【この夢を読むにあたっての注意点】
*作中に出て来る映画を管理人は見ておりません。
なので映像の描写は物凄く適当ですので、どうぞ信じないでやって下さいませ。
加えて突っ込みはご勘弁下さいまし。
*このお話は『戦争』を少なからず題材としております。
そういうお話がお嫌いな方はブラウザバックをお勧めします。
お話の中に出て来る主観は人それぞれ、作者個人の考えとスルーして下さい。
*尚、少々殺伐とした表現等が出てきます(例:人殺し等、命に関する事)。
管理人は命はとても大切なものと思っておりますので、そこの所は勘違いなさらないで下さいませ。
*そしてコレ、最重要。
最悪、このお話は夢になるか分かりません。
こんな殺伐としたお話になる予定ではなかったのですが、流れ上、止む無くこんな風になってしまったのですが。
可愛らしい夢をお望みのお客様、ホノボノをお望みのお客様はブラウザバックを激しくお勧めします!
(カカシくんはこんな事しない等の苦情はお断りします〜。最初に断っておきますね)
そして最後に全ての戦争犠牲者の方達のご冥福をお祈り致します。
長々と失礼しました。
全ての項目に大丈夫だと思われる方はスクロールしてやって下さいませ。
それはカカシくんがコチラの世界に来てから暫く経った頃に起こった出来事だった
此方側とあちら側の常識の違い
歴史の違い、文化の違い、不思議と思う事の違い……生き方の違い
そんなのはアタシが一番、理解してなければならなかったのに
今まで生きてきた中で培われた彼の常識と
此方側の世界の常識とでは明らかな差がある事を失念していたアタシの責任でもある
悲しい、悲しい思い出の日……
I had enough...
のんびりとした夕食を済ませた後。
カカシくんは最近はまった九時くらいから始まる洋画を見る為にテレビの前のソファにゆったりと座り。
アタシはお風呂へと入るべく着替えを持って浴室へと向かった。
あちら側の世界とは全く違ったテレビの内容に、最初の頃はそれこそどんな番組でも見ていたカカシくん。
それこそお子様専用と思われる、某教育テレビから始まって。
朝のニュース番組、お昼のみ○さんの番組、奥様ご用達の昼メロ、そして夜のドラマに結構な確立で入る洋画まで、と。
(オヤジくさいと云ってはいけないよ?)
この世界の事を知りたいのならば、バラエティを見れば一発さ〜、何て責任のない言葉を云ったアタシも悪かったのだが。
気が付けば、カカシくんは立派なテレビっ子になっていた……。
しかしそのオカゲなのか、彼は今では立派にこの世界の情報を吸収する事が出来たようだ。
………多少、おかしな所があるのはご愛嬌と云う事にしておこう…
そしてこの家では新聞などと云うモノは取ってなくて。
今日のゴールデ○洋画劇場が何を放映するのか知らないまま、アタシはお風呂へと行ったのだった。
女であれば、風呂に入ると云う行動は多かれ少なかれ時間が掛かるワケで。
アタシも多聞に洩れず、一時間と云う時を風呂に費やすタイプだった。
ゆっくりと浴槽に浸かって、のんびりと身体を洗ったり頭を洗ったり。
見ている映画がツマラナイとカカシくんが乱入する事もあったが。
どうやら本日は来る気配はないようだ。
ちょっとダケあの裸体が見れない事を残念に思いながらも(だってホントに凄い均整のとれた身体なんだって!)
