『MAKUBEX & 朔羅』
| 取り寄せたものを手に、MAKUBEXはこっそり自室に戻った。 箱を開けてみると、中には可憐なラッピングをされた二つの箱が入っている。 一つはそのままに、もう一つの箱を開けてみると、甘い香りが鼻腔をくすぐった。 匂いに誘われるように手を伸ばし、一つを摘み上げて口に入れる。 「うーん。そこそこ美味しい…かなぁ?」 英国輸入のクッキーというから、正直もう少し期待していたのだが。 そこにいきなり、ドアを叩く音が聞こえた。 「入るわよ、MAKUBEX」 「わっ。ちょっと待って、朔羅」 隠す余裕もなく、ドアは開かれた。 「少し話しが…あら?」 朔羅の視線がクッキーに吸い付く。 いつもは朔羅が、自慢の料理の腕を披露してお菓子を作っているのだ。 「MAKUBEX、クッキーなら私が…」 「あ…これは…ね」 躊躇いがちに言う朔羅に、MAKUBEXは少しだけ照れながら、正直に説明を始めた。 「実は、ホワイトデーのために取り寄せたんだ。バレンタインに朔羅から貰ったチョコ、すごく美味しかったし、嬉しかったし」 「まぁ…」 「試しに食べてみたところだけど、ちょっとイマイチで…。やっぱり朔羅の作ったクッキーが一番美味しいよ」 そう言うと、まるで花が綻ぶように朔羅が笑った。 その笑顔が、MAKUBEXを幸せな気持ちにしてくれる。 「でも、良かったら貰ってくれる、朔羅?」 「ええ、もちろんよ、MAKUBEX。嬉しいわ…本当に」 |