自分の身体を抱き締める温かい腕






例え、それが一本だけでも

その思いの深さは誰よりも強いモノなのか






アタシの心は揺れに揺れて……






心地良い、その温もりに
余りにもな心地良さに

考える事を放棄して






身を、委ねてしまった



















Never let you go 6





















先程までの殺伐とした空気を破片すら残さないその海岸沿いに。

敵陣の全てを殺した女と、自分達の船長が身体を寄せ合い、抱き合っている。






の分身が突然自分達の前へと現れて。

居なくなったお頭が、懲りもせずに自分を追ってきて。
彼の首を狙っている奴等の所に行ってるから、と知らされて。

彼女の分身を先頭に、慌てて駆けつけてみれば。
視界に飛び込んできたのは。






二人の抱擁シーン。


















お頭の、シャンクスの安堵した、幸せそうな表情と。
戸惑い、困惑しながらも、彼の腕を突き放さないの顔が印象的だったソレは。

副船長であるベンの心に、多大なる後悔と罪悪感を感じさせ。
そして考え方と見解を変える事を余技無くさせた。






だって、あんなに幸せそうな顔をされたら。
あんなに大事そうに抱いている様を見せ付けられたら。

戸惑いながらも、我等がお頭の思いを受け取ってくれたかのような。
あんなにアッサリしていながらも。
自分の意にそぐわない事には頑なな迄に反抗しそうな彼女が大人しく抱かれているだなんて。