風呂を上がって、タオル片手に頭を拭きながらリビングに戻れば。
カタとも音を立てず、身動き一つするでもなく、画面に釘付けになっているカカシくんが居た。
どんなに面白い映画だろうが、アタシが出て来れば声くらいかけてくれるのに。
今日のはそんなに面白いのか?なんて思ってテレビに視線を向ければ。
少し前に公開されていた洋画が流れていた。
自分には、その昔日本が仕掛けた急襲の所為で迎えた悲劇の恋人達のお話くらいにしか認識されていなかったソレ。
だって何故に日本人である自分が悪者として扱われ、描かれる映画を見なければならないのか、と。
少々、穿った見方をしていた自分は宣伝で感動しましたとか云っている同じ国民を冷ややかな目で見ていたのは未だ最近の話で。
おぼろげながらも流れてくる話の内容と言葉のキーワード、映像にそれがその映画なのだと云うのを教えてくれた。
飛行機が落とす爆弾に翻弄される人々。
爆風に軽々と吹き飛ばされていく葉っぱのような人間達。
次々と簡単に奪われていく数多の命。
傷付き、倒れていく様子が鮮明に刻々と映し出され。
上から見下ろすかのように飛ぶ飛行機は、そんな彼等を嘲笑うかのように更なる悲劇を齎して行く。
一般人のアタシですら見たくないと思える程のリアルな映像を、カカシくんはどんな思いで見ているんだろう。
実際に人を殺した事のあるカカシくんはどんな気持ちでその映像を見ているんだろう。
こんなにも簡単に人の命を奪っていく様を映し出した画面を見ながら、彼は何を思うのだろう。
『暗殺戦術特殊部隊』と云う木の葉の里で最も薄暗いセクションに所属していた彼は、きっと沢山の命を散らしてきた筈だ。
己自身もその両手も真っ赤に染めて……
優秀と云われれば云われる程に、それは人殺しの術が上手いと同義語で。
強くなければ生き残れない人生だったから。
暗部と云う、里の中でも最高ランクの任務をこなす彼等が行うソレは当然のように『人殺し』が付いてまわって。
そんな所に所属して、ビンゴブックにまで載るようになって。
同じ里の人間にですら尊敬と畏怖を織り交ぜた呼称で呼ばれ、エリートと呼ばれた忍のカカシくん。
アタシでは想像も出来ないくらいの世界で、己の生死を掛けて戦ってきた彼がこんなモノを見てどう思うか。
そんなの、良い事なんて思うワケないじゃない…っ
呆けたようにして、画面を食い入るようにして見ていたカカシくんの横を通り抜け。
おもむろにリモコンを持ってチャンネルを変えた。
「この映画、アタシ嫌いなんだ…、悪いけどチャンネル変えるね?」
変えてから断っても、順番が違うだろうと云う突っ込みももらえず。
彼に視線を向ければ。
顔は未だテレビの方を向いていて、視線も画面を見ているのだろうが。
その目がテレビを見ていない事はあきらかだった……
正直、彼が何を考えているか分からなかったが。
少なくとも、向こうに居た時の事が彼の脳内を占領している事だけは分かって。
苦々しい思いに駆られる。
これはアタシの所為だ。
多少、洋画が好きなアタシがカカシくんが見ても平気な種類とダメな部類がある事にも気付かなかっただなんて。
『コチラ側に来ているカカシくん』と云う情報を持つアタシが見せてはいけないモノを見せてしまった完全なる落度。
言い訳すらもが浮かんでこない。
「……カカシくん…」
無意識にだろうが、組まれた両手。
アタシが知っている本の中の印象的な知識には少なくとも彼が一人の少年の命をその手で摘み取った事実があって。
この似非平和に塗れている世界では、人を殺した事のある人間は極々稀なのだ。
けれどカカシくんが住んでいた世界では、同僚も上司も仲間もその経験をした人が半数以上を占めていて。
その中でも『エリート』なんて呼ばれていた彼の手腕はとても高価なモノ。
真っ赤に彩られた手が売り物で。
高値で売れる自分の器量、人殺しの上手さ、人を騙す事の上手さ。
この世界では全く不必要と思われるソレ等を当たり前のように必要とされ、行ってきた彼。
コチラとアチラの常識の違い。
