……怖かった…







何をどう表現して良いのか分からない位に

自分がどんな状況に追いやられているのかも判断できない程に
どうして彼がそんな風になってしまったかも分からずに







ただ、ひたすらに







怖かった……


















Run (走る、逃げる等)



















目の前には自分の恋人。

付き合い始めてから三ヶ月目の一番燃え盛って。
春爛漫な関係の筈なのに。








なのに何で?








何でアタシはその愛しいヒトにこんな思いを抱いているの?

時間を遡って考えても悪いと思える行動をとった覚えも無ければ。
彼を怒らせた覚えも無い。








でも目の前の彼は怒り心頭な様子で。








久し振りの島への到着。
ログが溜まる迄の一週間。
買い物、買出し、探検、冒険へと出掛けていった仲間達。

残っていた筈のゾロ。
彼と一緒に居たくて戻ってきたアタシ。

なのにアタシを自室に引き摺って行って、押し倒し。
何の言葉も発さず射殺しそうな位の鋭い瞳で睨みつけている。







どんなに怒らせたって。
どんなにバカにしたって。
どんな酷い行動をしても。

一度ですらこんな目で見られた事なんて無かったのに……







なのに何故…?

















「……ぞ…ろ、………どうしたっ…ていうの?」







怖くて、擦れて途切れ途切れになってしまう自分の声。

その声が拙かったのか。
それとも質問の内容が拙かったのか。

確かに怒らせた内容に気付きもしないと云う事を暴露しそうな質問だったが。
彼の怒りの原因を理解出来ないのだから仕方が無いと自分に言い聞かせるも。

更に鋭くなった彼の視線に。







今度こそ殺されそうな気がして。







余りの怖さに。




















身体が震えだす……























それすらも気に入らなかったのか。
ゾロはギリッと歯を鳴らして。



















「テメェにゃ自覚すらねぇのかよ…」


















低い、低い。

内に巻き起こっている感情を押し殺すかのような。
無理矢理押さえ込んだかのような。

怒りを含んだ声で彼は返事をした。

















自覚?

自覚って何を?

何を自覚すればイイの?

アタシは一体何をしたの?

















過去、数日の記憶を引っ張り出そうにも。
目の前の鋭い目付きをした男が怖くて怖くて。

考えを纏める事が出来なくて。

身体の震えも止められず。
そんな声を聞かせられた事も初めてで。







兎に角、自分で愛した男が恐ろしくて。
あんなに好きだと思えた男の雰囲気が、視線が怖くて怖くて。

逃げられないのなんて百も承知なれど。
それでも胸の内に広がる恐怖は限界まできていて。

嫌な汗とカラカラになった口内が気持ち悪くて。
叫び出しそうな衝動を紙一重で我慢する。
















「……今更だけどなぁ、テメェは俺の女なんだろ?」







再び口を開いた彼に。
その内容に言葉で返せる程の余裕すら残っていなくて。

僅かに首を縦に振る事で肯定の返事を返せば。







「だったら何でテメェは他の男に愛想振り撒く必要があんだよ」






























……このヒトは…、何を云ってるの?





























愛想を振り撒く?

誰が?

アタシが?

何処で何時、誰に?







彼の云った言葉の意味を図りかねて。
怪訝そうな顔をしてしまったのだろうか。

掴まれた手首に力が籠もって。







「いっ……!」








抗議のでは無く。
反射的に出てしまった声。

ソレが気に入ったのかは知らないが。
ゾロは掴む力を更に増やして。








「いたっぃ……ゾロっ!痛いよっ」








眉を寄せて、非難の言葉を口から出せば。
彼は歪んだ笑みを浮かべて鼻で笑い。








「テメェの立場に自覚の無ぇ奴には丁度良い仕置きだろう?」








信じられない言葉を吐いた。





















瞬間、目の前のゾロの事を。

本当に自分の彼なのか、と。
自分が愛した男なのか、本気で疑ってしまった。







だって、あんなに甘やかしてくれて
少なかったけれど、確かに甘い言葉を貰って
本当はもっと乱暴にすると思われた、あの行為だってあんなに優しく扱ってくれて

だから自分は愛されているのだと
不器用なこのヒトに、本当に大事にされているのだと
















そう、思っていたのに



















思っていたのに…



















そう思っていたのは……アタシだけだったの?



















