外から聞こえてくる村人の驚く声
慄く声、怯える声、制止する声、怒鳴る声






声、声、声……






行ってしまった彼女

残された自分














……



















執着 4


















店の外へと出れば。
村中から集まったのではないか、と思える程の人達が居て。

アタシ達の事を、心配そうに、それでも興味深く、野次馬の如く見続けていた。






その中から仲良くしていた、一握りの人間が声を掛けてきて。






だって、アタシとこれから戦おうとしているのは有名な大海賊の一員の。
今日の新聞に乗っていた大剣豪で。

その彼と抜き身の刀を持って、殺気を漲らせて店から出て来たのだから。

仕方が無いと云えば、あまりにもその通りで。







「おい、!お前何やってんだ?!!」

「ソイツぁ、あの鷹の目を破った剣士なんだぞ!?」

「バカな事やってねぇでさっさと止めろ!」







流石に5年も居た所為で。
それなりに情も湧いていたのか。

村の優しい男達がを止めようと躍起になっている。







「そうよ!、そんな人相手に勝てるワケないでしょう!? お願いだから止めて!!」

!! 彼等を迎えるのが嫌なんだったらアタシんちに来てもらっても良いんだから!!」

「幾らアンタだって勝てるワケ無いでしょう!? 今直ぐその刀、しまってきなよ!!」







親しくしてもらった優しい女達も。
顔色を悪くしながらも止めてくれて。

そしてソコに賑やかにやって来た麦藁海賊団の面々。

この騒ぎを聞きつけたのか。

クルー達は面白そうな顔をして歩いて来て。
そして目を見開いた。

















「…っ!! !! お前本当にココに居たんだな!!」


















麦藁を被った船長が発した言葉に。

その場に居た誰もが動きを止めて。







何故、彼女を知っているのか、と。
何故、そんな嬉しそうな顔をして彼女を見るのか、と。







「ああっ!! 生きてまたちゃんに会えるだなんて、俺ぁ何て幸せ者なんだぁ〜!!」

!お前、今迄何処ほっつき歩いてたんだよ!」

「わぁ!ホントにだぁー!!」

、黙って出てくなんて人が悪いわよ?」

「それに何でこのバカと刀持って向き合ってんの?」







昔からの知り合いのように。
それこそ自分達の仲間のような、その態度に。

村の人々は驚いて、驚いて。

殺気立つ彼女へと、自分達は声しか、そして声すらも掛けられなかった者も居るのに。
なのに彼等はそんなモノ、気にもせずに彼女へ駆け寄って。

肩を叩いたり、笑顔を向けて話し掛けている。







この状況をどうやって受け止めたら良いのか。

だって彼女はこの村の一員で。

それは確かに最近やって来た余所者なのは事実だが。
それでも彼女は本当に心根の優しい、大人な女性で。

少し、影を引き摺るような雰囲気を持ってはいるが。
それも彼女の魅力の一つのようなモノになっていて。

第一、たまにやって来る性質の悪い海賊達を追い払ってくれたのは。
他ならぬ彼女で。

自分達の為に、この村の為に戦ってくれて。
守ってくれて。






その彼女を何故彼等は知っているのか。

それに加えてまるで探していたかのようなその科白に。
村人の一人が耐えられなくて、大声を上げた。
















「あんた達、一体の何なんだ!!?」


















突然やって来た。
今は誰もが知る麦藁海賊団に、これだけの質問を出来ればナカナカの根性だろう。

その村人は、麦藁を被る船長を見詰め。
答えを促した。















「は?の何って、は俺達の仲間だぞ?」
















その答えに村人達の間に動揺が走って。

感の良い航海士と黒髪のクルーは。
が自分の事を彼等に何も云っていなかった事を知る。

何も知らせず、何も語らず、何も教えず。
黙ってソコに暮らせたらそれで良いと思っていたであろうの思惑を。
自分達がやって来た事で台無しにした事も察知して。

悪い事をしてしまった、と少々後悔する。







そんな遣り取りをやっている間も。
ゾロとの二人は睨み合っていて。

今にも斬り合いを始めそうな、そんな危うい空気を作り出していて。







「ごめんね、。もしかして、彼等に何も云って……なかった、よね」







