「……………」
ヒドイね……
これはお前を裏切り続けた報いなのかな
それとも因果応報
自分の行いが自分の元へと戻ってきたダケなのかな……
愛憎・最終回
動かなくなってしまった、愛した女。
散々好き放題やって、泣かせた女。
否、俺の前ではめったに泣かなかったよね。
そこまで俺を気使ってくれていたの?
だったら
余計に悲しいネ……
どうせなら、お前が生きている内に気が付きたかったよ。
考えてみれば彼女ほど俺の心を分かってくれた人間なんて居た事がなくて。
こんな……
心の奥底の本音を見破られるだなんて
俺ってば少しくらい自惚れてもイイのかな?
それ程に俺を愛してくれていた……と
彼女の身体を包み込むように抱けば、糸の切れたような人形のように俺に倒れてくる。
「……っく…っ………」
少し離れた場所から子供特有の高い声がした。
それも泣き声が……
あぁ……
分かってるよ、
お前が何も言えなくなってしまっても、言いたい事くらい分かってる
「っ……めん…さ………ごめっ…なさ……っく…」
泣きながら謝り続ける子供。
この小さな子供ですら、カカシにとっての彼女の大切さが分かったようで。
只、ひたすらに謝り続けている。
優しい優しい、
お前の事だもの
今直ぐにでもこの子供に後を追わせたらヒドク怒るんだろう……?
そして俺が後を追っても怒るんだろう…?
俺も……お前にこれ以上怒られるのはゴメンだよ…
「……帰れ…」
俺の発した言葉に、子供はビクリと身体を震わせて。
「なんっ…で……殺さ、ないの…?」
子供の言葉に苦い笑いが漏れる。
「が助けた命を俺が奪うなんて事……出来ないよ…」
カカシは骸と化した彼女の髪を優しく優しくすいてやって。
その様子に子供は更に泣き続ける。
「その人っ……俺に逃げろって…アンタと同じ……髪の色だから、殺せないっ……て!!」
……バカ………
…バカだよ、お前……
たった…それだけの事でお前は死んでしまったの?
この子供に、壊れた俺の面影でも見てしまったの?
たった……
たったそれだけの事でっ……
お前はっ…!!
カカシは骸を抱く腕に力を込めた。
キツク、キツク抱き締めて。
『苦しいってば!!』と、もう文句を言ってくれない身体を抱き締めて。
再び壊れたレコードのように「ごめんなさい」を繰り返す子供の声を聞きながら
己も泣いていた……
……
………
愛してるよ
昔も今もこれからも……
ずっとお前を愛してるよ………
どの位、そうしていたのだろう……
腕の中の彼女の身体はすっかり冷たくなってしまっていて。
「……、お前の心と身体。…確かにもらったよ」
そう言うとカカシは最後に冷たい唇にキスをした。
そして彼女の身体をその場へ、ゆっくりと横たえる。
死後硬直の始まった身体は当然真っ直ぐに仰向けに寝てくれず、カカシは横向きに下ろした。
「忍の最後は音も、匂いも、形も残さず。…髪の毛の一本ですら残す事なかれ……」
呟きとも、己に言い聞かせているようにも聞こえるそのセリフを言うと。
胸の前で特殊な印を切った。
するとの身体から薄く煙が立ち始める。
その一点から火が見えると、瞬く間に彼女の全身を包み込んで。
「あっ!!」
泣き続けていた子供がソレに気付き、消そうと火の中へ突っ込んで行こうとする。
それをカカシは無言で止めて。
「離せっ…離せよっ!姉ちゃんが燃えちゃう…燃えちゃうよぉっ…!!」
嫌がる子供を無理に押し留めて、燃えている彼女を見る。
「……これが忍の最後だよ…。も上忍だったんだ。敵国の知りたい情報は幾らでもある。
そんな奴等に切り刻まれるよかマシだろう……?」
「だからって……せめて自分の里に帰すくらい!」
「里に帰っても同じ事だよ。どっちみち忍には墓なんて無いんだ……」
「………そんな……」
「慰霊碑に名前を刻まれるだけ……。後はこの額当てしか残らないんだ」
言葉を重ねるカカシに子供は打ちのめされている。
「……大丈夫だよ…だってこうなる事は百も承知だ」
そしてソレは己にも当てはまる事……
忍は道具。
それ以上でも無く。
それ以下でも無い。
これが現実。
二人は灰になっていくの姿を見詰めるしかないのだった……
全てが燃えきった後。
骨すらも灰となってしまったソコへ歩み寄る。
そして再び胸の前で印を切る。
すると突風が起こり、残っていた灰すらもが風に運ばれていく。
本当にナニも残らぬ程に……
カカシは無言でその地を見詰める。
少しすると彼は子供に向き直り。
「じゃあな」
一言、言い残し…消えた。
子供もソコを数秒眺めると、涙の跡を腕で拭って里への一歩を踏み出した。
後に残るは優しくて悲しい女の温かい思いのみ。
〜END〜