こんな自分にサヨナラする為に

捨て切れない刀を持ち続けるアナタを
刀に縛り続けられるアナタを思い切る為に







アタシはアナタへ挑んでいくわ















渾身の、力の限りを尽くして

この状況から逃れる為に……


















執着 5


















先手を打ったのは当然のようにが先で。

何かを振り切るかのように刀を振り上げて突っ込んで行って。







途端に高い、刀同士がぶつかり合う鍔迫り合いの音が充満し始める。







止めたかった筈の麦藁の、元仲間達。

でもソレを逆に止められて、受け入れてももらえず。
あまつさえ自分達ごと拒否されて。







誰が悪いとか、そんなんじゃないけれど。

あの時、何故彼女を探しに行かなかったのだろう、と。
その事だけが悔やまれて。

だってあの時ならまだ間に合ったのかもしれないから。

確かにゾロとの関係で。
疲れて、憔悴しきっていただったけど。

それでもあの時のはまだゾロを愛していた筈で。
自分達の事も受け入れてくれていたのだから。







でも、今、ココに居るは。















まだゾロの事を愛しているのだろうか……

探さなかった俺達を許してくれるのだろうか……

















力で敵わないのは百も承知のは。
素早い動きでもって、叩き付けられる力を流すようにして受け流し。

そして流しながらも隙を伺い、攻撃して。
ソレをスレスレで、紙一重で見切ったようにかわすゾロ。

そして更に上を行く動きで彼女を攻め立てて。

刃がぶつかり合う度に村人はビクついて、恐れて、心配して。

彼女の服が、当たった刃の先で切れる度に。
余裕すら浮かぶ相手の男が容赦無く、剣を繰り出す度に。

細い悲鳴を上げ、見ていられないとばかりに数人が眼を逸らし、固く目を瞑る。







あんな真剣な顔をして。
あんな悲しそうな顔をして戦うを初めて見た彼等は。

どうにもその戦いが間違っているように思えて。







でも始まってしまったその戦いに。
声を掛けたり、飛び出したりなんて行為は出来る筈も無く。

一心不乱になって剣豪に挑みかかる彼女の姿が。

今迄、行き所の無かった。
捨てるに捨てられなかった感情を、やっとその相手にぶつけているような行為に見えて。

止めてはいけないように思え、居た堪れない気持ちになる。




















彼等が戦い始めて既に数十分。

そろそろの息が切れ始めて。
足元が危うい感を否めなくなってくる。

それも仕方の無い事であろう。

彼女はココへ来てから毎日を穏やかに暮らしていたのだから。
争いの無い、静かな時を、傷付いた心を癒すように過ごしていたのだから。







汗をかき、滑るのであろう、刀の柄を握り締め直す
対してゾロは息一つ乱す事無く彼女への攻撃を続け。







最初から見えていたこの勝負。

でも最後の足掻きに似たソレを。







誰が止められると云うんだろう。







海賊と云う生業を一時でもしてきた彼等にとって。
自分の意志を通すには『力』がいるワケで。

その力量の違いが一目で見て取れる彼等は。







この先、どうするのであろう







力技で来られれば敵わなくて。

でもそんな風に思い通りにされた彼女は

















この先、…どうするのだろう……


















そんな一抹の不安を抱えた一瞬後に。







ガッキィィンッ!!







