分かっている。







僕が唯一、愛した女性







僕の身体、僕の愛、心、全てを捧げた唯一の人







彼女が生きてさえいてくれれば。
他の誰も必要としなかっただろう。

これは絶対的な真実、事実で。

でも彼女が今、現在自分の傍に居ないのも現実で。

だからこそ、僕は妖怪になったのだけれど。
それを後悔してばかりの日々に決別をさせてくれたのは三蔵。







でも自分が組み敷いている女性は彼の『元』思い人。







そこに罪悪感が無いのか、と聞かれれば。
否とは言い切れない自分が居るけれど。

けれども、そもそも彼女の手を最初に離したのは彼の方なのだから。

自業自得、でしょう?























正直、『自分が抱く』なんて科白を吐いておきながらも。







本当に彼女を抱けるとは思っていなかった。







だって僕が最後に抱いたのは最愛の人で。
彼女以外との人間との身体の交わりだなんて。

無理だと、出来ないと心底思っていた。







けれど現実では、彼女は僕の身体の下で、僕の楔を打ち込まれて喘いでいて。







懐かしい、女性独特の柔らかい身体の感触を堪能して。

僕を包み込んでくれる温かい湿った場所に酔い痴れて。

眩暈がする程の、身体中を走り抜けるような快感に、溺れるようにして流されて。







二度と抱けないと思っていたのは嘘ではないが。
今、現実にこういう行為が出来るのは、きっと彼女だから、何て。

都合の良い、……言い訳なんでしょうかね…




















あぁ……

本当は、僕は






こんなにも自分を抱いてくれる腕を切望していたんですね







ね、……























切ない喘ぎ声を上げながら。
それでも僕の背中に腕を伸ばして、僕を抱き締めてくれて。







こんな自分なれど。

穢いのなんて百も承知、の傷に塩を塗るような行為だと理解していつつも。

けれど止められない衝動。







今でも三蔵への思いを断ち切れずに引き摺っているには。

こんな僕の思い等、分かりはしないだろうけど。






















でも、もしも







もしも貴方が三蔵の事を思い切れて

此処に見切りを付けられるのだったなら







……







僕と一緒に…






















「あっ…あぁっ、んっ……はっ、かい」

「はぁっ……っ…」





















僕の手を







どうかこの手を掴んで






















ヒク付くソコに目一杯、自身を突き刺して。
彼女が頂点へと登れるように足を引き上げて、深く深く入るようにして。

何度かソレを繰り返してやれば。

彼女は甲高い悲鳴のような声を上げて達したようだった。







そして己もその締め付けに耐え切れなくなって。
彼女の内へと、彼女を抱いた他の男のように全てを放って。







駆け抜ける絶頂感に罪悪感を感じながら。
それでも一時の夢の中へと迷い込めたような感覚に酔っていた。






























どうか、僕のこの穢れた手でも良いと云ってくれるのならば

その時は僕が貴方を苛む、全てのモノから守ってみせるから






だから、どうか

この手を掴んで、くれないでしょうか……








































本音を云ってしまえば。

八戒に抱かれるのは嫌だった。






共の旅をしている時から、投げ掛けられるような視線を向けられて。
意味の深いソレを気付けない程、鈍感な女だったならどんなに良かったのか。

それでもその視線に気付けなければ。
もっと彼を傷付けてしまっていたのだろうが…







今、思えばアタシは本当に差し伸べられた手を掴む行為の選択を誤ったのかもしれない。







きっと悟浄だったなら見掛けからは想像出来ない程に大事にされただろう。
甘やかして貰えて、甘えて貰えて、お互いの存在でお互いを癒せる者同士になれただろう。

きっと八戒だったなら包み込んでくれるような愛情で、心底酔えるような温もりに溺れていられただろう。
穏やかな時をゆったりとした時間を重ねて、お互いを慈しむように存在出来ただろう。







どちらを選んだとしても、女としての幸せは決定されたようなモノなのに。

なのにアタシが選んだのは……選んだのは…







一番、女を幸せに出来ないであろう玄奘三蔵法師である貴方で。







既にそこに存在しているだけで女を不幸にすると決まっているような貴方。
だって貴方はこの桃源郷で、ホンの一握りしか存在出来ない三蔵法師で。

その貴方は当然『僧侶』で。

幾ら中には生臭坊主と云われる規律を守らないお坊様が存在していても。
最高僧の彼がソレをしていれば当然周囲からの風当たりは辛いモノになるだろうし。

煙草や賭け事、食べ物とかも本当はイケナイのだけれど。
『女』なんて存在を囲われるよりはよっぽどマシな事だし。







それ一つだけとっても絶望的なのに。
更に輪を掛けているのは当然のように高圧的な言い方をするあの人の性格だろう。

他人に興味を示さず、他人の意見等聞かず、只、己の信念にのみ忠実に生きる貴方に。

きっとアタシは疲れてしまうだろう。
きっと他の女も耐えられないだろう。

彼自身は酷く人を惹き付けるのに、彼の纏う空気は他人を拒絶するモノだから。
その内側へと入れた瞬間、狂喜乱舞するけれど。

本当の戦いはそれからで。

だって彼は内側へと入れてくれたからと云って、早々に何でも云う事を聞いてくれるような人じゃないから。

それに加えて貴方の内側へ入れた他の女の存在なんかが目に入ってしまえば。
もう、一発でOUTなんだよ。







耐えられなくなっちゃうんだよ。







言葉なんて幾らでも嘘を付ける、欺けられるモノだけれども。
その時にしか思っていなかった事だろうとも。

その言葉を云うのが嫌だというのも分かるけど。







それでもアタシは……



















その言葉さえ貰えていれば






貴方を見切れていたのかもしれない…






その言葉さえ貰えていれば






貴方の傍をその人へと素直に譲れていたかもしれない…





















何もかもが曖昧な儘で、女が本当に満足出来ると思っているのならば。






三蔵…






貴方は何も知らない子供のよう、ね…






でもそんな貴方に振り回されたアタシはもっとバカな女でしょうけれども

それでも昔のあの一時だけは幸せだったの






明確な言葉さえ貰えなかったけれど、それでも

幸せだったのよ……






















「……八戒…、もっ…と………もっと抱いて…」

「…?」

「お願いよ………何も考えたくないのっ…」







巻き込まれるのを承知でアタシを抱いたのなら。
覚悟があってアタシを抱いたのであるならば。

言葉をどう云い繕っても『利用』する事に変わりが無いように。







忠告はした、何度も止めようとした、帰ってもらうよう何度もそう云った。

けれど貴方はアタシとの関係を選んだのだから。







だったらもう少しだけ付き合ってよ。

未練を引き摺るバカな女の末路に、…もう少しだけ。







付き合ってよ…

















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