一目、その姿を視界へと入れた時から
気に入らねぇ、と思ったんだ
破片 -zoro ver.-
新しい仲間だ、と。
嬉しそうに一人の女を連れてきた自分の乗る船の船長。
何がそんなに気に入ったのかは知らねぇが。
その日からヤケに船長は嬉しげにしていて、尚且つその女を常に傍に置いていた。
そして初めて会った時に云われた事。
その女は別段、戦えるワケでも無ければ、特技があるでもない。
本当に、何処にでも居るような、普通の女だった。
只、少しだけ笑った顔が可愛いんじゃねぇのか、と思える位の平々凡々の奴で。
もしかしたら足手纏いになる位で。
お荷物になるような輩を何故船長は連れてきたのか、と。
ロビンのような強い女でも無ければ。
ナミのように航海術に富んでいるワケでも無い。
少しだけ目に入ってきた情報で考えれば、ソイツは優しいだけの女で。
船長や他のクルーのように、何処か手放しで喜べない自分が居た。
その女の目に気付いたのは本当に偶然だった。
俺は何時ものように甲板で昼寝をしていたんだ。
本日の鍛錬は既に済んでいたから、別段やる事もないし。
午後になって、少しだけ優しくなった日差しに照らされながら情眠を貪ろうと。
定位置に付いて胡坐をかき、後頭部へと手を回し。
ゆっくりと目を閉じて。
感じる穏やかな潮風に気分を良くし。
もう少しで眠りに付ける、と云う寸前だった。
最近、知った女の気配を肌が感じ取って。
正直、何故自分の方へと意識を集中させているのかなんて分からなかった。
でも、その女が自分へと視線を合わせ、一向に逸らす気配が見られないのを感じると。
面倒くさいと思いながら、溜息一つと共に片目だけ開けた。
途端、自分の視界へと飛び込んできたのは。
惚れた女がするような、独特な。
甘さを含み、憂いを帯びた優しい眼差しで此方を見ているだった。
何時でも自分の持つ優しさをさり気なく発揮するような女だと思っていた。
ふんわりと笑って、何時も船長の傍らに居る女だと認識していた。
だからこそ船長の女だと思っていたにも係わらず。
その女は自分へと恋慕を含んだ眼差しを送っていて。
こいつぁ、面白れえ事になったと思った。
何の特技も持たないお荷物な女。
戦闘になれば誰かに庇われてばっかりで、役に立たなくて。
しかも人を簡単に斬り殺している俺へと向けた視線は最初、とても怯えたモノだった筈で。
血に塗れた刀を振って、血糊を振り払い鞘へと仕舞い。
振り向いた先にいた、真っ青な顔をしたその女。
別にお前を庇ったワケじゃねぇが。
テメェが怪我すりゃ後が面倒臭くてしょうがねぇから、仕方なくだったんだ。
だからお前みたいな奴に、怯えながらも礼を云われる筋合いも無けりゃあ。
海賊が敵を殺す事に、信じられないかのような。
人殺しを見るような、汚れ物を見るような目で見るのはヤメロと云いたかった。
けれどそれすらもをするのが厄介だと思い。
何も云わずに踵を返した。
それが一体どうしちまったんだ。
お前がそんな目を向けるだなんて。
だがそんなのはどうだってイイ。
問題はソレをどうやって使って楽しんでやるか、だ。
幸いお前は何も出来なくとも『女』なんだろう。
だったらソレで俺を楽しませろよ。
想像通り、俺の誘いにノコノコと付いて来て。
内心、何て馬鹿な女なんだと嘲笑って。
俺と付き合えと云ってやれば、ソイツは少しだけ戸惑っていたようだが。
それでも言葉が持っていた魅力に敵わなかったのか、アッサリ頷きやがって。
是幸いとばかりに、直ぐ様ソイツを押し倒して自分の所有物へと変えた。
数分前に付き合いを始めたばかりで、その数分後には俺に抱かれていた女。
ソレに対して、余り抵抗らしい抵抗をせず。
本当に俺に惚れていやがるんだな、とほくそ笑む。
ソイツの『女』としての身体の相性はまずまずで。
そんなに経験が無かったのか、それとも元からこういう風な反応を返す女だったのか。
喘ぎ声、身体のライン、媚び方、そして一番大事なソコの具合。
それ等は見事に合格ラインを突破して。
これならこれからの船旅も、結構楽しめそうじゃねぇか。
内心でこの女を大事にしていた船長がどうするか。
少しだけ興味があったが。
それもこの女がどうにかしたのか、別段俺に何か云って来る事も無く。
本当にお気楽で、尚且つ処理も出来て。
これならこの女でも置いてやってもイイと思った。
色々な性戯を教え込み。
恥かしがるソイツに無理に要求を突き詰めれば。
赤い顔をしながらも、弱々しげにそれに従って。
商売女以外を連続で抱く事が此処暫く無かった所為か。
ヤケにそれに興奮して。
次から次へと要求をエスカレートさせていった。
