『銀ちゃん&蛮ちゃん』
| 「銀ちゃん、蛮くん。GWはどうするの?」 ホンキートンクの昼下がり、カウンターで珈琲を飲みながらヘヴンが聞いた。 「うーん。俺たち平日も祝日も関係ないからね」 「仕事が入りゃ仕事。なけりゃ待ちだ。いつもと変わりねぇよ」 「ヘヴンさん、何か仕事の話ない?」 「残念ね、今あるのは『運び屋』関連だけなのよ」 その返事を聞いて、銀次が脱力し、蛮が溜息をつく。 世の中、大型連休で浮かれているというのに、ちっとも楽しい気分になれない奪還屋だった。 「変なこだわりを捨てれば仕事はあるのにね。遊園地の着ぐるみとか、デパートの特撮ショーとか、イベントの焼き鳥屋台とか、テーマパークの駐車場の誘導とか」 ヘヴンがとりあえず思いつく仕事を挙げてみるが、二人とも乗り気ではない。 「着ぐるみって日給高いわよ。特撮ショーでは正義のヒーローになれるし、屋台は残り物がもらえるかもしれないし…」 「やってみようかな…」 心が揺れかけた銀次の頭を蛮が小突く。 「誘導されてるんじゃねぇ。奪還屋という仕事に誇りを持て」 「あんた達、それだからいつまで経っても貧乏なのよ」 変なところにこだわって、男というのは馬鹿な生物だ。 だから寿命が女より短いのだろうか。 二人のやりとりを見て、そんなことを考えるヘヴンだった。 |