が海へと飛び込んでから半年。
あれ程捜しても見つからなかった彼女の消息は。
以外な処から知らされる事となる。
それは海軍の『手配書』と云う形で。
その金額に、その名に。
誰もが信じられない思いだった。
『氷の：賞金額、5000万ベリー』
so long6
新聞を取っているナミが偶然発見してしまったその手配書。
自分で淹れた紅茶のカップに震えた手が当たってしまい。
落ちて、壊れてしまったカップの最後の叫びがけたたましく辺りに響き渡る。
どんなに捜しただろう。
どんなに抱き締めてあげたかっただろう。
生きているにしろ、死んでしまっているにしろ。
どうしても見つけたかった。
その彼女の顔が薄い紙の上に印刷されている。
捜し求めた悲しい女性（ヒト）。
面影はあるのに。
間違いなく彼女の筈なのに。
ナミにはソレが同一人物だと。
どうしても思えなかった……
「………フィ……ル、フィ………ルフィ!!」
ナミの悲鳴に近い呼び声に、変わらず船首に座っていた彼は文字通り飛んで来た。
「ナンだ？どうしたナミ」
慌ててやって来たものの。
敵も、敵船らしきモノも見当たらず。
呼んだ筈のナミは微かに震えていて。
口元を押さえたままで。
「ナミ？どうしたんだよ」
薄っすらと、涙を溜めた目。
今にも嗚咽を吐き出してしまいそうな彼女が指さしたのは、その手配書だった。
促されるままに、ルフィはその手配書を手に取る。
手に取って、またルフィも固まってしまった。
そしてそのナミの声に緊迫感を感じたのか。
他のクルー達も、のんびりとはしていたが集まってきて。
固まってしまっているルフィに、視線を飛ばすが。
彼の目はその手配書に釘付けで。
「ナンだ〜、それ海軍の手配書だろ？またルフィの金額でも上がったのか？」
ノンキな声を出しながらやって来たウソップ。
脇からソレを覗き込み、彼も目を見開いた。
「なに、なに？皆どうしたんだよ」
小さなチョッパーはソレが見れなかったのか。
可笑しな態度のクルー達に。
自分も大きくなってその紙を覗き込む。
後は他の誰もが一緒だった。
ただ一人。
やって来ないゾロに対して、ルフィはその手配書を持って行く。
相も変わらず、船尾で日々の鍛錬を繰り返し。
己の力量不足を補う為に。
あの日の事を頭の中から追い出すかのように。
更に過酷な鍛錬を繰り返すゾロに。
「……ゾロ…」
「ああ？ナンだ、ルフィ。またゴキブリでも出たのか？」
「…違う、コレ……」
「コレ？…海軍の手配書か、またお前の金額でも上がってたのか？」
「違う……違うんだよ、ゾロ…」
手配書を片手に持って。
頭を傾け。
唯一見える彼の口は。
唇を噛み締めていた。
その様子に只ならぬモノを感じたのか。
ゾロはようやく重りを置いて。
置いてあるタオルを拾ってから彼の元へと歩んで行く。
そしてルフィの持っていた手配書を手に取り。
見た瞬間。
彼もまた、目を見開いた。
―――……!?
続いて金額を見て。
ゾロはもっと驚いてしまう。
だってその金額は自分とそう大差のないモノで。
まだ一緒に船に乗っていた頃。
それなりに戦っていた事は何度かあった。
しかしソレは海軍が金額を付ける程の戦闘能力では無くて。
何が何だか、彼には理解できなかった。
そして、改めて捜し求めていたの顔を見れば。
もう
ゾロには口を開く事は出来なかった……
―――……ナンて、目ぇ……してやがるんだ…
脳裏に浮かぶ、愛した女は絶対にこんな目はしなかった。
こんな、こんな。
全てのモノを氷り付かせてしまうかのような。
冷たい、冷め切った目は……っ!!
恐らく、戦闘中にでも隠し撮りされたその表情は。
過去の彼女を知る者にとっては信じられないモノだった。
何時も笑いが耐えなかった。
全ての感情が抜け落ちてしまったかのような。
黒い目がキラキラと反射して生きている事を身体中で楽しんでいた。
死んだ魚のように、人を食らう鮫のような濁った目で。
他人を傷付ける事を何より嫌い、自分を犠牲にしてまで誰かを庇っていた。
自ら進んで、海軍を、他人を傷つけまくって。
生きていてくれた事は心底嬉しかったが。
それでも。
それでも俺達はっ…
俺はこんな彼女に会いたくて祈ってたワケじゃない!!
の冷たい、冷めた目は。
誰を映していたのか。
それとも誰も映っていなかったのか。
その紙、一枚では到底分かる筈もなかった……