水に覆われ。
苦しそうにもがく男達を尻目に。

何人もの命を絶とうとしているにも係わらず。





彼女は何も感じていないかのような。
冷たい、冷めた目で。
口元を歪めて。

俺を見て。





俺が……

俺達が知っていた。
昔の彼女とのギャップに。

その余りの違いように。







眩暈が、した……
















so long13
















驚きの、驚愕の表情を浮かべるサンジから視線を外し。
は苦しむ男達を眺める。

苦しさに悶えて。
酸素を欲しがって、もがいて。
水に覆われた、くぐもった悲鳴を上げながら。

彼等は苦しい死に迎え入れられる。





先に死んで逝った者からは。
水はもう済んだ、とばかりに離れて行き。

彼等の力の抜けた。
魂の抜けた身体は。
その場へと崩れ落ちる。

ドシャリ…と、不気味な音を立てながら。





そしては何故か男達の一人だけ生かしていて。

その男は彼等に指示を出していたリーダー的存在で。
彼女は静かに彼に歩み寄り。

彼は頭だけ残し。
残りの身体を水に覆われていて。
動かない身体を懸命に動かそうと。

逃げようともがいている。





「ココまで無謀な事をしたアナタに敬意を表して」





そう言っては男に手を翳す。

イヤがる男に。
悲鳴を上げる男に。

彼女は容赦無く手を触れさせて。





サンジはその光景に目を見開く。





彼女が触れたその場所から。
ソコから何かを吸い取っているのか。

男は見る間に枯れていき。

身体中の水分を奪っているのか。
彼の身体は皺だらけになっていって。





細い、悲鳴を上げながら

事切れた……














静かに崩れ落ちる老人のような死体。
カラカラに乾いたその死体。

ソレに向かって。
は自分に刺さっている凶器を抜き取って。
血の代わりに。
僅かな水が滴るソレを返してやる。

何本も何本も刺さっていた凶器を抜いて、返してやる。













何て

残酷な殺し方なんだろう……





正直、サンジにはあんな事は出来ない。
否、したくないと云った方が正しいのか。

あんなに助けてくれ、と。
止めてくれ、と。
恥も外聞もプライドも無く。
許しを求めて、助けを乞うて。

命乞いをする者達を感情の無い機械のように殺す事なんて。

サンジは出来ない、と思った。





そして唐突に理解してしまう。















これが『氷の』なのだと……















これが『氷』の名の由来なのだと。

























初めて目にした『今』の彼女の生き方。

『今』と『昔』とのギャップの激しさに。
先程の涙を拭うと云う行為との余りの違いに。

言葉を紡ぐ事すら憚られて(はばかられて)。






『死』を望んだ自分にはソレを与えてくれず。
『死』を拒否した彼等にはソレを無理矢理与えて。






そうしたのは彼等が他人だったから?
そうしたのは相手が俺だったから?






それでも彼女がヒトを殺す事に何の躊躇もしない事だけは分かって。

だからこそ生きてこれたのだろうが……






でも、この現実は無いだろう……

彼女の生を心底、望んだ。
その事に偽りは無いのだけれど。

ここまで変わっているとは思っていなかった。
ここまで変わりきっているとは思えなかった。











そんなに変われる程

何があったのだろう…?











