『俊樹&MAKUBEX』
| ある日、MAKUBEXのもとに俊樹がやってきて、ある提案をした。 「5月5日、鯉のぼりを上げては駄目だろうか?」 耳慣れない単語に、MAKUBEXが不思議そうな顔をする。 俊樹はもう立派な成人男性だ。 今更、鯉のぼりにこだわるような年ではないだろう。 「鯉のぼりを上げるの? ここで?」 「できれば目立つところにな」 俊樹の真意を読みかねて、MAKUBEXが小首を傾げた。 「MAKUBEXも知っての通り、5月5日は子供の日。端午の節句だ。VOLTSはまだ子供といっていい年齢の者が大半だろう?」 「じゃあ、その皆のために?」 「無限城の中では、そうした行事にはあまり縁がない。子供がごく普通に受けられる恩恵すらなかなか…」 俊樹の言葉に、MAKUBEXが微笑した。 いくら天才の名を欲しいままにしていても、MAKUBEXでは、そうしたことは思いつかない。 流石、厳格な家で育ってきただけあって、俊樹はこうした行事に気が回る。 「いいね、やってみようか」 「許可さえもらえれば、後は俺が手はずを整える」 「僕も手伝うよ。その方が手っ取り早いだろう?」 「いいや、それは駄目だ」 意外にも、協力の申し出を断られて、MAKUBEXは怪訝な顔をした。 大掛かりなことではないにせよ、VOLTSの責任者として、一応MAKUBEXも動いた方が良いのではないだろうか。 「何で?」 「子供の日だ。祝うのは俺たち。MAKUBEXはそれを受ける側だからな」 子供扱いされたことに不満を覚えつつ、何だかちょっと嬉しくて気恥ずかしいMAKUBEXだった。 |