また、見てる……

どうして…?





どうして貴女はそんな目でアルを見るの?
貴女には貴女の彼が居るでしょう?





性格も容姿も抜群な貴女に。
他意は無くとも。

そんな意味深な目で見られたら。





何の取り柄も無いアタシは。





不安で不安で。
仕方がなくなってしまうんです……















視線















ほら、また見てる。

ちょっとした瞬間。
アタシとアルが一緒にいる時に限って。

彼女はコチラを見る。





彼が読んでいた新聞のTV欄が気になって。
話掛けながら後ろから覗き込んだ瞬間。

002達と話していた彼女の神経がコチラへ向くのが気配で分かる。

009もそれに気付いているのか。
僅かに彼は苦笑いをして。





あからさまでない分。
無意識的みたいだから。

余計にココロが痛くなるの。










本当は。
003は、フランソワーズはアルの事が好きなんじゃないか、と。










有り得ないとは云えない。
その事実が頭の中を占領して。

何とも云えない。
モヤモヤしたものが喉まで出掛かって。

でもソレは決して口から言葉となって吐き出される事は無くて。





お願いよ。
フランソワーズ。

アタシから彼を、アルを奪わないで。

ただの人間のアタシから。
同じ、共通する苦しみを持っているアナタが。
優しい優しいアルを。





奪っていかないで……















夜。
否、もう夜中と云ってもイイ位の時間に。

きっと今日も起きていてくれるアナタの元に。
待っていてくれる筈のアナタの所へ会いに行く。





コンコン、と短くノックの音をさせれば。
直ぐにコチラへと歩いて来る気配。

開けられたドアから綺麗な薄いブルーの瞳。

引き攣らないように笑みを浮かべ。
アタシはスルリと彼の部屋へと忍び込む。





まだ誰にも気付かれていない。
アタシとアルの夜の逢瀬。

でもアタシが彼の元へ尋ねて行くのが殆どで。
彼がアタシの部屋へ来てくれたのは数える位しかない。





皆に知られていないと云うのも手伝ってか。
ここら辺が不安になる要素の一つだと分かっているのだけれど。

それでも彼に。
『アタシの部屋へ尋ねてきて』
何て言える筈が無くて。

アタシは今日もこうやって彼の部屋へと来てしまう。





彼がアタシを拒否する事は無いのだけれど。
一応『好きだ』と云う言葉も貰ったけれど。

それでも不安になるんだよ?





だって相手は彼女なんだもん。

何処からどう見ても綺麗に整った顔。
その全てのパーツは小さい顔に。
有るべき場所にキチンと収まっている。
加えてプリマを目指していただけあって。
スラリとした綺麗な手足に、細くて白い指先。