アタシ個人がカカシくんのそう云う部分を感じたのは本当に出会った最初の頃だけだったから。
ここ最近はこういうのんびりとした時間と空間を楽しんでいるように見られてたから。
『平和』を、この世界でそんな事をしなくても生きていけるこのゆったりとした時間をアタシと過ごして。
彼の纏う雰囲気がリラックスしている事を知っているアタシは……
そんなモノをこんな場所で、少なくともこういう事とはかけ離れているこの場所で見てしまった衝撃は…
一体、……どれくらいに彼を傷つけたのだろう…
自然と寄ってしまう眉間の皺。
風呂上りで温まっている筈の身体がどんどん冷えていって。
それでも、何もしないよりかはマシだと思え。
アタシは以前カカシくんがしてくれたのと同じように…
彼をそっと抱き締めた
すると触れ合った場所から感じる、一瞬だけの大きな揺れと小刻みに揺れる振動。
あぁ
こんなにも怖かったのか……
こんなに、…こんなに表に出てしまう程に
鉄壁だと思っていた彼の精神は、実はこんなにも脆くて
あの場所でない、異世界のココでは彼にとって自分がしてきた事は
そんなにも恐ろしい事だ、と……知ってしまったのか…
テレビからはロクな意味も見出せない内容の薄いバラエティの番組が笑い声を流してくるが。
住人達には届かない。
白けるような気分が増し、いっそのこと電源を切っておけば良かったとも思うが。
既に時遅く、アタシの腕は愛しい存在が守られるかのように包まれている。
リモコンを取りに行くなんて問題外だ。
アタシ達は暫く、そうやってお互いの体温を分け合って抱き合っていた。
抵抗する素振りを見せようが。
引き離そうとされようがお構いなしにそうやって引っ掴んで抱いてたんだ。
彼が大人しく諦めるまで、今の状態では嫌がるだろう他人の体温を押し付けて。
アタシの意思を押し通したんだ。
そうして、少しして。
カカシくんは、そうっと。
恐るおそる、と手を上げて。
アタシの身体に触れてきて。
愛しくて、悲しくて、哀しくて、可哀相で。
こんな事しかできない自分が悔しくて、情けなくて。
こんな状態になってしまった彼をどうにか慰めたくて。
見せてはいけない部類のモノを見せないようにする手立てを何もしなかった負い目が痛くて痛くて。
今更ながらに、何も見させないように彼の頭を掻き抱くようにして胸の中へと閉じ込めた。
するとカカシくんは蹟をきったかのようにアタシに縋りついてきて。
苦しいくらいに抱く腕に力を入れた。
「………ねぇ……、さっきのって…なに?……」
低い、掠れたかのようなくぐもった声で。
聞き取れないかのような音量で吐き出された言葉。
それは何故か震えているような、泣いているかのように聞こえて益々アタシの罪悪感を煽る。
「……戦争のこと?…」
自然と自分の声も抑えたモノになって。
出来るだけ優しく聞こえるように、と努力して。
けれど、彼が尋ねてきたのは先程見ていた映画の内容で。
尋ね返せば、肯定の意味を含んだ頷きがアタシの腕から伝わってきた。
「な…んで、………あんな…簡単に……」
そう、映画の中に出て来た映像は余りにも簡単に建物を土地を破壊し、そして人の命を散らしていった。
発展していった文化の違い、必要とされ生み出された兵器の違いと云ってしまえばそれまでなのだが。
「こっちの人はね、……カカシくん達のような力を持っていないの。
だからコチラの人達は自分達の国を守る為にああいう兵器を生み出して侵略してきた人達に対抗したのよ」
破壊だけが目的で作られたのではないのに。
それでも結果は戦争と云う名の破壊行為に使われて。
確か、カカシくん達は『忍者は里の道具だ』って云っていた。
けれど血の通っていない冷たい鉄の集合体ではない人間の彼等が『道具』になりきれるワケがなくて。
結果、あの少年と男の人は人間らしく死んでいった。
そしてその意味を最も理解しているであろうカカシくんですらこうなるんだ。
「カカシくん達も里を侵略してくる人達から守るべく戦ってたんでしょう?
