ああ……

ナンて似合わない…



コンナ事を考える柄でもないだろうに。






なのに頭の中はゾロの鎖骨付近に付いていた所有印の事で一杯になっていた。









headache 2









自在に操れる風のオカゲで、大分GM号から離れた辺り。

そこで一隻の大型船を発見する。

旗を見ればそれはジョリーロジャーの海賊旗。





ラッキー♪

鴨、発見。





アタシはそんな風に思うと、船の進行方向をソチラへと向ける。

でもよくよく見れば、そのガレオン船は襲われていた。




……?

ナンで海賊船が襲われてんだ?




そうは思いながらも、アタシは船を寄せて。

こっそりガレオン船に乗り込めば。
まあ、所謂(いわゆる)戦闘、真っ只中で。

この船の乗組員は一方的に押されていた。




そしてその陰からは、知ってはいたが、見るのは初めての『白ヒゲ海賊団』のマーク。




ああ、この海賊に目を付けられたなら最後だ。

なんせ相手はあの『白ヒゲ』。
こんなトコを航海していたのが運の尽きだろうと思って諦めた方が得策だろう。




でもまぁ、アタシには関係無い事だし〜。




は戦闘が行なわれている甲板を尻目に軽い身のこなしでさっさと船室に潜り込んだ。




え〜っと……

この船の感じからいくと…


お宝はこっちのだと思うんだけどなぁ〜…



…って、ビンゴ♪




は素早く積み上げられたお宝の中から札の束を一掴み掴んだ。

そして後は脱出のみ、となった所で……




「……お嬢ちゃん、ナニしてんの?」




一人の男に声を掛けられた。




ヤバ……




そう思いながらも振り向けば。

ソコには大きなデガロンハットを被った上半身裸の男がコチラを見ていて。




「あ、こんにちは〜。今日はイイ天気ですね〜」




ナンて、口が勝手に言葉を発していた。
襲われている船の中で交わされる会話では無いとは思うのだが。

立っていた男も相当ズレテいるのか。




「はい、こんにちは〜。そうだね〜、こんな日には昼寝したくなっちゃうよね〜」




……そう返された。




この男って随分変わってるのネ。

なんて考えながらも、ソイツの目はアタシの掴んだ札束に釘付けで。




「あ、……あははは〜。アタシ旅行者なんですけど〜、お金なくなっちゃって〜」

「へえ、そうなんだ。そりゃ大変だ」

「でしょ〜?だからドサクサに紛れてちょーっとお宝貰っちゃおうかな〜、なんて」

「あらあら、そいつは見逃せねえな」

「イヤン、見逃してよ〜」

「悪いがソイツは出来ねえ相談だ」




「ちっ、石頭……」

それまで友好的にお話していたのだが(ドコがって突っ込みは例の如く禁止〜)
はそう言って身体にエネルギーを溜め始めた。

「ヤーね、ケツの穴の小さい男は嫌われるわよ?」

そう言って天囲に向かって手をかざした。

するとかざされた部分が僅かな音を立てて丸く切り飛ばされた。




「んなっ……」

呆気に取られる男に笑顔一発、「じゃあ〜ね〜」と言い残し、はその穴から逃げ出した。

ソレにはっ、と気付いた男が慌てて同じ穴から飛び出して行く。

しかし辺りを見渡しても既にの姿は見えなくて。

男は取り敢えず走り出した。




そして次に見つけた時にはは自分の船に乗っていて。

風を操りながらスゴイ勢いでガレオン船から離れて行く。

「ちっ……」

男は舌打ちを一つして、一瞬どうしようかと逡巡したが。




「……火拳!!!」




そう怒鳴って拳を突き出した。

その拳からはトンでもない炎の塊が飛び出し、真っ直ぐの船に向かって行った。



「風壁!!!」



当然当たると思われたソレは突如吹かれた風によって全て方向を変えられてしまう。




呆然とする男相手にはノンキに手を振って。

「バイバ〜イ♪」

なんてやっていた。




「おいおい、エース!! 何なんだ!!? あの女はっ!!」

同じ船の仲間に男は声を掛けられ。

呆然としていた表情を、ニヤリ、と歪めた。

「イイ女だと、思わないか?」

「はあ!!?」

「俺の火拳をあんな風にかわす女なんて滅多にいねえ、気に入った!」




その男、エースはそう言って一度『白ヒゲ』の船に帰ると自分専用の船に荷物を持って乗り込んだ。

「オイ、エース!」

今にも出ようとした彼に向かって、白ヒゲが大きな声を上げる。

「おう!オヤジ、俺はあの女を追う!!」

「ナンだ、気に入ったのか?」

「ああ、ぜってーモノにして帰ってくるから!!」

そう言って、エースはお手々振り振り『白ヒゲ』の元を離れて行った。