何より優しい性格で。





対するアタシは何処にでも居るような普通の女であって。

特別、自慢するような所も無くて。
破片程も勝機を見い出せなくて。





そんなアタシが今の関係を築けたのが、そもそも奇跡のようなモノだから。

色素の薄い、綺麗な白銀の髪に薄いブルーの瞳。
高い身長に、綺麗に筋肉の付いた肢体。

一見、皮肉屋に思える彼が。
実はとても優しい事をココに居る誰もが知っていて。





だから余計に気が気じゃないのよ。





少しだけ。
少しだけでイイの。











お願いよ。
アタシをアナタの恋人だと。

思わせてよ……






























本を読んで待っててくれていたのか。
アルのベッドの枕元にドイツ語の本が置かれていた。

ソレを視界の端に捉えながら軽いキスを交わして。
アタシはベッドに押し倒された。





アタシに圧し掛かってくる彼の身体。

その重さが、彼がアタシを抱いている事を伝えてくれて。
とてもとても嬉しくて。

押し倒された儘。
アタシはアルにキスを送る。





彼はソレを以外そうに見詰めていて。





「どうした?」





と、優しく問い掛けてくれる。

何時もとちょっと違う行動をすれば。
ソコから何かを感じ取って。
そんな風に気を配れる優しいアナタだから不安になるの。

なんて云えるワケが無くて。





「…ううん、なんでもない」





そう言って、再び彼を引き寄せた。

軽いキスから次第に深いモノへと変えていって。
切ない気持ちの儘に。

彼を求めまくった。



















『溺れる者は藁をも掴む』

昔の日本人のコトワザだが。
そこは日本人の仲間が居て教えてくれて。

ナンで今、そんな事を思い出すのか。








あぁ……

今のがそう、思えるからか。








ココ幾日、ずっと様子がおかしかったのは知っていたが。
それでも彼女が知られないように。
気を配っていたのに気が付いて。

彼女から言ってくるのをずっと待っていたんだが。

何も言ってこないと思えば。





こんなキスをしてきやがって…





内心、穏やかでないアルベルトだったが。
それでも彼女からこんなにも求められた事が無かったのも事実で。

それだけ『自分の事を思っていてくれる』。
そう考えれば、彼女がどうにも愛しくなって。

求められる儘に。
彼はの口付けに応えてやった。










彼女を包む、薄い夜着を脱がしていって。
露わになっていく柔肌に。

冷たい右手で愛撫を重ねる。





鋼鉄の手で彼女の肌を触るのは最初こそ抵抗があったものの。
右手で触ると何と無くが嬉しそうにするのに気が付いて。

それからは利き手である右手で彼女を高ぶらせる事が多くなった。





そして今夜も。
ナイトスタンドのみに照らされるの身体を冷たい右手で愛撫する。





首筋から鎖骨。
鎖骨から乳房。
ソコを柔らかく揉みしだけば。

触りもしない突起部分が固くなって。
感じている事を主張してきて。

恥かしそうに顔を背けるに薄く笑ってしまう。





自己主張したソコを口に含んで、舌先で押し潰せば。
の身体はピクンと反応を返してきて。

それを楽しむかのように強弱を付けて繰り返し。
弱いであろうわき腹を下へとなぞり。
上へと撫で上げる。





「ぁ……んんっ…」





未だ馴れないのか。
羞恥に頬を染めて。

自分が始めてでもないのに。
己もその事を知っている筈なのにも係わらず。

何度も夜の逢瀬を繰り返している筈なのに。

まるで生娘を抱いているかのような錯覚を覚えてしまうほど。
今の彼女は初々しくて。





それでも愛撫の手を入れれば入れるほど。
何時もより貪欲にソレを求めているような彼女に少々疑問を感じて。

触れる手を止めれば。
彼女はコチラを向いて。

不思議そうな目で自分を見た。
その目には如何し様も無い程の切なさが含まれていて。





とうとう今まで口に出せなかった疑問が漏れる。





「……、どうしたんだ?」





その問いに彼女は我慢するような。
苦しさを誤魔化すような笑顔を浮かべ。

自分の左側にあった俺の手を掴んだ。





「ねぇ……アル。…アタシ、アナタの手、好きよ?」

「あぁ……知ってる」

「白銀の髪の毛も、薄いブルーの目も、皮肉が飛び出すその口も」

突然始まる彼女の告白。

「みんな、みんな大好きよ?」

「…あぁ」

それに俺は頷く事でしか返事が返せなくて。

「アナタの身体、アナタのココロ、アナタが送ってきた人生の全てが愛しいの」





それは壁を越えようとして、独りで死なせてしまった恋人との事も含まれているのだと。
心の何処かがざわめくのを感じる。

そしてソレが俺が俺であった全ての過去で。
それを彼女は愛しいと云う。





俺の全てを包み込んでくれるかのようなその言葉に。

この女を選んで、心底良かった、と思える自分が居て。





普通の女だったなら。
過去の女に嫉妬するのが本当だろうが。
それでも彼女はこうやって笑って認めてくれている。

多少の無理が、ソコには含まれているのかもしれないが。
それでも彼女との事を否定されるよかはよっぽどマシで。





でも、こんな時にその話はしないで欲しかった。
今、こうやって自分のベッドへ押し倒しているのは。

他ならぬ、なのだから。












「アタシ、…アナタに会えて良かった……」





縁起でもない。
意味を深く考えれば。
まるで別れの言葉のようにも取れるその言葉で。

