名も知らぬ【守るべき存在】に出会ってからもう六年と云う月日が経ち

彼女の為に我武者羅に己を鍛えて鍛えて鍛え続けたお陰で気が付けば
本当に世界を守るべき存在として、CP9への配属が決定していた

決して世には出れない、極秘の組織への配属が……























【Several years after】

























毎年、あの花が咲く季節になると現れる不思議な女(ひと)。
初めてその存在を知った時、幼い自分はこの人こそワシが守るべき存在なんじゃと意味もなく確信していたが。

年を追う毎に疑問は膨らんでいき、暇を作っては素性を調べようとアチコチに手を伸ばしてみた。
けれど幾ら調べてみても一向にあの人の情報は手に入らなくて。

何て名で、何処に住んでいて、どうやって此処に来て、何故こんな処に来るのか。

それでも最後の疑問は、此処でしている事だけは噂で知って。
今年、自分の目で確かめて確認した。









染み付いた自分の諜報部員としての性質上。
その時々のどんな噂も掻き集めるように耳にして、真否を吟味し情報として処理していた。









『春のこの時期になると、何処からともなく女が来て此処に収容されている囚人を必ず一人は殺すらしい』

先日、仲間になったばかりのルッチと云う名の男が云う、その情報に。
最初に聞いた時はそれが彼女のしている事だとは気付けなかった。

が、認めたくない所為か鈍くなった頭がやっとの事で動きだすと。
信じ難い事実の一致が、それは彼女が来る時期にピッタリだ、と認識して。

確かにこの時期になると何処か収容施設からは妙に浮き足立った感じがしていたから。

有り得ないと云う思いと、もしかして、の思いがぶつかり合って。
分からぬなら調べ出してやればイイじゃろうに、情報を得るのならお手の物じゃないか、と。

情報を提供してくれたルッチと共に、諜報部員の名に恥じぬ遣り方で彼女が来るであろう時期に合わせて囚人達を調べると。
奴等は酷くこの時期に恐怖して、確かに奴が云っていた通りに今年も執行される死刑囚が居て。

そこに、己が最もそうであってほしくない結果が横たわっていた。









侵入した上司の部屋。
意味も無く大きいソレの上にあったのは数枚の書類の束で。

今回処刑される罪人達の罪が事細かに記されているそれが、けっこうな厚みを持っていたが。
最後の方にあったホンの二枚程度のソレにワシの思考が凍り付く。

それは死刑執行許可証で、既に館長から許可が下ろされた印があり。
もう一枚にはこの島への入場許可証で、許可を許したのは上司のもっと上の上司。

世界政府が幾ら大規模だとは云え、この世に三人しか居ない大将、青キジの名が記されており。
名前が記される場所には【Slaughter person】−殺戮者−と、だけあった……

残るは数日後に、あの花が満開になるだろう時期に合わせてやって来るであろう日時がそこに書き綴られているだけだった。









感情が、……その事実を受け入れたがらなかった…









当日、ワシは一人で確認したかったのだが。
この情報の元々の提供者であるルッチも行くと云って聞かなくて。

不本意だが、彼と二人で真否を見定めるべく。
そこへと向かった。









まるで生贄のように用意された囚人達。

幾重にも拘束され、決して逃れられないように其処に捨て置かれ。
其処は何人もの囚人達が裁かれた場所なのであろう…

地面にはドス黒くなった血が染み込み、彼女には一番似合わないであろうその場所に。

未だに察知できぬ気配で、視認して初めてその存在を確認し。
何度も見たあの浮遊感のある歩き方でやってきた彼女。









隣に居たルッチが昔のワシのように視認でしか確認できない彼女に酷く驚いているが。
それ処じゃない。

突如現れた真っ黒なフードを被った彼女に。
囚人は顔を真っ青にして震え出し、後ずさろうとして失敗している。

猿轡を噛まされた所為で言葉こそ漏れる事はなかったが。
その口からは引っ切り無しに呻く音がして。

奴等がどれだけの恐怖を味わっているのかを教えてくれた。

何故なら彼女が持つ【死】の絶対のオーラがこの場を、空間を支配し。
君臨者はあの人意外に有り得なくて。

【Slaughter person】の名に恥じる事なく。
まるでその言葉は彼女の為にあるかのような錯覚さえ覚えてしまう程にぴったりで。

鍛え上げられたワシやルッチまでもがその雰囲気に飲まれ、動けずにいた。

彼女の慣れたその仕草に恐らく何度も何度も、幾年もこの行為を繰り返したであろう事が窺い知れて。
その瞬間、何故彼女がああも現実離れをしながらあの場所へ来ているのかが唐突に理解できてしまった。









何故じゃ?
何故その手を血に染めるっ…

あんなに自分を責めるくらいなら、何故、意に沿ぐわぬ殺し等するんじゃ…っ!









