さぁ、行こうか

この世界から少しずつ命を貰う為に
アタシの存在を確立させる為に

贄を求めて、彷徨おうか……




















【堕ちる】























踏み出した先には何があるのか。
そんなの行ってみなければ分からない。

だからこそ踏み出したこの一歩。

そう、アタシは生き続けたいんだ。
こんな処でぐずぐずしている暇なんてない。

早いトコこの【死神】、ヴィーに力を戻してあげて。
アタシにも恩恵を齎してもらわないと、ね。








ふんわり、とした空気がアタシを包み込んで。
自分の身体がその世界へと馴染むように、組み替えられていくのが分かる。

あァ…
本当にアタシは異世界への扉を開けたのだ。

あちらの世界に生きていた時はあんなにも現実主義者で。
こんな夢見がちな事等一切信じなかったのに随分と進歩したじゃない?

まぁ、幾ら信じられなくとも。
自分で体験してしまったのなら話は別で。

既にこの身体は変わり果ててしまったのだ。
ならばそれに従うのみ。








淡い光がやんわりと力を失い、消え行くと。
アタシの周囲が次第に見えてきた。

くるりと見渡せば、そこは大きな船の上で。
突然の招かれざる客に屈強な身体をした、強面の顔をした男達は驚きを隠せないでいる。

見るからに悪人そうな面。

人でなくなった所為か聞こえてくるのは無理矢理に連れて来られ、襲われているであろう女達の悲鳴。
売られる予定なのだろう子供の泣き叫ぶ声。

少し視線を動かせば視界へ入ってくる侵略されたであろう火の手のあがる村の残骸に人々の骸。








「あァ……、これなら遠慮なくヤれるね…」








ニヤリと笑い。

余りにも【人】から掛け離れたその笑みに。

海賊である、侵略者である筈の彼等は情けなくも動く事すらできずに固まって。

その雰囲気に飲まれ、脂汗を流しながらも何も出来ず。








が片手を天へと突き上げるようにして上げると。

呆けたような、恐怖に引き攣ったかのような顔している奴等から次第に表情と云うモノが消え失せ。

何かをするり、するりと引き寄せられて。

白い、ふうわりとしたソレを彼女は片手で受け止め。

次々とその手の中へと溶け込ませていく。








彼女がひとつ、またひとつとその白いソレを吸い込む度に男達はバタリ、バタリと倒れていき。

一人減り、二人減り……残る最後の一人まで、ソレを取り出して吸い込むと。
やっと彼女は天へと向けた手の平を下へ下げ。

それはそれは満足そうに一人、笑んだ。

そして船内へと迷う事なく歩いていって、閉じ込められている人々をソコから解放してやった。

思わぬ助けに女達は戸惑うが、それでも自由になったのだと云う現実に涙を零して礼を云い。
次々と船から飛び出して行った。

売られてしまう、と奪われてしまった、と思っていた村の住人は。
突然帰ってきた女、子供達に驚愕するが。

それでも帰ってきてくれたのが嬉しかったのか、迎え入れ。
女達の話す船の上で起こった理解不能な事実に聞き入っていた。






















この世界へ来た早々だったけれど。
それでも沢山の魂を食せて、は満足そうにその海賊船を降りて。

侵略された村人が涙を流しながら再会を喜んでいる姿を見ていた。

奴等を殺してあんなにも喜ぶ人が居る。

それが彼女の中で何処か歪んだ歓喜を生んだ。








堕ちて……いく…

人の命を奪ったにも係わらず

あんなにもの多くの人の命を喰らったのに、…アタシは……

アタシは罪悪感すら浮かばずに、…

戻る力に歓喜こそ浮かぶが、罪悪感なんて微塵も浮かばずに








あァ……堕ちていく…

堕ちて…いく…











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