『天子峰&チビ銀ちゃん』
| 「いつになったら降り止むんだか…」 窓の外を見上げて天子峰は呟いた。 梅雨だから仕方がないのだが、どんよりとした空とこの湿気は、毎年経験していても嫌なものだ。 無限城の貧民街には、空調などという高価な設備はなく、我慢するしかない。 部屋の中にいても不快なのだが、出掛けるのも億劫で、つい塞ぎ込んでしまう。 「なぁ、銀次」 「なーに?」 銀次は銀次で、クッションを抱えて適当にゴロゴロしている。 外で友達と遊べないのは、さぞかし退屈なことだろう。 「いつ晴れるか賭けないか?」 「何を賭けるの? 俺なんもないよ?」 身内の間で金品のやり取りをしても、あまり意味がない。 こういう時、賭けるものといえば決まっている。 「労働だ。負けた方が、勝った方の分まで働く」 「じゃあ、一週間皿洗いねっ」 銀次の顔が明るくなった。 賭けという要素を加えたら、梅雨明けを待つのも楽しくなった。 それからは、長雨が続けば晴れる日を、かんかん照りが続けば雨の日を、それぞれ賭けのネタにする。 そんなことをやり出してから、どんな天気の時も笑いながら過ごしてきた。 あの日、激しい雨と雷鳴の中、『雷帝』が降臨するまでは。 |