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『新生VOLTS』


「暑い時の定番といえば、やっぱりこれでっしゃろ」

どこから持ってきたのか、たくさんの蝋燭を手に笑師が言った。

「ちゃんと百本ありまっせ」

蝋燭が百本とくれば、そこから連想できるものは一つしかない。

かくしてその夜、新生VOLTS幹部たちの間で、密かに百物語が開催されることになった。



言い出しっぺの笑師を先頭に、MAKUBEX・十兵衛・俊樹・朔羅・鏡という順番で、怪談を披露していく。

「まずはワイからやな…」

笑師は流石に話術が巧みだが、お笑い芸人志望の悲しさか、どうしても話にオチをつけてしまう。

「これは聞いた話なんだけど…」

MAKUBEXと朔羅は、有名な都市伝説を淡々と語り、その静かな口調は中々に背筋を凍らせるものだった。

「昔々の話だが…」

十兵衛や俊樹は、現代物ではなく『四谷怪談』などの昔語りが主だったが、硬い言葉遣いが話に合っているのか、意外に雰囲気を出している。

しかし、秀逸なのは鏡だった。

「俺のは本当にあった話だけどさ…」

いつもの軽薄な空気はどこへやら、声のトーンといい間の取り方といい、表情に至るまで真に迫った話をする。



蝋燭は一つまた一つと消されていき、ついに最後を十兵衛が締めて、残りの一本も消された。

「…何も起こらなかったね」

「まー、こんなもんとちゃいますか?」

「さ、片付けましょう。すっかり遅くなっちゃたわ」

「無限城に戻ってきて、百物語をするとは思わなかったな」

「俺は途中で話のネタが尽きそうになった」

「俺はまだまだ知ってるよ。またやろうよ、女の子を増やしてさぁv」



誰もおかしいことに気付いていなかった。

笑師から始まって順に巡ると、十兵衛で終わるはずがないということに…。

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