最初から勝負の先なんて見えていた





否、そもそも勝負にすらならない
同じ土俵の上にも上がれていなかったのかもしれない






アタシの恋は






始まったその瞬間に終わりを告げた……














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if...

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アタシはこの船に一番最後に乗ったクルーだった。






ロビン姉さんよりも、チョッパー君よりも、今は居ない某国のお姫様、ビビよりも。
誰よりも、誰よりも後に、…乗った。






仮に、『もしも』が有り得たら。

現実の世界では有り得ない、『もし』の世界があったなら。

















『もし』仮に彼女よりも先に出会っていたら。

『もし』仮にアタシが彼女よりも可愛かったなら。

『もし』仮に彼女よりも魅力的だったなら。

『もし』仮にアタシの頭が彼女並みに良かったなら。

『もし』仮にアタシの心が彼女よりも綺麗だったなら……

















考えたって仕方の無い。
現実味を帯びない、もしもの世界。

それでもその『もしも』の事を考えられずにはいられない。

















『彼』の隣で楽しそうに笑っているのはアタシ。

『彼』の腕を取って、街で買い物をするのもアタシ。

『彼』に特別なデザートを作ってもらえるのもアタシ。

『彼』の腕に抱かれて、熱い夜を過ごすのもアタシ。

『彼』はアタシの『彼』で、皆の前で堂々とイチャ付けるのもアタシ。

















それが現実だったなら


















どれだけ幸せなんだろう……






































でも一度、現実へと目を向ければ






視界に映るのは






楽しそうに笑う



















ナミちゃんとアタシの好きなヒト……








































何時から好きになったのか。
そんなの明確には覚えていないけど。

出会った瞬間から恋に落ちたと云っても良い位で。






女好きなサンジ君は、当然のようにアタシへと声を掛けてきて。
それが縁でアタシはこの船へと乗ったんだけれども。






こんな気持ちを抱く位なら。

声なんて掛けてもらわなければ良かった。






一瞬、そんな事が頭の中へと浮かんでくるが。
それでも彼を愛しいと思う気持ちには負けてしまうのか。

今では彼の居ない生活が考えられない、何て。

















自分の彼氏でもないのに。

他人の彼氏なのに。


















海の上に浮かぶ、このGM号からは。
船が進む為の潮騒しか聞こえず、自然と耳に飛び込んでくる彼等の楽しそうな笑い声。

例の如く、歯の浮くような気障な科白をこれでもかって位に彼女へと捧げて。
彼女の方も、半ば呆れながらも楽しそうにソレを聞き流していて。






少し離れたパラソルの下に居るアタシの事等、気付きもせず。

彼等は楽しそうに笑っている。


















彼が彼女へと笑いかけるなら、何も見たくない

彼が彼女の為へ褒める言葉を云うならば、何も聞きたくない

そんな彼等へと暴言を吐きそうなこんな口、無くなってしまえば良い



















きつく、きつく眼を閉じて。
何も聞こえないように脳内を空っぽにして。

現実から逃げるように、居たくないかのようにしてチェアへと寝そべって。

夢の世界へと自身を追いやった。








































「ねぇ、。たまには女同士で出掛けない?」






ナミちゃんのそんな一言から始まった、今回の上陸は。
ロビン姉さんとナミちゃんと、アタシで服屋やアクセサリーを見ようと云うモノだった。

確かにそういう事は女同士の方が気安いし。