彼女が何か『不安』を抱えている事を知る。





「一体どうし」

「ねぇ、もっと……もっと触って?」





尋ねようとした言葉を遮るかのように次の言葉を発して。
それも行為の続きを促すようなセリフを、だ。

普段の元気な彼女からは想像も出来ないかのような表情で。
憂いを含んだ情欲した顔で催促されれば。

応えないワケにはいかなくなって。












鋼鉄の手は。
この手は己にとって、自分がサイボーグである事の証である。

その手を好む、と云う彼女の言葉は。
少なからず生身の人間に戻りたいという自分の意志とは離れてしまっているのだろうが。

それでもこんなになってしまった身体を。
人間ではなくなってしまった俺を認めてくれているようで。





少しだけ嬉しかった……















人間の、女独特の脂肪の所為で柔らかい肌を。
冷たくて固い鋼鉄の手で触って撫でて。
ベッドへと縫い付けるかのように手首を固定させて。

思いの破片を含んだ、僅かに熱っぽくなった口付けを交わしながら。

生身とは云い難いが、それでも人工皮膚に覆われた左手で愛撫を重ねて。
そんな中、彼女は更に鋼鉄の右手での愛撫を望む。





「もっと……お、願い…この手で、もっと…触って……」





温かい彼女の手が冷たい手を掴んで己の肌へと触れさせて。

積極的なその行動に。
アルベルトは内心苦笑いを浮かべ。

「そんなに急くな」

と、だけ彼女の耳元に囁いた。





冷たい手で彼女の肌をなぞっていけば。
鳥肌を立てるかのように肌は反応していって。

温度を余り伝えない固い手が。
彼女の肌の体温に温められて。

まろい彼女の身体を這い回る。

時折、短い声を上げて彼女はソレを嬉しそうに受け入れる。





徐徐に彼女の熱が伝染するかのように。
自分の右手も温められて。

今だけだったが。
只の錯覚なのだろうが。

自分の右手が生身であるような錯覚に陥る。





その瞬間がアルベルトにはとても好ましいモノで。





変えがたいこの短い時間を堪能すべく。
彼の手は更にの身体を溶かしていった。























「あっ…あぅ………ア、ル…」

流されるような快感の中。
は必死にアルベルトの身体にしがみ付いていた。

自分の中に埋め込まれた彼の雄に絡みつくような自分の華が恥かしくて。
それでも、そんな事すら忘れてしまいそうな位の快感に。
今にもイってしまいそうな自分を叱咤しながらも彼の名前を呼んで。





「………」





何時もより幾分か低くなった彼の声を耳元で囁かれ。
更に感じて。

ヒクつくソコから快感を感じ取って。
アルベルトも切なそうに溜息を吐き。

そろそろフィニッシュが近いのか。
彼はアタシの足を抱え直して。
より深く入るようにして。

挿入をし始める。





「ああっ、あっ、…ア、ルぅ…っ!」





一気に身体中の熱が上がって。
沸騰したみたいにそこいら中が熱くなって。

彼を受け入れているソコから。
アタシの子宮に彼のが何度も叩きつけられるように打ち付けられ。

上がりきった熱は解放を求め。
彼の首に縋りつきながら。

アタシはなるべく声を上げないようにしてイった。





アタシがイった所為でキツク締め付けたソコに。
彼の雄から放たれた液体が流れ込み。

何度か打ち込む事で。
ソレを出し切ると。

アルは一つ息を吐いてアタシを抱き締める。





何時もの行為。
終わった後の抱擁は。
熱くなったのは彼も一緒だと云う事が。
触れ合った彼の身体から、濡れた彼の身体から読み取れて。

とてもとても幸せな気分にさせてくれる。





汗ばんだ背中に腕を回して。
熱の引かない身体を押し付けて。

まだ抜かれていない彼の雄を締め付けてみる。

それを敏感に感じ取ったのか。
一瞬、表情を動かして。

アルは苦笑いをした。





「はぁ……は…、アル……」





息の整わないアタシに。
彼は軽いキスをくれて。





「どうした…、まだ足らないか?」





自分だってイった直後のクセに。
そんな余裕のあるセリフ笑いながら云って。





「……もっ…と、…シテ……?」





ソレに肯定の意味を含む言葉を返せば。
彼は少し驚いたような顔をしたが。

それでも嬉しそうに口を歪め。

「どうなっても知らんぞ」

と、捨て台詞沁みたモノを吐き。
一旦、自身を抜いた。




「あっ…ん……」




その引き抜かれる感覚に身体を震わせ声を上げるアタシを見下して。





「そんなんで大丈夫なのか?」





等と云っているが。
既に彼の手はアタシの身体を弄り始めていて。

グッタリとしたアタシを引っくり返し。
うつ伏せにすると彼は腰を引き上げるかのようなポーズをさせ。





「えっ…?あ、ナニっ!?」





慌てるアタシをモノともせず。
四つんばいの格好をさせると。
今まで自分が入っていた華へと手を伸ばし。

ソコへ指を突き入れた。





「んっ……んんぅ…」





侵入してくる指に。
内で蠢く指に。
先程注ぎ込まれた彼の白液とアタシの愛液が絡み付いて淫らな音をかもし出して。

部屋の中に充満していく卑猥なその音とアタシの喘ぐ声。

幾ら抑えようとしても。
口の端から漏れてしまって。

ソレが更にアルベルトを煽っている事をは知らなかった。





身体を密着させて。
指はアタシの中に入れられた儘で。
内壁を擦り続けながら直ぐ上の突起も押し潰し。
残る手は胸を揉みしだき。
触れる唇が首筋を吸い上げて、紅い跡を残す。