噴き出てくる疑問と、押さえきれない衝動。
其れ等が一気に心を支配して。

そうこうしてる間にも、彼女は目の前に居た囚人達を裁くべく。
何処から出したのか、大きな大きな。

彼女には決して似合わない黒光りする巨大な鎌を持っていて。

その重量を感じさせない、ワシ等の目でも追うのがやっとの速さでソレを数度振り。
呆気無い程に、其処にあった全員の囚人の首を一気に切り落とし。

命を、奪い、取っていた……









返り血の一滴すら浴びない、無駄な動き一つも、呼吸の乱れも無く。

あんなにも簡単に命を奪う彼女が、……彼女が…

まるで死を司る神のように、冷淡に、無慈悲に、簡単に命を摘んだ彼女が…









これが、彼女の此処に来る用じゃったのか。









今迄、我武者羅になって積み上げていた何かが、……何かが崩れ落ちるような気がして…

それは幼き頃の純粋に彼女を想っていた気持ちだとか。
守るべき存在を見付けたあの幸福感だったり、どうしたら彼女が幸せになるのかを考えた事だったり。
幼き自分が嫌で口調を変えて、少しでも大人びて見えるようにした事や。
一年に一度だけ見る事のできた幸せだったり…

其れ等の全てが音を立てて崩れ落ちて行くような幻聴さえ聞こえそうだったその時。

空気が動くのを感じ、こんな処では有り得ない声を聞いた。









この場所の空気に飲まれていたワシとルッチは同時にびくっ、と身体を揺らした。









そう。

無数の遺体が転がる異様な、この空間で。








その人は。

それを作り出した彼女は。








突然。






















笑い出したんだ。























「……ふ、……っははっ………ぁはははははははっ!…あはっ、ははははははっ!!」









処刑場に響く、初めて聞いた彼女の声は。

気が狂ったかのような笑い声で。

こんな事を何年も繰り返ししてきた所為で本当に狂うたのか?とも思えたが。

それでも何故かその笑い声が、ワシには泣き声に聞こえて。









だって視界に飛び込んでくる彼女の肩は震えているじゃないか。

片手で顔を覆って。

片手で黒光りする鎌をぎりりと握り締め

目の前にある自分が作り出した死体を見ながら、苦しそうに、苦しそうに……

本当はこんな事、したくないんだと。

やりたくないんだ、と云いたそうに。









震えているじゃないか…









「………Don't see... Do not continue seeing me more……」
 
………見ないで……それ以上私を見続けないで……








ぽつり、と洩らされたあの人の声に。
聞きなれない、その言語にはっ、として。

本当に泣いているんじゃないか、と思えるくらいに震える声で発せられたその言葉の直後に。

ふらり、と己が知っているあの足取りで歩き出し。

来た時同様、その存在を悟らせない、目の前で出て行こうとしているのに。
目で追いかけているのにも係わらず、感じられない存在感に。

ワシ等は硬直したようにその場に立ち尽くしていた……








生きて、そこの存在しているのはワシとルッチだけで。
今更ながらに背筋が寒くなるような震えがきたが。

ワシは冷静になるべく深く深呼吸して。
たった今、処罰を受けた囚人達の遺体へと足を向けた。








見事、としか云い様がなかった……

切り口、角度、力加減、タイミング、位置関係を把握できるその視認性に観察力。
そして何よりも一切の戸惑いのない心。

全てが全てにおいて感服するしかない程の手腕で執行された後の横たわる残骸。

未だ嘗て此処までの死体を見た事がなかった。

既に己の両手も汚れてはいるが。
それでもこんなにも苦痛を与えずに、一瞬で命を摘めるかと問われれば。
否、としか答えようがなくて。

同じように横でルッチが検分しているが、僅かに目を細めただけで彼も何も云おうとしなかった。









彼女の手腕、武器、攻撃のパターン。
そして死体から読み取れる情報を素早く検分したカクは、早々にそこから立ち上がり彼女の後を追って行く。

誰に云われなくとも行き先は分かっていた。

後ろからルッチの声がしたが、何を云っているのかは聞き取れなかった。









カクが追い付いたのは、本当に彼女があの木へと辿り着く寸前で。