が目的の島、『カレン島』へ到着したのはそれから数時間後の事で。

とうに日が暮れて、人々が一日の仕事を終えてそれぞれの家へ帰る、そんな時間帯だった。

そこへ隠れるように己の船を停めて、断崖から風を使って自分の身体を浮かび上がらせ崖の上まで飛び上がった。

そして周りを眺めると、おもむろに市街地に向かって歩き出した。




取り敢えず寝床を確保、とばかりに市街地の宿泊できる宿に入って。
一週間の契約をそこで結んで、金を払う。

借りた部屋はそこそこの広さを持った、ワンルームで。
バス、トイレ、ベッドとチェスト。
それ等が標準で装備されたソコソコの部屋。

その部屋へ引き摺るように足を進め、入室してベッドの脇へ荷物を放り投げた。




とにかく疲れた……




久しぶりに能力を酷使して。

GM号に乗るようになってから、仲間と云うモノが出来てから。
自分一人で戦わなくなる事が増えて。

それは必然と余裕と怠慢を生んだ。




これ程までに体力と力が衰えていただなんて……




酷い自己嫌悪と、もともと抱えていた問題のオカゲで、立っている事も億劫になり。
は倒れるようにしてベッドへと身体を預けた。




痺れるように怠い身体でも頭の中はそうでもないのか。

相も変わらず浮かぶのはゾロの事ばかりで。





ナンでこんな気持ちになるんだろうな……

自分から言い出した事なのに。
自分がその関係がイイと望んだのに。

人間って…


ドコ迄も勝手な生き物なんだなぁ……





きっとこの感情は『嫉妬』

否になる位に『嫉妬』したんだろう。




そんな感情を持て余して一人、こんなトコに居るんだろう。

でもそれは感じてはいけない感情。

自分は一人がお似合いなのだから。
自分には相手は要らないのだから。



自分にはその資格は無いのだから……




はゴロリと身体を捻ると、枕に頬を押し付けた。




考えてはイケナイ

望んではイケナイ

諦めなくてはイケナイ


相手の事を思うなら尚更だ。


自分程そんな色恋沙汰に似合わない女も居ないだろうに……





はポロリと一粒涙を零す。

それは真っ白な枕のカバーに吸い取られ、冷たいシミへと変化した。




もう今日は寝よう……




疲れた身体を無意識で丸め、は無理に目を閉じた。















翌日、ムカツク位に晴れたこの島。

は午後になってから、やっとベッドから這いずり出て来た。
夢見が悪かったのか、それとも寝る直前に考えていた事が拙かったのか。

ゆっくり寝たワリには身体の疲れは取れていなくて。
余計にの神経を蝕んでいく。




気晴らしに、とシャワーを浴びて。
たまには一人でショッピングを、と外へ出れば。

ココは貿易の盛んな街だったのか、イヤになる位の人・人・人。

少し歩こう、だなんて思ったのがそもそもの間違いか。

は30分も歩かない内に、イヤになって道の脇に設置してあるカフェへと足を向けた。




直ぐにやって来たボーイにアイスティーを頼んで。
ボウッと人の行き交う様を無言で眺めた。

望んで一人になったクセに、改めて一人になると誰とも気軽に喋っていない事に淋しさを感じ。
更に自分が弱くなっている事を再確認してしまう。

「アイスティーです、お待たせ致しました」

そう言って紅茶を置いて行ったボーイ。

それを一口飲むと、ついポツリと零してしまった。




「……サンジ君の淹れてくれたお茶の方が美味しい…」




言ってから、『うわ〜独り言、言っちゃったよ』なんて自嘲気味に笑う。

そんな彼女に後ろから。




「誰が淹れた茶が美味いって?」




と、返事が返ってきた。

「うん、絶対サンジ君の淹れたお茶の方が美味い……って?」

アタシは誰に向かって喋ってんだ!!?

慌てて振り向けば、ソコには先日対面したあの男が立っていて。




「よお!こんなトコで優雅に茶なんて飲んでるなんて思わなかったよ」




なんてホザイテいた。




周りに居た客達も、この上半身裸の男がしている刺青を見て固まってしまっている。

「ボーイ!!」

は男から視線を外さずに声を張り上げる。

「…は、はい!」

呼ばれたボーイが返事を返す。
その声の位置を大体想像して、は一気に走り出した。

そして呆気に取られているボーイに向かってコインを一枚指で弾いてくれてやる。

脱兎の如く逃げ出したに男は「おーい!」と叫びながら追いかけて行く。


「あ……ありがとうございました〜…」


間の抜けたボーイの声が静かになったカフェにポツリと落ちた。








しつっこいわね〜〜〜!!!

こんなトコ迄追いかけてくんのか!!?
『白ヒゲ』って海賊は〜!!!




