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『天子峰さん&チビ銀ちゃん』

「なぁ、右手と左手を合わせたら、どっちが鳴ると思う?」

「へ?」

唐突な問い掛けに、大きな目がますます大きく見開かれた。



言われたことの意味を確認するかのように、何度か瞬きを繰り返し、その瞳は課題に曇り始める。

拾った時から思っていたが、あまり賢い方ではない。

だが、こうした問題は情操教育の一環で、頭で考えるのではなく素直な心で捉えるものだ。

「さぁ、どっちだ?」

「えーっと……どっちかなぁ?」

悩みつつ、実際に手を打ち鳴らしたりしている。

「力の強い方かな……、利き手の方かな……」

首を傾げながら、小さな手が何度も手を打ち鳴らした。

「でも、どっちか片方だけが鳴ってるんじゃないと思うよぉ?」

「そうだな。そいつが答えだ」

そう言いつつ頭を撫でてやると、目を輝かせた。

「いいか、両手揃って初めて音が鳴る。人間に置き換えても、そういうことがあるんだぞ。……俺の言ってることは分かるな?」

「うん!!」



あの日、真っ直ぐな瞳で見上げてきた少年は、今はもう隣にいない。

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