今日も、今日とて。
忍家業に休みなんて無くて。
特に上忍ともなると休みなんてモノは無いに等しいの。
だからこんな振って湧いてきたような休日は。
とても貴重なモノなのよ。
休暇
なぁのにさー……
久しぶりの休日を満喫する為に。
朝から情眠を貪っていたにも係わらず。
アタシの身体に引っ付いたコレは何なんだろうね…。
「……カカシ〜、頼むよぉ…」
「え、何が〜?」
アタシの久しぶりの休日を何処から聞きつけたのか。
コイツは朝っぱらからアタシの家に侵入してきて。
寝ていたアタシのベッドに入り込んで。
アタシの身体を抱き込んでたりする。
「お願いだから休ませてよ、久しぶりの休暇なの知ってんでしょ?」
「久しぶりの休暇だからこうやって来てんでしょ?」
あ〜、どうしてコイツってば。
こう云えばああ云うタイプなんだろうなぁ…。
何気に長い付き合いなれど。
長い幼馴染期間を経て恋人になったんだけど、ね。
いえね。
『写輪眼のカカシ』と云えば。
その名を他国に轟かせ。
ビンゴブックにまで名前を刻まれる優秀な忍だってのは知ってるの。
うん。
本当に知ってるだけなんだけど…。
だってコイツとは長い間幼馴染をやっていたから。
暗部に入る前から知ってるワケで。
そうなると『写輪眼のカカシ』だなんて云われてもイマイチ、ピンとこないんだよね。
それにこうやってヒトのベッドの中に入り込んで来る所なんて。
昔のまんまだし。
「ねぇ、お願いだからもう少し寝かさせてよ〜。本気で眠いの」
「うん、イイよ。寝て」
「はい?」
えっとぉ……
この儘、寝て下さいって事は。
「カカシ……アンタ今日の任務は?」
恐る恐る聞いてみれば。
「ん?今日の任務はお休み〜♪」
どうだ、と云わんばかりの笑顔で返してくれる。
「…………さいでっか……」
「なぁに?俺と一緒の休みが嬉しくないの?」
「そんな事は無いけどさ、アンタもたまにしか休みないんでしょ?こんなトコでアタシに構ってないで自分の家で休んだら?」
そっちの方が休めるだろう、と。
至極、当然の事を云ったつもりが。
アタシの抱っこちゃん人形の如く纏わりついた人物からは。
Booイングでも出そうな顔で睨まれる。
「だって自分家に居たって居ないでしょ?それに俺はの傍で休みたいの」
真顔に近い顔で(と、云っても相変わらずのマスクで見えないんだけど)云われて。
男に免疫が無いワケじゃ無い自分の顔が少々、赤面してしまうのを感じる。
これが恋人同士の会話なのか、なんてシミジミ感じていると。
潜り込んでいる男の手が怪しく動き出す。
「って、オイオイ。その手はなぁに?」
「だって会うのすら久しぶりなんだもん、それがこんなに密着してんのよ?俺、我慢出来そうにないよ」
密着してるのはお前がアタシのベッドの中に入って絡み付いてきてるからだよ!
何て文句が口から飛び出しそうになるが。
それでも久しぶりなトコは合ってると思い。
その手を止めるような言葉が出てこなくなった。
「そう云われれば確かにそうね。で、カカシ君は溜まってしまった欲望をどうにかしたいのね?」
「………溜まった欲望って…お前ねぇ……」
「何よ、本当の事でしょ?」
「そりゃそうだけどさ、もう少し雰囲気ってモンを」
「そう云うセリフを云うんだったら、その動いてる手を止めてからにして欲しかったな」
説得力ないよ?
なんて云って、笑いながら見詰め合えば。
カカシはとても楽しそうに笑って。
久しぶりに見たカカシの笑顔。
ソレがやっぱり可愛くて。
アタシは思わず抱き付いていたカカシの身体に圧し掛かっていった。
「ね、そのマスク外して?」
指を引っ掛けてマスクを外し。
「それとコレも」
写輪眼を隠すように付けられた額当ても外して。
「ツイでにこの無粋なベストと服も脱いでからいらっしゃいよ。準備悪いわね」
先程まで情眠を貪っていた為に温かい手で彼のベストのジッパーを下げ。
脱がし、服の隙間に手を突っ込んで中に侵入させる。
「イヤン、ちゃんってばすっかりソノ気?」
「ほら、バカ云ってないでシタイんなら脱ぎなよ。それとも今日は拘束プレイでもお望みなの?」
そう云いながらの手には。
何処から持ち出したのか、敵の忍を拘束する時に使う荒縄がしっかりあって。
「それはちょっと遠慮したい、かな?」
それを目にしたカカシは。
微妙に引き攣る笑顔を向けてそう断ってきた。
「あら、残念。縛られたカカシを襲うだなんて滅多に出来ない経験、体験したかったんだけどな」
「そんな体験しなくてイイから」
持っていた荒縄を。
さり気無く床に落とさせて。
カカシはキスを強請った。
それには仕方がないか、と思いながら応えてやる。
未だ、朝の雰囲気が抜け切らない部屋に。
荒くなる彼等の呼吸の音が響きだし。
それは暫くの間、続いた。
事を終えて。
汗に塗れた身体をくっ付け合っていた二人だが。
流石にその儘では気持ち悪かったのか。
恋人同士らしく。
二人で風呂へ行き。
洗いっこしながらのぼせる位まで風呂場でいちゃついて。
やっとあがった風呂。
タオルで髪を拭きながらソファに座るカカシへ水の入ったペットボトルを投げて。
「何か食べる?」
「うん、流石にお腹空いたかも」
一日、のんびりと過ごす筈の予定が。
カカシの朝昼兼用の食事なんて作っていた。
当初の予定とはまったく掛け離れたソレなれど。
それでもこんな一日でもイイか。
なんて思える自分が居て。
今度休みが取れたら真っ直ぐにカカシの家に押し掛けて行こう。
等と決心しているがいた。
ある恋人達の休日の一日。