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『卑弥呼』

そろそろお花見の季節である。

テレビから流れてくる、お花見会場の中継を聞きつつ、卑弥呼は薬草の世話に精を出していた。

毒香水を作るにあたって、こうした薬草はなくてはならないものだ。

これらの成長具合は、そのまま毒香水の出来にも影響してくる。

「ふぅ…っ」

一段落ついて、卑弥呼は休憩しようと椅子に掛けた。

前にあるテレビには、花見客と共に見事な桜の光景が映し出されている。

うっすらと紅色を帯び、清楚に輝く桜は、何とも幻想的だ。

暫しその画面に見惚れ、あることに気が付いた。

後ろを振り返って、丹精込めて育てた薬草たちを眺める。

「…どうしてこう、薬草って華やかさがないのかしら」

古来より魔術に使われてきた植物たちに、桜が持つような雅を求めても仕方のないことである。

そんなことは百も承知だが、自分が栽培した薬草たちは、通常のものより余計に色気がないような…。

可愛らしい花をつける種類もあるというのに、どれを見ても野性味溢れる逞しさばかりが目についてしまう。

「う――ん…」



たまには観賞用の花でも、育ててみようかと思う卑弥呼だった。

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