何より以前サンジ君と出掛けた時に、何を着ても付けても似合うからと云われてらしくって。
彼とは一緒に行きたくないそうだ。






彼と二人っきりで出掛けた事なんて一度も無いアタシにとっては贅沢極まりないその言葉でも。

『彼女』であるナミにとっては日常のホンの1コマだ。






正直、アンタなんかとは一緒に行きたくない、と喉まで出掛かった言葉を無理に飲み込んで。
浮かべたくない笑みを、表情を引き攣るように作り上げ。

「うん、たまには女だけでのお買い物も良いよね」

と、返した。






何が悲しくて、好きな男の彼女と一緒に出掛けて買い物なんかを楽しまなくちゃならないのか。
脳内では思い付く限りの悪態を付いていたが。

口から出る言葉はどれもこれもが正反対で創られた言葉達で。

自分が二重人格のように思えるようなソレに。
今では慣れたモノなのか。

彼女に覚られる事なく実行して。


















そして、その悪夢のような一日が始まった……



















「じゃあ行って来るねぇ」

何て、とても楽しそうに笑って。
涙を大量に流しながら見送るサンジ君へと手を振るナミ。






「あらあら、航海士さんはコックさんを困らせるのがお好きなようね」






何時までも見送る彼の事を、いっそ哀れと思ったのか。
ロビン姉さんがそんな言葉を吐いて。

















二人の仲を見せ付けられるかのようなソレに

アタシの腹の中は煮えくり返りそうになっていた


















しかし口から飛び出た言葉は。

「だよねぇ、ホントはラブラブなくせにね」

















表面上は至極ニコヤカに。

胸の内では吐き気を催す程の嫌悪感で一杯にして、その言葉を吐いた。

















街への道のりを、のんびりとお喋りしながらゆっくりと歩いて行って。
その殆どをサンジ君とナミの仲の良さに惚気られて。






ロビン姉さんにとっては、頭の良いナミをからかえる楽しい一時。

でもアタシにとっては、決して自分では知りえない一時の事を幸せそうに語られる地獄のような一時。

















何でアタシはこんな事を承知しちゃったんだろう。

何でアタシは今日、出掛ける事を許しちゃったんだろう。






自分にとって、決して良い時じゃ無いなんて。
考えなくても分かりきってた事なのにっ……









































暫く街中の服屋や雑貨なんかを見て回って。

そしてある一角に通りかかった時。
ある意味、頼みの綱のような存在のロビン姉さんが近くにある本屋に寄りたいから。
ちょっとだけ二人で見て回っていて、と。

死刑宣告のようなソレをした。






「ったく、しょうがないわねぇ。直ぐに来てよね?、行くわよ」






一瞬、アタシもその本屋に残ろうかと本気で考えたが。
よくよく見れば、その本屋は専門書しか扱っていない、特殊な本屋で。

彼女のようなヒトしか利用しないであろうソコに。
何の知識もないアタシが残る等と、そんな不自然な事は出来なくて。

本当に、本当に仕方無く、ナミとその場を離れた。


















今日の買い物は特に目的らしい目的も無く来たモノだから。
そんなに多くの荷物を買ったワケでは無くて。

ナミが片手で事足りるようなソレを手持ちぶたさに振り回しながら歩いていると。

運悪く、その荷物が通りかかった男にぶつかって。
お約束のように揉め事へと発展していった。






「だからゴメンって云ってんでしょう?!」

「それがヒトに対する謝り方なのかよ!」

「誠意がねぇんだよ、誠意がっ!!」






聞いてれば、コイツ等頭オカシイんじゃないか?と思えるような阿呆な科白を吐きながら。
脳みその足らないような男達とナミちゃんは罵り合ってて。

だって誠意の欠片も無いようなヤツ等に誠意が無いと云われても、ね。
可笑しくて笑っちゃうって。






でもさ、そろそろどうにかしないと拙いよ?

幾ら頭の悪そうなヤツ等だからって相手は数多の男達なんだから。
力で来られたら敵わないんだよ?