今年の、今日の彼女の様子は例年に比べ、矢張り酷いモノで。

そんなの顔を見ずとも、表情を見るまでもない。









だって彼女の戦慄く背中が全てを物語っているじゃないか。

あんな殺戮をした後に此処へ来て。

何時もならもっと楽しそうにしているのに。
心休まるホンの一時を、この場所で過ごしていたと云うのに。

酷く薄いと感じる彼女の肩が小刻みに震えて。
恐らく胸の前で手を組んでいるのだろう、何かに祈るかのような格好で。

きっと奪ってきた命に対して祈っているんだろう……









まだ……ダメなんじゃろうか…

この手では…この腕では足りないんじゃろうか
何時になったらワシのこの腕は貴女の身体を抱き締めるに、足りる腕になるんじゃろうか……









この殺戮劇は確かにワシにとって衝撃的ではあった。

積み重ねてきたあの人のイメージを根底から覆すあの事実は。
多大なダメージをワシに与えはしたが、あんなにもショックだったのにも係わらず。

それを上回る彼女の痛々しさに嫌いに等、なれなくて。
裏切られたとも思ったが、最初から勝手に思い込んだのは自分で。

彼女が何もそう云った訳じゃないのだから……








そして感じたのは僅かな安堵と狂気にも似た感情。

何故ならば、既にこの時には血に塗れていた己の両手。
こんな手であの人を抱くなんて、とてもじゃないが出来ないと思っていたからで。

儚いあの存在を薄汚れたこの手で触れるだなんて…
この手で幸せにしてやるだなんて出来やしない、と思っていたのに。

誰よりも大事なワシのあの人を自分からも守りたくて、決して誰にも触れさせたくない、と思っていたけれど。









今日、知ってしまったんじゃ。

もう、あの人の両手も血に塗れている、と。









だったら何の遠慮が要る?

あれ程の腕を持って、この島へ来る事を大将に許され、毎年此処にやってくるその存在を。









自 分 の モ ノ に す る の に、 何 の 遠 慮 が 居 る ?









あの人はワシが見付けたんじゃ。

こんな夜更けに揺れるように歩を進めて。
あの木に誘われるようにやって来て。

ワシの目に飛び込んできて。
一目でワシを魅了したんじゃ。

誰にもやらん。
他の誰にも絶対にやらん。

六年経っても一向にこの気持ちは衰えると云う言葉を忘れ去ったかのように膨らむ一方で。

そう、六年も思い続けたんじゃ。
今更あの人を誰にくれてやれると云うんじゃ。









まだ早い。

己の腕は未だ未熟。
せめて彼女の動きが目でちゃんと追えるようになる迄。

彼女の隣に立てる程の実力を手にしなければ。
あの実力に負けるとも劣らない力を手に入れてから。

そう、全てはそこから。









待っててくれ。

震えるその身体を抱き締めるから
流れる涙は拭ってやるから

貴女はワシが必ず幸せにしてみせるから……



















あの日から六年が経ったこの日。

カクは決断した。
諦めていた気持ちを、感情を塞き止める必要性を無くした今日。

一切の迷いを消して、更に高みへ昇るべく。
あの人の横に立てる事を目標に。

彼女を自分のモノにするべく。

彼は……狂える程の感情の枷を、外した…






















■後悔と云う名のあとがき■

早く本編に帰りたくて数年分、すっ飛ばしちゃいましたw (ノ∀`*)ァィタ
しかもこの時間枠は【さくら】の前の年です。

もうすぐお話できるようになるからね〜、待っててカク〜!
そして、目指せ♪ラブ(*-ω-(-ω-*)ラブ♪ だ〜!!

ちなみに裏設定で、この時にヒロイン側にも色々とありまして。
実は錆びれるW7に隠れるように住んでいて、この日パウリーと接触してたりします。

そのお話も書いた方がイイ……の、かな?

とりあえず、次のお話は【口付け】視点の予定です。
やっとこさココまでやって参りました。

本文中の英文は翻訳サイトさんを使わせてもらったモノです。
反転すると訳が出ますので、どうぞ参考になさってくださいませw

え?いらない?………まぁ、簡単な英語ですしね…

て、ワンピの世界って英語あるの?Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)








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