………ナニ……これ…


……何?…


ナンなの!!?




何でアンタとサンジがっ……!!!








so long








たまたま。
そう、本当にたまたまだったのだ。

夜中にポッカリと目が覚めて。
喉が渇いたから、キッチンへ水を飲みに行こうと思っただけなのに……

たったそれだけなのにっ…!!






通った倉庫の前で人の気配が。
声が聞こえたような気がしたから。

それもアタシが良く知っている声のような気がしたから。





奴隷として売られる寸前に一緒にルフィ達に助けてもらったアタシの妹分のような、アノ子の声みたいだったから。

「……?………誰か居るの?」

そう言って扉を開けてしまった。


それはさながら、開けてはいけないと云われた『パンドラの箱』のようで……






開けた扉の向こうに見えた光景が信じられなかった。






この夜の闇にも、薄暗い部屋の中でも決してその輝きを失わない

己が愛した金髪が………


見開いた目に飛び込んできて。






『ね……、サンジ。アタシ、アナタの事が好きなの』

『………ちゃん?』

『ウソじゃないわよ、アタシ本気よ?本気でアナタの事が好きなの!!』






「……ナニ…してんのよ………アンタ達…」






『嬉しいですよ、レディ

『ホント!? ホントにそう思ってくれる?』

『ええ、本当ですよ?』

『だったらアタシと付き合ってくれる?彼女にしてくれる?』

『ああ、身に余るようなお言葉♪』






「……ナニやってんのよ……二人して……」





『ねえ、アタシを彼女にしてくれるの?くれないの?』

『貴方を振るなんて事、このサンジにはできませんよ』

『じゃあ……今からサンジはアタシの彼氏だネ』

『はい、お姫様。全ては貴方の思うが儘に』

『サンジ……好き、大好き!!』

『ああ、俺もちゃんが……』





「なに……ナニしてんのよ!! 離れなさいよ!!」





『……大好きだよ…』











慌てて服の乱れを直すマリを突き飛ばして。

「ちょっ…!! 、ヤメロ、彼女は悪くねぇ!!」

何時もは2・3個開いているだけのブルーのシャツは、全て外されていて。

「悪くないって……ナニ言ってんのよ!! じゃあ、コレは何なの!? どういう事なの!!?」

おろおろしているマリが視界の端に映る。

そして目の前には困惑しきったサンジの顔。


「だってサンジはアタシのでしょう!? アタシの彼なんでしょう!!?」

開いたシャツを両手で掴んで、握り締めて、詰め寄って。





”アタシの彼なんでしょう?”