聞きたいような。
聞きたくないような疑問がサンジの脳裏に浮かぶ。

聞いたら最後。
ソレ以前には戻れない事は重々承知しているつもりだったが。

自分が傷付くのも分かっているけれど。
彼女の傷を暴く事になるというのも理解できるけれど。

それでも彼女の事を。
少しでも思うのなら。
罪を償うつもりなら。






自分はソレを聞かなければならない。






幾ら、自分が傷付いて。
悔恨という感情に埋め尽くされても。

彼女の事を少しでも救う気があるのなら。
彼女の事を少しでも思うなら。






どんなに辛くとも。

聞かなくてはならない。
責任を負わなくてはならない。







そう、思った。







第一、自分は彼女に命を差し出したのだ。

ソレをは拒絶した。













即ち。

それは『生きろ』、と言っているのではなかろうか。













辛い人生でも。
何もかもを失っても。
逃げ出したい現実でも。
全てを拒否したいこの世界でも。

それでも『生きろ』と。
そう言っているのではないだろうか……














勝手な解釈だが。
強ち(あながち)外れてはいないような気がして。

サンジは下を向いた儘、殺した彼等を見続けているに声を掛ける。





「………」





ゆっくりとコチラを向いた彼女と。





「あの後、お前に何があったのかを…」





合わされた目が。





「…俺に聞かせて」





何処か
悲しみを帯びているような気がして。





「もらえないか……?」













本当はあの時。
いっその事。

無に還っていた方が良かったのではないのか。





そんな風に思えてしまう程の。
彼女の呪縛を解いてあげなければ。





都合のイイように。

そう思えた……

























『あの後、お前に何があったのかを聞かせてもらえないか?』





このヒトはソレを本気で言っているの?

只でさえ辛い。
何もかもを投げ出そうとする程のモノを抱えているのに?
それとも何もかもを失くした所為でこのセリフを?

その所為でこんな事を言っているの?












空っぽになってしまったそのココロを。

アタシで埋めようというの?












……随分と、都合のイイ…












堪えきれない笑いを洩らして。





「…サンジ……アンタ、アタシをバカにしてんの?」

は冷たい冷たい。
目の笑わない笑みを浮かべて。

「なっ……俺はそんなつもりは」

言い返そうとするサンジを遮って。

「じゃあ、ナンで急にそんな事を言い出すのよ」





「それはっ……お前の事を少しでも理解したいから…、償いたいからに決まってるだろう?」













…可笑しいね……

ナンて可笑しいんだろう





このヒトは何を言っているの?
今のアタシを理解したいだ?














驕る(おごる)のもいい加減にして欲しいわ!!















「ねぇ、サンジ……。アナタ、マリと何かあったんでしょう」

それは問い掛けているにも係わらず。
確信を持った言い方で。

ソレが当たっているのが。
強張った彼の表情から伺える。

「やっぱり、ね。……そんな事だろうと思ったよ」










アタシを捨てて迄、手に入れたかった女に。
全てを捨てて迄、手に入れた女に。

どうせ裏切られたか何か。





されたんでしょう?





だからでしょう?
そんな気になったのは。






何処までも。

残酷なのね、アナタって……






アタシはあの子の代わりじゃないのよ?
何時になったら分かってくれるの?

それとも生きている内は一生分からないの?





やっぱり殺しておけば良かったのかな。

そうすればこんなバカなセリフを言わせる事も。
聞く事も無かったのにね。





アタシは一体
何がしたいんだろうね……





裏切られたのが悲しくて。
事実を認めたくなくて姿を消して。
なのに己の存在を消しきれなかった自分が悔しくて。
その自分を好き勝手にした奴等が許せなくて。
辛くて、憎くて、恨めしくて。

だから殺して、殺して、殺して、殺して……





気が付いたら、こんなになってしまっていた。

感情の一切を持たない。
冷たい女だと言われるようになった。
氷のような女だと、人間ではないような女だと……





こうまでして生きていて。
一体、何が有るというのか。

それでも、あの海軍大佐に『生きろ』と言われて。
『殺すな』と言われて。

だから努力はするつもりだった。
殺す事を止めようか、と思った。
生きてみようか、とも思った。





だが、『今』のアタシにそんな事が出来る筈なんてなくて。

再び何人も殺して殺して……





もう、こんな生き方しか出来ないのかな。
初めてしまったこの人生に。

暴走し出した狂気に似たこの感情は。
アタシが死ぬまで続くのかな……





サンジを殺して、マリも殺して。
それで気が晴れると思ってたんだ。

それで終わりにしようと思ったんだ。





でもさ。
勢い込んで。
いざ、来てみたら。

サンジはこんなになってるし。
どうやらマリはサンジを裏切ったか何かしたんだろう。

でなければ、サンジが此処まで空っぽになるとも思えないし。





空っぽなアタシに。
空っぽなサンジ。





アタシはこんなサンジを殺して。

本当に満足できるの?





