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『新生VOLTS』


「秋といえば、芸術の秋…だと俺は思うんだよ、MAKUBEX」

気障なポーズを決めて、詩でも朗読するかのように鏡が言った。

整った容姿でそんなことをされると、まるで鏡自身が一枚の絵画のようだ。

この男について何の予備知識もない人間が目にしたら、思わず見惚れるかもしれない。

しかし、今この場において、そんな感傷的な気分に浸る者は一人もいなかった。

「秋っていえば、読書の秋とも言うじゃないか」

「秋っていえば、食欲の秋とも言いまっせ」

「秋はやはり紅葉狩りだろう」

「月見というのも風情があるな」

「そろそろ冬に向けて衣替えの用意をしなきゃいけないわね」

口々にそう言う面々は、せっかくモデル並の格好をつけたホストを、振り返りもしない。

「何だ何だ。皆して冷たいじゃないか、せっかく『上』から降りてきたのに」

「あー…、はいはい。それで芸術の秋がどうしたの、鏡君?」

面倒臭そうに、MAKUBEXがやる気のない相槌を打つ。

構ってもらえたことに気を良くしたのか、鏡は満面の笑みを浮かべて一枚のディスクを差し出した。

「皆にもこの芸術作品の感動を伝えようと思ってさ、ディスクを持ってきたんだよ。ここのデカイ画面で鑑賞したら迫力あるだろうと思ってね。それくらい、いいだろ?」

「まぁ別にいいけど…。ちなみに内容は何?」

「俺」

「は?」

「俺だよ俺。芸術的な俺の姿が、3時間に渡ってじっくりと収録されているんだ。俺って外見だけじゃなくて存在自体が芸術だから。ちょっと際どいヌードなんて、自分で見てウットリしちゃうくらいだよ。全世界に向けて発信したいくらいだけど、そこまでしたら俺の芸術的価値を安売りするみたいだから我慢するんだ。…あ、そうだ。レディ・ポイズンにも送ってあげよう。コピー作っておいてよMAKUBEX」

自分に酔っているホストを無視して、MAKUBEXがディスクをひったくった。

「朔羅!! ディスクの中身、消しといて!!」

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