里の為に、里の存在の為にその手を使ってきたんでしょう?」
―――大丈夫、…誰もあなたを責められないから……
「でもっ!……でも俺の手はそんな綺麗事だけじゃ補えきれないくらいに汚れてるんだよ!!
真っ赤に……真っ赤に染まってて…」
取り乱したようにアタシから身体を離し、泣きそうに顔を歪めて叫んだ彼。
それに縋るように、せめて手だけでも繋いでたくて拒まれるのを承知で。
彼曰く、真っ赤に染まった手を掴んだ。
幸いなのか、彼は少し顔を歪めただけで振り払おうとはしなくて。
代わりに昔話を始めた。
「最初に人を殺した時は呆然としちゃって……夜も眠れないくらい怯えたけど……
けど二度、三度と繰り返してくとどんどん感覚が麻痺していって……殺されたのが自分じゃないって事に安心して
その内それを楽しみ始めて……どんなヤツが相手なのか…、どんな風に戦うのか…
どんな術を俺にコピーさせてくれるのかが楽しくなって………それも過ぎれば…最後には…人を、殺す事に…」
―――…何も…、何も感じなくなってた……
歪めた顔を無理に笑みの表情に変えて。
自分を蔑んで。
どんなに酷い事をしてきたのかを改めて確認するかのようにアタシに聞かせ、自分に言い聞かせているように見えて。
こんなにも傷付いて、……傷付いて傷付いて、血を流して、痛がって、苦痛を訴えてくる人を見た事がなくて…
数多の命を奪って、それは即ち殺して殺して殺しまくったのと同じで。
余りにも多くの人間を殺してしまって。
大事な人を守れずに、大事な人は誰一人として居なくなって。
大切な何かが指の間から零れ落ちていくような、……あの例えようもない喪失感を、無力感を彼も体験していて。
そして大事なモノを守れないクセに任務では人を殺して里を守って。
友の名の刻まれた慰霊碑を、大事な師の顔岩のある木の葉をそれでも守る為に。
心を殺し、感情を殺し、己を殺し。
自分を殺し尽くしての結果がこれ……
異世界へなんて来てしまった所為で。
平和に塗れた生ぬるい、こんなトコに来てしまった故にこんなにも彼は後悔している。
「だって怖いだろう…?そう思ってるんだろう?…こんな……こんな殺人鬼………怖いと思ってんだろう?!」
過去に囚われ、自我を失ったのか、カカシくんが掴む手の力は骨が軋みを訴える程になって。
苦痛に顔を歪めながらも、否の意思を伝える為に顔を振れば。
「嘘だっ!! ……幾ら俺でもあんな風に一辺に殺せはしないが、それでも確かに殺してる!
……何人も、…何十人も何百人もっ!! 俺の手はもう血塗れで…っ………本当は逃げたいって思ってんだろう?
…こんな人殺しとは一緒に居たくないって思ってんだろうっ?!
出て行けって思ってんだろう!! ホントの事云えよ!!」
あぁ……かみさま…
たすけてください…
どうか…、どうかこの人をたすけてください…
「云えったら!! 本音を云えよ!どうせ人殺しだって思ってんだろう?!
俺が怖いんだろう?! 早く云えったら!!」
アタシでは救えないかもしれません
こんなにも傷付いた人を、苦しんでいる人を見た事がありません
自分の傷ですら治せないアタシに、彼を救う事なんて出来るワケがありません
どうしたら良いのかさえ分かりません
自分の力でどうにも出来ない事ならあなたに頼むしかないでしょう…?
「………そんなに云いたくないの?…俺、本当に人を殺す事に何の罪悪感も感じてないんだよ?」
だから……
アタシが唯一持てるこの命をかけて願いますから
だからこの人を救ってください……
薄い、それでも本気の殺気を纏った彼が。
暗い、暗い闇をその色違いの瞳に住まわせて。
アタシの目の前で、その目でアタシを睨みつけて。
アタシの手を掴んでいた手を解いて。
ゆっくりとアタシの首に絡みつけた。