『赤屍さん』
| 朝六時、赤屍はいつものように目を覚ました。 都内のとあるホテルの一室。 特に予定が入っているわけでもなく、すぐには起きずにそのままベッドの上でぼんやりと時を過ごす。 定住せず、あちこちのホテルを渡り歩いている赤屍の朝は、大抵こんなものだ。 一時間ほどそのまま動かず、白い手がようやく動いた時、それはテレビのリモコンを掴んでいた。 どうやら、意識がしっかりしていても、起きるつもりはないらしい。 スイッチを入れると、若いリポーターが交通状況の説明をしていた。 大型連休のせいで、行楽地を中心に、どこもかしこも混んでいるという。 「…ゴールデンウィークでしたね、そういえば」 小さく呟いて、赤屍はテレビを消した。 そのままベッドに身を委ねて、再び深い眠りに落ちる。 仕事もない上に、あちこちが人でごった返すこんな時期は、どこにも出掛けたくないらしい。 個人タクシーを兼業している同業者とは、正反対の怠惰さだった。 赤屍のGWは、毎年こうやって無為に終わるのである。 |