イった直後に近いのに。
そこ迄の深い愛撫を施され。

は呼吸も儘ならないような快感を全身で感じていた。





胸の形を変えるように掴んだ手が。
アタシの中を掻き回す指が。
その直ぐ上にある、痛い位に感じる突起を捏ね回す指先が。
押し付けられた身体が、唇が……

全てが全て彼を求めていて。





「うぅ…っん、アル……ア、ルっ……」





抱きつく身体が無い所為か。
しがみ付くのは白いシーツしか無くて。

感じて、動く度に乱れた髪がシーツに散らばって。
黒い髪から覗く柔肌が薄っすらと色付いて。





アルベルトは堪え切れない欲情を感じる。





自分の名前を細い声で呼ばれる事も。
細い手が頼る身体を掴めなくてシーツをキツク握る様も。
擦る度に収縮して指を離さないように締め付けるソコも。
女独特の細い腰が揺れる様も。

ソレのどれもが彼を煽り続けて。





すっかりと復活した自身に苦笑いを禁じえないアルベルトは。
それでも愛撫を続け。

一旦、彼女がイクまでソレを続けた。





そして程なく二回目の絶頂を迎えたのソコに。
イった直後のにアルベルトは自身を突き立てて。

耐え切れないように背中をしならせる彼女の身体を背後から抱き締めて。
何時もとは違う入れられた角度に。
深さに。
声も満足に上げられない程の快感を感じて。
息も切れ切れのにもっと感じろ、とばかりにソレを出し入れさせて。

その度に堪えきれないように漏れた声に。
もがくように、助けを求めるような仕草でシーツを掴み、引き寄せる彼女に己も感じて。

熱くて、溶けてしまいそうな彼女のソコへと浸りきった。











その時、不意にノックされた扉。










それにハッとしたかのように動きを止めるアルベルト。
急激に覚醒していくの意識。

熱に魘されたような表情は赤みを残すが。
潤んだ目はしっかりとノックされた扉を見ていて。














「……004、起きてる?」














聞こえた声に。

の身体が。

密着していたのも手伝ってか。

強張ったのが。

想いの外、ハッキリと伝わってきて。













これが原因か……














闇雲に自分を求めるような女では無い事はわかっていたから。
だからこそ原因を知りたかったのだが。

その大元からこんな時間に尋ねられるとは、な。





アルベルトは僅かに眉間に皺を寄せる。





「すまないな、003。今、取り込み中だ」





それはそうだろう。
恋人との逢瀬の真っ只中。

それも愛の交換の途中なのだ。
ココで邪魔をされれば大抵の男は怒るだろう。

それも今回のは彼女が原因のようだし。





「え、取り込み中?」





自分の能力を封じているのか。
彼女は不思議そうな返事をした。

そこへアルベルトは彼女の中に居る自身を再度激しく挿入して。





「ああ!…んっ……」





の嬌声を彼女へと聞かせた。

慌てて口を塞いだだが。
これだけ近くに居れば。
幾ら能力を使わずとも、扉一枚しか隔てていない003にもハッキリとその声が聞こえて。





「ごっ…ゴメンナサイ!004っ!」





焦ったように走って自分の部屋へと帰って行く003の足音が聞こえた。





「あ…アルってば何すんのよっ!」

それはにも当然聞こえて。
抗議するような言葉を吐いた。

「何がだ?」

それに対して飄々とした顔を崩さずにアルベルトは答えて。

「あんなっ…あんな声聞かれたらバレちゃうじゃない……」





感じていた時とは違う。
何かに耐えるかのように握り締められた白いシーツが。

彼女の心のように思えて。





「そもそも、俺達の事を知らないのが原因なんだ。この際、丁度イイだろう?」

「そ、そんなっ…」

「五月蠅い、聞く耳持たん」





実際、熱に犯されていた身体は。
彼が動き出すと同時に再び燃え盛り。





「あっ…やぁっ、ん……あ、アルっ…!」





文句を云いたいのだろうが。
その口から発せられるのは喘ぐ声だけで。

尚も激しく動き続ける彼に。
は両手でシーツをキツク握り締め。
枕に噛み付いて声を殺し。

全身を攫って行ってしまうかのようなエクスタシーに飲み込まれて行き。
その儘、意識まで持って行かれてしまった。












少々、ヤリ過ぎたかな。
とも思えたアルベルトだが。

それでもあんな風に求められて、煽られて。
我慢しろと云う方がオカシイのだ。





普段から生身の彼女の事を考えて。
これでもかなりセーブしてきたのだ。
それを外すかのような彼女の求めにコレ幸いと。
を抱いたらこの始末で。

翌日の彼女の不機嫌さを考えると。
多少、頭が痛くなるような気もしたが。

それでもの抱える問題に。
こういう形でハッキリと答えを出したのだから。
今までのような不安に押し潰されるような事は無くなる、と。
アルベルトは独り。
の汗に濡れた髪を指で梳きながら、笑っていた。






