さぁ、今こそ決断を








ただし、貴方に選択肢は残されてはいないけど























【死】























アタシの声に反応し、応えて。
尚且つ、こんなトコまでやって来たのは海軍本部、大将の『青キジ』だった。

チリン、チリン、とベルを鳴らしてのんびりと海を凍らせやってきた。








「初めまして、海軍本部大将の『青キジ』さん?」

ふふ、と笑いながら声をかければ。

「あららら……お前があの【死神】と呼ばれた人間か?」

小さな船へ乗り込んで来た青キジは疑わしそうにアタシを見た。
まぁ、あれだけ世間を騒がせた張本人がこんな小娘だと知ったならの言葉だとは思うが…

「開口一番がそれ?海軍の人ってセンスもムードもないのかしら?」

呆れたように云ってやれば、青キジは人の悪そうな笑みを浮かべて。

「あァ、これはこれは失礼を。初めまして【死神】さん。こうして顔を見て話すのは初めてだなァ」

「そうね、あの時は声だけだったしね」

「で?俺をこんなトコに呼び出して何の用だ?」

「うふふ…、話が早く進んで嬉しいわ」

ニヤリ、と笑んでアタシは早速話しを持ちかけた。








「いい加減ね、町や酒場、海軍に張り出された賞金首を追うのにも飽きちゃったのよ。
 でもアタシは定期的に人の命を貰わないと生きていけないの。だから貴方に殺してもイイ人間を用意してほしいの」

我ながら何て言い草だ、とも思う。

正直余りにも多くの人間を殺してきて、マトモな感覚を失っていたアタシは歯に衣を着せず。
そう云いきった。

「そう云われて俺が素直に、はいどうぞと罪人引き渡すとでも思ってんのか?」

「やぁね、別にやろうと思えばアタシは何処に居たって人なんて殺せるわ。
 今、この瞬間にも人は死んでいるし、その魂はアタシが頂いちゃってるし?」

クツリと僅かな嘲笑を混ぜ込んで笑えば、その笑みが彼の中の何かに引っ掛かったのか。
突然床が、あっと云う間に凍り付いていく。

周囲の海すら巻き込んで、幾重にも凍り付いて決して逃さぬように、溶けぬように。
この悪魔のような、通り名どおりの女を逃さぬように。。

大将と呼ばれる俺を持ってしても背筋を凍らせるこの女をこの世に存在させてはならぬ、とばかりに。

けれど……








「ぷっ……あははははっ!…、やだなぁ…まさかそれでアタシを殺せるとでも思ったワケ?」

バキバキに凍ったアタシが笑い出した瞬間。
信じられないとばかりに目を見開いて驚き、恐怖なるモノが身体中を駆け抜けたのだろう。

焦ったかのよう足を高く振り上げて、凍った死神を粉々に砕いた。

酷く上がった心拍数。
流れるのは冷や汗。

それは間違いなく己が【死】を感じた瞬間で。

肌が訴えてくる。
これ以上もない殺気を、己の首筋に鎌を尽き付けられているかのような錯覚を。

こんなにもイヤな空気を感じるのは何時振りだ?と自問自答を繰り返すが。
今以上に不穏な空気に晒された事等思い付かなくて。








そう…

それはまるで生きている物を相手にしていないかのように……









「砕けちゃったから安心した?」

突如、耳元で囁かれた声にバッ、と振り向けば。
先程と一変した死神がそこに存在して。

大きな目は黒から赤へと色を変え、縦長に伸びた瞳孔が人間である事を拒否しているようで。

背中に生えた闇から生まれたような漆黒の大きな羽は彼女を天からの使いだとは思わせてくれなくて。

片手に持つ巨大な鎌は、間違いなく『人ならざるべき者』であると教えてくれた……









全身にイヤな汗を掻く。

本能が訴えてくる。

経験が教えてくれる。









『この女には逆らうな』と……

一歩、間違えれば死ぬのは自分なのだ、と…

悪魔の実なんて関係ない
戦闘スキルすら問題にならない
バスターコール等、意味を成さない

この女は本当にやる、と云ったら息をするよりも簡単に俺を

俺達を殺すのだろう…









空中に浮かぶ女は俺が【死】を感じとっているのが分かるのだろう。
攻撃する事もせず、黙って笑みを浮かべるのみで。

「さて、これでアタシが正真正銘【死神】だって信じてくれたわね?」

巨大な鎌を、まるでその重みすら感じていないのだ、と云わんばかりに片手で器用にクルクルと振り回して。

「別に一般市民をアタシに差し出せなんて云ってないわ。犯罪を犯した処刑になる人間で充分だし。
 第一、差し出してもらう期間は一年に一回でいいのよ?こんな好条件、今を逃したら……」








ふんわりと、宙に浮いた死神は縦長の瞳孔を持つ目を僅かに細め。
実に楽しそうにこう云った。








「元々アタシはこの世界の人間の者じゃなかったし、全部頂いちゃってから他所の世界へ行ってもいいのよ?」








にっこり、と笑みを浮かべる死神に。

あァ、こりゃぁ駄目だ、と。
敵う訳がないのだ、と。

元より目の前の存在は人ではないのだから。
人である自分が敵う訳がなかったのだから。

呼ばれてノコノコとこんなトコまで来たのが運の尽き。

全ては死神の思惑通りに事は進んで。

俺に残された選択肢は一つしかなくて。








俺はそれを選ぶしか、……なかった…










6月15日、微修正しました。


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