空っぽな人間を殺しても。
得られるモノは何も無い。

余計に空しさが増すだけなんじゃないのか。

そんな風に思えば。












会いに、来なければ良かったかな……












そんな答えが頭に浮かんで。

そうすれば、もう少しマシだったかもしれないのに。
こんなにも空しさを感じずに済んだのに、ね。












もう、よそう……






ココに居ても意味が無い。
帰る場所なんて無いけれど。

それでもココに居るよりはイイ。

サンジとマリが、二人だけの時を共に過ごした。
この島に居るよりずっとイイ。






幾ら、感情が無い女だと云われても。
本当に感情が無い筈が無くて。

人並にモノを感じる事を蓋しただけで。
それに幾つも幾つも鍵を付けただけで。

それが顔に出なくなっただけなのに。






だから悲しみや悔しさ。
痛みや空しさを感じてしまって。













感情を無くすだなんて。
例え、狂ったとしても出来ないのだから……












愛した男は空っぽで。
壊れたアタシも空っぽで。

別れてしまったであろう彼等に。
これ以上何を云っても無駄だと思えた。





空っぽなアタシに相応しく。
死に損ねたあの海へと還ろう。





これ以上の『生』なんてアタシには無意味だ。
アタシを殺してくれる人間なんてココには居やしない。

第一、その力量を持っている輩なんて。
世界政府のお偉方位だろう。

そんな奴等が出てくる事も無いだろうが。
それでもあんな奴等の上官達にくれてやる命なんて持っているつもりでもないし。

そろそろ潮時だろう。
折りしもココはあの場所に一番近い島なんだから。





もう、還ろう……













サンジを一度、振り返り。
深い深い暗い闇を秘めた目を向けて。
その目に測りきれない悲しみと空しさを忍ばせて。

は彼の前から消えようと歩き出した。






?…、何処に行くんだよ!!」

「……還るのよ」

短く返された言葉の意味に。
深い意志を察知したのか。

サンジは少々、取り乱して彼女の腕を掴む。

「何処に還るってんだよ」

「何処だってイイでしょう?」

「よくねぇよ!」

「アタシの勝手よ」

「勝手ってなぁ……」

それでも拒み続ける彼女に。









「お前にはっ…俺とお前には還るトコなんて無いだろうがっ!!」









サンジは事実を目の前に突きつける。





「………そう、ね。……アタシにもサンジにも…還るトコなんてないわね」

は少し目を伏せ気味に云う。

「それでもね、…もうイヤになったのよ……」

その言葉の隙間に入る。
隠された意味あいに。
『生きる事が』イヤになったのだと云う隠れた言葉がありありと分かってしまい。

もどかしいような思いに駆られた。






「頼むよ、…頼むからいかないでくれよ」

「もうイイって云ったでしょう?」

「お願いだから」

「あの時以上の傷を負ってるのを知っててそう云うの?」

「それは俺も受け止めるから!」

「結構よ、って云ったでしょう」

「それでも!! それでも俺はお前を助けたいんだ!!」











『それでも俺はお前を助けたいんだ』











そのセリフには苦い、苦い笑みを浮かべて。





「……助ける?……助けてどうしようって云うの?」

浮かんだ疑問をそのまま僅かな感情と共に吐き捨てるように云った。

「あの時に死んでおけばこんな事になんてならなかったんだろうね。でも死に損なったアタシは生きている。
 ソレをどれだけ後悔したか……アナタは分かって言ってるの?」

苦しそうに苦しそうに続けられるセリフ。

「死んだ方がよっぽどマシだと思える中で生きてきて。
 新しい罪を、人殺しって罪をコレでもかって位に背負って生きてきて。
 今だって見たでしょう?アタシはトンでもない人数を殺した殺人鬼なんだよ?」

「そんなの関係ない!」

「関係が無いワケがないでしょう?アタシは世界政府に追われる第一級犯罪者なんだよ。
 折角あの船を下りたのに、一緒に居たらアンタも追われる羽目になるんだよ?
 やっと海賊家業から卒業して一般市民になれたアンタが係わってイイ人間じゃ無いんだよ」





悪まで無関係にしたいのか。

は他人である事を。
もう切れてしまった関係を強調して。

それに焦れたサンジはの両肩を掴み。
激しく否定する。





「俺とお前が無関係なワケないだろう!! お前をそんなにしたのは俺だ!!
 追われるのなら俺も一緒に追われてやる、だから独りで逝こうとするなよ!!」





頼むからっ……

頼むからっ!!