それでもサンジはアタシの質問には答えてくれなくて。

「ねえ、そうでしょう!? アタシの事好きって言ってくれたじゃない、…彼女だって言ってくれたじゃない!!」

視線すら合わせてくれなくて。

「…マリ……」

ナニも言ってくれないサンジでは埒があかないと、マリの方に詰め寄ろうとすれば。







サンジは彼女を背に庇って。






「……どうして…?」

目の前のその事実に次の言葉が出てこない。

さっき迄合わされなかった視線は、マリに詰め寄った途端に合わされて。





自分が愛した蒼い目が……
自分を見ていてくれていると信じていた蒼い目が……

優しく見詰めてくれていた蒼い目が……





騒ぐアタシの声が煩くて目が覚めたのか、他のクルー達の声と足音がして。

しかしやってきた彼等も、この状況を見て固まってしまって。





彼等がやって来たのは分かっていたけれども、気を使う余裕なんて今のアタシにはコレっぽっちも残されていなくて。





合わされた儘の視線。





愛して、愛された筈のその眼差しは







アタシを













拒絶していた……












絶望が


身体中を






駆け巡っていく………













絶望に染められたアタシの顔をサンジの後ろで見ていたマリが、サンジの服をぎゅっと握る。

それに気付いたサンジがマリに向けた視線。


大丈夫だ、と。

全て自分がどうにかするから、と。


安心するように向けられた、優しい眼差し……






「……ゃ………ウソ……でしょう…?」

搾り出すように言葉を発したアタシへと戻された蒼い目には


悔恨

懺悔

謝罪


そんな意味しか含まれていなくて。





「いや……や…」





サンジのシャツを掴んでいた手から自然と力が抜けてしまって。

僅かに震える指先から抜け落ちてしまうかのように、離れていった青いシャツ。

実際には自分が離したソレなれど。


それすらもが、彼は拒絶したかのように思えて……






「…ぁ……あ…、やぁ……」

口から漏れる言葉には最早、意味など無くなって。


頭(かぶり)を振りながら

一歩

二歩

と後退さる。






「ぃやっ……あ、…いやぁぁぁあああああ!!!」

振り続ける頭に両手が添えられて。

立っていられなくなったのか、はその場へと崩れ落ちて。




「やぁ――――っ!!! いやぁっ、いや―――――っ!!!!!」

事実を認めたくないのか、拒否する言葉しか出せなくて。






パニックに陥ったような、自我を失ったかのように叫び続けるにクルー達が駆け寄って。

!!」

「おい、!?」

っ!!」

ナミが、ゾロが、ルフィが、ウソップが宥めるように、落ち着かせるように手を差し伸べるが。





「やだやだ、いやよ!…やぁっ…いやぁ!!」

それでも彼女は全てを拒否し続けて。






それまで呆けていたチョッパーが慌てて走って行き、スゴイ勢いで帰って来る。

「ゾロ、ルフィ、ナミ、ウソップ!! の身体押さえて、早く!!」

チョッパーの手には何かの薬品の入ったアンプルと注射器が握られていて。

パキン、とアンプルの先を折って中の液体を慎重に注射器へと吸いいれている。

ナミとウソップとルフィ、ゾロが必死になってを押さえつけて。

3人がかりで押さえつけているのだけれど、自我を失っている彼女を押さえているのは至難の技で。


「ルフィ、の腕を押さえて!!」

チョッパーの指示で身体をゾロが押さえつけて、ナミとウソップ、ルフィの三人かがりで腕を床へと押し付けた。




それでも普段の彼女では有り得ない、力の限り、暴れて暴れて。


目からは止めどなく涙が流れ。

開く口からは悲鳴のような拒否の叫びが止まる事なく響き渡って。





押さえられた腕に、チョッパーが素早く消毒液を含んだコットンを滑らせて。

持っていた注射器をぷすりと刺して中身を注入した。





「いやっ…ヤメテ……いやだったら………いやぁぁ……」

直接、血管に打ち込まれた鎮静剤が即効で効いたのか。

見開かれた目から狂気が薄れて。

ゆっくりとゆっくりと瞼が閉じられていく。





「…あ……ぁ……サン…ジ……」

狂気の原因を作った愛しい男の名を呼んで。

は意識を失った……










「……はぁ………」

ナミが心底、疲れたような溜息を付いて、掴んでいた彼女の腕を離した。

ウソップ、ルフィももまた然り。

ゾロは圧し掛かっていた自分の身体を退かして、無理矢理眠りに付かされた女の前髪を軽くすいた。

「……ゾロ、を運んでくれ」

口に銜えた注射器のキャップを元の戻しながらチョッパーが言った。

「……ああ」

ソレに低い声でゾロが答えて、脱力しきったの身体を抱き上げた。


だらりと垂れた腕と頭。

それを抱き直し、頭を胸へ、腕を彼女の腹の上へ。





「……オイ。クソコック、話は後で聞かせてもらうからな」

を抱いた儘、捨て科白のように言い残したゾロの声はとても低く。
尚且つ、怒りの含まれているモノだった。

その場に居た全員が凍り付く。

そんな沈黙の後、ゾロはを連れて待っているチョッパーの元へと歩いて行った。





残されたクルー達も大きく溜息を付いて、サンジとマリに向き直った。

「そうね、ゾロの言う通りだわ。サンジ君もマリも、取り敢えずキッチンに行きましょう」

睨みつけるような一瞥を二人に浴びせ、ナミはルフィとウソップを連れて倉庫から出て行った。








ナミ達の足音が遠ざかり、倉庫へは痛い程の沈黙が残される。

暫く呆けていたように動けなかったサンジだが、背中に居るマリの泣き声にハッと我に返る。


「ぅっ……く、…サンジ…さんっ…」


ポロポロと、ポロポロと、透明な涙を溢れさせ。

サンジはギュッと目を瞑った。
そしてマリの身体を抱き締めて。

「…どう、しよう……どうしよ…う、サンジさん……」

困惑しきったマリの身体を抱きながらサンジは己を落ち着かせる為にも「大丈夫だ」と言った。


「大丈夫……全部、俺が何とかするから…」







そんな事が出来る筈もないと分かっていながらもサンジはその言葉を何度も何度も繰り返した。






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