と、刀が上げた悲鳴のような音と共に。

から、刀が弾き飛ばされる。

















飛ばされた刀はクルクルと回りながら。
彼女の後ろへと飛ばされて、地面に突き刺さり。

恐れていた終わりの瞬間がやって来る。

















息を酷く乱し、右手を庇うようにして左手をあてている彼女。

刀を弾かれて、何の武器も持たない彼女はそれでも目の前の男を睨み続け。

















切っ先を下げ、視線をへと向けるゾロ。


















それを見て、顔色一つ変えずに彼女の口から飛び出した言葉。





































「……殺せ…」



































ソレに対してゾロは片眉をピクリと動かしただけで、それ以上動こうとせず。







「早く殺せ」







動かぬゾロを促す為にはもう一度その言葉を口にする。







「アタシはお前の元には戻らない。戻る位だったら死んだ方がマシだ」







切れる息の合間でも。
その言葉は静まりかえった村の中へと響き渡って。

村人達の動揺が異様に大きく聞こえる位で。







「どうしてテメェの女を殺さなくちゃなんねぇんだよ」

「アタシはお前の女なんかじゃない、勘違いするな」







冷たい冷たいの言葉。







「これはアタシの存在を賭けた勝負だ。アタシはソレに負けた。だから殺されるのは当然だろう」







力の無い者は殺される。
ソレは自然界では当然の掟。

そしてソレは海賊である自分達にも当て嵌まる事。







「ココへはアタシが目的だったんだろう?だったら、さっさと殺して引き上げてくれ」







最後の最後まで。
自分の存在を拒否しても、住まわせてもらった此処の人間の為に尽くす彼女。

ソレに反応しない人間が居るワケが無くて。







「何バカな事云ってんだい!!」

「そうだよ、!何でアンタが殺されなけりゃならないんだ!!」

「頼むよ、剣士さん!頼むからを殺さないでくれ!」







わらわらとわらわらと。
彼女の元に集まって来た村人達。

それを見たゾロは、眉間にもう一本皺を寄せ。
不機嫌そうな顔を露わにする。

しかし彼女の命が掛かっているのだから、と。
彼等は言葉を続け。







「アンタ達だって彼女を殺したくなんかないんだろう?」

を迎えに来たんだろう?」

「だったら殺さないでくれよ!頼むから、この通りだから!!」







ゾロへ、船長へ、クルー達へと頭を下げ。
懇願する彼等。

そんな彼等に。







「良いんだよ、皆。アタシの事は放っておいて」







は冷たい科白を投げかけて。







「今迄黙っててごめんなさい。そして最後まで勝手なんだけど許してね」







まるで最後の言葉のようなソレに。
村人は激昂して。







「放っておけるワケがないだろう!! 今迄、お前さんが何度この村を救ってくれてと思ってんだ!!」

「そうだよ!! アンタが居てくれたからこそアタシ達は生きていられたんだ!」

「何で、助けてくれたアンタを見殺しになんて出来るってんだ!!」







でも、それでも彼女は頑なな迄にソレを受け入れず。







「お願いよ、コレはアタシの問題なの」




















まるで生きていたくない、とばかりに。







彼等に見付けられて。
この世界一の剣豪の座を手に入れた彼に。

強引に力技で来られたら。

当然逃げ場等無いのだから。







そうしたら逃げるトコなんて一箇所しか無いじゃない。

これ以上村の皆に迷惑を掛けられないし、ね。



















全てを諦めたかのような笑みを村人へと向け。

ゾロの方へと、未だ刀をおさめていない彼の方へと歩んで行く







その目には迷いは一切無く。




















その迷いの無さが。

先に立つ男の神経を逆撫でする。







そしてその事に気付かないは無防備に彼の所まで歩いて行き。

彼の顔を改めて見た瞬間に、やっとその事実に。







ココに来た彼の感情を一切知ろうとしなかった自分に気付く。




















「……誰がテメェを殺すって云ったんだよ」







ギリっ、と歯の擦れ合う。
彼が怒りを押し殺す時のクセを。

敏感になっていた耳が拾い取り。







「そんなに俺に意味のねぇ殺しをさせてぇなら、あのヤローを殺してやるよ」

「なっ!?」







くるりと反転し。
が居た店へと身体を向け。

未だ店から出て来ていないビリーの元へと躊躇もせずに歩んで行く。







「やめて!! 彼は関係無いでしょう!?」







どうにか止めようとゾロの前へと走って行って。
彼の胸を押し、止めようとするが。

そんな女の細腕で止められるような男では無く。







「殺すならアタシを殺してよ!!」







悲鳴のような、のその声に。
弾けたように身体を震わせ、店から飛び出て来たビリー。







っ!?」

「出て来ちゃダメよ、ビリー!! 店の中に入ってて!!」







先程、向けられた比では無い。
今現在、最強の名を手に入れた男の本気の殺気を当てられて。

只の一般人であるビリーが動ける筈が無くて。

口から息の抜けるような、短い悲鳴を上げてその場へと尻餅を付いてしまう。







「ビリー!! 立って!早く逃げて!!」







ギリギリでソレを耐えるが悲鳴のような声を上げ。

ソレが益々ゾロのイラ立ちを増徴させて。
火に油を注ぐようなその言葉に、本人はまるで気付いていないのか。

逃げれない男へと叫び続け。

とうとう彼の元へとやって来てしまう。



















と戦っていた時に抜いていた刀を振り上げて



















無表情に目の前の男を睨み付け


















嫉妬であろう感情を、その目の奥に燃え立たせたゾロが


















彼へと刀を振り下ろそうとしたその瞬間



















押し留めていた筈の



















その男を背に庇い



















懇願するような眼差しで



















ゾロを見上げた……































