『新生VOLTS』
| 「どうかな?」 いつもの部屋に皆を集めて、MAKUBEXはそう言った。 無粋なはずの部屋は、今、満開の桜の風景に変わっている。 「ヴァーチャルシステムを使ったんだ」 「まぁ…っ」 「すごいでんな〜っ」 「こんなことまで、無限城ではできるものなのか」 朔羅と笑師、そして俊樹が桜を見上げつつ、感嘆の溜息を漏らす。 まるで実際にそこに存在しているかのようなリアルさだった。 「見られなくて残念ね、十兵衛」 「本当に惜しいな、筧」 「十兵衛ハンの分まで、ワイらがしっかり見るさかい」 「…俺のことは気にするな」 そう言いつつもやはり残念ではある。 桜か。 そのキーワードと共に、十兵衛の脳裏に昔の光景が甦る。 かつて、幼い花月と一緒に、桜の木の下で甘酒などを呑んだ。 花月は振袖姿で、可憐な美貌に幸せいっぱいの笑顔を浮かべていたことを、よく覚えている。 甘酒のせいか少しだけ頬を桜色に染めて、艶やかに微笑していた。 桜よりもずっと綺麗な花月――。 「十兵衛ハン? 十兵衛ハンっ?」 「何か幸せそうな顔をしているな、筧…」 「顔の筋肉緩みっぱなしだね。変だよ十兵衛」 「頭の中で妄想が広がっているのよ。放っといてあげましょう」 |