最近ではコイツも俺の味を覚えたのか、以前よりもっと俺をせがむようになって。
少しずつウザイ存在になっていった。
盲目に求められて、それに思いを返してやる程、俺は善人じゃないんでな。
だから意識的にを避けて、身体を交わす事をしなくなった。
そして連日抜いていたのを急激に止めてしまった所為で溜まった欲望を吐き出す為に。
次に付いた島で久し振りに女を買った。
如何にも慣れた感じのソコソコの外見の女。
早々にベッドへと押し倒し、愛撫を重ねてやれば。
甲高い、ワザとらしい声、上げやがって。
一気にヤル気が失せていくような感じがした。
しかもその女の肝心なトコは、商売柄使い込んだモノで。
何故かの感触を思い出してしまって。
無性に腹が立って。
自分で動く気が失せて、女を上へとさせて動かせた。
そうしたらキスマークやら何やら好き勝手付けていやがったが。
別に見られて困るような事も無い、と。
そんな事を思っていたのだが、不意に。
コレをに見せたらどんな面すんのか、なんて。
思いの他、面白そうなその考えに行き当たって。
上に乗る女を退かせて、もう良い、ヘタクソ、何て捨て台詞をオマケに付けてやって部屋を後にした。
閉まったドアの向うで金きり声で女が何かを叫んでいたが。
少しも気にならなかった。
そして、船に帰って直ぐにを呼び出して。
久し振りに押し倒した。
コイツも俺を欲していたのか、嬉しそうに笑って俺へと唇を寄せてキスを強請ってきて。
嬉しそうなその様が。
嬉しそうにすればする程、この後で返してくれる反応が楽しみで仕方なくて。
剥ぎ取るようにコイツの服を脱がせて。
吸い付くような、馴染んだの肌と嬌声に更に気を良くして。
慣れた仕草で快感を煽ってやり、感触を楽しんで。
そして久し振りに抱くこの女もソレを貪欲に感じていた。
知り尽くしたポイントを重点的に責めて、早急に昂らせて。
この後の反応を劇的に迄、引き上げる為に。
ゾロは何時もより丁寧な位に愛撫を重ねていった。
そして更に行為を進めようとした、次の瞬間。
ゾロの思惑通りに……
不自然に強張ったの身体
やっと気付きやがったか
そんな事を内心で思って。
そして彼女の様子を観察する為に視線を合わせる。
信じられない、と云ったような表情で。
強張った身体に不自然に動きを止めた顔の儘で俺の身体に残る、さっきの女との情事の残りを凝視して。
ソレに目を奪われていて。
見ていれば消えるんじゃないか、とでも思っているのか。
コイツの視線はソコから外れなくて。
その反応に思いっきり笑ってやりたい衝動に駆られるが。
渾身の意思でもって、ソレを抑えて。
そして愛撫を再開させてやれば。
漸く我を取り戻したは俺の手を拒んで。
泣きそうな顔をして
それでも決して泣かなくて
俺の身体に残った意味を充分に理解したは
初めて俺を拒んで
その様が
信じていた者に裏切られた時に見せる困惑と衝撃と狼狽と
『酷い嫉妬心』に塗れたこの女の見せるその様に
身体中に歓喜が走り抜け
溜まっていた欲望をぶつけてやりたい衝動に駆られ
堪らなく、興奮した
後は男である事を最大限に利用して。
力尽くで捻じ伏せるようにして、抱いた。
嫉妬に荒れ狂ったの反応は上々で。
以前寄りも数倍感度を増したその姿態に益々興奮して。
以前のように、気が済むまで抱いた。
街で買った商売女なんて比べ物にならない程に、その行為に没頭して。
馴染んだ身体に溺れるようにして、何度も何度も楔を捻じ込んで。
快感だけでない、感情に苦しんだ顔をした組み敷しいた女。
俺にされる愛撫に身体は正直に応えるが。
心がソレに追い付いていなくて。
抱かれたくないのだろう。
コイツが上げる嬌声は俺を拒むモノが多く入り混じっていて。
それすらもが俺を喜ばせる一因で。
お前、イイよ
退屈凌ぎで始めたこの関係だったけれど
正直、こんなに楽しめるとは思わなかった
堪んねぇぜ
お前が俺を拒む度に俺はお前が欲しくなる
おら、もっと啼けよ
もっともっと俺を拒んでみろよ
俺を拒め
拒んで尚、俺を欲しがれ
所詮、お前は俺の玩具なんだから
そして俺は以前のようにを毎晩のように抱き続けた。
街へ着けば当然のように、商売女を抱いていたが、だ。
この女が苦しむ様を見たくて見たくて。
自分の惚れている男が自分と付き合いながらも他の女を抱いて。
悔しいのに、止めて欲しいだろうに。
それでも俺を拒みきれないコイツの顔を見るのは。
まるで甘美に酔える麻薬のようなモノで。
嫌がるを抱くのが俺にとって、とてつもない快楽になっていた。
そんな中、アイツは俺へと可愛らしいお願いをしてきた。
今迄、俺に何一つお願いや頼み事なんてしなかった女がだぜ?