そんな思いに囚われれば。

目の前で自分を押し倒している男が、心底。
これ以上に無い位に怖い存在になってしまうのは仕方が無くて。








瞳でヒトを殺せるなら、間違い無くアタシは殺されているだろう、そんな目で。

何人もの人間を斬って斬って斬り殺して。

強さに拘り、目標の為に更に戦いを好み。
戦闘の中では鬼人のように見え。

このグランドラインでも名を知られ始めた賞金首で。
それ以前から海賊狩りなんて呼ばれて、恐れられて。

恐れられて……








「……いっ…いやっ…、離してっ!」








力の限りで押し返すも、相手はこの船で一番馬鹿力であろうゾロなワケで。
ベッドに固定された身体はビクともしなくて。

ソレが、寄り一層恐怖を煽りたて。
彼の口の端に浮かぶ、引き攣ったような笑みに背筋が凍り。








「嫌だってば!お願い、離して!ソコ退いてっ!」








パニくる頭の中。
逃げたいと云う、本能のみが優先されて。



















彼の表情が変わる瞬間を見逃した。

















―――ビビィッ!!……


















暴れる自分の身体から。

気に入って買った洋服が。

ゾロに見せたくて。

買い物に行っていた筈の。

船から降りたばかりなのに。

















―――ビビッ…ビッ……



















彼に見せる事だけを考えて。

似合ってる、の言葉が欲しくて。

ゾロに褒めてほしくて。

彼の笑みが見たくて。

この服を着て、一緒に出掛けたくて。

















―――ビリビリッ……

















愛した人と

同じ時を

そう云う事に拘る人じゃ無いのは知ってたけれど

それでも、少しでも

貴方に相応しいと思えるようになりたくて


















胸に付いていた、花をモチーフにした飾りを剥ぎ取られ。
力任せに胸元を引き裂かれ。
裾までの長いワンピースを。
最後の最後まで破かれて。








褒めてほしかった

気に入っていたワンピースが

引き裂かれる音が

自分の悲鳴のように聞こえて








ついでのように剥ぎ取られていく下着達。

これが現実かどうか、分からなくなっていたアタシの身体は。
彼の、ゾロの好き放題にさせられて。

既に服とは呼べなくなった。
布に成り下がってしまったワンピース。

それが身体に纏わり付いて、気持ち悪くて。








怒りを前面に出した儘のゾロ。

何回もしてきた行為ですら、今迄の彼を思い出す事が出来なくて。
でも至る所に触れられる手は矢張り愛した男の手の感触で。


















どうにもならないような感情が。

だってアタシの身体を蹂躙するこのヒトは、確かにアタシが愛した男で。
でもアタシの知らない顔をした、敵を目の前にしたかのような彼は全くの別人のようで。

まったくの違う人間に犯されるような感覚。
でも自分に触れる手、腕、舌は愛してる男のモノで。







酷い混乱を巻き起こす。




















そして……



















「あっ……あぁっ…な、何?!…」







何時の間にか己の股の間に頭を埋めたゾロに。
華の花芯を舐られて。

何度かされた覚えのある行為だったけれど。
感じられる快感は桁ハズレで。

何時もの壊れ物を扱うような優しい動きでは無く。
己の中に眠る快感を、女である部分を引き摺り出すかのようなソレで。







「あぁっ、あっ、…っくぅ…」







否が応でも自分が感じている事を曝け出されるその行為に。
呆然としていた頭がこの展開に付いていけず、更に混乱を生んで。







指で左右に広げられた花の中心。
剥き出しにされた敏感な蕾。

優しさの欠片も無いように動き回るゾロの舌。
溢れ出す愛液を掬い取られ。

舐められて、潰されて、吸い上げられて、歯を軽く立てられて。
身体中を駆け回る快感は一気に限界まで高められ。

あられもない声が引っ切り無しに己の口から漏れ続け。
背筋を這い回る、云い様の無いソレにあがらう事も許されず。
相手の意のままに蹂躙され。