これでは、自分はまるで二人の仲を邪魔した悪者のようではないか。














込み上げてくる苦い笑みを、隠すに隠せなくて。

そして周りに居た船員達、幹部と云われる仲間達の顔を見やれば。
自分と同じような事を思ったのか。

彼等も苦い笑みを浮かべていて。






彼女の事を危険だと思ったのは間違いない。

彼女の持てる、戦闘に関してのスキルは本当に奇想天外と云うか。
自分達の想像を遥かに超えていて。

そんな彼女をお頭の傍に居させるだなんて。

只でさえ名前を売ろうとする馬鹿な三下海賊共に命を狙われていて。
自分達が傍に居る事で、そう簡単に彼の命をくれてやるなんて事は絶対にさせないが。

それに驕って危険な者を彼の傍に居させる、と云うのとは訳が違うだろう、と。

そう考えたのに、な。






ベンは軽く溜息を付くと。
周りに居た男達へと声を掛けた。






「オイ、早く怪我してる奴の手当てをしてこい」






掛けられた声に寄って、やっとその呪縛から解かれたような男達は。
ハッと我に返ると慌てて彼等の方へと走って行った。






ヤレヤレ、とそれを見送りながら感じた視線。
その持ち主達はベンと同じような目をしてて。






ありゃあダメだ、と。

芯まで惚れちまってるぜ、なんて。

あの姉ちゃんも満更でもないしな、とか。






妙に温かいような、苦笑いを含んだ眼差しでお互いを見交わして。
そして目線を、話題の彼等へと戻した。






すると彼等は未だにその儘で抱き合っていて。

呆然としながらもお頭の抱擁を受け入れている彼女は、何処と無く可愛いような気がして。
慌ててベンは頭を振った。





















「お頭、。用が済んだのならこんなトコには長居は無用だ。帰ろうぜ」






















ヤソップの掛けた声により、我に返ったは慌ててシャンクスの腕を振り解いて。
それでも彼の傍を離れない辺りが何とも表現の仕様が無い位に可愛くて。

あんな戦闘と実力を持ちながらも、女としての感情を持ち合わせている彼女に。
赤髪の戦闘員達は温かい眼差しを贈った。

そして手の中から逃げられてしまったシャンクスは少々、憮然とした顔でそんな彼等を睨みつけていた。

が、改めて傍に居る彼女へと嬉しそうな、幸せそうな顔を向けて。






「さ、。行こうぜ」






疑問系ですらないシャンクスの言葉に彼女は大分戸惑って。






「行こうって……アタシにはそんな気は…」

「良いから、行くぞ」






の云い分なんて聞いていたら何時まで経っても共に等行けないと覚っていたのか。
シャンクスは強引に彼女の手を取って歩き出す。

本当にソレで良いのか、と聞きたそうなはベンやらヤソップやらに視線を飛ばすが。

返ってきたのは、彼女が想像してたような眼差しとは違い。
優しいような、認めてくれたような温かなモノで。






そんな風に温かく迎えてくれるだなんて思っていなかったは酷く困ったような顔をして。

それでもシャンクスの手を振り解く事無く、大人しく連れられて行った。






強引な迄に自分を欲した男と、そんな男に諦めを含めた優しい眼差しを贈る彼等に。
自然と浮かんだ苦笑いを零しながら。
























その日は当然のように宴会が開かれて。

名目上は赤髪のシャンクスを狙ってきた馬鹿な海賊共を片付けた事になっているが。
彼等の心の中ではの仲間入りを祝うと云う項目が、暗黙の了解で付け加えられていた。






宴会も酣になると、シャンクスは酷くご機嫌な様子で決して傍を離れる事を許さなかったを連れて席を立った。

それを見て見ぬ振りをしながら船員達は乾杯し合って。
そして数人は彼等の後を、こっそりとつけて行った。





















楽しいような宴会へと招かれて。
美味い酒を呑んで、美味い食い物を食っていたは。

突然、自分をこんな所へ呼び出したシャンクスに。
この先で云われる事を想像して、少々困っていた。






だってそうだろう。
さっきの今で、未だにあの時に戸惑いを消化しきれていないのだから。

















「な……何か用なの?…シャンクス」

















多数の人目が無くなって。
そして数人が後をつけてきていた事も、お互い知ってはいても勝手にさせていて。

連れて来る時に繋いでいた手を未だに握り続けていたシャンクスだったが、それを離すと。



















再度、あの戦闘直後のような抱擁を彼女へとして。



















優しい、全てを包み込んでくれるかのようなソレを再度されたは。
再びソレを振り払う事が出来なくて固まってしまった。






急激に近付いた、感じ取れるようになったお互いの熱に。
シャンクスは幸せを感じ、は戸惑いとあの時と同じ安堵感を感じた。






そして、シャンクスは彼女の耳へと口を近づけて。



















「………」




















彼女の名を、熱の籠もった声で、呼んだ。






途端、ビクッと身体を竦ませた






だってこんなに近くで、息が耳に掛かってくすぐったくて。
それに何だか腰にクルような心地良い低音で、囁かれるかのように名を呼ばれ。

心拍数が急激に上がるのを彼女は感じていた。





















「……お前が別の世界の人間だってのは分かってる。お前がそっちへ帰りたがってるのも知ってる。
 これが俺の我が侭だってのも分かりきってる。云わねぇ方が良いなんてのも百も承知なんだが敢えて云わせてくれ」







































―――頼む……、帰らないでくれ……








































切ない響きを持ったシャンクスの。
その囁くような言葉に。






は大きな衝撃と共に困惑しきってしまって。

そしてその言葉は、彼女の心を酷く揺さぶって、痛めて。






彼が本気で自分を思ってくれている事は、あの時と今の抱擁で理解出来ている。
そして今の言葉で自分の傍に居て欲しいと願っているのも分かった。

けれど自分は異世界の人間で、本来ならば此方の世界の事等知らずに生きて暮らしていた筈で。
未だ胸の中にある密書を火影様へと渡さなくてはならなくて。

こんな所で油を売っている訳にはいかない筈で。

こんな風に此方側の人間に抱かれていて良い筈がなにのに……






なのに、彼が自分へと向けてくれているその感情に




















一瞬、流されてしまいたいと





















そんな事を願ってしまっていた己の思考にハッとなり。
自身を疑ってしまった。






彼女の動揺を知ってか知らずか。
それとも知っていて更に動揺を引き出そうとしているのか。

















―――俺の傍に居てくれ……


















そんな言葉を追加して。

感情の流れを整理する所か、益々混乱させるかのようなソレに。
彼女の心は二進も三進もいかなくなって。

耳から離された彼の唇に気付けずに。






熱い思いを含んだ眼差しに捕まってしまって。

外す事も叶わずに。

近付いて来る、彼の顔に、唇に、抵抗らしい抵抗も出来ずに。


















受け入れて、しまった…




















温かいぬくもりに

温かい唇

優しい束縛をする強い腕に






酔わされてしまう程の甘美なモノを感じてしまい






抱き締められるだけだった腕を動かして。
彼の纏うローブを、握り締めた。






ソレに気付いたのか、シャンクスは酷く嬉しそうに何度も何度もキスを繰り返して。

抱き締める腕を彼女の首へと巻き付けて。
片頬を固定するかのように手で包み込んで。

その一時を堪能した。























天国のお父さん、お母さん






どうしましょう……

この人の腕の中は余りにも気持ち良くて
余りにも心地良くて

本当に…






流されてしまいそうです……















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