…………ってえ!!
此処は一体何処だぁぁぁぁああっ!!!!!
Never let you go
任務の帰り際に敵国の忍の襲われて。
ソイツ等を滅多切りにしている最中の事だった。
返り血を多々浴びて、血に塗れた敵国の忍の喉元を掻っ捌いたクナイを未だ手に握った儘。
アタシは突然宴会をしている席へと飛んだ。
しかもそのド真ん中で人様の膝の上へと、だ。
突然、忽然と湧いて出て来たアタシに周囲は目をひん剥いて驚いている。
あぁ…そりゃそうだろう、アタシだって驚いているんだから。
しかも戦闘真っ只中だったもんで血塗れだし…
そしてその驚きが過ぎ去った一瞬後…
「………誰?…お前……」
そう云ったのは失礼にも膝をお借りしてしまっている目の前の赤い髪の男。
そんでアタシの頭に銃を押し付けているのは周りに居た多数の男達。
まぁ、こんな血塗れの女が武器を片手に突然現れたらそういう風な扱いを受けるのは至極当たり前だ。
そう、至極当然、当たり前、正論、間違い無い。
……でもさ…
アタシってばこんな扱い受けて黙ってられる程おしとやかな性格じゃないんだな。
武器を向けられたら逃げろ。
これ常識。
だからアタシは逃げた。
忍の足なら当然の動きなんだけど、彼等にはソレが見慣れないモノだったのか。
先程忽然と現れたように再び忽然と消えたように見えたようで。
狼狽しきった声と動揺が見て取れた。
否、アタシは只短に近くの木の枝へと移動したダケなんだけどネ?
そうそう、それでアタシは任務の途中で戦闘中で。
一刻も早く里へと帰りたいのよ。
こんなトコで油売ってるワケには行かないの。
しかもさっきの敵国の忍がまだ居るかもしれないのにこんなトコで宴会だなんて暢気な奴等ね。
………って、あれ?
奴等の気が……無い?
そんなバカな!
アイツ等の目的はアタシの持っている密書な筈で。
コレを奪うまで決して諦めるような奴等じゃ無いのに。
何で居ないの……?
それに良く見れば、周りは里へと続く見慣れた森じゃない事に気付く。
敵の忍の罠に嵌まったのか?何て一瞬考えるが。
アタシにあっさり殺される位の力量から考えて、こんな事が出来るとは思えない。
だったら……アタシは一体……
何処に居んだ?
取り敢えず場所を移動して、星の位置を見て、里と思われる方向へと走って行く。
後で騒ぎ出した彼等には悪いんだけど、ちょっとそれ所じゃ無くてね。
纏わり付く血糊を振り払い、ホルダーへとクナイを仕舞い。
全速力で走り続けると、有り得ない匂いが鼻をつく。
潮の香り?!!
木の葉の近くには海なんてないぞ!!?
兎に角、急いで急いで走り続け、見たモノは……
果てし無く続く海と、大きな船
天国のお父さん……お母さん…
アタシは今、……何処に居るんでしょうか…?
敵の忍に殺されたとか、幻術に嵌まった覚えは無いし。
かと云って、妙な薬を嗅がされた覚えも無ければ常用者でも無いし。
頭が可笑しくなってトンでるワケでもなさそうだ。
だってこの海の水の冷たさと、感触、匂いは本物で。
身体中に纏わり付く、嗅ぎなれた血の匂いも感触も本物だし。
ど、………どうしよう…
コレって現実……だよ、ね?
アタシってば、何処かに………飛ばされ、た…のか?
のか?のか?のかっ?!
此処は何処じゃぁぁぁぁあああっ!!!
って、パニくるのは後にして。
兎に角状況を整理しよう!
えっと、任務の帰りで。
密書を持って帰ってる途中で敵国の忍とかちあって。
そんで戦闘になって、バリバリ殺ってる所……までは普通だったのよ、うん。(普通か?)
そしたら突然こんなトコへ……
何で?どうして?どういうワケで?!
アタシは火影様へこの密書を渡さなきゃなんないのにぃっ!!!