「生きるのが辛いなら俺に当たればイイ。政府の奴等に追われたら俺を盾にして逃げてもイイ。
 お前が俺を殺したくなったら、何時でも殺してイイから。だからっ……」





悲鳴のような声で。

自分を殺してもイイから、と。
イザとなったら自分を盾にして逃げてもイイから、と。
叫びながら。






「もう、独りで逝こうとしないでくれ!!」













彼女を。

を抱き締めた。















「頼むよ……もう、…俺を置いて、いかないでくれっ…」


























その抱擁に。


久しぶりに感じたサンジの体温。

彼の腕の感触。

彼の吸う煙草の香り。

彼の流した温かい涙が自分の頬に零れ落ちる濡れた感触。






縋りつくような。
孤独を埋めてやりたい、と云う意志の含まれたその抱擁に。

の身体は強張って。
身動き一つ出来なくて。

その所為で感じるサンジの体温に。











「………温か、い……」











長い事、触れていなかった人肌の感触に。
それも愛した男の抱擁に。

の内に住まう闇が僅かに薄れていく。













「………サンジ……」













求めて止まなかった男の抱擁が。
求めて求めて、渇望した男が目の前で。

選んで欲しかったアタシを抱いてくれている……













酔ってしまいそうなその感覚に。
は身体の力を次第に抜いていって。

それに気付いたサンジは尚更彼女を抱き締めて。





長い間、離れていた彼女の身体をキツク引き寄せ。
髪に頬を寄せ。
胸の中に閉じ込めるようにして。
マリとは違う、髪の感触に唇を寄せて。
何度もキスして。





全ての事から守られるようなその抱擁に。
彼の腕から伝わってくる思いが。
全てを失った彼が唯一残す命を賭けて。
未だ孤独の中に独り居る彼女を救い出したいと云う思いが。