戦闘に慣れたアタシ達だからって過信は良くないってのに。






「きゃぁっ!何すんのよっ!!」






ほら、云わんこっちゃない…






細い、何時も彼の手を取る腕を無骨な男達に掴まれて。
その細身の身体を拘束されて。






「ちょっと、ナミちゃんに何してんのよ!離しなさいよ!!」






頭の中では、どうぞ好きにしちゃってよ、と悪魔の部分が嘲り笑う。






「良く見りゃ、可愛いツラしてんじゃねぇかよ」

「こりゃ、身体で謝ってもらった方が良いんじゃねぇのか?」






下品な声で笑う男達に。

そうね、どうぞ存分に可愛がってやりなさいよ、と心が訴える。






「そんな事して無事でいられるとでも思ってんの?! ナミちゃんの彼氏はとっても強いんだから!!」

「はっ!そんな居ねえ彼氏なんて幾ら強くったって意味がねぇや」






一応、心配してみせるアタシに。
ナミちゃんは彼の事を思い出したのか、途端に身体に触られるのを嫌がって。


















それはそうだろう






連日のように可愛がってもらってるんだもんね

その身体に他の男が触れるのなんて、寒気がする程嫌なんだろうね


















道行く人達は、男達と係わり合いになるのが嫌だったのか。
皆、見ぬ振りをして足早に逃げて行く。

どんどんと閑散になっていく通り。






流石にこの状況はヤバイと思い。

自分だけでも逃げようか、何て。

一瞬だけ考えてしまったが。
















脳裏に横切っていったのは愛しいヒトの優しい笑顔。
















『もし』ナミちゃんがこの男達に汚されたら?

『もし』此処でアタシが逃げて帰ってしまったら?


















『彼』は酷く悲しむ?

『彼』はアタシを許さない?


















此処で汚されるのが『アタシ』だったら?

サンジ君は『アタシ』を見てくれる?




















脳内でそんな疑問と推測と葛藤が鬩ぎ(せめぎ)あって。

恋に溺れたバカな自分は、正常な判断を下せなくなっていたのかもしれない……











































「やめて、やめてっ!ナミちゃんを離して!! 女が欲しければアタシが代わりになるから!!」











































気が付けば






本当に自分が発した言葉だったのだろうか






そんな言葉を、吐いて、いた……









































「……ほう?…お前さんがこの姉ちゃんの代わりに相手になってくれんのかい」

「見てみりゃ、この女も結構可愛いツラしてんじゃねぇか」






男達は厭らしい目付きでアタシの顔や身体を嘗め回すように見て。






「なっ…何、バカな事云ってんのよ!! 」






そうよ、そんな事アンタに云われなくても分かってるわよ






「身代わりを自分で云って出る程この女が大事なのか?」

「えぇ、大事だわ」






そう、大事なのよ
ナミちゃんを汚されて苦しむ彼の顔なんて見たくないのよ

それ程に『彼』が、大事なのよっ!!






「だからアタシで我慢してちょうだい」






嫌味な笑みを浮かべたリーダー格の男がアタシへと歩み寄って来て。

無骨な指でアタシの顎を掴んで覗き込んでくる。






「震えてやがるクセに、その眼………気に入った」






ソイツはアタシの肩を乱暴に掴んで自分へと引き寄せる。






震えてるなんてしょうがないじゃない

だってアタシはまだ誰とも身体を交わしていないんだから……






「オイ、そっちの女ァ、適当なトコまで連れてって離してやれ」






アタシの提案を飲んでくれた男が、部下なのであろう男達へと指示を出し。
ナミちゃんを何処か遠くへと連れて行かせようとする。















あぁ…
それなら大丈夫でしょう?






その位の人数だったなら、強いアンタの事だもの。
直ぐに倒して逃げれるでしょう?






そんな不安そうな顔しないでよ。
そんな悔しそうな顔を、心配そうな顔なんかしないでよ。

アタシは決してアンタの為に身体を張ったワケじゃないんだから。

アンタに気にされる覚えなんて無いんだから。














男達に有無を云わされず、連れて行かれるナミちゃんは。
抵抗をしながらアタシへと静止の言葉を投げかけ続けるが。

アタシはその言葉に従うつもりが無い。

精々、アンタは綺麗なままの身体でいなさいよね。

















サンジ君を悲しませないように……

















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