航海士が彼女の顔を覗けば。

幾らか苦しそうな顔をしていて。


















「………もう、…放っといてくれないかな……」



















そう、搾り出すような声で呟いた。







「え…?」







聞き違いと思いたいような。
本当に彼女が発した言葉なのか、疑ってしまった航海士は疑問の声を上げるが。







「お願いだからアタシの事はもう放っておいて!」







矢張り聞き間違えなんかでは無く。
搾り出すような声は、悲鳴のような叫び声に変わって。







「なっ…何云ってんだよ!! ゾロはもう世界一になったんだぞ?! 約束守ったんだぞ!?」







狙撃手がその場を取り繕うとして。
慌てて言葉を紡ぐが。







「そんなのアタシには関係無いわ!! 第一、その約束はアタシとしたモンじゃないでしょう!?」







的を得た、真実を叫ばれ。
少々、気を削がれてしまい。







「そりゃそうだけどさ、でも世界一になったらゾロが迎えに行くって云ってたんだぞ?」







それでも、仲間である。
ゾロの気持ちを代弁するような事を云って聞かせる。

そしてソレに船医も同意して彼を庇う。







「そうだよ、だからあの時みんな迎えに行きたかったのに行けなかったんだ…」







次々と知らされていくの知らなかった昔の事情。

だが、ソレを受け入れられる状態に居ない彼女に。
何を云っても同じなのに…







「うるさい!!! そんなのアタシには関係ない!! 退いて!!」

「関係無いって…」

「アタシは海賊には戻らない!もう止めたの、もう一般人になったの!」

「まさか、…本気で云ってるの?ちゃん…」

「本気よ!! だからアタシに係わらないで!」





















放っておいて

放っておいて

お願いだからアタシの心をこれ以上乱さないでっ!







アタシは平穏な時を望んでるの

もうあんな思いをするのは嫌なの







今も彼の腰に下げられて、常に一緒に存在するその刀





















ソレが憎くて、憎くて

憎らしくて……





















モノに嫉妬するなんてバカらしいにも程があるけれど

でも彼にとって、その刀は親友の忘れ形見
親友と云う名の女の形見の一品

ソレを常に身に付けて
他の刀の倍以上、ううん

全然別物とも思える程、綺麗に手入れされて







彼の傍に有るのが当然のように

どの戦闘にも
それこそ最初から最後まで

彼が戦い始めた時から
ううん、それ以上前から

世界一になる、その時ですら同じ時を過ごし続けて



















アタシには触らせもしなかった

近寄る事すら
指一本、触れる事すら許されなかったアナタと刀の絆

約束と云う名の束縛で
世界最強なんてバカげたモノを目指し続けて






それもこれもみんなその刀の所為なのに
あんなに苦しんでいたのはその刀の所為なのに!!

なのに、どんなに傷付いても
どんなに最強との距離を感じさせられても
どんなにアタシが願っても
見苦しいまでに頼んで縋って、止めてくれと云い続けても

彼は決してソレを止めなくて






そして結局、アタシはその刀に
ゾロのその刀に対する思いに負けて

それこそ負け犬のように尻尾を巻いて逃げ出した……



















ソレを今、目の前で

未だにその刀を持ち続けている男の元に戻れですって?




















冗談じゃないわ!!



















またあの地獄のような
あの苦しみを
あの感情を味わえっていうの?






もうそんなのは御免だわ

アタシは穏やかな時を望んでるの

あんなギスギスした

嫉妬で心が焼き切れてしまうかのようなあの船へなんて帰りたくもない!!




















改めて、刀の柄を握り直し。
意を決して。

自分の自由を。
今度こそ、思いきれる為に。

アンタに見切りを付けられるように。







「……アタシは帰らないわ、アンタが居るあの船になんて絶対に帰らないっ!」







勝負を付けてやるっ!!












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