はぁっ…はぁっ…はぁ……
取り敢えずさっきの人達のトコに行って色々聞いてみようかな……。
来た時とは正反対のように力の無い足取りで、先程の宴会をしていた場所へと戻って。
未だざわついている彼等を木の上から眺めて見る。
どうやらアタシの事で騒いでいるみたいだが。
来た時に膝をお借りしちゃった赤い髪の人を中心に何か喋ってる。
そこへ。
「……あのぅ…」
恐る恐る声をかけてみると。
「あっ!さっきの女だっ!!」
アタシに気付いた一人の男が指をさして叫んだ。
……失礼なヤツだな…
「何しに戻って来やがった!」
「お頭の首でも捕りに来たのか?!」
「お前ドコのモンだ!」
……五月蠅いなぁ…
口々に汚い言葉で囃し立てる男達にちょっと眉根を寄せる。
そして気付けば、此方へ銃口を向けているヤツも居る。
「否、お頭なんて知らないし。そんな事よか此処って何処よ」
彼等の大事なお頭を『そんな事』呼ばわりしたのが気に入らなかったのか。
「なっ…テメェ!下りてきやがれ!!」
「うちのお頭を侮辱するたあイイ度胸だ!」
「女だからって甘く見ると思うなよ?!」
……頭悪いのか?コイツ等…
「だからそんなん知らないっつーの。此処は何処だって聞いてるのよ」
アタシの言い草に更にムカついたのか、恐らく下っ端であろう彼等は顔を真っ赤にして怒っている。
あは、怒髪天を突くってヤツかな?
さっきの宴会で飲んでいた所為も相まってユデダコみたい。
思わず噴出してしまって。
「あんたユデダコみたいだね」
気が付いたら思った通りの事を口にしていた。
そしたら周りに居た男達が笑い出して、ソイツは益々怒り出した。
「こっ……このアマッ!!」
「あはは〜、そんなに怒ったら益々ユデダコだっての。ちょっとは落ち着きなよ。そっちで銃口向けてるオジサンもさ」
人垣の隙間から、表立って銃口を向けている輩を無視してその人に話しかけると。
赤い髪をした男の周りに居た人達がざわめいた。
下っ端君達はアタシが云ったのを聞いて初めて気が付いたのか、ちょっと驚いている。
……だって殺気がちょいと漏れてるっての。
ついさっき迄戦闘中だったんだから気付くっつーの。
「バレちゃしょうがねぇな」
見慣れない字が書かれているバンダナ?っぽいのを付けているオジサンはそう云って一旦銃口を下げた。
ように見せて、一気に標的をアタシに合わせて引き金を引いた。
―――バンッ
短い銃声と共に辺りがシン、として。
彼等は再び目を剥いた。
「なっ………何だありゃぁ……」
「悪魔の実の能力者かっ?!」
「木に逆さにぶら下がってやがる!!」
は?
こんなのが珍しいのか?
忍者、見た事が無いのか?
って、今はそれ所じゃなくて!
「オジサン、不意打ちが趣味なの?」
ちょっと不機嫌に云えば。
オジサンは外したのがショックだったのか、それとも避けられたのがショックだったのか、少々口籠もり。
「否……そういうワケじゃねぇけどよ…」
「お前悪魔の実の能力者だな、何のシリーズを喰った?」
今度は顔に傷のある黒髪の大きな銃を持った大きな男が話しかけてきて。
「悪魔の実?」
「喰った筈だろう。普通の人間にゃ、そんな事ぁ出来ねぇ」
「そうなの?アタシの里に居る人達は皆出来るけど?」
「はぁ?」
その人は眉根を寄せて。
「だってコレ位出来ないと。第一どうやって水の上で戦うのさ」
「水の上?お前、水の上でも歩けるとでも云うってのか?」
その人はアタシをバカにしたように云った。
周りも引き攣ったかのような笑みを浮かべた。
だが。
「普通歩くでしょう」
「「「「否、歩かねぇから!!」」」」
ソイツ等は見事な突っ込みを入れて。
思わずアタシは笑ってしまった。
「アンタ達『忍者』を知らないの?」
「ニンジャ?何だそれ?」
「え?……此処って忍者居ないの?!」
「少なくとも俺は知らねぇ」
その人は周りの人達に知ってるか?と聞いてくれたが。
聞かれた彼等は誰一人として知っているとは云わなかった。
突如として云い様の無い不安に駆られたアタシは。
「ねぇ、ちょっと……木の葉の里位は知ってるよ、ね?」
銃の的にされた事等忘れたかのように親しげに話しかけても。
アタシのパニくりぶりに気圧されたのか、文句を云う輩は誰一人として居なくて。
「はぁ?木の葉の里?……知らねぇな。お前知ってるか?」
「否、俺も知らねぇ」
「あぁ、俺も聞いた事ねぇな」
目の前が真っ暗になるかのような眩暈を感じたが。
こんなトコで気を遠くしてる場合じゃなくて。
「嘘!じゃあ、火の国は?砂の国は?ってか此処は一体何処なのよ!!」
「名も無い島」
赤い髪の男が平然とした顔で答える。
「ふざけないでよ!だから此処は何処だって聞いてんのよ!!」
「だから『名も無い島』って名前の島だよ」
………天国のお父さん、お母さん……
アタシはどうやら遥か彼方の世界へと、……飛ばされてしまったようです…