自分の体調も顧みず。
己の事を二の次、三の次にし。

睡眠すらろくすっぽ取らずに没頭していた彼女のパーツ作成は。
それから間もなく完成した。





その後直ぐに俺達三人はギルモア博士に呼ばれ。

緊急に再びメンテナンスを行なわれる事になった。






呼ばれたのは、第一世代と呼ばれる002、003と俺、だった。

















交換


















急に呼ばれた面子を見て。
大体の想像は付くものの。

それでも集まった俺達に。
ギルモア博士はとても言い辛そうにしていた。





「これから君達の神経配置装置を付け変える」





そう言い放って開始されたパーツの交換。





第一世代の俺達は。
本当に009達とは違って。
比較的、短い期間での定期的なメンテナンスを必要とされる身体で。

彼女を呼ぶ前から続けられていた短い間隔のメンテナンスがソレを物語っていて。

そしてこのパーツを取り替えれば。
暫くは大丈夫だと。

博士は苦笑いをしながら。
そんな事を云っていた。














きっとコレが彼女の作っていたパーツだろうと。
何日も徹夜を続けて作り続けた代物だと。

何故かココに居る自分達には容易に想像ができてしまって。















あんなに頑張って作っていた代物は。

俺達の為だったと云う事を。

その時、初めて気が付いた。
















交換される予定のパーツ。

それは神経を各場所に繋ぐ大事なモノで。
ソレが壊れたら最後。
自分の身体なのにも係わらず、自分の意志では動かなくなるらしい、と。

それの老朽化が著しくて。
早急にパーツ交換が必要だったのだ、と。

言い渋るギルモア博士から無理に聞き出して。
改めて自分達が危ない状態だった事を知る。

どうやらソレを一人で三人分作るのは無理だと判断した彼女が。

博士に話し、頼んで分割して作ったと云う。





助手のやる範囲を超えているとか。
博士に相談してからやる事ではないのか。

なんて事は頭の中からすっ飛んでしまっていて。





あんなにも一心に。
ひたすらソレを完成させる事だけに集中して。
自分の事なんてどうでもイイ、とばかりに。

機械仕掛けの俺達の身体の事を優先させて。





倒れてからでは遅いのに。
体調を崩してからでは遅いのに。

なのに何で彼女は俺達の事を優先させたんだろう……





そんな事を考えながらゆっくりと彼女の休む仮眠室へと。
交換作業の終わった三人で向かう。















そうっと扉を開ければ。
奥の簡易ベッドで。
生きているのか心配になる程に静かに眠る彼女が居て。

どれだけ精魂込めてそのパーツを作っていたかを。
思い知らされたような気がした。





思いもよらない彼女の気使いに。
ソコに来ていた三人の誰もが。

とても優しい顔つきをしていて。





ぐっすりと眠る彼女に。
心の中で。

『ゆっくり休んでくれ』

と云って。






部屋を後にした。
















それから彼女が起きてきたのは次の日の昼間だった。

寝ぼけてボンヤリとしてキッチンに入って来た彼女に。
003が温かい笑顔で云った。





「おはよう、





続いて002も。





「Good Morning





そして俺も。





「Guten Morgen






面白い悪戯が成功したような顔で笑っている俺達に。

突然、ファーストネームを呼ばれた彼女だけで無く。
リビングに居た他の面々も驚いたような顔をしていて。





何故かとても楽しかった。








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