「……退け、邪魔だ」







低い、低い。
怒りを押し殺した声で呟いたゾロ。

それでも首を振って動かない







「退けっつってるだろう!!」







ココへ来て。
初めて声を荒げて。

先程までは確かに余裕を見せていた彼が。

感情の儘に怒りを露わにし。

彼女の胸元を引っ掴み。
横へ投げ飛ばそうとした。

そのゾロの手に。







添えられたの手。







途端、動きの止まったゾロ。



































「……ゾロ…、お願い………止めて…?」































狂おしい迄に欲して。
自分しか見えなくなっていた危なっかしい女が。

この儘では命すら擲ってしまいそうで。

欲していたのは、愛していたのはだけじゃないのに。







俺だって彼女を愛していたんだ。







だからこそ失うのが嫌で。

でも自分がした約束は破れなかったから。
既に死してしまった親友との約束は。

決して、絶対に破れない、己の野望とまでなってしまったモノだから。

それを捨てられない自分に嫌気を覚えようとも。
それでも捨てるに捨てられず。

今、生きている、この愛した女へと。

生きているならば、許しを得る事も乞う事も出来るだろう、と。
負担を掛ける事を、泣くのを承知しながらも突き放して。







アイツとの約束を達成出来たなら。

胸を張って、今度こそ彼女の望む男になれるように努力しよう、なんて。
そんな、柄でも無い事を別れるあの瞬間から決意して。







しかし、それからその約束を達成する迄に5年と云う月日を掛けてしまい。







もしかしたらもう自分の事等忘れて。
他の男と一緒になっているのかもしれない。

あんなに懇願し、懸命に頼まれても。
決して首を縦に振らず、ボロボロになるまでにした自分を。

あまつさえ、捨てるように離れてしまった自分を恨んでいるかもしれない、と。

待っていてくれの一言も云わずに離れてしまったのだから。
その可能性は充分に有り得たのだけれど。







だけど彼女の事を諦められず、諦めきれずに。

今、何処でどうしているのかを知りたくて。
情報を買って買って買い捲り、時には脅しもし。

漸く得た、信憑性の高い情報に踊らされるようにしてこの島へとやってきて。

下手に名前が売れ、所帯のでかくなってしまった自分が居る海賊団。
でもを迎えに行くのだと云えば。

何もかも、承知しているのか。
船長も航海士も仲間達も二つ返事で快諾してくれて。







そしてやっと来れたこの孤島。

村の雰囲気は穏やかで。
こんな島にあの気性の荒いあのが居るとは信じ難かったが。

あんなに傷付けた後なのだから、こういう雰囲気を望んでもおかしくないな、と思い。

何故か自分の素性を知る村人に彼女の存在を確かめれば。
最初は居ないと云われたが、どうにも胡散臭くてちょいと締め上げれば。

村外れの海の見える小高い丘に店を開いて、ソコに居る、と。







得た情報を信じていなかったワケじゃないが。

それでも、本当に此処に居てくれたのが嬉しくて。
反面、拒まれるのが恐ろしくて。

世界一なんて呼ばれて、恐れられて。
道行く人々に恐怖の眼差しを送られて。

そんな自分だけれども。







俺だって只の人間で、只の男なんだ。







たった一人の女を欲しがって。
その女と、女の気持ちが欲しくてこんなにも振り回され。

挙句、こんなトコまで追い掛けて来て。







いざ、迎えに来たのは良いけれど。

もう他の奴と幸せな家庭を築いていたらどうしよう、とか。

そんな筈は無いと、自分に言い聞かせても。
あの別れが消えるワケじゃなくて。

益々その考えが真実に思え。







これから訪ねるその場所に。

男と一緒に暮らしていれば、仕方が無い、と。
あの時に追わなかった自分のミスなのだと。
選択を誤った自分の所為だと、納得しよう等と。

剣の腕は一流なれど、未だ未熟な儘の心で。
それをどうにか押さえ込んで。

彼女が、が幸せそうにしていたら。







諦めよう、と。







そう思いながら扉を開けて。







途端、飛び込んできた。
男と抱き合う懐かしい女。







あの頃と、多少違った雰囲気で。


















驚いた彼女が






自分を見た途端に






上げた、荒げた声

















瞬間、あの時に戻れた気がして……



















俺を、俺だと認識した彼女が発した言葉。

それが、未だに俺を思ってくれているような気がして。
忘れられていないような、気がして。

あの時に、怒鳴らず、喚かず、泣かず、何も云わずに背を向けたが。






今頃になって本心を露わにしてくれたような気がして。






反応を返してくれた事が嬉しくて。

でも、その愛してる女を抱く男が居て。






俺が居るにも係わらず。
俺の目の前で、迎えに来たこの俺の目の前で。

キスをして。

ソレを拒まないに、酷い憎しみを感じるが。
それもあの時に引き止めなかった自分が悪いと思い。

相手の男を殺したい衝動に駆られるが。

ココでその男を殺せば。
彼女が悲しむと、怒ると思い。

ソレをすれば二度と彼女が許してくれないのを感で察知し。
行動にしなかったワケだが。
代わりに彼女と戦う羽目になり。

やっと終わりにしてやれば。






今度は殺せだと?






こんなにも望んで。

こんなトコまで追いかけて来て。

こんな見っとも無い姿を晒し。

人目を気にする余裕すら無くした自分は。






とうとう切れて。






自分の気分の赴くままに。
大切であろうあの男を殺してやろう、と。

ソイツのトコへ行こうとすれば。

は必死になって俺を止めて。

あの時、そんな声を上げなかったクセに。
あの時、そんな声を上げられれば、少しは事態が変わったかもしれないのに。

そんな考えが頭を過ぎり。
益々俺をイラ立たせて。






庇うを引っ掴み。
退かそう、放り投げようとした途端。
















久し振りに触れられた

彼女の手の感触
















そして自分の名を呼んだ、その声……

















…もう
















思いが止められなかった……










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