あの衝撃的な告白を受けてから、早一週間

何故かアタシは赤髪海賊団の皆様と一緒に行動してたりする






何でかと云えば、只たんに此処の地理に詳しくないのとこの世界の事を余り知らない所為
そして寝床の確保と食料の確保の為






色気の無い話だが
幾ら忍なんて職業をやって、最悪な環境に慣れているからと云って

人間、誰でも楽な環境が良いに決まってるんだし






そんなこんなで、イマイチ彼の思いを受け入れるワケでも無いのにアタシは彼等と一緒に居ます…























Never let you go 3






















「なぁなぁ、〜。そろそろ俺の気持ち、受け入れてくれても良いんじゃないのか?」

「否、気持ちは有り難いんだけどね?アタシはこの世界の人間じゃないし」

「そんなん関係ねぇって。向うになんか帰んなきゃイイだけだし」

「アタシは任務中だったって云ってんでしょーーーーっ!!!」






アタシの繰り出した蹴りが派手にシャンクスに決まって。
彼はその衝撃に耐え切れなかったのか飛んでった。







初日、散々うちのお頭をバカにしたなんて突っかかってきた他のクルー達は。
連日繰り返されるこのバカ騒ぎに呆れたのか慣れたのか。

はたまたアタシの持てる忍としての能力に怯えたのか。
必要以上に話かけてこなくなって。

特にこの船の副船長のベンと云う男は、未だにアタシを警戒しているのか。
笑み一つ零す事無く此方を睨んでいる。




















………やぁーな感じィ……






アタシだって別に殺人狂じゃないんだから、誰彼構わず殺ってるんじゃないんだし。
あんた等の大事なお頭さんを殺すなんて、そんな行動するワケないじゃーん。

やんなっちゃうなぁ……




















その状況もちょっぴり理解できちゃうトコも無きにしも非ず。

だって何故かこの海賊団のお頭さんがこのフザケタ名前の島を離れる気が全然無い。
アタシの傍から離れる気が全然、一向に、微量も無いからだ。

此処に突然現れたアタシは、再び何かの拍子で異次元へと繋がる空間が開くんじゃないかと思ってて。
此処から離れられないないのは当然なんだけどね。

そんなアタシなんて放っておいてくれて一向に構わないんだけどサ。
まぁ、寝床と食料の確保は大変になっちゃうんだけど…。

こんな気味の悪い女(自分の国に帰ったら普通なのよ?)に良く纏わり付くなぁ、なんて。

他人事ながらちょっと同情しちゃったりしてた。







































深夜、それも丑三つ刻に。

アタシはちょっと離れた所にある湖に来てたりする。






何でそんな所に居るのかと云えば。
お風呂なんですねぇ。







確かにシャンクスの船にはお風呂くらいは装備されてるわよ?
それも船にしては大きな部類に入る立派なヤツが。







でもね……

でもねっ……

来るんですよ。

この船の一番偉い筈のお頭さんがっ!!!







最初っから『風呂を覗く』なんて可愛らしい行為じゃ無くて。
それこそ堂々と扉を開け放って、事もあろうか。

『一緒に入ろう、!!』

とか何とか云っちゃって満面の笑みで侵入してきたんだ。

この船の、船・長・様・がっ!!







アタシゃ、本気でクナイ投げちゃったよ。ホントにもう……







それ以来、アタシはこうやってこの湖に来てるんだ。

でも本日は先客が居るようで。
どうも本人は隠れる気が無いのか、気配をそのまま消さずに居て。

アタシは当然その人物の気配の気付いた時点で気配を完璧に消して。
その人物が寄り掛かる木が良く見える木の枝へと飛び移った。







………あり?この人って…







副船長さんだよ







一応、危険人物では無いと判断して地面へと飛び降り、さくさくと彼の方へと歩いて行く。

わざと足音をさせてやれば、彼もアタシの存在に気が付いたのか此方を向いた。







「こんばんは、副船長さん。こんな夜中にアタシへ何か用ですか?」

「あぁ、お前さんにやってもらいたい事があってな」

「ふぅん、何でしょう」







どうもこの話の切り出し方から行くと、余り良い話ではなさそうだ。







「ココから出てってくれないか」







一見、頼むような口ぶりだが、彼は有無を云わせないような雰囲気を纏っている。







「否、此処から出てっちゃったらアタシ、自分の世界に帰れないし」

「っと、云い方が悪かったな。ココから出て行ったように見せ掛けてくれないか」

「見せ掛けですか。要するにお頭さんから離れて気配を消していろ、と?」

「まぁ、そんなようなモンだ。お前さんが気配を消しててくれりゃ、俺達には分からねぇからな」

「そうですね、分かりました」







アタシが直ぐ様返事を返せば。
こんなにアッサリを話しが進むと思わなかったのか。

副船長さんはちょっと以外そうな顔をして。







「そんなに簡単に決めちまって良いのか?」

「あはは、何云ってんですか。自分から話し持ち掛けてきたクセに」

「そりゃそうなんだが……でも寝るトコや飯の心配とかは無いのか?」

「あぁ、そんなの別に平気ですよ。此処には獣とかも沢山居るみたいだし、それに寝るのだって木の上で寝るし。
 第一、アタシは忍なんですって。戦地に赴けばこんな事ザラにあるんだから気にしないで下さいよ」

「……そう、…なのか?」

「そうです」







ニヤ、と笑ってやれば。
彼は少々すまなげにして。







「お前さんにゃ悪いと思ってる。だがな、アンタみたいな人がお頭の傍に居ると心配なんだよ。船員も怯えてるしな」







そりゃそうだろう。
こんな人間離れした女がその集団の頭の傍に居るだなんて。

もし火影様の傍に素性の知れない輩が居たら、アタシだって心配してこんなような行動を取るだろうし。

それに船員の事まで気に掛けているんだから。
この人は本当に優しい人なんだろうな、何て思う。

顔と行動が一致して無いケドね。







「じゃあ、アタシは今夜から帰りませんので」

「すまないが、頼む」

「謝んないで下さいって。何も悪い事してるワケじゃないのに」

「否、お頭には悪い事をしてるつもりだ」







苦笑いをした彼の表情に。
そう云えば、あんな盛大な告白を受けた事を思い出す。







「恋愛なんて麻疹みたいなモンですよ。一時の気の迷いなんだから、直ぐにアタシの事なんて忘れますって」







そんな言葉をアタシも苦笑いで返して。

そして副船長さんは最後までアタシの事を気にしたようにして自分の船の方へと帰って行った。






















それからアタシは湖へと身を清める為に入り。

出た瞬間から自身の気配を完璧な迄に消し、素早く服を身に付けて森の中へと姿を消した。











































それから、夜が明けて数時間後。
森の中に聞いた事のある声での怒声が響く。

最初は普通に喋っていたのだけれど。

誰かが、もしかしたら副船長さんが『アタシは自分の世界に帰った』とでも云ったのかもしれない。






そんな大声を出されるような人間じゃ無いのになぁ……






そこまで思われていたのか、何て。
ちょっとくすぐったいような気がしたが。

















所詮、アタシは異世界から来た女なんだし。

何処まで思われてもアタシは帰らなければならないんだし。






シャンクスとの掛け合いのような会話は確かに楽しかったけれど。
お互い、生きる世界が違ったって事で勘弁して欲しい。

















ごめんね、……シャンクス

でもアンタの気持ちはちょっとだけ、……ホントにちょっとだけ嬉しかったよ



























天国のお父さん、お母さん。

どうやらアタシはこの世界の彼の事を、ちょっぴり気に入っていたようです。






なぁんか、切ないな……















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