「ひっ、ぃ…ぁっ……あぁっ、ゆ…ゆるしてぇっ…ゾロぉっ!!」







感じた事の無い快感に。
容赦無くぶつけられる彼の愛撫に。

流されまいとするも。

感じ過ぎてしまう身体を。
自分の意志ではもうどうする事も出来なくなるまで追い詰められて。

ソレに耐えかね。
助けを乞うように、許しを得るような科白が口から漏れるが。

相手がソレを許すはずも無く。







「はぁっ…はっ、あっ、…も、もぅっ……」








イク寸前まで昇らされて。
意味を成さない言葉ですら出てこなくなるまで引き上げられ。

もうイッてしまいそうになった途端。







その行為を、ゾロは止めてしまう。


















「ぃやっ……ナン…でぇ?」







潤みきった眼で、少しだけ身体を起こして。
相手を非難するように見詰めながら、その言葉を吐いて。

そしてぶつかり合った眼差しは。

一向は熱を持った、身体中を熱に犯された眼で。
一向は冷たい熱を奥に秘めた冷たい、冷えた眼差しで。








唇の周りに付着する。
己の愛液に塗れた彼が、手の甲でソレを軽く拭うと。







「イかせるワケねぇだろ?」







冷たい声色の儘で答え。
冷笑を浮かべる。







「そんなにイきてぇのか?」







背筋を、今度は冷たいモノが走りぬけるが。
一度、火の付いてしまった身体には。
イク寸前まで高められた熱は、そんな早々に引く筈も無く。

彼の言葉に泣きそうになりながらも。
それでも身体に嘘はつけないのかコクリと頷く。







「ハッ、俺の女はとんだ淫売だったんだな」







蔑む言葉に身体が震えるが。
それでも彼が欲しくて、彼の繰り出す、与えてくれる快感が欲しくて。

どんなに蔑まれても。
どんなに睨まれても。
どんなに恐怖を感じさせられても。

やっぱり相手は好きな男で。

そんな言葉で突き放されても、離れる事だけは出来なくて。

だってココは海の真ん中では無いのだから。
その気になれば、適当に服を着込んで街の裏通りに行けば何とかなるのだから。

女である自分がその気だったなら。
男を引っ掛けるのなんて簡単な行為なのだから。

でも、それでも求めてしまうのは。
心が求めてしまうのは。







目の前の冷たい笑みを浮かべている、この男だから。







身体だけ満足させられても。
幾ら回数をこなそうとも。

きっと満たされる事はないと。
やってもいない行為だけど、ソレだけは分かって。







ソレをしないと分かっているのか。
知っててその言葉を吐いたのかは分からないけれど。

ゾロは変わらない冷笑を浮かべたまま、次の指示を与える。







「そんなにイきてぇなら俺にご奉仕でもしてみろよ」







云われた言葉の内容を。
既に初心で無くなった自分は、この状況下で望まれるその行為を直ぐに理解するも。

今迄に望まれなかったその行為に。
してあげなかったソレに。

少々の恐怖心が首を擡げると。







「別にやりたくねぇんならやらなくてもイイんだぜ?」







余裕を持った、嫌な笑みを浮かべて。
湧いた恐怖心を読み取ったかのようなその言葉に。

他の男の所に行きたければ行けよ、とでも云いたそうな。
それでも決してソレを許しはしないだろう、と云う雰囲気で。

選択を与えるように見せかけて。
その実、逃げ場を取り上げて。







さっさとやれ。
やらないのなら関係をも終わらせるとでも言いたげに。

与えられたのは只、考える時間のみ。







自分にはソレをするしかないのに。

そんなズルイ手を使って、蔑み続けて。







それでも彼を失いたくないから。

幾ら怖くても、彼を愛したのは事実だから。
今も愛してるのに変わりは無いのだから。







切羽詰った身体の事を抜きにしても。
求められるのが嬉しいような、それでも悔しいような。

妙な感慨に襲われるも。

冷たい眼が怖くなくなったワケでも無ければ。
状況が変わるワケも無く。

自分に許された、唯一の行為をしに。







そうっと。
恐る恐る、手を伸ばした。







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