その行動から滲み出てきて。





はおずおずと、手を伸ばし。

サンジの背中へと腕を回す。





ハッとした感触が彼の身体から感じ取れたが。
背中に回された彼女の腕が嬉しかったのか。

サンジはの髪に更に頬を擦り付けて。










にとっては時間が戻ったかのような。
自分を選んでくれたような錯覚に陥れて。

サンジには全ての謝罪を。
己が犯した罪を許してもらえたような錯覚に陥れた瞬間だった。










何も知らない他人から見たら。
一見、恋人同士の抱擁に見えるソレは。
そんなに長く続く筈も無く。

サンジの良く知る声に寄って邪魔される。
















「……サンジさん?」

















その人物はサンジの勤めていた店のウェイターで。
突然、飛び出して行ったサンジを捜し回っていたのだ。

店長に幾ら云っても『放っておけ』しか云わなくて。
彼では埒が明かないと。
サンジの作る料理に心底惚れていた彼は。
独自で彼を捜しに来ていて。

そして要約、見つけたというのに。
彼は店に来ていた女と抱き合っていて。





「何してんですか、サンジさん。さ、早く戻りましょう」





サンジの抱いていた女の顔が良く見えなかった事も災いしてか。
ウェイターはノンキな様子で彼等の傍までやってきて。
戻ろう、と云う。

しかし、帰りを促されたサンジからは。





「俺はもう帰らないから」





嬉しそうな顔をして、そう返され。

てっきり。
直ぐにでも帰ると言って貰えると思っていたウェイターにとっては予想外の事で。





「えっ!? 帰らないって……どういう事なんですか?」





もしかしたらと云う思いもあったのか。
この女が原因なのか、と。
そのウェイターはの方を見て。

彼女の顔を見て。











固まった……










「こっ……コイツ…」





見る間に青くなっていくウェイターの顔。

青褪めて。
冷や汗をかき始めて。
足が震えだして。

叫んだ名前は。





「この女っ…『氷の』じゃないですか!!」











こんな平和な島でも。
彼女の名前は轟いていたのか。

彼は一発で彼女の通り名を当てて。





叫んだ彼は恐れ慄き、後退り。

叫ばれたは冷たい目を。
ソレを聞いたサンジは悲しそうな目をした。





「それが……どうしたって云うんだ?」

「はぁっ!?……ど、どうしたって…犯罪者じゃないですか!! 第一級犯罪者ですよ!? 知らないんですか!!?」





ウェイターが怯えながらも吐いたセリフに。
サンジは益々、辛そうな表情をして。





「……知ってるよ。…でもな、……を…こんなにしたのは俺なんだよ」





サンジは自嘲気味にそう云った。

目を伏せ。
口元を歪め。
それでも彼女を離そうとせず。





短い間だったけれども。
それでもその時間の中の半分近くを占める時を共に過ごしてきた彼が。

こんなに辛そうな顔をするだなんて。
見た事が無くて。

今現在、見ているのにも係わらず。
ウェイターには、それが信じられないような気がして。





「悪いな、わざわざ捜しに来てくれて。でも、お前は帰れ」

「帰れって……じゃあサンジさんはどうするんですか!?」

「俺はといくよ」

嬉しそうな。
重荷の無くなったような晴れた顔で言葉を重ねるサンジに。

「行くって……本気なんですか!? 本気で彼女と行くんですか!!?」

信じられない、とばかりに引き止めようとして。





だって彼には『マリ』と云う可愛い彼女が居た筈なのに。
誰もが認めるカップルで。
しかも一緒に住んでいて。

なのに何故!?
何故、こんなお尋ね者の賞金首の女なんかと!!

サンジの行動を理解できないウェイターは納得出来ず。





「じゃあ、マリさんはどうするんですか!! あのヒトは置き去りなんですか!? 捨てるんですか!?」





『マリ』の名前に。
『捨てる』の言葉に。

抱き締めているの身体から僅かに反応をするのをサンジは感じ取り。
苦い、苦い笑みを浮かべた。












「……マリはもう帰って来ないよ。…彼女は俺を置いて出て行ったんだから……」












サンジは昨日起きた事をそのままに口にした。

それに目を見開いたのはウェイターだけで無く。
も彼の顔を仰ぎ見た。





「俺がマリを捨てるんじゃない。……マリが俺を捨てて行ったんだよ…」





『マリが俺を捨てて行ったんだよ』

その言葉はの方を向いて。
彼女だけに伝えたかったようで。
彼女のみに言いたかったようで。





サンジはの目を見詰めて。

あの日。

海に落ちる前に見せたような笑顔を。
最後に自分を見た時に見せた笑顔に限りなく近い笑みを。

ソレをサンジは浮かべて。





その所為で。
は妙に納得がいってしまった。





何故、彼があんなにも空っぽだったのか。
何故、彼があんなにも死にたがっていたのか。
何故、彼があんなにも自分に縋って来たのか、を。









これでは。

このサンジでは。

まるで。


























昔の自分ではないか……



























過去の自分を見ているような錯覚を覚えてしまったは。
唐突に決心する。










縋る、アタシを捨てたアナタを。
捨てないで、と懇願したアタシを捨てたアナタを。

今度はアタシが捨ててしまったら。

憎んで、恨んで、妬んで、殺したくて。
そんな感情を延々と引き摺り続ける。

終わりの無い地獄のようなループになってしまうではないか。





それなら、今度は。





どんなに許せないと思ったアナタでも。
憎くて憎くて、殺したい程憎んだアナタを。
捨てられて。
空っぽになってしまったアナタを。














アタシが




拾ってあげましょう……

















「なぁ、…イイよな。……」

昔、アタシがアナタに向けたその眼差しを。

「俺も……一緒に…」

縋りつく眼差しを、今度はアタシに向けて。





「連れていって……くれるだろう…?」





思い出したくないような過去の思いを。
何人もの人間を殺めて葬って、要約落ち着きを取り戻した。
凪いだ海のようだったアタシの心を掻き乱すその表情で頼まれて。





断れるワケが無いのにね……











「……えぇ…、いきましょう…」











彼女の。
の肯定の答えに。

サンジはとても嬉しそうな。
安らいだような顔をして。

先程した、恋人同士のような抱擁をし。

ウェイターと云う観客の目の前で。

は自らの身体を水に変え。

サンジを包み。

巻き込みながら。

地面へと。

消えて。


無くなった……








残されたウェイターは。
これで良かったのか、と自問自答して。

相手があの『氷の』と云う事を差し引いても。
サンジの幸せそうな笑みに、ウソは無いように思えて。

大人しく。
海軍に通報する事無く。

自分の勤めるレストランに帰って行った。







彼等の消えた場所には僅かな水だけが残り。

彼等がソコに居た事が夢では無い事を物語っていた……







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