「何の用よ!」

逃げながらもは後ろに向かって怒鳴り散らす。

「イヤ、用って程でもないんだけどさ〜」

「だったら追いかけてくんな!バカっ!!」

「バカは酷いんじゃない?それよか名前教えてよ♪」

「バカたいに執念深く追いかけてくるヤツにバカって言ってナニが悪い!! それにそんなヤツに教える名前なんか無いわよっ!!」

「ああ、そうだよな〜。人にモノを教えて貰う時にはまず自分から名乗れって事か。俺はエースだ、ポートガス・D・エース」

「だ〜っ!! 違〜う!人の話を聞けってんだ!!」




不毛な言い合いを続けながら二人の追いかけっこはまだまだ続いて。




「あの船から持ってきた金なら使っちゃったから無いの!! だからアンタが追いかけても無駄なの、分かった!!?」

「や、金なんてどうでもイイからさ〜。ねー、俺と付き合ってよ♪」

「んなっ…!!? ナニ大バカな事ほざいてんのよ!! 寝言は寝てから言いなさいよ、起きてる時に言うのはたわ言って言うのよ!!?」

「あっはっは〜、たわ言か〜。たわ言でもイイよ、俺の女になれってば!!」

「イヤよ、イヤ!! 絶対にイヤ!! 死んでもイヤ!!!」


ガ〜ン……


「そんなにイヤがらなくたってイイじゃねえか!クッソー…いい加減に止まれって!!」

走る速度を一気に上げて、エースはの腕を引っつかんだ。





「きゃっ…!!」

無理に引き寄せた細い身体。

なかなか大きな通りだと云うのに、エースの姿を見て誰もが声を掛けるなんて事をせず。

ナンて薄情な奴等なの!!?

そんな事を考えたが、相手が白ヒゲの一員ではそういうワケにもいかない……か、なんて一人で納得して。




だからと云ってそのまま黙って連れて行かれるだなんて、トンでもない!!

「ちょっと、離しなさいよ!!」

「イヤだ」

「イヤだって…、離してよ!離してったら!!」

それでもエースは気にする素振りも見せず、を引き摺って行って。
そのまま裏路地に連れ込んだ。

そして少し行った辺で壁に押し付けられて。




「ね、ホントに俺の女になってよ」

身体を押し付けられ、顔を至近距離に近づけて。

獣が獲物を狙うような目付きでを見詰めて。

声だけが甘みを帯びていて、酷く不自然な彼。




「…イヤよ」




商売女や慣れない女ならいざ知らず。
相手はそこそこ経験のある、だ。

そんな言葉と仕草だけで落ちる筈が無く。

第一っから彼女の頭の中には住み込んでいる男が居るのだ。
引っ掛かるワケがない。




「はぁ……、俺これでも『白ヒゲ』の二番隊隊長なんだぜ?」

「だからナニ?」

「そこそこ強いぜ?」

「そうなんだ」

「ちょっとはイイ男だと思わない?」

「そうね、酒場に行けばモテるんじゃない?」

「俺は君がイイんだけどな」

「アタシはイヤ」




幾らエースが口説いても、は一向になびく事はなく。

「ふ〜…ん、交渉決裂?」

「初めっからそうでしょ?気がつかなかった?」




シーン……




流石にこのセリフにはエースも堪えたのか、一瞬目付きが変わる。

「俺……海賊だし?」

「そうね」

「気に入ったモノは絶対に手に入れる主義なんだ」

「相手が人間でも?」

「だからこうやって温和に口説いてんだけどさ」

「これが温和なの?」

雰囲気が変わったのなんて百も承知のは自分を押さえつけるエースを睨みつける。




「ククッ……その目、たまんねえな…」

「頭オカシイんじゃない?」

心底嫌気な顔をして。
出来うる限りのキツイ視線で睨みつけて。

それでもエースは気にも留めず。

「さ、うちの船に帰ろうか」

「はあ!!? ナニ言ってんのよアンタ!!」




イヤがるを気にも留めず、エースは港へと彼女を引き摺って行く。

「離してっ、イヤだって言ってんでしょ!!?」

幾ら頑張ってみても所詮男の力に敵うワケがなくて。

頭にキテ力を使おうと思った瞬間。




「大佐!! こちらです!!」

そんな男の声が聞こえて。

「こっちに女性が引き摺られて行ったと、通報がっ!!」

その声には力を抑え、大声を出した。




「助けてっ、誰か!助けてっ!!」

慌ててエースがの口元を押さえるが、その声は海軍に聞こえたようで。

「こっちだ!!」

数人の男達の声が近付いてくる。




「……やってくれるネ」

「だからイヤって言ったでしょ?」

使えるモノは何でも使う。

女なら女としての武器を使うのに何の躊躇がいるっていうの?

でもそれがエースに通じたのかどうかはイマイチ分からない。




「ま、いっか。行くよ、名無しの権兵衛ちゃん」

「はあ!? 誰が名無しの権兵衛よ!それに行かないって言ったでしょ!? ヒトの話を聞けっつーの!!」




がエースに向かって文句を言った。
その次の瞬間に、建物の陰から現れた大柄な男。




「そこか!!」




背中に大きな十手を背負って、
上半身裸の上に海軍のジャケットを着込み、
口にはトレードマークになってしまった葉巻を銜えて。




しかもその声はにとって忘れられるモノではなくて。




たまたま?
偶然?

それとも必然?






ナンでこんなトコで

アンタに会って

しまうのか……






「……スモー…カー…」

ポツリとの口から洩らされた男の名。



その声に名を呼ばれた男もピクリと反応して。

同じ風に声を枯らすように、彼女の名を口にした。




「………なのか?」





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