so long24 -epilogue-






















今迄生きてきて

こんな悲しみを感じた事なんて…






一度も、
一度も無かった







身体中から力が根こそぎ奪われてしまうかのようなソレに
あがらう事も出来ずに

流され、打ちひしがれ、
彼女を引き止められなかった力の無い自分に容赦無い無力感と絶望感、脱力感が襲い掛かってきて

少しでもソレを無くしたくて、追い出したくて







天に向かって何度も何度も叫んでみた







周りに居た人間がこぞって視線を逸らしたり
その声を聞きたくない、とばかりに大袈裟なまでに耳を塞ぐのを
視界の端が視認して脳へ情報として送り込むが

そんな些細な事は何の感慨も浮かばなくて







自分の腕の中に居る、死してしまった女の人生があんまりで

その片棒を担いでしまった自分が許せなくて







俺は泣き叫び続けた……






















「何でだっ……何でなんだよぉっ!! ………何でが死ななくちゃならないんだっ!」























「悪いの俺達だろう?! なのにっ……何でっ…」

























「…をこんな風にしちまったのは俺のっ…俺の責任なのに!……」

























「人を殺したのだってっ……海軍を恨んだのだって…賞金首になっちまったのだって……」

























「全部っ……俺の所為なのにっ………ぇ…………………」

























「………何で死んじまうんだよぉっ……」

























「これから……これから…俺の作った料理……食うんじゃなかったのかよ…」
























「今夜は宴会で……また、奴等と一緒にバカ騒ぎしてっ……」


























「俺はっ……お前に………笑ってほしかっただけなのにっ……」

























「それだけで良かったのにっ………それすら許されないのかよ……」
























血塗れの笑みを浮かべた彼女の顔に頬擦りして

自身も血塗れになる事も厭わずに

何度も何度も擦り合わせて























「…………………」


























神よ……
これはあんまりじゃないですか?






これが彼女に用意されていた運命だと云うのなら






余りにも酷くはないですか…?






19年しか生きていない俺ですらそう思える人生を






何故に彼女に与えたのですか?






神よ……、出来るなら

お願いですから、…彼女を返して下さい







彼女の人生を

彼女の幸せを

彼女の心からの笑みを

彼女の生をっ…!


























「……っ返せ!! ……返してくれ!………頼むからっ、を返してくれよぉぉっ!!!」
















































―――………ポツ…







―――…ポツ……ポツ…

























悲鳴のような叫び声を発したサンジのソレに






偶然なのか、はたまた必然だったのか






まるで応えるかのように
死してしまった彼女を労わるかのように






天から雨粒が落ちてきて






それは瞬く間に大粒に変わり






血に塗れた彼女の顔を洗い流してくれる


























「違うっ!! こんな事を望んでんじゃねぇんだ!……」






―――俺はっ…!俺はを返してほしいんだよっ!!
























願いも空しく。
余りにも当然の事だったが。

死人が生き返る筈も無く。
只、冷たい冷たい天から降ってくる雨が彼等を濡らし続け。

声が枯れるまでサンジは叫び続け、仲間達はソコから動けず、海軍達は逃げるかのように帰って行って。

残ったのは白猟の海軍船と麦藁の海賊船だけで。







冷えた雨の所為で冷たくなった自分の身体。
それすら通り越した大事な大事な女の冷えた身体。

ソレを抱きかかえてサンジはふらふらと、ふらふらと立ち上がり、歩み始めて。

ゆっくりと船の淵まで行って、止まる。

























そして、小さな小さな声で。

彼女にだけ聞こえるような小さな声で。

絶望に満ちた筈なのに。

僅かな笑みを浮かべて、彼女に話しかける。




























「なぁ、……。…独りじゃ淋しいだろう?」

「俺、約束したもんな」

「もう離れないって。ずっとお前と一緒に居るって」

「お前とした約束は、もう二度と破らないよ…」












































まるであの懐かしい、悪夢のような瞬間を。
否応無く思い出せるかのようなサンジの後姿が。

その場に残っていた彼等の背筋を凍らせて。

次々と制止の声を張り上げるが。







彼は、酷く、安らいだ顔をして

一度だけ彼等を振り返り

あのワンシーンを彷彿させてくれる動作を繰り返した……







































なぁ、…

俺はもうお前が居ないとダメなんだ






他の誰かじゃ代わりなんかになれないんだよ






冷たく拒絶した俺に

恨んでいた俺に

自分勝手な理由でお前に引導を渡してもらおうと思っていた俺に






そんな俺なんかに手を差し伸べてくれて

























俺な、本当に嬉しかったんだ






クソジジイに褒められた時よりも
どんなに料理が上手く出来た時よりも
メチャクチャ素敵なレディに振り向いてもらえた時よりも
アイツ等とバカをやって、宴会をやった時よりも
命からがら助かった時よりも
腹ペコのヤツに飯を美味く食ってもらえた時よりも

本当に今迄の中で、一番嬉しかったんだ






だから、さ
お前がそっち側へ行くってんなら今度は俺が追いかけるよ

もしかしたら同じ処へは行けないかもしれないけれど
それでもお前は俺と一緒に居てくれるんだろう?






今度こそ俺と共に居てくれるんだろう…?




























海軍や他の奴等にとっちゃお前は悪魔みたいな女だったかもしれないけれど

それでも俺にとってはお前は天使みたいな女だったから






俺にとってお前は生きる意味、そのものだったのだから


























あぁ……

冷たい海が温かくさえ感じるよ






な、

今度生まれ変わったらさ






今度こそ、一緒に……生きよう…な……















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