まさかね…
幾ら何でもこんな事を頼まれるだなんて
思ってもみなかったのよ〜〜〜!!!
オネガイ
この船にまた新しい仲間が増えて三ヶ月の時が流れていた。
その子の名前は。
とっても可愛い音楽家の女の子だ。
うん、女のアタシから見てもとってもとっても可愛い。
イヤ、可愛いからどんなオネガイ事でも叶えてあげたかったんだけどさ……
事の始まりは半月前。
の可愛さに自称ラブコックのサンジ君が本気になってしまって、二人は付き合う事になっていた。
ハタから見ていてもアツアツの二人は一見、何の悩みも無いように思えていたのだが。
この頃、の浮かない顔に気が付いて。
よせばイイのに相談役なんてのを引き受けてしまったのが運のつき。
ナミからも放っておきなさいと言われていたにも係わらず、の落ち込む様子に耐えられなくて。
アタシは甲板でボケっ、としているに声を掛けた。
「沙〜羅、どうしたの?」
「…あ、さん……」
「この頃、元気ないじゃない?ナンか悩み事でもあるの?」
「いえ……、悩み事って云うか…」
何故か彼女は少し顔を赤らめて。
ワケの分からないアタシは少々、首を傾げながらも続きを尋ねる。
「悩みじゃないならその溜息と暗い顔はナンなワケ?」
「えっ!? 私、暗い顔とかしてました?」
「うん、思い詰めたような顔してたよ?」
『思い詰めた』
その言葉には反応して、口を開きかけたがアタシの後ろに一瞬、視線を向けてポカンとしてしまった。
何か見えたのか?と思って後ろを向けば。
「……なぁにを、やっとんじゃ〜〜〜!!! 己等は〜〜〜!!!!」
ルフィを先頭にウソップ、チョッパー、そしてサンジ君迄が聞き耳を立てていた。
が心配なのは分かるけど。
だからって聞き耳たてなくったってイイんじゃない?
ソコでは話にならないと、を連れて船の中へと入ろうとする。
「サ〜ンジ君、分かってると思うけど盗み聞きなんてしないよね〜。」
頭から大きなタンコブを作っているサンジ達に向かって警告しておく。
「女の子同士の内緒話聞くなんて、悪趣味な事。ジェントルマンな君には出来ないよね〜」
本音は聞きたいのだろうが、そう言われては引く事が出来ずにサンジは引き攣ったような笑みを向けた。
「あ……あはは〜、当然じゃないですか〜。このサンジがそんな事をするとでも?」
「だよね〜。だったらこの扉の前で見張っててくれる?お願いネVvv」
にニッコリと笑顔を向けられて。
サンジは悔しいだろうに、目をハートにさせながらも「は〜い、ちゃ〜ん」と泣きながら言っていた。
「さて、これで大丈夫よ?行こうか、」
「は…はい」
あの様子じゃ、誰にも聞かれたく無い類の話だろと、とにかくヒトの居ない所を探してみたが。
この狭い船の中、そんな場所は限られていて。
キッチンはサンジ君のテリトリー。
船尾ではゾロが寝ている。
女部屋ではナミが海図を書いているし。
男部屋は……行きたくないような気がするからパス。
仕方が無いから、アタシはを連れて倉庫へと向かった。
先にを部屋に入れて、アタシは閉める際にキョロキョロと周りを見回してみたが、人影は見えなかった。
「よし、誰も居ない」
そう言って扉を閉めた。
「さ〜て、ちゃん。全部吐いちゃいなさい♪楽になるわよ〜」
アタシはニッコリ笑顔を向けてに詰め寄って行った。
そして………
……はぁ?
の悩み事ってそんな事だったの?
それが話しを聞いた第一印象。
だってその内容の殆どがサンジへのノロケのようなモノだったモンだから。
あ、そうそう。
肝心の悩み事って云うのがね……ぇ…
『どうやったらサンジさんを喜ばせてあげられるのか』
だったんだもん。
「えー、たったそれだけなの〜?」
アタシのセリフには別段気にする事も無く。
少し苦笑いして「それだけじゃないんです」と答えた。
「ん?それだけじゃないって?」
続きを促すように尋ねれば、は顔を赤くして。
「大体、サンジ君を喜ばせるんだったらが抱きついたり、キスとかすればOKなんじゃない?」
彼女は益々顔を赤らめて。
アタシはこんな時、とてつもなく彼女を可愛いな〜、と思ってしまう。
それなりに男性歴を持っているスレたアタシと。
全然、男に免疫の無いだもん。
可愛さと云ったら敵うワケがなくて。
「そう云えば、とサンジ君ってドコ迄イってんの?」
「はい?…ドコ迄って…」
「ああ、平たく言っちゃうともうセックスした?」
「なっっっ!!!!!?」
「あは☆ってばカ〜ワイイ!! 真っ赤になっちゃってる〜」
「あ、さん!!?」
「その様子じゃマダなんだ〜。サンジ君って結構オクテなのね」
「いえ、…あの……」
「じゃ、キス位したの?」
「その、あの…」
「ええっ!!? まさかキスすらしてないとか言わないよね!!?」
「あの、あの…」
「うっそ、あのサンジ君が!? あの女を見れば口説きまくるサンジ君が!!?」
「いえ、しっかりやってます!! キスもエッチも!!」
「………え?…」
の衝撃の告白に一瞬、頭の中にその言葉が浸透するのに時間が掛かってしまった。
言った本人も真っ赤になって口を両手で覆っている。
「あ……あはははは!! ナニよ〜、ってばしっかりヤル事はヤッてたのね〜♪」
アタシの身も蓋も無い言葉には更に赤くなって。
「良かった、良かった。じゃ、ナンの問題も無いじゃない、だってラブラブなんでしょ?」
「そ……そうなんですけど…」
「ん?そうなんだけど、ナニ?何か問題でもあるの?」
「いえ、問題と云うか…」
「はっ!! まさかとんでもないプレイをセガマレテるとか!!?」
「さん!! サンジさんはそんなヒトじゃ無いです〜!!」
「あっはっは、例えよ例え。そんでナニが嫌なワケ?」
顔を真っ赤にして食って掛かってくるがどうにも可愛くて、ついついからかって遊んでしまう。
こんなに可愛いんだもん。
サンジ君が参っちゃうのも肯けるよね〜。
「あっ…と、……別に嫌と云う訳じゃないんですが…」
「ホラホラ、歯切れが悪い!こういう事はハッキリ言っちゃった方が恥かしくないのよ?」
「そうなんですか?」
「そうよ?アタシなんてガンガンに言っちゃってるでしょ?」
「……それは言い過ぎなんじゃないでしょうか…」
「うっ…、ソレはイイから!今はアンタの話でしょ?」
の突っ込みに多少、同様しつつも核心を突いてやれば。
「えっと……、どうやったら…」
少しづつでもは話始めて。
「うん、どうやったら?」
「男の……ヒトを…」
「うん、うん。男のヒトを?」
「きっ……」
「き?」
「きもっ……」
「きもっ…!!?」
「気持ち良くさせる事が出来るんですか!!?」
「……………は?………」
間抜けな声だが、それがの悩みを聞いたアタシの第一声だった……