そして置いてあるローブを手に取り。
袖を通すと立ち上がり、部屋を出る。






向かう先は003の部屋で。

彼女へと一言、云うのは当たり前だが。
それ以上に自分達の関係を大っぴらにするのが目的で。












夜も更けたこの時間。
その時間に003の部屋から男の声がする。

まぁ、それは周知に公認の009の声だったのだが。
慌てているようなその声に。
アルベルトは内心、笑ってしまった。

それでも少々、顔を引き締まらせて。
すったもんだしているその部屋を訪ねるべくノックした。






―――コンコン…






途端に静まる部屋の中。

居るのは分かりきっているのに往生際の悪い。

そんな事を思いながらアルベルトは応えを待たずに部屋の扉を開けた。





鍵が閉まっていたらどうするつもりだったのだろう。
等と云う疑問は今更で。

彼女への執着心は自分でも驚いてしまう程なのだが。
それを今まで知らなかった彼等には。

鍵を壊す程。
009の彼女である003の部屋を単独で尋ねる程。
加えて、こんな時間にワザワザ尋ねて来る事を考えれば。

恐ろしいまでにソレが分かって。






だって、尋ねてきた彼の顔は笑っていない。






予想通り、003の部屋に居た009は彼女を後ろに庇って。
戦闘でも無いのにピリピリした緊張感が彼等を縛っている。






億劫そうに扉に肩を寄りかからせて封を切るアルベルト。

「おい、009」

呼ばれた彼はビクッと身体を震わせて。

「……な、…なんだい?004……」

引き攣らせたような笑みを浮かべながら、どもりながらも答えた。

「随分と面白い趣味を持ってるんだな、お前の女は」

皮肉が混ぜられたソレなれど。
何時もなら言い返す所なのだが。

今回ばかりは自分の彼女の方が悪いと009も思っていたのか。
特別言い返す事も無く。

「ごめんよ、004」

と、素直に謝った。

「君達があんまり仲がイイからさ、もしかして付き合ってるんじゃないか、って思っててさ」








「ああ、そうだ。は俺の女だ」








009の質問に。
呆気ない程に、その儘に。
衣を着せぬ言い方に怯えていた二人は一瞬呆気に取られて。

そりゃあ、今の004の格好を見れば一目瞭然で。
003が聞いてきた声の持ち主はであって。
彼の性格を考えれば、遊びで女を抱くようなマネはしないだろうし。

そう考えるのが自然なのだろうが。
それでも、こうもスラリと認められると。
何とも云えない感慨が彼等を襲った。





「いいか、009。もう二度とこんな事をさせるんじゃないぞ。分かったな」





そういい残してアルベルトは003の部屋を去って行った。

残された二人は。
長い説教も、雷も落ちなかった事に安堵しつつも。

彼らしいのか、彼らしくないのか。
余りにもハッキリと云われてしまったその内容に。

この後の彼等への態度を改めなくては。
と、思うのであった……














云いたい事を云って、気が済んだのか。
アルベルトは直ぐに自分の部屋へ戻り。
シッカリと施錠をして。
彼女の眠るベッドへと歩いて行く。

ローブを脱ぎ。
素肌を曝し。
全裸で眠る彼女に寄り添い、抱き締めながら。

満足したような顔で、アルベルトは束の間の眠りに付いた。
















翌日、幾ら待っても出てこない彼等を疑問に思った002がの部屋を訪ねるが。
彼女の部屋はもぬけの殻で。

不信に思った彼が。
004の部屋を訪ねると。

不機嫌そうな顔をして起き出してきたアルベルトと顔を会わす。
そしてその彼の後ろに見えたベッドの中に。

と。
その彼女の何も着ていない肩口が見え。





朝食後のティータイムを楽しんでいた残りのメンバー達は。

彼の絶叫を聞く事となる……












そうして彼等が付き合っている事は周知の事実となって。

009、003に引き続いて、二組目のカップルの誕生となった。





その影でコッソリ003が。
誤解を招いて不安にさせてしまった彼女へと謝っていたのは関係者のみが知る事だった。














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ごめんなさい、桜さん。
こんな駄文を読んでくれてありがとうございました<(_ _)>
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。
また遊びに行った時はヨロシクお願いしますVvv

《隠れファン:愛音より》
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