まるであの最中のように、泣きそうで泣かないあの顔をしながら。
『止めてほしいの…』
『……お願い…』
『他の女の人を……抱かないで…』
そう云ったアイツを何て云って表現したら良いのやら。
酷く欲情させるような艶を帯びていて。
これだから嫉妬している女は堪んねえぜ。
感じた儘にを部屋へと連れてって。
早々にベッドへと押し倒して。
可愛いオネダリが出来たご褒美と云わんばかりに何時もより優しく抱いてやる。
するとコイツは再びあの可愛い『お願い』を繰り返して。
俺の劣情を更に煽って。
だから俺は云ってやった。
『他の女を抱いて帰ってきた時のお前の顔が好きなんだよ』
その科白を聞いたコイツの顔ったらねえぜ。
一瞬だけ、強張ったかのような表情をして。
何でそんな事を云うの、って聞きたそうな。
悲壮な顔付きで。
それでも俺の事を思い切れないのか。
あぁ、ルフィ…
今だったらお前がコイツの事を可愛いって思っていた気持ちが分かる気がするぜ
今迄故意に荒んだ女しか相手にしてこなかった俺だからそう思えたのか。
それでもこの女が初めて可愛く思えた、瞬間だった。
しかし俺がその行為を止めない、と云う事が理解出来た途端に。
は諦めたかのような、詰まらない反応しか返さなくなってきて。
それこそ興醒めだぜ、何て思って。
萎えた気持ちを引き摺りながらお座成りに行為を終了させ。
そして考えた。
どうしたら再びにあの顔をさせる事が出来るのか、を。
他の女ではもう使い物にならないと思った。
街で買うような女では、もうアイツの心に何も響かない。
だったらどの女を使う?
できるだけ身近な女が良い。
アイツの知っている、知己の女で。
それなりの身体を持っていて。
尚且つ、俺に惚れていれば申し分無い。
何処かにそんな女が…
都合が良いとは思うが、そんなような女が……
………居た…
この船の航海士。
あの女なら申し分無いだろう。
ソコソコの容姿にずば抜けた頭。
アイツに近い存在で、そして……
俺に惚れている
脳内に簡単な筋書きが出来上がる。
以前からのような眼差しを俺へと向けていた女。
頭が良すぎて、しかも可愛げが無かったから適当にあしらって放っておいたあの航海士なら。
こんなに便利で好都合な女も居ないだろう。
一石二鳥だ。
時々、へ向かって嫉妬に燃えた視線を向ける航海士を使って今度は楽しもう。
そう思った俺は早々に航海士へと近付いた。
最初に声を掛けた時。
航海士はとても不信そうにしていたが。
それでもコイツも女だったのか。
次第に俺へとしな垂れかかって来て。
うっとりとした目付きで俺を見て。
両頬へと手を伸ばしてきて。
キスをした。
俺は当然、ソレを拒む事はせず。
この女が落ちた事を内心で嘲笑っていた。
自分が使い捨ての捨て駒だとは思いもしないのだろう。
女らしい仕草でもって、媚を売るように俺へと巧みなキスをして。
可笑しくて可笑しくて。
普段、浮かべもしないような笑みを。
この女へと向けてやっていた。
これでもっとを苦しめさせる事が出来ると思った
これでにあの顔をさせる事が出来ると思っていた
まさかその現場をアイツに見られていて
船から下りているとも知らずに
その時の俺は信じられない位に浮かれた気分で
航海士へと嘘で塗り固めた態度と心から浮かぶ笑みで
馬鹿みたいに笑っていた